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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.862 7点 日本扇の謎
有栖川有栖
(2024/11/24 15:47登録)
 有栖川氏はトリックメーカーと評価されていることもあるようですが、ことに最近の作品ではお話の深みややさしさが加わってよい雰囲気が味わえます。
 本作品でも密室のトリックはちょっと推理小説が好きな読者ならあまりに簡単というか使い古されたものなのですが、本作品は密室トリックがメインではなく、記憶消失や家庭の事情などが主となる謎です。これをどう解決していくかが見せどころなのです。
アリスが次の作品のためのトリックをいろいろ考えて、ダメトリックを没としている姿は、さすが推理作家といったところ。
 はじめはちょっと緩いが、読んでいくとなかなか面白くて、読後感もよい。


No.861 6点 あなたが殺したのは誰
まさきとしか
(2024/11/12 19:12登録)
全く関係のないお話が最後にはきれいに一点に集中してくるといった、本格推理小説の基本からいえばよくできた小説お思います。
ただあまりに暗い。
この作家さんは力がある方と思いますが、私にとっては読んでいてこんな暗い、やりきれないお話を楽しむことはできそうにないです。
いわゆる社会派の小説であることは間違いなくこういった話を好まれる方はおられるとは思いますが、私はダメでした。
ただ小説としての出来は良いように思いましたので評価は私の読後感からすれば高くつけました。


No.860 3点 名探偵に甘美なる死を
方丈貴恵
(2024/10/24 18:58登録)
本格推理がパズルを解くようなトリックのみに興味を示す方にとっては、評価が高いのでしょうが、あまりにも人殺しをゲームとしてのみ扱って楽しいもんだろうかとちょっとでも感じるものにとっては、読むのが苦痛となりそうです。
三部作としてだんだんゲーム感覚が進化してきていると思いますが、ここまでなると私の感覚からするといやだなあ。
これを楽しむには殺される人にも愛する人がいて家族がいてなどとは考えてはいけないのでしょう。
私には全くあいませんでした。


No.859 7点 透明な螺旋
東野圭吾
(2024/10/14 07:56登録)
このサイトでは評価が低いようですが、私は気に入っています。
何を小説に求めるかによって当然評価は異なるのでしょう。
この小説に奇想天外な推理と本格推理にありがちなエキセントリックな探偵を期待すればこの小説の評価が下がるのでしょう。
作者はもともと本格推理でありがちな、ロジックだがとんでもなく、そして人間の情など全く考えたこともないといったお話から少し異なることがしばしばあり、そこが私としては好きなところ。
最近はちょっとこういった要素が薄くなり、若干冷たく薄利多売的小説が増えたような感じがしていましたが、これは推理とともに人間の情を訴えるところが強く出ています。
もちろん推理小説や実際の捜査なら問題となるところが大いにあるのですが、私はこういったところが好きなので、大いに感動しました。


No.858 7点 奔流の海
伊岡瞬
(2024/10/09 21:22登録)
一気読みされたとの評がありますが、私は一気読むことはとてもできませんでした。
まず初めのあまりに悲惨なお話。
若いころなら何とか読んでしまうのですが、最近はこういったひどい境遇のお話を読むのが苦痛になり、一度ならず読むのをやめていました。
でも思い立って読み進めると意外にそこからは読みやすい。
一見無関係なお話が最後に行くにしたがってつながってきます。
最後はハッピーエンド風となり、読後感はよい。
でもある程度展開は読めてしまうところがちょっと残念。
推理の要素は少ないが、読む人によってはとても感動的なお話となると思います。


No.857 4点 六法推理
五十嵐律人
(2024/08/31 10:24登録)
 どうもこの作家さんとは感覚が違うようで、いろいろな事件のなぞ解きがあるのですが、私にはどれも今一つピンときません。
 よく読むときっと探偵役のきちんとした法律による推理と、相手役の女性の推理が混ぜ合わさって回答となっているように思うのですが、私にはこにある連作のどのお話もしっくりこないのです。
 また主人公の家は父が裁判官で母が弁護士で兄が検事で、家で模擬法廷を開いているといったすごい家族で、みんなそれぞれ極めて優秀。しかし考え方は職業上かなり異なるといった設定なのですが、これまた私の感覚とは多少異なった人ばかり。
 どうもついていけそうにありませんでした。
 感性が合う方なら興味深く読めるのだと思います。


No.856 4点 彼女が最後に見たものは
まさきとしか
(2024/08/06 07:10登録)
こういった悲惨な社会派小説は一部の人には高評価となると思います。
私も若いころはこんなお話を根気よく読んでいたのですが、年をとるに従い読んで嫌になるお話に付き合うことが苦痛になってきました。
なんでわざわざ気分が落ち込むような話を読まされるのといった感じですかね。
こういった小説の探偵役は正義感にあふれた一徹な人が多いと思います。その方が共感しやすいですから。
本作品の探偵役はかなりエキセントリックです。
本格ものなら作り話の中での味付けのように思えますが、こういった話の探偵としてはちょっと違和感があります。
読んで疲れました。


No.855 6点 先祖探偵
新川帆立
(2024/08/03 07:08登録)
先祖を探す専門の探偵とはなかなかユニークな職業のお話し。
主人公はちょっとクールな感じだが、どこか謎がある女性。
依頼人の先祖を探していくと同時に、この女性のルーツも探し出すといった連作です。
お話は一つずつが独立しており、この作者があまり描かなかったオカルチックなお話もあります。
はじめはこんなお話で大丈夫かと思ったのですが、作者は上手にストーリーを続けていきすらすらと読めました。


No.854 5点 剣持麗子のワンナイト推理
新川帆立
(2024/07/14 09:30登録)
 この本によると弁護士さんはとても忙しく夜型の人が多いのだそうですが、こんなに徹夜ばかり続けていてよいのかなあと心配になるような内容。
 短編集のようであるが最終的にはお話が続いている連作です。
 主人公の弁護士は敏腕で頭が切れて少々冷たい、まさに秀才を通してきた女性にありがちなキャラです。でもなんだかんだといって依頼人に押し切られてやりたくもない相談にのってしまうところは、ちょっとかわいいかな。
 お話の内容はまあこんなものでしょう。悪くはないです。
 私にとってはちょっととがった秀才が書いた話といった感じがして、多少評価が下がりました。


No.853 3点 奇岩館の殺人
高野結史
(2024/06/27 20:25登録)
本格推理小説はトリックが話の重要な役割となることは間違いないのですが、トリックだけを突き詰めた形にすると無機質で殺人をお遊びとしてしか認めないところへいってしまう。
私は本格ものが好きですが、こういった突き詰めた形のお話はどうしても拒否反応が出てしまいます。
人をものとしてしか扱わず、それを楽しんでいる姿勢が嫌なのです。
本格ものの傑作はトリックにバラバラ殺人など残酷なお話もありますが、殺人事件そのものを登場人物が楽しんでみているというものではない。
この小説は古典的な本格ものを根底にしてひねった形を示してはいるのですが。こういった傾向のお話は好きになれませんでした。


No.852 6点 名探偵のままでいて
小西マサテル
(2024/06/22 09:22登録)
名探偵がレビー小体型認知症のじいさんとは。なかなかユニークです。
私の父親も晩年この病気になり、また自分の職業上もこの病気の方とほぼ毎日付き合っている関係上興味深いものでした。
作者が並々ならぬ推理小説マニアであることから、お話の内に多くの推理小説のネタが出てきます。これがマニアにとっては面白い。読んだことがない小説もおるので、これを機会に読んでみようという気になしました。
小説の内容はまあこんなものかな。
推理内容はもちろんアームチェア探偵のものですので、ちょっとこじつけや無理があるのはまあ仕方がないところですが、まずまずでしょう。
さすがに介護が必要な爺さんがいくら昔とったきねづかでも、あっさ人犯人もねじ伏せてしまうのはやりすぎでしょうね。
私にとって一番衝撃的だったのは、なんといってもこの爺さんが私より年下であったことです。ああなんということだ。
私も覚悟せねばならないのかも。


No.851 6点 震える天秤
染井為人
(2024/05/05 08:56登録)
染井氏の作品は二度目ですが、これもかなり社会派的要素が強いお話でした。
高齢者のお運転するトラックがコンビニに突っ込みコンビニの店長が死亡する。加害者は認知症とされているが、本当のところはわからない。
ライターの主人公がこの事件を取材すると、実に意外なことが次々と判明してくる。
被害者はとんでもない奴で、その父親も実にいやなやつ。
加害者やその弁護士はなかなか本当のことを語ってくれない。
調べていくと埜ヶ谷村という孤立した村の関係者が何らかの関係があることがわかるが、この村の人達はみんな何かを隠している。
この謎がなかなか解けずに主人公は苦労するのですが、とにかく被害者たちがとても嫌な感じで、何か隠しているらしい村の人たちは善良な人たちのようだ。
真相が明らかになるにつれちょっとやりきれない感じがするが、主人公の元奥さんが裁判官で、これがユーモラスなのが救い。
嫌味な被害者が出てくる作品は好みではないのですが、これはひきつけられて最後まで一気に読みました。
こういった作品が非常に好きな方もきっとおられると思いますが、私はまあこんな評価です。


No.850 8点 白鳥とコウモリ
東野圭吾
(2024/04/14 08:41登録)
まったく悪意のない評判の良い人が殺されて、それを自供した犯人と思われる人も好い人で、といった松本清張の砂の器を思わせるようなお話で始まっていくのですが、それにしてもずいぶん残りのページが多い。
東野氏の作品ですから、当然ひとひねりふたひねりしてあると思って読み続けていくと興味深い事実が次々と出てくる。
ところが司法関係者たちは裁判に勝つことが最優先で、自供があるのだからとほとんど受け付けない。そのうち犯人とされた男の息子と被害者の娘が親しくなってきて---。
こんな話は下手に描いたら全くの絵空事となりそうですが、作者は巧みに描くので、共感できてしまいます。
このお話の中で、法曹関係者には裁判で勝つことが一番で、裁判に勝つことの障害となるなら実際に弁護を依頼した人の都合などは後回しといった考えがあることがよくわかります。きっと作者がそういった経験をしたまたはそういった話を聞いたことがあるのでしょう。
それにしても久しぶりに東野氏の素晴らしい小説を読ませていただきました。


No.849 4点 変な家
雨穴
(2024/04/09 07:31登録)
何度も家の構造が出てきて、分かりやすいといえば分かりやすいのですが、実際に読むところが極めて少ないお話です。どっちかというと謎の絵本のような感じ。
読み始めればあっという間に読めてしまい、中身が薄い。
お話の内容もちょっと悪意的であまり気分がよくない。
こういた感覚の小説があることは認めますが、私の好みからいうとダメでした。


No.848 7点 黄土館の殺人
阿津川辰海
(2024/03/17 08:11登録)
大胆な殺人方法と意表を突くトリックを名探偵が解決していくといった、本格推理物は常に過去のトリックではない新しいものを考え出す必要があるので、半島に意表を突くような話を作ることが困難になっていると思われます。
そういった高いハードルを越えるためには過去のトリックの複合化、パロディー化、一部SFの要素を入れる、昔の時代の話とするなど、作者は常に工夫を凝らしていると思いますが、これほど大胆な殺人方法を提示して合理的に解決に結びつけるとは。ちょっとびっくりです。
凄い話です。
作者は親切にも込み合った話となってくると、まとめを読者に示してくれます。
まさに数学の試験問題の提示のようです。
解決も実に精緻に検討されたうえで(一人の探偵は犯人に憑依するようにして解決へ導くのですが)示されます。
こういった展開は本格物が好きな私にとっては実に面白いのですが、作者の頭についていけないところがあって、全部がきっちりと把握できたとは言えません。最後は試験の解答を教えて頂いたような感じが伴いました。
でもこの作者は目が離せません。
新作が出たらきっと買ってしまいます。


No.847 6点 自由研究には向かない殺人
ホリー・ジャクソン
(2024/03/11 20:59登録)
イギリス版青春ミステリーといったところなのでしょうか。
他の方の評にもありましたが、主人公以外は描写が平坦で誰が誰だかわからないことが多かった。女性の作家なのでカラで月などに対する具体的な描写が少ないことも原因かもしれない。
主人公にピップでさえスタイルはどんなのか、ボインなのか、髪は何色でどんな具合なのかなどといった具体的な描写がほとんどない。それ以外の人物は推して知るべし、なので登場人物のインパクトが薄れてしまう。
それでもお話はそれなりに面白かった。
イギリスの高校のコンパ?は酒は飲むは大麻はやるはセックスもするはと、なかなかすごいですね。


No.846 6点 推しの殺人
遠藤かたる
(2024/02/28 20:01登録)
どこをとってもまあまあの作品でした。
あまりぱっとしないアイドルグループがとんでもない殺人事件に巻き込まれる(起こしてしまう)。ある程度やむを得ない事情もあるが、でも殺人はやり過ぎなので必死に隠蔽する。その過程で今まであまり仲が良くなかったグループが一蓮托生の仲間となる。最終的に事務的と思われた職員が実は懸命に主人公たちを救おうとしていた半面、カッコよくて面倒見がよい男性が豹変する。
これだけみるとなかなか感動的なお話となりそうですが、読んでみるとそれほどではない。
主人公たちのキャラが立っているという評もあるようですが、外見などの描写が表面的で、セクシー度に欠けるので、あまり魅力を感じないのです。
書き方が変わればもっと魅力的な小説となりそうなのですが。


No.845 2点 奇譚蒐集録 弔い少女の鎮魂歌
清水朔
(2024/02/27 19:41登録)
ホラーとミステリー、そして民俗学が好きな人へといった帯がついています。
民俗学とミステリーは私の好みなので読んでみたのですが、私はホラーといってもこういったグロテスクで気持ち悪いものは全くあいません。
途中でやめようと思ったが、やめると余計気持ち悪くなりそうなので我慢して最後まで読みました。
ああダメだったなあ。
救いは主人公の二人が気持ちのよい青年であったことのみ。


No.844 7点 聖乳歯の迷宮
本岡類
(2024/02/21 21:41登録)
最初はとても面白い。キリストの乳歯が見つかった。キリストが幼少時暮らした後の遺跡からキリストの時代に一致した乳歯が見つかり、ミトコンドリアの遺伝子を調べたら現代人のゲノムと異なっていた。現代人とは違った人種であり、これが神の証拠なのだということとなった。
凄い発想です。
どうなることかと思って読んでいくと、探偵役主人公の同僚の死亡(殺人か?)、妻の浮気?実はカルト宗教にのめり込んでいた、など色々出てくる。絶海の孤島青ヶ島のお話も絡む。
登場人物は少なく、殺人としたら犯人は誰か、キリスト教がべらぼうに発展してきてしまうのがどうなるのかが、全く分からないのに残りページが少なくなってくる。これで解決するのかと思いきや意外な反転でお話は解決してしまう。
一応話が解決し、犯人もその意図も分かるのだが、どうもすっきりしないのです。


以下ネタバレ
普通に見える人間がその奥に異常性を秘めているということは、本格推理ならむしろ普通にある設定ですが、このお話では探偵が長い付き合いのある犯人の異常な性格が今まで全く分からなかったというのはちょっと腑に落ちないのです。とんでもないやつなんですから、長く付き合っていれば絶対わかりそうなものですがねえ。


No.843 7点 硝子のハンマー
貴志祐介
(2024/02/09 18:46登録)
出だしからして本格推理小説ですといった感じ。
泥棒が探偵というとんでもない設定と若く美しい弁護士がとても無理と思われる密室殺人の謎を解いていく。
その過程がなかなか面白い。弁護士さんの、とんでも推理なども出てくるが、泥棒探偵さんはすごく精緻な謎解きを行っていく。
全然犯人がわからない、密室の謎解きも分からないままに、突然犯人と思われる人のお話が始まる。
あれこれ何?どういうつながりなのと思っていると、最後は見事につながって解決となります。
その間複雑な過程をひとつづつときあかしていくのですが、私にははっきり言って全部分かったとは思い難い。
でもきっと正しいんだろうなあと思いつつ読みました。ひょっとしたらとんでもないトリックかもしれないけど、でもそうなんだと納得させてしまうところがすごいです。

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