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ミステリの祭典

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変な絵

作家 雨穴
出版日2022年10月
平均点6.50点
書評数6人

No.6 6点 ミステリ初心者
(2024/05/25 23:53登録)
ネタバレをしております。また、ほんの少しだけですが、変な家にも触れております。

 変な家が大変読みやすい作品だったため、変な絵を続けて読みました! 期待通り、変な絵も読みやすかったです。2日で読めてしまいました!!
 タイトルの通り、絵に関する連作短編です。大きく3章に分かれて絵が提示され、そこから小さな違和感などから隠された秘密などが徐々に明らかになっていきます。絵はこまめに表示されるので、読者はページを巻き戻す必要がなく、変な家と同じく非常に読みやすいものでした。
 また、やや小粒ながらアリバイトリックもあり、叙述トリック的な仕掛けもあり、より推理小説の色合いが濃くなっております。

 以下、難癖部分
 第一章は非常に個性的でしたが、第二章、三章は部分的には既視感がありました。第二章は叙述トリック的な仕掛け、第三章はアリバイトリック部分がよく見る感じでした。私はわからなかったので恐縮ですがw ただ、全体的に良くまとまっていると思います。
 また、最初の絵が直美のものだとして、文鳥を守るために他者を攻撃することもするというのを暗示しているとしても、急に人が変わったように由紀を殺してしまう行動をしているのはちょっとわかりませんでしたw
 変な家では、会話文章には発言している人物の名前が表記されている戯曲のようなスタイルで読みやすかったのですが、今作では普通の小説のスタイルになりました。でもまあ、これで評価を下げることはしませんがw

 総じて、変な家よりもより推理小説的要素を盛り込んだ作品になっています。しかし、圧倒的な読みやすさは損なわれておらず、文章を書くのがうまい方だと思います。

No.5 7点 sophia
(2024/04/12 22:37登録)
前作「変な家」は一つのエピソードに継ぎ足しを重ねて長編にした感じがありましたが、今作は最初から最後まで計算して構築された作品になっており、小説らしさが格段に向上しています。無駄な登場人物が全くおらず、使い捨てのように思われた人物を含め全員がリンクして真相を紡ぎ出していく様は圧巻。欲を言えば、文章を練ることでもっと小説らしくすることもできそうなのですが、基本的にYouTubeが活躍の場の方にそれを求めるのも違うのかなあと思います。くどいほど随所に図を挿入するところからしても読み易さ、分かり易さを重視しているのは明らかでありますし。今作ぐらいの塩梅がベストなのでしょう。それにしても殺害シーンが・・・怖い

No.4 7点 まさむね
(2024/01/10 21:57登録)
 すみません。売れていることは当然に把握していたのですが、「自分好みの作品ではないのだろうなぁ…」と勝手に思い込み、これまで手にしてきませんでした。思い込みって良くないね。損するね。反省しています。
 全体を俯瞰すると、しっかりと練られた構造。何となく予測しやすそうなのだけれど、作者の術中に嵌るところもあって、個人的には十分に満足できる内容でしたね。作中のブログを実際に閲覧できるのも一興。一方、複数の局面で「絵」を噛ませた必然性が高いとは言い難く、特段「絵」縛りに拘らずとも、内容自体で勝負できたような気もします。勿論、効果もあると思うのだけれど。
 前作「変な家」も読んでみようかな。

No.3 7点 人並由真
(2022/12/14 15:30登録)
(ネタバレなし)
 心理学者の萩尾登美子は、教え子たちに数枚の絵を見せる。それらは、ある犯罪を為した女子の描いた絵であった。そこから読み取れる、絵を描いたものの心象とそのときの状況とは?

 前作『変な家』は未読。登場人物が共通する広義のシリーズものということは、今回、実際に読んで初めて知った。

 半ば(というか3分の1~4分の1くらい?)キワモノであろうかと予期して読んだが、いやいや、全くの良い意味でフツーの新本格。
 パーツとして見ればネタの数々はどこかで見たような感じのものが大半だが、それをかなりテクニカルに使いこなしている歯応えで、なかなか面白かった。
 作者はちゃんとミステリのセンスと素養がある方だと思う。

 とはいえ、「絵」の比重は思ったより大きくはなかった感じ。文生さんのおっしゃることも理解できる。
 ただ評者などは、あまり見ないギミックのミステリ(87分署の諸作とか「捜査ファイル」シリーズとかあるが)なので、単純にひさびさに、改めて新鮮で楽しめた。

 全体としては、メルカトルさんのおっしゃるように良作。逆貼りの評価狙いの方も含めて、もっと色んな皆さんに読んでいただきたい?

No.2 5点 文生
(2022/11/27 14:38登録)
さまざな絵に秘められたメッセージを解き明かしていくという趣向は興味深いものの、謎解きはどうとでも解釈できる恣意的なものが多い気がしていまひとつ魅力を感じられず。特に、山の絵はメッセージがひねくれすぎていますし、あの状況で悠長に絵など描けるだろうか?と思ってしまいます。個人的にはやはり、推理の対象を一枚の間取り図だけに絞り、畳みかける推理で否応なく納得させてしまうYouTube版『変な家』の方が好み。とはいえ、二転三転の末に歪な真相が明らかになる物語自体はそれなりに面白かったです。

No.1 7点 メルカトル
(2022/11/25 22:25登録)
ホラー作家兼YouTuberである雨穴氏による、自身初となる11万字書き下ろし「長編小説」!
タイトルは『変な絵』。
見れば見るほど、何かがおかしい? とあるブログに投稿された『風に立つ女の絵』、消えた男児が描いた『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、山奥で見つかった遺体が残した『震えた線で描かれた山並みの絵』……。
いったい、彼らは何を伝えたかったのか――。9枚の奇妙な絵に秘められた衝撃の真実とは!?
その謎が解けたとき、すべての事件が一つに繋がる!
今、最も注目を集めるホラー作家が描く、戦慄のスケッチ・ミステリー!
※前作『変な家』の“キーマン”栗原も登場!
※購入者「全員特典」として、雨穴による第一章「風に立つ女の絵」オモコワ朗読動画(1時間)つき!
Amazon内容紹介より。

みなさん、この作品を色眼鏡で見てませんか?良くないですよ、そういうの。取り敢えず先入観無しで読んでみて頂きたい珍品だと思います。意外と本格で結構複雑な話です。嫌と言うほど親切に太字や傍点、かぎ括弧、歪み文字、それにプラスしてタイトル通り絵や表が散りばめられており、時系列のバラけた順序と相俟って、余計に全体像を複雑にしてしまっている印象を受けました。

しかし、もう一度読み直せば多分色々納得出来る面が出てくる気がします。流石に絵を使ったトリックは成程と思わせるだけのものを持っています。前作の事は知りませんが、Amazonなどでこれだけ多くのレビューがある事自体、本作の持つ引力の様なものを感じます。まあ、『変な家』で一気にブレイクした作者の二作目ともなれば当然とも言えるでしょうけどね。兎に角読んでみないと何も分からないって事ですね。普通に面白かったですよ。

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