makomakoさんの登録情報 | |
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平均点:6.18点 | 書評数:880件 |
No.880 | 8点 | ファラオの密室 白川尚史 |
(2025/05/16 21:25登録) ミステリーも古代エジプトも大好きな私にとってはとても楽しめる内容でした。これを読んでいるとアクエンアテンの都(現在はアマルナと言われています)へ行ったことを思い出します。ほとんど何も残っていない砂漠と化していました。当時は治安が悪くて数百メートルおきに自動小銃を持った警備員が立っており、観光客はほんのわずか。それでも有名なネフェルティティの像が発見された跡はわずかに残っており感慨にふけったものです。 まさかここを舞台としたミステリー小説が読めるとは。 ファラオや高官の名前はもともと知っていたので私にとっては名前がわかりにくいといったことはありませんでした。 トリックはちょっととんでもですが、でもまあ面白く読めました。 私のエジプトの趣味が入っているのでちょっと点数は甘めです。 |
No.879 | 8点 | 一次元の挿し木 松下龍之介 |
(2025/05/03 08:51登録) 私はこの作品、好きです。 こういった遺伝子操作のお話を読むと、学生時代にワトソンの書いた教科書を使った講義を思い出します。たった4つのたんぱくの組み合わせで生命が伝わっているのだ。これを解明して(今はかなり解明されました)操作することができれば、いままで全く治療できなかった多くの病気が治癒できる。君たちもこういった分野の研究をしてみないかと誘われたものでした。ワトソンが二重らせん構造を思い立ったのが24歳の時。若い発想が必要なのだと。 この作品はまさにこういった研究により派生した物語です。 もちろん現実からはかなり離れていますが、こういったこともありうると納得できる範囲です。 私は登場人物の描写がむしろ好みです。ことに七瀬紫陽が素敵でした。 お話としてははじめはとんでもない謎が出てきて、これをどうやって帰結させるのか皆目見当もつきませんでしたが、見事に帰結していると思います。 ただし、最後の神話のような解決は良いのですがこれだと主人公と離れた後の紫陽の状況からはちょっと無理なのではないでしょすか。 |
No.878 | 6点 | コドクな彼女 北田龍一 |
(2025/04/27 17:16登録) 「ラノベ読みたちがどよめいた異色作」と帯にありますが、どよめいたかどうかはともかく、変わった作品ではあります。 主人公の少女は本当はとんでもない存在ですが、ちょっとかわいく魅力的です。 まあそこにひかれて読むといた小説ではあります。 時間待ちなどでちょっと読むにはよさそう。 |
No.877 | 6点 | まぐさ桶の犬 若竹七海 |
(2025/04/27 17:02登録) 久しぶりの葉村晶シリーズです。 彼女も50代となり男っ気はなくさらに不運も増しているようです。 このシリーズはきちんとプロットが組みあがっており、一見何でもないようなところが実は真相の手がかりであることが多いので、だまされないように(実はたいてい騙されるのだが)慎重に読んでいきました。 海外ミステリーが好きな作者らしく登場人物が多く、途中で親子関係などが入り乱れてくるので、名前を覚えるのが苦手な私には大変でした。 お話の性格上初めから家系図を出すことができにくいとは思いますが、話が進んだらその時点で系図を挙げて頂けると分かりやすいのではないでしょうか。 私は関係者の血縁が変化するたびに前に戻って確認するといった面倒な作業を何度も繰り返しました。そうしないとお話の意味が解らなくなる。 でもちゃんとした推理小説ですので読みごたえは十分あります。 |
No.876 | 6点 | 古事記異聞、鬼統べる国大和出雲 高田崇史 |
(2025/04/06 20:11登録) このシリーズは独特の解釈での歴史観を旅をしつつ従来定着していた歴史をひっくり返すような発見するといったお話です。 主人公たちは蘊蓄と屁理屈、言葉遊びと言ってしまえばそれまでのような新説?を次々に見つけます。 こういったお話は好きなので作者の作品はたくさん読んでいますが、今回はちょっと無理なこじつけが多いように感じました。 一度旅すればこれほどの成果があがり、これが正鵠を得ていたとしたら、今までの歴史家や民俗学者はいったい何していたのでしょうかねえ。 QEDシリーズではこれが事件に結びついており、これはこれでちょっと無理があったのですが、このシリーズでは必ずしも事件が発生することもないため、そういった無理はない代わりに歴史推理の無理が表に出てしまった感じがしました。 |
No.875 | 5点 | 檜垣澤家の炎上 永嶋恵美 |
(2025/04/01 21:26登録) 重厚な作品ではあります。 細雪を思わせる時代と状況設定。まさに関東版細雪とでも言いたいところなのですが、いかんせん谷崎のような色っぽさと妖艶さがないのです。 その代わりといっては何ですが、殺人事件が起こり推理小説の要素がありますが、これがあんまりよろしくない。論理的な推理の要素が少なく、感覚的な推理で犯人を見つけ出してしまう。登場人物があまり好みのタイプではなく、ことに主人公が表向きには上品だが実は嘘つきで性悪の傾向。さらに殺人を犯した犯人はとんでもない性格が、突然明らかになる。 これが本格ものではじめから変な人間ばかり出てくるのならまだ納得できるのだが、上品を装ったお話の中に突然サイコパスみたいな人が出てくるとさすがに違和感があります。 良いところがたくさんあるのですが、私にはあまり心に響かず、長い小説を頑張って読んだといった感じでした。 |
No.874 | 6点 | QED 源氏の神霊 高田崇史 |
(2025/03/22 20:36登録) この小説でのメインテーマは源頼政がなぜ超高齢なのに起ちあがったのかといったところなのでしょう。頼政は平家物語などでは源氏が立ちあがっても源氏にくみせず世渡りしていくのに、最後は無謀と思われる戦いをして一族を滅ぼしてしまうような感じに描かれており、一般にあまり評判がよろしくないように思いますが、この本を読みなかなかに素晴らしい人物であったと再認識しました。 もちろんQEDシリーズですから殺人事件が発生して、それに対してこの歴史推理が絡んでくるのですが、それがいかにもとってつけた感じは否めません。 QEDシリーズは作者の歴史観が桑原崇を通じて示されるところに興味を持つか否かによって好き嫌いが分かれると思います。 実際に起きた事件とこの特有な歴史観が結びつけることにどうしても相当に無理が生じてしまうことは否めません。 この作品ではそういった無理がちょっと目立つところが気になりますが、このシリーズが好きな方には悪くはないと思います。 |
No.873 | 6点 | 呪殺島の殺人 萩原麻里 |
(2025/03/04 21:39登録) もし私がもっと推理小説を読んでいない頃にこれを読んだら、大いに関心していたものと思います。 残念ながらずいぶん多くの本格推理を読んでしまったので、このお話があちこちのミステリーをつぎはぎしたようなお話となってしまっていることにすぐに気づいてしまいました。 密室殺人、記憶消失、呪われた家族、いかにもといった登場人物などどれをとってもそんなのがあったなあというものなのです。 さらにシチュエーションが孤島で大雨、橋が流され、携帯は圏外。やってくれますねえ。 サービス精神旺盛。 でもオリジナリティ-はほとんどない。 作者が女性のためか、美人でセクシーであるはずの登場人物がたくさん出てくる割にもう一つ性的魅力がうかがわれないのも残念です。 作者の意欲はうかがわれますので、ほかの作品も読んでみましょう。 |
No.872 | 6点 | 古事記異聞 陽昇る国、伊勢 高田崇史 |
(2025/02/28 19:52登録) このシリーズははじめは殺人事件などが起きましたが、今回は殺人などの事件は全く起こりません。 主人公たちの民俗学的な実地研究のような内容のみです。 したがって従来のような無理に事件に話を結びつけるといったことがないので、かえってすっきりと読めます。 ただしほとんどが伊勢の神様に対する今までと違って見方の検証のような内容ですので、こういった内容に興味がない方には退屈かもしれません。 私はこんなお話が好きなので関心をもって読みました。 |
No.871 | 6点 | QED 恵比寿の漂流 高田崇史 |
(2025/02/24 20:00登録) QEDシリーズは一時終了したと思いきや不定期に時々出てきますので、逃さないように読んでいます。 こういった歴史推理と殺人事件を組み合わせるのは非常に興味深い。 ただこういった人知れず続いてきた歴史背景が殺人の動機となるようなお話を何作も書くということはやはり難しいのでしょう。 今回は対馬でのお話で、首切り殺人が連続で起きたのを博学のタタルが独特の歴史推理のもとに一気に解いてしまいます。 相変わらず歴史推理は興味深いのですが、それがあっさり事件の解決となってしまうのはちょっと無理がある。ほんとにこんなことが動機で連続首切り殺人が起きうるもんなのですかねえ。 私は本シリーズのファンで、実際に対馬でここに出てくる神社の一部を見てもいるのでとても興味がわいたのですが、そうでない方はもうちょっと低い評価となりそうです。 |
No.870 | 4点 | 図書館に火をつけたら 貴戸湊太 |
(2025/02/18 20:42登録) この小説は本格推理として書かれています。 推理小説の形としては、興味深い謎、不可能犯罪のように思える事件、そして密室とその解明などきちんと整っています。 読後感も良い。 これだけそろえば本格ものが好きな私としては高得点をつけたいのですが、残念ながら低い評価となりました。 以下ネタバレあり。 防犯カメラに人が映らなかったのは図書館の書庫に住んでいたため??。 ちょっとひどくないですかねえ。住んでいた人は食事やトイレはどうした?。服の着替えなんかも。推理小説なのでありファンタジーであるオペラ座の怪人じゃないのだから。 それに容疑者を特定していく手段が穴だらけで、とても納得できない。 表題がファンタジー風なので、いっそファンタジーとして書いてくれたら結構評価が高くなったと思います。 |
No.869 | 7点 | 世界でいちばん透きとおった物語2 杉井光 |
(2025/02/14 21:30登録) 1作目も凝った内容でしたが、これまた非常に凝ったお話でした。 第1作も出だしがとてもよく興味津々で読み進めましたが、本作品もお話として出だしから中盤へ興味深く読めました。 作中作のようなお話が作者の片割れが死ぬことにより突然終了せざるを得ないこととなる。ものすごく思わせぶりなところでの終了なのに生き残ているもう一人の作者は引き続いて書かない。どう見てもこのままでは収まらないから続きを予測して書いてみないかということとなるのだが。 もちろん最後には主人公が続きを書くこととなる。 できたお話はどんでん返し的な展開となり終了する。 お話は多くの謎が矛盾なく解決して終了するのだが、なにかしっくりしない感じが残りました。 たぶんこのお話を他人が続けて書くこと自体が本来無理だったのを、無理やりでっちあげたような感じがするせいなのでしょう。 こういった不満は残りますが、作者の力は感じます。 次作を期待しましょう。 |
No.868 | 7点 | 死はすぐそばに アンソニー・ホロヴィッツ |
(2025/02/05 21:45登録) 凝った構成でまず初めにホーソーンが述べたお話を小説化した世界が提示されるがが、作者が実際に尋ねてみるとまた違った環境と人物評価となる。 この辺りは時に見かけることもあるのですが、なんせ犯人と目される人が死んでしまい、告白したような文章まで残されている。 どう見てもこれで終了なのだが、小説はまだ半分ぐらいしか進んでいない。大体これで終わりならこんなお話は全然読むにたりないこととなる。実際小説の中でもそんなことが述べられているのに、まだまだ話が続くのであるからきっと新たな展開となろうと興味津々で読み進むことができました。 するとお話は大展開。 やっぱりこのままで終わるはずないよね。それにしても鮮やかな推理なのですが、これもまた決定的にダメだしされてしまう。 あれあれこれでは困るではないかと思っていたら、作者はきちんと解決させてくれました。 さらにホーソーンと助手のダドリーが分かれた原因も解明されます。 おもしろかった。 ちょっとネタバレ 一つしっくりしないところがあります。いまからでもよいからどうして木の下を掘り返さないのでしょうかねえ。そうすれば完全に犯罪が解決すると思うのですが。 |
No.867 | 6点 | 人面島 中山七里 |
(2025/01/04 10:04登録) 前作があるのを知らずこの作品を読んだので、人面創が喋りだしたところでちょっとびっくりしたのですが、すぐになれました。 設定は本格推理としてはよくあるパターンですが、なんせ人面創が名探偵なので本格ものとしてはちょっと異質です。 さすがに中山氏の作品だけあって読みやすい。 横溝正史の作品風でもあり、こういった雰囲気が好きな方は面白く読めると思います。 残念なのは登場人物が殺されてどんどん少なくなっていくためもあり、私のようなほとんど作者の思うがままに騙されるタイプの読者でも、犯人は大体見当がついてしまうところでしょう。 |
No.866 | 6点 | ボタニストの殺人 M・W・クレイヴン |
(2024/12/30 08:41登録) クレイヴンの作品は初めて読みました。 本作品がシリーズ5冊目だということも知りませんでしたが、読むのにさほど問題はありません。 これを読むと警察側の登場人物も標的とされた人達(めちゃくちゃなやつなので世間が死んでよかったと思っている)も、とても品が悪い。 クリスティの小説に出てくるような品の良さは全くなく、ひどい下ネタを言いまくる。イギリス人てこんなんだったのかなあ。 密室トリックに関しては雪密室のほうはさておき、警察が完全に見張っているのに殺人が実行されたのにはかなりびっくり。 最近の密室ものはとても無理な方法やどこかで読んだもののひねりといったものが多いなかで、ほぼ納得できる方法を使っていると思います。 ただしこのサイトで述べられているように医学的知識がないと分かりにくいかも。ついでに行ってしまうと被害者が受けた手術はたぶん内視鏡でできそうだし、開腹しても胃切除はしないであろうから、生涯食欲が落ちることはないと思われます。 |
No.865 | 3点 | 爆弾 呉勝浩 |
(2024/12/15 09:25登録) 皆さんの評価が高いのに、このような評価で申し訳ありません。 私にはこのお話は全く合いませんでした。 確かにミステリーとしては優れているのでしょうが、私は登場人物がグタグタと嫌味な発言を繰り返しているのに、嫌気がさしてしまいました。 さらに取り調べている側の警察さんも、いつも上司の態度に不満を抱えてでもまあ一生懸命にやるといった感じで、あまり感じがよくないのです。 愚痴の連続のようなお話でもあります。 したがってこんな評価でした。 ミステリーとして読んで楽しいと思われる方はとても良いのでしょうが、登場人物が好きになってしまいながら読む傾向のある読者にとっては好ましいものではありませんでした。 |
No.864 | 5点 | 名探偵の顔が良い 天草茅夢のジャンクな事件簿 森晶麿 |
(2024/12/12 19:49登録) あまり中身の濃い小説ではありませんでした。 題名から見てもわかりますが、本格ものを真正面から挑んだのではなく、パロディーとして軽く作った作品です。 ジャンクフードがたくさん出てきて事件も密室、アリバイ崩し、双子トリックなど山盛りに出てきます。 サービス精神たっぷりで読みやすいのですが、どの話もまあこんなもんでしょうといった感じが否めません。 時間つぶしになら悪くはないですが。 |
No.863 | 7点 | 捜査線上の夕映え 有栖川有栖 |
(2024/12/05 15:20登録) このところ有栖川氏の長編は不可能トリックが表に出るのではなく、トリックはあるにはあるがそれがメインのお話ではなくて、アリスと火村の掛け合いや人情あふれ展開と美しい描写が重きをなしているように思われます。 今回は瀬戸内海の孤島が実に美しく、そこに住む人たちもとても感じがよい。 いいなあ。こんなところでしばらくのんびりしたい。 さらに時々脇役で出てきているコマチ刑事が重要な役割を果たします。魅力的な人物です。 読後感がよい素敵な小説でした。 |
No.862 | 7点 | 日本扇の謎 有栖川有栖 |
(2024/11/24 15:47登録) 有栖川氏はトリックメーカーと評価されていることもあるようですが、ことに最近の作品ではお話の深みややさしさが加わってよい雰囲気が味わえます。 本作品でも密室のトリックはちょっと推理小説が好きな読者ならあまりに簡単というか使い古されたものなのですが、本作品は密室トリックがメインではなく、記憶消失や家庭の事情などが主となる謎です。これをどう解決していくかが見せどころなのです。 アリスが次の作品のためのトリックをいろいろ考えて、ダメトリックを没としている姿は、さすが推理作家といったところ。 はじめはちょっと緩いが、読んでいくとなかなか面白くて、読後感もよい。 |
No.861 | 6点 | あなたが殺したのは誰 まさきとしか |
(2024/11/12 19:12登録) 全く関係のないお話が最後にはきれいに一点に集中してくるといった、本格推理小説の基本からいえばよくできた小説お思います。 ただあまりに暗い。 この作家さんは力がある方と思いますが、私にとっては読んでいてこんな暗い、やりきれないお話を楽しむことはできそうにないです。 いわゆる社会派の小説であることは間違いなくこういった話を好まれる方はおられるとは思いますが、私はダメでした。 ただ小説としての出来は良いように思いましたので評価は私の読後感からすれば高くつけました。 |