呪殺島の殺人 呪殺島秘録シリーズ |
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作家 | 萩原麻里 |
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出版日 | 2020年05月 |
平均点 | 5.20点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 6点 | 虫暮部 | |
(2024/02/17 11:21登録) 色々勘繰って下さいと言わんばかりの設定。 私は、性別誤認トリックでは、と疑った。だって意識を回復した場面でこうだよ。 “部屋の中には僕だけじゃない。もう一人、女性がいたのだ” “僕” が女で、更に女性がもう一人、とも読めてしまう。古陶里の態度を見るに、読者だけに対する叙述トリックではなく、作中の同宿者に対しても実際に二人共謀して嘘を吐いているな、と。 また、監視カメラの映像の自分を見て、記憶喪失の語り手が “僕の顔” とスンナリ認識しているので、アレッ? と思った。 それ以前にシャワーを浴びたりしているから、自分の顔を知る機会はあったのだろうが、クッションとしてその場面を書いておいた方が良かったのでは。 それとも敢えて書かないことで、記憶喪失に対する疑惑を読者に抱かせようとしたのか。 |
No.4 | 5点 | ミステリ初心者 | |
(2023/12/13 19:21登録) ネタバレをしております。 読みやすい作品が読みたくなったなら、国内作品のクローズドサークルが安定ですね! ということで、この作品をチョイスしました。 さらに、呪術師の末裔の一族が住む島が舞台。獄門島みたいで、なんだかわくわくします。 と、サスペンス性やおどろおどろしいオカルト要素も挟みつつの作品かと思いきや、読んでみると案外普通のクローズドサークルなので拍子抜けしますw 旧家の雰囲気かとおもったら、近代的な洋風の屋敷(それもいいけどw)ですし、呪いがテーマなのに一族が不幸に死ぬ以外では呪いの要素はあまり出てきません。 最も雰囲気を軽くしているのは、主人公の存在です。主人公が密室内で死体と共に寝ていて、記憶を失っていて、手に凶器が握られている。主人公が犯人と疑われて糾弾される…という、サスペンスに活かされるような魅力ある展開でしたが、真白のキャラクターが漫画的すぎるというか、緊張感がないためサスペンス性を感じられなかったのは残念でしたw 後半では死者が多くなり、流石に緊張感が出てきましたが…。作者はライトノベル中心に活動されているようなので、こういう作品になったのでしょうね。 推理小説的要素について。 ややテンプレート感が強い作品でした。記憶を無くした主観人物の使い方も、密室も、真犯人も。私はすべてを推理できたわけではないのですが、まあなんとなくそうだろうなと思う展開が多かったです。 主人公が記憶をなくすと言えば、真っ先に思いつくのは人物が入れ替わっていることですよねw しかし、それを利用した読者に対する驚きはそれほど大きくなく、他作品のほうがドンデン返しにうまく使われているような気がします。 密室の謎も、いくつもの偶然が重なっておりますし、既視感の強いものでした。 また、私の苦手な、腹に一物ある嘘つきばかりな登場人物達が存在し、さらに殺人を犯した人間が多すぎますw こうなると、犯人当ては難しいものになりますねw 総じて、読みやすく本格の雰囲気が強い作品でした。裏表紙に書かれている"新感覚密室推理"というのはよくわかりませんでしたが、安定感があってよかったと思います。ところで、僕の名前って次回作で明かされるんですかね? |
No.3 | 5点 | nukkam | |
(2022/08/06 22:52登録) (ネタバレなしです) 時代小説や児童文学、ゲームシナリオなどを書いていた萩原真理(1976年生まれ)が2020年に発表した本書は新潮文庫版の裏表紙で「新感覚密室推理」と記載されていて私の好きな本格派推理小説のように思えますがタイトルが私の苦手なホラー小説のようでもあり、手を出すのをためらってましたが人並由真さんのご講評でコテコテの新本格派パズラーと評価されているのでほっとして読んでみました。主人公(語り手)が密室内で被害者の死体と一緒なのを発見された上に記憶喪失になっているという設定です。当然のごとく犯人扱いされますがこの主人公、記憶だけでなく危機感も喪失しているみたいでどこかのほほんとしています。そこが舞台背景とマッチしないと感じる読者もいるでしょうけど、犠牲者が増える後半はさすがに雰囲気が引き締まります。名探偵役のはずの三嶋古陶里が肝心の真相説明の場面で目立たなくなってしまうのが演出的に不満です。密室トリックが新感覚どころか古典的トリックだったのも期待外れでした(まあこれは作者よりも宣伝文句を書いた出版社の責でしょうけど)。 |
No.2 | 3点 | フェノーメノ | |
(2022/06/21 20:30登録) まず主人公の軽佻浮薄なキャラクターが最悪。せっかくの作品の雰囲気をぶち壊している。 所謂ライト文芸に属する作品なのでそういう“いかにも”な登場人物を出すこと自体はわかるが、しかしそれにしても軽すぎるし、おどろおどろしい舞台設定の作品でやることではない。 ミステリとしてもあまり感心しない。やたらめったら人が死ぬが、一つ一つの殺人にミステリ的な意味付けが乏しい。ただ話を盛り上げるために沢山死体を転がしているだけのように感じた。 長編ミステリにおいて殺人事件の数に拘る人が稀にいるが、個人的にそこはどうでもいい。沢山死体を転がすよりも、一つ一つの事件を丁寧に描いてほしい、と思うタイプなので。 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2022/06/21 05:33登録) (ネタバレなし) 穢れた呪術者の伝承が残る赤江島、別名「呪術島」。そこにある屋敷で目を覚ました僕は、断筆宣言した人気女流作家・赤江神楽(かぐら)の死体とともに密室の中にいたが、これまでの記憶を失っていた。果たして彼女を殺したのは自分なのか? 学友で民俗学研究家の女子・三嶋古陶里(ことり)の語る事件の真実とは? コテコテの新本格パズラー(連続殺人フーダニット)で、嵐の中の屋敷パターンのクローズド・サークルもの。文章は平易だが、級数が小さめの本文で360ページの紙幅はけっこう読みではあった。ミステリと関係なさそうな部分で描写が過剰すぎる印象もあるが、その中に伏線や手掛かりは散らばしてあるので文句は言えない。 手数は多い作品で作者の奮闘は十分に感じるが、その多くがどこかで見た読んだようなギミックであり、全体的に既存の新本格のパッチワークめいた感触が強い(ということで、その辺の「ドコカデヨンダヨウナ……」感が強い人には、厳しめの評価を食らうかもしれんな、コレ)。 なお昨年の暮れに三嶋古陶里が探偵役のシリーズ第二作『巫女島の殺人』が登場し、シリーズの公称は「呪殺島秘録シリーズ」と決まったようだが、そのタイトリングの仕方も、超メジャーな新本格の<あのシリーズ>に倣うもの。 (まあミステリ的なネタバレとはまったく思わないが、この辺はあんまり詳しく言わない方がいいかもね。) 評者はその第二作はまだ未読だが、たぶんシリーズを読む順番としては、絶対にこの第一作からの方がいいだろう。 前述のように新本格パズラーとしての新鮮味はあまりないのだけれど(二つ目の死体が登場するくだりは、ちょっと意表を突かれたか)、作者の奮闘は認めたい力作。『巫女島』も近々、読むでしょう。 評点は0.25点くらいオマケ。 |