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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2204件

プロフィール| 書評

No.2204 7点 スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章
麻根重次
(2026/03/27 14:43登録)
 表題作の真相はかねがね興味があった事柄なので、納得感が高くストンと腑に落ちた。
 その他の話も、大ネタよりも関係者の気持の交差のようなもので成り立っている感じが良い。有栖川有栖の地味なタイプの短編に通ずる。
 最後はあの後味の悪さのままでも良かった気がするけど……。
 探偵のキャラクターはさほど好きでもないが、程好く引き延ばすには好都合かも。

 ただ一点、気になるのが「セントラルドグマ」。
 あの暗号はなかなかフェアな代物で、多少の知識と閃きがあれば部外者でも解ける。そしてそれをユーザー達も自覚していたと思うのだ。
 つまり “もしメモが奴等の手に渡ったら、解かれてしまうかも知れない” ことも認識していた筈。その状況でメモを残すのは不自然。


No.2203 7点 アラビアの夜の種族
古川日出男
(2026/03/27 14:42登録)
 うーむ。正直、長くて疲れたとの思いは否めない。
 壮大な謀略小説、ではあるがストーリーとしては割と大味。伏線が回収されても即座にそれ自体が長大な流れに呑み込まれてしまう。
 “言葉の異才” 的スタンスでこの長尺に挑むには、文章力が未だ及ばなかったか。繰り返しが多く、“ポイントはそこじゃないだろ” と感じる部分もそれなりに散見される。
 しかし、それこそがコンセプトでもあり、物量に圧倒されつつも、濃密で快い時間ではあった。読了を目的としない方が良いのかも。
 巨竜の焼き肉が美味しそう。

 日本推理作家協会賞受賞。同時受賞が山田正紀『ミステリ・オペラ』……疲れる年だったんだな~。
 普段は聴きながら読んだりしないけど、BGM:キングレコードのワールド・ミュージック・ライブラリー『バグダッドのウード~琥珀色の夜』。


No.2202 6点 お稲荷さまの謎解き帖
朝水想
(2026/03/27 14:41登録)
 えっ、これを百人分やるの? デビュー作で随分ぶち上げるじゃないか(笑)。
 本作は謎解きを通じての神様の成長譚になっていて、その設定がベタなメッセージを上手く成立させるエクスキューズとして機能している。特に餃子の件にはグッと来てしまったね。

 ただ気になったのが、タイトルに反してファンタジー的豊饒さに乏しい文体。これでいいのか?
 読み進むうちに、これは語り手が神様で人間の心の機微が判らない故のぶっきらぼうさなのかな、とも思えて来た。
 でも、別の方向でも良いからもうちょっと何か味付けが欲しい。これではごく普通の、文体に無頓着なミステリみたいな文体じゃないか。


No.2201 6点 家族解散まで千キロメートル
浅倉秋成
(2026/03/27 14:41登録)
 単純に見えた案件にこんな裏が潜んでいたとは驚きだ。 
 一方で、家族観云々について、共感出来る部分は多いが、この物語の後半にあんなのを付け足さなくても良いのにと思った。
 “自分で気付かないと意味が無い” と言うのは多分に上からの意見で、自分も当事者なのに説明を拒むのは傲慢ではないか。


No.2200 6点 廃集落のY家
遠坂八重
(2026/03/27 14:39登録)
 キャラクター良しガジェット良し。普通に良く出来た、気持悪いホラー。

 ××市、N集落、大内村など、 固有名詞の表記の基準が謎。
 ××は、作中の世界では普通に名前があり、我々読者に対してのみ伏字になっているのだろう。
 ではN集落は。これも読者のみに対する伏字か。それとも、PCモニター上に “N集落” と表示されたり、発言者が “えぬしゅうらく” と発音したりしているのだろうか。当地に実際に赴く場面でも、一人称の地の文で “N集落” と書かれている。
 かと言って、“O村” とはなっておらず、固有名詞を一律で伏せているわけでもないようだ。
 タイトルもああだし。とても気になった。叙述トリックかと思った。


No.2199 9点 シュレディンガーの殺人者
市川哲也
(2026/03/19 15:20登録)
 成程そんな手で来るか、一回毎に事件の解像度が上がってこちらの理解も深まるので妙な効果があるぞ、と感心している隙を突いて反転に次ぐ反転、しかもこれだけやっておいて毎度毎度前回を凌ぎ、もういいよと思う余地が無かったのが何より凄い。
 部分的に似た旧作は幾つか思い付かぬことも無いが、仮に作者がそこから拝借したのだとしても、これだけ上手く組み合わせて新たな効果を生み出していれば立派なオリジナル設計に認定して良いだろう。大ネタは好きじゃないタイプのトリックなのにスンナリ吞み込めた自分にもビックリ。

 だが一点、大きな問題に気付いてしまった:
 西連寺は、何故自分が “覆面探偵” だと名乗ったのか? 相手はアレなのに。なにがしかの解釈は可能だが弱い。するとつまりは “覆面探偵なる存在を読者にプレゼンする為” というメタな理由にしか見えないのである。


No.2198 7点 毒殺倶楽部
松下麻理緒
(2026/03/19 15:20登録)
 若干ややこしいものの、然るべき範囲内に上手く収めている。会社の描写とかが紋切型だとは思ったが、そこには伏線と言う側面もあったか。最後に明らかになるアレには納得出来たのでまぁ良かった。

 ただ、ペンネームが作中とリンクしていて、新人故に可能な遊び心でいいねと嬉しくなったけれど、それが本当にちょっとした遊びに留まっているのが腑に落ちない。それをやるなら、作者名は “山下香織” であるべきでは?(逆か。視点人物の名を作者名に合わせるべきでは?)


No.2197 6点 この罪を消し去ってください
高谷再
(2026/03/19 15:19登録)
 名門女学園で姉の死の謎を追う話……かと思ったら甘かったそんなもんじゃなかった。雪玉式に事態は膨らみ何がどうなればこうまで踏み外すか、しかし妙にメロウな情感をあくまで保っているあたりタチが悪い。

 “荒くなる鼻息をどうにか押し殺す。それが、……報いになると信じて。” 嗚呼グッと来ちゃうね。バランスは悪いが爪痕は鋭い。


No.2196 5点 凶笑面
北森鴻
(2026/03/19 15:19登録)
 この手の、御約束として特定のジャンルの薀蓄が事件と絡む短編シリーズ、例えば『喰いタン』(寺沢大介)なんかは “良くこれだけネタが続いたものだ” と感心するのだが――本書は蘊蓄のサイズに比べて小説自体が短過ぎる。駆け足でつまみ食いしている印象を受けた。何が違うんだろう。“論争はあっても結論がない” 民俗学の特性か。


No.2195 5点 たったひとつの 浦川氏の事件簿
斎藤肇
(2026/03/19 15:18登録)
 一話目の “文章を深読みして裏の出来事を探し出す” 理屈の立て方がなかなか好みなので期待したんだけど、それ以降は……総体としてやりたいことは判らなくもないが、小説作品として面白いかと言うとあまり頷けない。凝った仕掛けを施すに当たっては、他方で伝わり易さにしっかり目配りする必要があったのではないか。


No.2194 8点 魔女の原罪
五十嵐律人
(2026/03/13 15:02登録)
 社会的思考実験小説? 新興宗教の作り方? 人々が集まったり、閉鎖的になったりする、その理由に説得力がある。主人公だけの特殊な立場が理詰めで成立しているのも良い。

 確認するよ。犯人は死体を隠し通す心算だった、血を抜いたのはあくまで念の為、しかしそのせいで却って血に注目されて真相を見抜かれてしまった。
 そういう滑稽さの指摘があっても良かった。あと “儀式” が時代錯誤な方向に流れて行ったことについても。それでこそ、そういう行動に邁進する不気味さが際立つ。社会派ホラー?


No.2193 5点 百窓の殺人
歌田年
(2026/03/13 15:01登録)
 “百窓” は全然記憶に無いな~。“特殊な建物” と来れば或る種の期待をしてしまうがそれについては今一つ。
 途中で一人あんな死に方をするのは、ミステリ的には余計なエピソードなのでは。
 殺された某の立場は、“過去の事件の関係者” なのか、“金で雇われた協力者” なのか。
 記述者が余計なことをして事態が悪化するのは面白い。“安全圏の傍観者” ではないところが。

 '90年代の諸々に関する解説口調を考慮すれば、この話は “後年になって記述者が思い出を綴っている” ものだと思われるが、その設定はあまり生かされていない。どころか、曖昧なラストからすると、“後年” の時点で未だ決着が付いていないようだ。それとも、あの最後の疑問点を追及するシリーズが続くのだろうか。


No.2192 5点 ダークゾーン
貴志祐介
(2026/03/13 15:01登録)
 バトル描写が物凄く面白いと言うわけではない。回を重ねるごとに読者にはルールが判って解像度が上がるので楽しめる部分は増える、にしても八局は多い。雑誌連載時には、一局ごとにバラしてスロー・ペースで読めたから、まだ飽きなかったかも知れない。

 どうしても裏技を考えちゃうんだけど、味方を殺したらどうなるのだろう。交戦前にまず同士討ちをするとレヴェル上げが出来る? または、致命傷を食らった際に、絶命する前に自殺したら。傷が治った上で持ち駒として自軍に戻れる?


No.2191 6点 桜花忍法帖 バジリスク新章
山田正紀
(2026/03/13 15:00登録)
 『甲賀忍法帖』(山田風太郎)を原案とする漫画『バジリスク~甲賀忍法帖~』(せがわまさき)を原案とする小説で、後に漫画化もされている。
 かなり『甲賀忍法帖』そのまま、と言うのは褒め言葉なのか何なのか。正紀は本作に限らず、アクション描写の語法を風太郎から多く学んだのかも知れない。
 一推しキャラはのらりくらりとした参謀(エンジニア?)の根来転寝、なんだけど、原典の某を思わせる “体が動かなくなる病が進行中の忍び” と言う設定は漫画向き。文章では状況が今一つ摑みづらい嫌いがあった。


No.2190 8点 甲賀忍法帖
山田風太郎
(2026/03/13 15:00登録)
 吃驚人間博覧会。皆さん色々な特技をお持ちですね。痰がどうとか息がどうとか。あなたは? えっ死なない身体。では試しにちょっと死んでいただきましょう。
 技能者を鍛え上げるのも大変だろうに、紙切れのように使い捨てられ散る定め。こういう死合いは大駒同士で潰し合っちゃって勿体無い。と言う点が、声高に訴えなくても争うことの虚しさを自ずと語っている。
 後半、一般人の横紙破りがストーリーテリング的には効いていて、異能の忍びよりそれを使役する権力者の欲望が怖いね。


No.2189 6点 かめ探偵K
北野勇作
(2026/03/06 15:22登録)
 最重要エピソードは “パン屋で耳を買う” くだりではないだろうか。パンはやっぱり耳だよね。あそこから直接は話が広がらず残念なんだけど、アレがアリだからバラバラ事件もアリ、と考えると実は伏線になっているのである。因みに私、バラバラ事件のトリックは一瞬で見抜いたと言うかあんな感じかな~と連想したのであった。


No.2188 6点 ノウイットオール  あなただけが知っている
森バジル
(2026/03/06 15:22登録)
 一編ごとに多少ジャンルが変わっても、作風としては一貫している。あの程度のリンクは “気が利いているね” と言う程度。連作の主題ではなく、オマケ。
 真ん中にドン、ではなく器用さをアピールしている感じが若干しゃらくさい。良く出来てはいるけれども。


No.2187 6点 消える魔術師の冒険
エラリイ・クイーン
(2026/03/06 15:21登録)
 「見えない足跡の冒険」はスッキリしないな。真相が推理の通りならば、犯人はアリバイ(と言うか “自分は母屋から出ていない” 証明)を用意する必要があった。
 但し、密室であり、自殺や事故ではない状況だから、どうせ何かトリックが必須。アリバイがあってもトリックの一環と疑われて、犯人も安全圏にはいられないかも。
 そもそもコレは、他者に邪魔されずに殺す為のトリックであって、密室は寧ろ犯人にとって不都合。雪が無ければ外部犯の可能性も考えられたのに。
 ――と言った、犯人の狙いと現実との齟齬をもっと強調した方が良いと思う。
 「赤い箱と緑の箱の冒険」。色盲がネタだと、“色盲について作者は適切に理解しているか” が気になってストーリーが頭に入って来ない。


No.2186 6点 犯罪コーポレーションの冒険
エラリイ・クイーン
(2026/03/06 15:21登録)
 全体的なレヴェルは高い。エラリーの知名度のせいで隠密捜査が上手く行かないエピソードが複数あって苦笑。EQにとっては重要な要素だよね。
 しかし「一歩足の男の冒険」。それでロジック全体が駄目になるわけではないが、ミスをしている。杖は基本的に健康な足の側に突くのだ。
 さて問題は表題作。これは失敗でしょ。真相があんななら、まずギャング達が現場に遭遇している筈。


No.2185 4点 聯愁殺
西澤保彦
(2026/03/06 15:20登録)
 読み終えて明らかになった事件全体の構図は見事で唸らされたが、一方で作者はミスをしており、とても勿体無い。

 カムフラージュとしての連続殺人とは、例えば【①遺産目当て】で殺したい相手がいる場合、本当の動機を隠す為に【②誕生日が同じ人】を数人殺して紛れ込ませる(②は捜査陣に判るように提示する)、みたいなものだろう。
 しかし本作。①と②が重なっている。自ら正解を示しているのである。
 確かに、犯人の “被害者に対する悪意” は既に知られてしまっているので、疑われるのは避けられない。でもだからと言ってわざわざあの投稿に注目させるのは犯人の心情として納得しがたい。偽りのミッシング・リンクは別ジャンルにしないと、カムフラージュにならないではないか。“犯人は馬鹿であった” と解釈するしかないなぁ。

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