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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:886件

プロフィール| 書評

No.886 5点 シンデレラ城の殺人
紺野天龍
(2025/06/22 09:38登録)
シンデレラ城といってもシンデレラのお城ではなく、シンデレラがお城のパーティへ出かけるというお話です。
初めはまさにシンデレラのお話風です(ちょっとシンデレラの性格が悪そうですが)。
その後とんでもない事件が起きてシンデレラは密室殺人の犯人とされます。
絶対言い逃れできそうにない状態を、得意の屁理屈で次々と突破していく。お姉さまもまあシンデレラの味方となってくれます。
お遊びで出来上がったお話といえばそれまでですが、一応最後までそれなりに読んでいけるのは作者の力なのでしょう。
ただこんなお話を次々に読みたい読者はあまりいないでしょうから、また新たなお話を期待しましょう。
なんだかとんでもないお話を考えてくれそうな方ですので。


No.885 7点 神薙虚無最後の事件
紺野天龍
(2025/06/16 06:05登録)
読み始めると登場人物が皆へんてこりんな名前で、さあこれからエキセントリックな推理ゲームを始めますよといった作者の大見えが気になりました。
大丈夫かな?
作中作が提示されこのお話をみんなで推理することとなります。
ほう。時に見かけるスタイルだな。
時代がかった名探偵が 推理する側にも作中作にも出現、作中作ではとんでもない怪盗が主催するパーティーがとんでもない建物で開かれ、そこでの殺人事件が起きる。
これを推理するといった代物。
したがって本格ものが好きな人には魅力たっぷりだが、そうでない人にとってはばかばかしくてやってられない作品です。
本格ものが好きな私は初めはばかばかしかったが次第に興味が引かれ、結構面白く読みました。
このサイトは本格好みの方が多いと思いますので、自然評価は高くなるものだと思います。
作者はなかなかの力がありそうです。
ほかの作品も読んでみましょう。


No.884 5点 星くずの殺人
桃野雑派
(2025/06/08 12:40登録)
宇宙空間の殺人事件は確かに密室ものとして究極の一つではあります。
もともとかなり無理がある設定なので、ある面都合よくお話が進められそうだなあと感じながら読みました。

以下多少ネタバレ。
重力がないと首つりは困難とのことですが、この設定だと首つりというより首絞めとなりそうなので、それなら首の跡が異なるといった無粋な指摘はやめるとしても、不思議な殺人が物理化学的知識によるものだとあまりトリックという感じはしませんでした。
また人の入れ替わりについてもきちんと説明されておらず、ちょっと戸惑ってしまいます。
まあ悪くはないが、さほど感心するものでもなかったというのが偽らざる印象です。


No.883 5点 バスカヴィル館の殺人
高野結史
(2025/06/04 19:58登録)
今度は海外ミステリーの代表作をひねった殺人ゲーム。
前回はひどく拒否反応が出ましたが、ちょっとなれたのか今回はかなりましでした。
でもこんなお話を読んで楽しみたくはないなあ。


No.882 4点 パラダイス・ガーデンの喪失
若竹七海
(2025/05/28 16:50登録)
意欲作です。
作者らしくコージーミステリーとしてしっかりと書かれていると思います。
なのに低い評価なのはお話が広げすぎていて、主人公がいるにはいるがそれ以外の準主人公のような登場人物がやたら多い。
作者の狙いはこの架空の町(今までもよく出てきたところではあります)の人達全体が主人公で一人ひとりにそれぞれの物語がありそれを総合してのお話としたかったものと思いますが、出てくる人物が多くもともと人の名前を覚えるのが苦手な上にそろそろ頭が悪くなってきた私にとって、お話がごちゃごちゃになって何が何だかわからないといったようになってしまいました。
私は外国の小説では登場人物が多く名前もなじみがない(下手すると男か女か不明となる)ためお話の筋がわかりにくくなってしまうことがあります。
このお話は外国ミステリーに詳しい作者の作品だけあって、まるで外国ミステリ-を読んでいるようになってしまったのです。
登場人物の名前を覚えるのが得意の方はきっと楽しめるのでしょう。


No.881 7点 砂男
有栖川有栖
(2025/05/18 20:51登録)
砂男は中編で、それ以外は短編です。
作者が書いておられるようにかなり以前に作り上げたが、何らかの理由で発表を控えていたものを集めた短編集です。
したがってこの本全体のまとまりはありません。
最初の2編は名探偵が江神さんで、後ろのほうは火村です。
これを読んでいると作者の発表作品をリアルタイムに読んできたものとして懐かしいと気持ちとともに、作者がいかに真摯に作品を作っているかがよくわかります。
そろそろ学生アリスシリーズの長編を読みたいところでしたので、ちょっとだけ渇きが癒された感じです。
でももうそろそろ学生アリスシリーズの最終編を書いてほしいなあ。作者も書けなくなるかもしれないし、なんといっても私が読めなくなってしまわないうちにお願いしますよ。


No.880 8点 ファラオの密室
白川尚史
(2025/05/16 21:25登録)
ミステリーも古代エジプトも大好きな私にとってはとても楽しめる内容でした。これを読んでいるとアクエンアテンの都(現在はアマルナと言われています)へ行ったことを思い出します。ほとんど何も残っていない砂漠と化していました。当時は治安が悪くて数百メートルおきに自動小銃を持った警備員が立っており、観光客はほんのわずか。それでも有名なネフェルティティの像が発見された跡はわずかに残っており感慨にふけったものです。
まさかここを舞台としたミステリー小説が読めるとは。
ファラオや高官の名前はもともと知っていたので私にとっては名前がわかりにくいといったことはありませんでした。
トリックはちょっととんでもですが、でもまあ面白く読めました。
私のエジプトの趣味が入っているのでちょっと点数は甘めです。


No.879 8点 一次元の挿し木
松下龍之介
(2025/05/03 08:51登録)
私はこの作品、好きです。
こういった遺伝子操作のお話を読むと、学生時代にワトソンの書いた教科書を使った講義を思い出します。たった4つのたんぱくの組み合わせで生命が伝わっているのだ。これを解明して(今はかなり解明されました)操作することができれば、いままで全く治療できなかった多くの病気が治癒できる。君たちもこういった分野の研究をしてみないかと誘われたものでした。ワトソンが二重らせん構造を思い立ったのが24歳の時。若い発想が必要なのだと。
この作品はまさにこういった研究により派生した物語です。
もちろん現実からはかなり離れていますが、こういったこともありうると納得できる範囲です。
私は登場人物の描写がむしろ好みです。ことに七瀬紫陽が素敵でした。
お話としてははじめはとんでもない謎が出てきて、これをどうやって帰結させるのか皆目見当もつきませんでしたが、見事に帰結していると思います。
ただし、最後の神話のような解決は良いのですがこれだと主人公と離れた後の紫陽の状況からはちょっと無理なのではないでしょすか。


No.878 6点 コドクな彼女
北田龍一
(2025/04/27 17:16登録)
「ラノベ読みたちがどよめいた異色作」と帯にありますが、どよめいたかどうかはともかく、変わった作品ではあります。
主人公の少女は本当はとんでもない存在ですが、ちょっとかわいく魅力的です。
まあそこにひかれて読むといた小説ではあります。
時間待ちなどでちょっと読むにはよさそう。


No.877 6点 まぐさ桶の犬
若竹七海
(2025/04/27 17:02登録)
久しぶりの葉村晶シリーズです。
彼女も50代となり男っ気はなくさらに不運も増しているようです。
このシリーズはきちんとプロットが組みあがっており、一見何でもないようなところが実は真相の手がかりであることが多いので、だまされないように(実はたいてい騙されるのだが)慎重に読んでいきました。
海外ミステリーが好きな作者らしく登場人物が多く、途中で親子関係などが入り乱れてくるので、名前を覚えるのが苦手な私には大変でした。
お話の性格上初めから家系図を出すことができにくいとは思いますが、話が進んだらその時点で系図を挙げて頂けると分かりやすいのではないでしょうか。
私は関係者の血縁が変化するたびに前に戻って確認するといった面倒な作業を何度も繰り返しました。そうしないとお話の意味が解らなくなる。
でもちゃんとした推理小説ですので読みごたえは十分あります。


No.876 6点 古事記異聞、鬼統べる国大和出雲
高田崇史
(2025/04/06 20:11登録)
このシリーズは独特の解釈での歴史観を旅をしつつ従来定着していた歴史をひっくり返すような発見するといったお話です。
主人公たちは蘊蓄と屁理屈、言葉遊びと言ってしまえばそれまでのような新説?を次々に見つけます。
こういったお話は好きなので作者の作品はたくさん読んでいますが、今回はちょっと無理なこじつけが多いように感じました。
一度旅すればこれほどの成果があがり、これが正鵠を得ていたとしたら、今までの歴史家や民俗学者はいったい何していたのでしょうかねえ。
QEDシリーズではこれが事件に結びついており、これはこれでちょっと無理があったのですが、このシリーズでは必ずしも事件が発生することもないため、そういった無理はない代わりに歴史推理の無理が表に出てしまった感じがしました。


No.875 5点 檜垣澤家の炎上
永嶋恵美
(2025/04/01 21:26登録)
重厚な作品ではあります。
細雪を思わせる時代と状況設定。まさに関東版細雪とでも言いたいところなのですが、いかんせん谷崎のような色っぽさと妖艶さがないのです。
その代わりといっては何ですが、殺人事件が起こり推理小説の要素がありますが、これがあんまりよろしくない。論理的な推理の要素が少なく、感覚的な推理で犯人を見つけ出してしまう。登場人物があまり好みのタイプではなく、ことに主人公が表向きには上品だが実は嘘つきで性悪の傾向。さらに殺人を犯した犯人はとんでもない性格が、突然明らかになる。
これが本格ものではじめから変な人間ばかり出てくるのならまだ納得できるのだが、上品を装ったお話の中に突然サイコパスみたいな人が出てくるとさすがに違和感があります。
良いところがたくさんあるのですが、私にはあまり心に響かず、長い小説を頑張って読んだといった感じでした。


No.874 6点 QED 源氏の神霊
高田崇史
(2025/03/22 20:36登録)
この小説でのメインテーマは源頼政がなぜ超高齢なのに起ちあがったのかといったところなのでしょう。頼政は平家物語などでは源氏が立ちあがっても源氏にくみせず世渡りしていくのに、最後は無謀と思われる戦いをして一族を滅ぼしてしまうような感じに描かれており、一般にあまり評判がよろしくないように思いますが、この本を読みなかなかに素晴らしい人物であったと再認識しました。
もちろんQEDシリーズですから殺人事件が発生して、それに対してこの歴史推理が絡んでくるのですが、それがいかにもとってつけた感じは否めません。
QEDシリーズは作者の歴史観が桑原崇を通じて示されるところに興味を持つか否かによって好き嫌いが分かれると思います。
実際に起きた事件とこの特有な歴史観が結びつけることにどうしても相当に無理が生じてしまうことは否めません。
この作品ではそういった無理がちょっと目立つところが気になりますが、このシリーズが好きな方には悪くはないと思います。


No.873 6点 呪殺島の殺人
萩原麻里
(2025/03/04 21:39登録)
もし私がもっと推理小説を読んでいない頃にこれを読んだら、大いに関心していたものと思います。
残念ながらずいぶん多くの本格推理を読んでしまったので、このお話があちこちのミステリーをつぎはぎしたようなお話となってしまっていることにすぐに気づいてしまいました。
密室殺人、記憶消失、呪われた家族、いかにもといった登場人物などどれをとってもそんなのがあったなあというものなのです。
さらにシチュエーションが孤島で大雨、橋が流され、携帯は圏外。やってくれますねえ。
サービス精神旺盛。
でもオリジナリティ-はほとんどない。
作者が女性のためか、美人でセクシーであるはずの登場人物がたくさん出てくる割にもう一つ性的魅力がうかがわれないのも残念です。
作者の意欲はうかがわれますので、ほかの作品も読んでみましょう。


No.872 6点 古事記異聞 陽昇る国、伊勢
高田崇史
(2025/02/28 19:52登録)
このシリーズははじめは殺人事件などが起きましたが、今回は殺人などの事件は全く起こりません。
主人公たちの民俗学的な実地研究のような内容のみです。
したがって従来のような無理に事件に話を結びつけるといったことがないので、かえってすっきりと読めます。
ただしほとんどが伊勢の神様に対する今までと違って見方の検証のような内容ですので、こういった内容に興味がない方には退屈かもしれません。
私はこんなお話が好きなので関心をもって読みました。


No.871 6点 QED 恵比寿の漂流
高田崇史
(2025/02/24 20:00登録)
QEDシリーズは一時終了したと思いきや不定期に時々出てきますので、逃さないように読んでいます。
こういった歴史推理と殺人事件を組み合わせるのは非常に興味深い。
ただこういった人知れず続いてきた歴史背景が殺人の動機となるようなお話を何作も書くということはやはり難しいのでしょう。
今回は対馬でのお話で、首切り殺人が連続で起きたのを博学のタタルが独特の歴史推理のもとに一気に解いてしまいます。
相変わらず歴史推理は興味深いのですが、それがあっさり事件の解決となってしまうのはちょっと無理がある。ほんとにこんなことが動機で連続首切り殺人が起きうるもんなのですかねえ。
私は本シリーズのファンで、実際に対馬でここに出てくる神社の一部を見てもいるのでとても興味がわいたのですが、そうでない方はもうちょっと低い評価となりそうです。


No.870 4点 図書館に火をつけたら
貴戸湊太
(2025/02/18 20:42登録)
この小説は本格推理として書かれています。
推理小説の形としては、興味深い謎、不可能犯罪のように思える事件、そして密室とその解明などきちんと整っています。
読後感も良い。
これだけそろえば本格ものが好きな私としては高得点をつけたいのですが、残念ながら低い評価となりました。


以下ネタバレあり。
防犯カメラに人が映らなかったのは図書館の書庫に住んでいたため??。
ちょっとひどくないですかねえ。住んでいた人は食事やトイレはどうした?。服の着替えなんかも。推理小説なのでありファンタジーであるオペラ座の怪人じゃないのだから。
それに容疑者を特定していく手段が穴だらけで、とても納得できない。

表題がファンタジー風なので、いっそファンタジーとして書いてくれたら結構評価が高くなったと思います。


No.869 7点 世界でいちばん透きとおった物語2
杉井光
(2025/02/14 21:30登録)
1作目も凝った内容でしたが、これまた非常に凝ったお話でした。
第1作も出だしがとてもよく興味津々で読み進めましたが、本作品もお話として出だしから中盤へ興味深く読めました。
作中作のようなお話が作者の片割れが死ぬことにより突然終了せざるを得ないこととなる。ものすごく思わせぶりなところでの終了なのに生き残ているもう一人の作者は引き続いて書かない。どう見てもこのままでは収まらないから続きを予測して書いてみないかということとなるのだが。
もちろん最後には主人公が続きを書くこととなる。
できたお話はどんでん返し的な展開となり終了する。
お話は多くの謎が矛盾なく解決して終了するのだが、なにかしっくりしない感じが残りました。
たぶんこのお話を他人が続けて書くこと自体が本来無理だったのを、無理やりでっちあげたような感じがするせいなのでしょう。
こういった不満は残りますが、作者の力は感じます。
次作を期待しましょう。


No.868 7点 死はすぐそばに
アンソニー・ホロヴィッツ
(2025/02/05 21:45登録)
凝った構成でまず初めにホーソーンが述べたお話を小説化した世界が提示されるがが、作者が実際に尋ねてみるとまた違った環境と人物評価となる。
この辺りは時に見かけることもあるのですが、なんせ犯人と目される人が死んでしまい、告白したような文章まで残されている。
どう見てもこれで終了なのだが、小説はまだ半分ぐらいしか進んでいない。大体これで終わりならこんなお話は全然読むにたりないこととなる。実際小説の中でもそんなことが述べられているのに、まだまだ話が続くのであるからきっと新たな展開となろうと興味津々で読み進むことができました。
するとお話は大展開。
やっぱりこのままで終わるはずないよね。それにしても鮮やかな推理なのですが、これもまた決定的にダメだしされてしまう。
あれあれこれでは困るではないかと思っていたら、作者はきちんと解決させてくれました。
さらにホーソーンと助手のダドリーが分かれた原因も解明されます。
おもしろかった。

ちょっとネタバレ
一つしっくりしないところがあります。いまからでもよいからどうして木の下を掘り返さないのでしょうかねえ。そうすれば完全に犯罪が解決すると思うのですが。


No.867 6点 人面島
中山七里
(2025/01/04 10:04登録)
 前作があるのを知らずこの作品を読んだので、人面創が喋りだしたところでちょっとびっくりしたのですが、すぐになれました。
 設定は本格推理としてはよくあるパターンですが、なんせ人面創が名探偵なので本格ものとしてはちょっと異質です。
 さすがに中山氏の作品だけあって読みやすい。
 横溝正史の作品風でもあり、こういった雰囲気が好きな方は面白く読めると思います。
 残念なのは登場人物が殺されてどんどん少なくなっていくためもあり、私のようなほとんど作者の思うがままに騙されるタイプの読者でも、犯人は大体見当がついてしまうところでしょう。

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