メルカトルさんの登録情報 | |
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平均点:6.04点 | 書評数:1871件 |
No.1871 | 7点 | 幻の彼女 酒本歩 |
(2025/04/02 22:46登録) ドッグシッターの風太に、元カノ・美咲の訃報が届く。まだ32歳なのにと驚く風太。ほかの別れた恋人、蘭、エミリのことも思い出し連絡を取ろうとするが、三人はまるで存在しなかったかのように、一切の痕跡が消えてしまっていた……。心が揺さぶられる「21世紀本格」の新機軸‼ Amazon内容紹介より。 第11回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作品。終盤までとその後の落差が凄いです。最後の二段オチも成程と深く頷かないではいられません。ただ、主人公風太の元カノ三人の影が薄いというか、あまり印象に残らない感は否めません。その辺りは島田荘司の選評にあるように、意地の悪いミステリマニアにとっては枚数的に物足りなさを感じるのではないかとの危惧を覚えますね。 かく言う私もその一人で、特に前半はもっとサスペンスを効かせても良かったのではないかと思いました。余りにも不可思議な出来事の筈なのに、それを読者にアピールし切れているかと問われると否と答えるしかありません。そこをもう少し工夫すれば更なる傑作に仕上がったと思います。 それでも、前半からは考えられない展開には眩暈がする思いでした。意外過ぎる結末とエピローグの美しさが心に残ります。 |
No.1870 | 7点 | 千年のフーダニット 麻根重次 |
(2025/03/31 22:51登録) 若くして妻を喪い失意に沈むクランは、人類初の冷凍睡眠(コールドスリープ)実験に参加する。さまざまな事情を抱えた男女7名は「テグミネ」という殻状の装置で永きにわたる眠りについた。 ――そして、1000年後。目覚めたクランたちはテグミネのなかでミイラと化した仲間の他殺体を発見する。犯人は誰なのか。施設内を調査する彼らが発見したのは、さらなる“顔のない死体”で―― Amazon内容紹介より。 外枠はSF、格となる部分は本格ミステリと言った感じです。特殊設定ミステリの亜種とも言えるでしょう。難クセを付ける訳ではありませんが、そんな描写要りますか?と思えるシーンも散見されます。その割には冒頭の強烈な謎に対するアプローチがあまり描かれていないのが残念です。 最後に提示される真相に関しては文句なしです。ここだけ切り取れば完全な本格ミステリでなるほどと納得が行きます。かなり強引なところもありますが。 文体は硬質であまり面白味がなく、言ってしまえば冗長ではあります。ただアイディアは非常に優れたものがあり、デビュー作も読みたいと思わせるだけのものは持っていますね。もう少し垢抜ければ人気作家になれる素材でしょう。 |
No.1869 | 7点 | サーカスから来た執達吏 夕木春央 |
(2025/03/27 22:26登録) 密室から忽然と消失した財宝の謎。 14年前の真実が明かされる 怒涛の30ページに目が離せない。 『方舟』で注目される作家・夕木春央の本質がここにある! Amazon内容紹介より。 何か面白いミステリはないかと家の中を探索していたら、意外にも本書が見つかりました。単行本の古書ですが、買った記憶がなかったので、ん?となりました。『方舟』が刊行される前だったのだと思いますが、多分私の琴線に触れる何かがあったのでしょう。 最初は何となく堅苦しい感じがして、これは自分の苦手なタイプのやつかもと案じましたが、ユリ子が登場してからトーンが何段階も明るくなり一気に読み易くなり一安心しました。当然ユリ子には主役級の活躍を期待して、それが叶ったので内心喜びが膨らみます。彼女の魅力なくして本作は語れません。文字の読めない彼女が、暗号が絡む事件をどう捌くのかと思っていたら、暗号に関してはもう一人のヒロインである鞠子が頭を捻って解決に導きます。 単純に見えた一連の事件がこんなにも拗れたものだったとは思いも寄りませんでした。私にとってちょっとややこしく感じ頭を悩ませたのが、各華族の関係性で、己の読解力の無さが悔やまれます。 |
No.1868 | 7点 | 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック 鴨崎暖炉 |
(2025/03/23 22:37登録) 日本有数の富豪にしてミステリーマニア・大富ケ原蒼大依が開催する、孤島での『密室トリックゲーム』に招待された高校生の葛白香澄は、 変人揃いの参加者たちともに本物の密室殺人事件に巻き込まれてしまう。 そこには偶然、密室黄金時代の端緒を開いた事件の被告と、元裁判官も居合わせていた。 果たして彼らは、繰り返される不可能犯罪の謎を解き明かし、生きて島を出ることができるのか!? Amazon内容紹介より。 最後まで評点で迷いましたが、エピローグで意表を突かれたので7点としました。最初に断っておきますが、前半に誤字脱字が五ヵ所ほど見られます。周知の事実を承知の事実とか、面白い趣向を面白い嗜好とか。まあそんな些事はどうでも良いです。私は前作を読んでいませんが、本作は密室のハウダニットに特化した、とことん密室に拘った特異な本格ミステリです。そのトリックの数々は多岐に亘り、リアリティを無視した、しかし一応論理的には可能かもしれないと思われるものが多く、よくこんな事を考え出したなと素直に感心しました。 今言える事は取り敢えずシリーズ一作目に遡って読むしかないなという事です。いきなり二作目から読んではいけなかったとは思いませんが、やはり順序は守ったほうがベターである事に間違いないでしょう。 しかしなあ、動機が余りにも弱いのが気になるところではあります。真犯人にも意外性はありませんし。とにかくどこまでも密室トリックに淫した愛好家には最適のミステリだと思います。本当に実行したらとんでもない事になりそうなものも含まれていますが。犯人バレバレ(笑)。 |
No.1867 | 7点 | 感応グラン=ギニョル 空木春宵 |
(2025/03/19 22:10登録) 昭和初期、浅草六区の片隅の芝居小屋。ここでは夜ごと、少女たちによる残酷劇が演じられていた。ある日、完璧な美貌を持つ新入りがやってくる。本来、ここにそんな少女は存在してはいけないはずなのに。彼女の秘密が明らかになるとき、〈復讐〉が始まる。退廃と奇想、呪縛と変容。唯一無二の世界を築き上げる創元SF短編賞出身の鬼才、空木春宵のデビュー作品集がついに文庫化! Amazon内容紹介より。 一読後、これは異形の文学だと思いました。誰でもない独自の世界を構築しながらも、それをエンターテインメントへと昇華している手腕は注目すべきものがあります。最初の表題作の冒頭から惹き込まれました。何かが始まる予感に期待が膨らみます。万人受けするとはとても思えませんが、一部のマニアには熱狂的な支持を受ける気がします。 耽美、残酷、空想、奇形など仄暗い要素が満載で、ある種大正から昭和初期にかけての空気感が漂いますが、ミステリ的な仕掛けがそれすらも凌駕してしまいます。無論ミステリではなくファンタジーですが、個人的にはとても面白く読めました。ただ慣れない漢字の使い方にはやや手古摺りましたが、一読の価値はあると思いました。と言うか、二度くらい読まないと完全に咀嚼し切れない作品集かも知れないと感じました。 |
No.1866 | 6点 | 江神二郎の洞察 有栖川有栖 |
(2025/03/15 22:29登録) 英都大学に入学したばかりの一九八八年四月、ある人とぶつかって落ちた一冊――中井英夫『虚無への供物』――が、僕、有栖川有栖の英都大学推理小説研究会(EMC)への入部のきっかけだった。アリス最初の事件ともいうべき「瑠璃荘事件」、著者デビュー短編「やけた線路の上の死体」、アリスと江神の大晦日の一夜を活写した「除夜を歩く」など、全九編を収録。昭和から平成へという時代の転換期を背景に、アリスの入学からマリアのEMC入部まで、個性的なEMCメンバーたちとの一年を瑞々しく描いたファン必携の短編集、待望の文庫化。 Amazon内容紹介より。 有栖川有栖。初期の頃から結構読んでいる方だと思いますが、文章が堅実なのは良い事ではあります。しかしそれに従って面白みに欠けるのが私にとっては物足りないところです。それでも数々の名作傑作を物したのは流石だと思います。 本作品集の中で唯一掌編の『ハードロック・ラバーズ・オンリー』が個人的に最も印象深く、出来としてはトップです。これこそ「江神二郎の洞察」に相応しい作品だと、これだけでも読んで良かったと思えました。そして次点として書下ろしの『除夜を歩く』を挙げたいですね。英都大学推理小説研究部のメンバーであり本格愛好家の望月の書いた作中作が意外にも伏線がキッチリ回収されて面白く、江神とアリスの本格論議が作者自身の想いと重なって胸に残りました。 上記二編クラスが並べばもっと高得点も吝かではありませんでした。それでも全体として水準以上の作品ばかりで、唯一イマイチだった『二十世紀的誘拐』以外は十分楽しめました。江神二郎最初の事件やアリス入部の経緯、マリアの初登場などが描かれており、ファン必読の書ではないでしょうか。 |
No.1865 | 6点 | 蜘蛛の糸は必ず切れる 諸星大二郎 |
(2025/03/11 22:14登録) 「伝説の漫画家」の小説集ふたたび! 「妖怪ハンター」「マッドメン」など、独特の作品世界をもつあの諸星大二郎の小説集! 「船を待つ」「同窓会の夜」など、諸星ワールドを堪能できる4編収録。 Amazon内容紹介より。 超異色な問題作ばかりの短編集。 いずれも終始不穏な空気が漂った様な酩酊感を伴う、独自のワールドを構築しています。一話目の『船を待つ』が最もミステリに近い作風で、終わってみればこの作品が一番印象に残った気がします。ただオチが弱かったのが気になります。それは他の作品に関しても言える事で、曖昧であやふやな、ハッキリしない終わり方なので好みの別れるところだと思います。 漫画家でこれだけ書けるのは十分合格点でしょうね。漫画をそのまま文章にした様な感じではありますが、文体自体はそれ程クセの強さは感じません。ただ少々くどいというか、同じような描写が続いたりするのはあります。ストーリーの変遷という点ではあまり期待できません。 |
No.1864 | 6点 | 今日のハチミツ、あしたの私 寺地はるな |
(2025/03/08 22:28登録) 蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる──。 「明日なんて来なければいい」と思っていた中学生のころ、 碧は見知らぬ女の人から小さな蜂蜜の瓶をもらった。 それから十六年、三十歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園の手伝いを始めることに。 頼りない恋人の安西、養蜂家の黒江とその娘の朝花、 スナックのママをしているあざみさん…… さまざまな人と出会う、かけがえのない日々。 心ふるえる長篇小説。 Amazon内容紹介より。 正直、冒頭のエピソードを読んだ時感動しました。その後も読み易く、個性の強い人物が次々と登場し、とても楽しめました。それぞれの人物像も鮮やかに描かれておりいささか感心しました。この作者は読者を作品の中に引っ張り込む術を、本能的に分っているのではないかと思い、天賦の才能に感じ入りました。 本作は文芸作品ですが、適度に刺激的で、短い中にも中身がギュッと詰まった充実の秀作だと思います。主人公の碧の恋の相手である安西に、何故そこまで惹かれるのか疑問ですが、男女の中というのはそういうものなのかも知れません。駄目な男とどういう訳か離れられない女心までは想像するしかありませんけれど、この作品のテーマはそればかりではありませんので、問題ありません。何故なら知らぬうちに碧に感情移入してしまう様に出来ているからです。その時に力強く、時に優しい描写力や文章力に打ちのめされた私なのでした。 |
No.1863 | 4点 | お・り・が・み 林トモアキ |
(2025/03/05 22:05登録) 身に覚えのない借金30億を背負った女子高生・鈴蘭。彼女を救ったのは悪の組織「魔殺商会」。世のため悪のため、組織の手先となって戦う鈴蘭だったが、彼女こそが世界を開く扉「ヘヴンズゲート」の鍵だったのだ! Amazon内容紹介より。 期待外れでした。いくらラノベと言っても文章に覇気というか気合が感じられないのは困ったものです。要するに表現力が欠如している様に思われてなりません。キャラもイマイチ立っていないし、バトルも中途半端と言うよりほとんど描かれていません。 大体魔殺商会と敵対する神殿協会の因縁がギリギリまで描かれていないのは不親切だと思います。 最終盤になって漸くおっと思えるシーンがありましたが、それも一瞬で終わり憤懣が蓄積してなんだかなあという気分が止まりません。文体がヌルいせいか、己の集中力の無さのせいか、終始気が散ってあれこれ関係ない事を頭に浮かべながら読まざるを得ませんでしたね。これはいけませんよ、面白いとか面白くない以前の問題です。ラノベなら何でも許されると思ったら大間違いですからね。 |
No.1862 | 5点 | 天才遺体修復人M 葉月香 |
(2025/03/02 22:20登録) どんな遺体もまるで生きているかのように復元できる天才遺体修復人『M』。彼はこの世ならざる光を見、死者の言葉を聞き取るという。が、ある理由で資格を剥奪された。それでも依頼は途切れることはない――。専門学校で葬儀学を専攻する葉山ケイトは、事故死した父がMの施術を受けたことがきっかけで彼を探し始める。百合の花を目印に出会ったふたりを待つ運命は……。この生の先にあるものは何なのか――読めば必ず涙する! 切なくも美しい感動作。 Amazon内容紹介より。 可もなく不可もなし。しかし、甘いだけのラブ・ストーリーではありません。悲恋の物語と言っても良いでしょう。 遺体修復人、所謂エンバーマーと呼ばれる、どちらかと言うと日陰の仕事に従事するマリエルと助手を買って出たケイトが仕事を通じて、友好を温めていくのだが・・・。 奇跡を起こしたかのようなマリエルの仕事ぶりはなかなかに鬼気迫るものがあり、迫力が伝わってきます。同時に助手として腕を磨いていくケイトの心情も透明感を伴いながら描かれていきます。読んでいて飽きることはありませんが、心に突き刺さるものがイマイチ足りないのが残念です。単なる良い話で終わってしまい、もっと異形の色を出して欲しかった気がします。まあ暇潰しにはなりますけどね。 |
No.1861 | 7点 | アイアムハウス 由野寿和 |
(2025/02/27 22:18登録) 世界遺産・藤湖のまわりを囲むようにそびえ立つ、静謐な佇まいの十燈荘。 晩秋、秋吉一家がそれぞれの“趣味”にまつわる形で惨殺され、息子・春樹だけが一命を取り留めた。 静岡県警の深瀬が捜査を進めると、住民たちの微妙な距離感、土地独特のルールが浮かび上がる。 そして実は深瀬は、16年前の「十燈荘妊婦連続殺人事件」にも関わっていて――。 犯人は一体誰か。なぜ秋吉家が犠牲となったのか。春樹だけが生き残った意味とは。 結末に驚愕必至のミステリー傑作。 Amazon内容紹介より。 力作だと思います。まず勘違いしてならないのは、十燈荘とは建物の名前ではなく土地の名前である事です。それはすぐ判明するので良いでしょう。 物語はいきなり凄惨な猟奇殺人現場から始まります。そして死神と呼ばれる孤高の刑事深瀬と、その相棒の良識的な笹井が地道な捜査を開始します。その道中で登場する容疑者たちは誰も彼も怪しげで、誰と誰が関係しているのかも容易に掴むことが出来ず、じりじりした焦燥を誘います。 それ程長くないのに、ちょっと詰め込み過ぎではないかとの、若干の不安はあります。もう少し長尺にして容疑者候補の人物像を掘り下げるとかがあっても良かった気がします。出来ればメモをしながら読み進めるか、一気読みするかどちらかを選択するべきかも知れません。 真相が明らかになるにつれて、過去の妊婦連続殺人事件や深瀬の身に何があったのかなど、様々な要素が繋がって来てある種のカタルシスが生まれます。ラストも素晴らしく、読後感も最高です。 |
No.1860 | 7点 | 世界でいちばん透きとおった物語2 杉井光 |
(2025/02/24 22:01登録) 累計50万部突破の超話題作「セカスキ」待望の続編。新人小説家・燈真と博覧強記の編集者・霧子さんのバディが、ある小説の遺稿に秘められた"想い”を解き明かすビブリオ・ミステリ。 Amazon内容紹介より。 体裁は本格ミステリですが、本質は日常の謎ではないかと私は思ったりしています。前作の超絶技巧は当然ながら見られませんが、これもまたなかなかの出来です。連載されていた、中途で遺稿となった小説を巡る謎を主人公で小説家の燈真と編集者の霧子が協力して、その行方を模索していく物語。 その道程である切なすぎる作家の死が浮き彫りにされたのには、何とも言えない世の中の不条理さを目の当たりにしました。余りにも残酷な運命に声が出ません。そんな中で見せる伏線の回収はお見事と言えるでしょう。本命の仕掛けには触れませんが、作者の新たな一面を伺わせる構成には流石に舌を巻きました。しかし、身勝手な希望ですが燈真はもう少しミステリを勉強してもらいたいものです。それを霧子がカバー出来ればもっと面白くなるのになあと、無いものねだりをしたくなる私でした。 |
No.1859 | 6点 | 宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー アンソロジー(国内編集者) |
(2025/02/21 22:51登録) 読書家にして麻雀にも造詣の深いことで知られる宮内悠介が、今いちばん読みたいテーマで、いちばん読みたい作家たちに「お願い」して、ヒリヒリするようなアンソロジーができました。危険と背中合わせの愉楽を、お楽しみください。 Amazon内容紹介より。 正に玉石混交。博奕特有のひり付く雰囲気を真正面から描いたのは、山田正紀の『開城賭博』、聞いたこともない作家星野智幸の『小相撲』、冲方丁の『死争の譜』くらいで、あとは技巧に走って真っ当な博奕小説とは言えません。特につまらなかったのが藤井太洋の『それなんこ?』。これは間違いなく駄作で、時間の無駄です。また軒上泊の『人間ごっこ』はどこが博打なの?といった感じの文芸作品でした。 期待の法月綸太郎は発想は面白いけれど、イマイチ捻りが効いていないのが残念でした。まあ読み易かったので良しとしますか。最も異色だったのが、狂ったような世界観が物珍しい漫画家日高トモキチが描いた『レオノーラの卵』。これはなかなかの拾い物でオチが良いです。 結果ツートップと言えるのは山田正紀と星野智幸でした。どちらも甲乙付けがたい、一方は開城を賭けたチンチロリン、一方は己の運命を女相撲に賭けての白熱ぶりを見せてくれています。 |
No.1858 | 5点 | 奇岩館の殺人 高野結史 |
(2025/02/18 22:19登録) 孤島に立ついびつな形の洋館・奇岩館に連れてこられた日雇い労働者の青年・佐藤。到着後、ミステリーの古典になぞらえた猟奇殺人が次々起こる。 それは「探偵」役のために催された、実際に殺人が行われる推理ゲーム、「リアル・マーダー・ミステリー」だった。 佐藤は自分が殺される前に「探偵」の正体を突き止め、ゲームを終わらせようと奔走するが……。 密室。見立て殺人。クローズド・サークル――ミステリーの常識が覆る! Amazon内容紹介より。 そもそも本格ミステリはそういうもんじゃないだろう、という気がしますが?ほとんどの謎が最初から明らかにされ続けて、一体佐藤は何を探ろうとしているのかすらよく分かりません。犯人の正体なのか、探偵役なのか。 運営側と役者側の両サイドから描かれているのが、異色とは言えるかも知れません。有りそうでなかった仕掛けで目新しいのでしょうか。 謎めいた殺人事件やトリックが解明されるカタルシスが最初から否定されているのが、私にはどうにも納得が行きませんでした。別に読者への挑戦状など要らないのではないかと思いますね。途中から、ああこの作品はこういうタイプのやつなんだと割り切って読みましたが、どうしてもそれ程面白いとは思えませんでした。謎解きが好きな私にはちょっと興醒めでしたね。 |
No.1857 | 7点 | 久遠の檻 天久鷹央の事件カルテ 知念実希人 |
(2025/02/16 22:35登録) 楯石希津奈。十五年以上前にアイドルとして活動していた少女が、当時とまったく同じ外見で現れた。患者の姿に驚いた精神科部長の墨田淳子は、統括診断部の天久鷹央に診察を依頼する。だが、その矢先、父親によって希津奈は連れ去られてしまい……。ミイラ化した遺体。自殺からの復活。不老不死は実在するのか? 現役医師が描く医療ミステリー! Amazon内容紹介より。 第一作から随分遠のいてしまいましたが、これは間違いなく力作だと思います。相変わらずの天久鷹央の傍若無人ぶりには、そうそうこれこれ、と思わず納得してしまいました。久しぶりの再会に知らず笑みが浮かんでしまいました。 本作では摩訶不思議な現象を扱っており、果たして医学で不老不死をどう解釈し真実を突き止めるのかが焦点となります。 真相解明には医療の専門知識が必要な為、全面的に一般読者が謎を解く事はどう考えても難しいですが、それでもどこまでも齟齬のない完璧で圧巻の解決編には成程と深く肯かざるを得ません。これぞ最先端を行く医療ミステリだと感心しました。そして短く纏められた涙を誘うエピローグには安堵感と希望が生まれ、素晴らしい余韻を残す締めくくりだったと思います。 |
No.1856 | 3点 | ミミズクと夜の王 紅玉いづき |
(2025/02/12 22:16登録) 伝説は、夜の森と共に――。完全版が紡ぐ新しい始まり。 魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。願いはたった、一つだけ。「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」 死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。全ての始まりは、美しい月夜だった。それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。 Amazon内容紹介より。 訥々と語られる、ミミズクという名の少し頭の足りない少女と四肢の効かない王子や聖騎士らの物語。あまりに稚拙な文章の為読み難い事この上ありません。そして諸々のディテールが全く書き込まれていないので、頭に情景がほぼ浮かんできません。これが世に名高い名作なのかと驚きを隠せませんでした。電撃大賞を受賞したらしいですが、俄かに信じられない出来の悪さです。というか、単に相性が悪かったのかも知れませんが。 解説の有川浩は本作を読んで泣いたと書いていますが、どういう感性をしていたら泣けるのか理解に苦しみます。 はっきり言って、少し想像力があれば誰でも書けるようなストーリーです。何の捻りもなく、平坦で一向に盛り上がらない、見せ場のない作品だと個人的には感じました。余りの期待外れにラノベが嫌いになりそうです。 |
No.1855 | 5点 | 狂乱家族日記 拾参さつめ 日日日 |
(2025/02/10 22:22登録) 乱命、銀夏、千花三人の「恋」の行方は!? 不解宮の「正義」に反旗を翻した"不死の鬼"黄桜乱命が、大日本帝国の悪を結集して作り上げた巨大カジノ「正夢カジノ」。そこで行われた支配者決定賭博「極悪ギャンプル☆第七天獄」で敗北した乱命は、凶華の肉体=破壊神SYGNUSSを拉致し、次なる計画「鬼ヶ島計画」を発動する。悪党たちの楽園と化した正夢カジノ改め「鬼ヶ島」を舞台にさらなる狂乱が続く! 『狂乱家族日記』新エピソード「裏社会編」後編! まだまだ目が離せない!馬鹿馬鹿しくも温かい愛と絆と狂乱の物語! Amazon内容紹介より。 またしても一年以上間が空いてしまいました。前作を思い出しながら読みましたが、いつの間にか凶華がサッカーボールになっていたのには、そんなエピソードあったかなあと首を捻らざるを得ません。まあそんな事はどうでも良くて、本作は余りにもスケールが大きすぎて、それに筆が追い付いていない感が否めませんでした。新旧含めてキャラが多すぎ、こいつは誰だったのか?みたいな事が起こり過ぎです。 今回は凶華の出番が少なかったので、イマイチ面白みに欠ける印象が強かったですね。狂乱家族がばらけると一致団結感が無くなるので、そこも評価を下げる要因となってしまいました。強いて言えば銀夏のオカマらしからぬ男気が垣間見れたのが救いでした。実質主役級の活躍でしたし、これまでクセの強い他のキャラの陰に隠れて目立たなかっただけに、何となく全体の均衡がとれた感じがして良かったと思います。 |
No.1854 | 7点 | カンブリア 邪眼の章 河合莞爾 |
(2025/02/06 22:25登録) 三鷹の賃貸住宅で若い女性が死亡した。当初は急性心臓死と思われたが、尾島警部補と相棒の閑谷巡査は過去にも同じ部屋で女性の突然死があったことを突き止める。だが怪しいと踏んだ大家・水田をいくら調べても、証拠は出てこない。感じたことのない奇妙な感覚を覚える中、尾島はこの事件の鍵を握る青年と出会い……。 Amazon内容紹介より。 以前も他の作品で書きましたが、この作者はリーダビリティに非常に優れており、今回も一部の隙もなく一切の無駄がない文章は見事としか言いようがありません。丁度良い緊迫感を持って物語は進み、登場人物のそれぞれが個性的で人間も確りと描かれています。 密室も出て来ますが、本格ミステリとは違いますので、トリック云々という話になると残念ながら期待は禁物です。それでも面白いのは、正義感に溢れる刑事達の姿に胸を打たれるからです。最初から最後まで存分に楽しむことが出来ました。 法律で有罪とすることの難しい案件を扱っています。ですから、それじゃ何でもアリじゃんと云った意見も理解出来ますが、本作に於いては其処に眼目が置かれている訳ではないので、その辺り許容できない方は読んでも物足りないかも知れません。特に本格志向が高いほどその傾向は強くなると思いますので、ご注意下さい。それでも私は本書が嫌いになれません、私は好きですね。 |
No.1853 | 5点 | 自殺サークル 山下定 |
(2025/02/02 22:20登録) 2002年に公開された園子温監督の映画『自殺サークル』のノベライズ作品。 いきなりショッキングなシーンで始まる本作は、登場人物が異常に多く次々と自殺事件が起こります。更にはその背後関係に絡む人物やアイドル等がいて、混沌としているのに加えて、ノンストップで進行する為、それらを追うのに必死でなかなか全容を掴ませてもらえません。その裏には何故人々は自殺に走るのかという謎が横たわっていて、これも真相が見えて来ません。どちらかと言うと淡々とした文体で、退屈はしませんが、心に突き刺さるものが不足している感じがしました。 物語が終わっても終わった気がしないのは、やはり良くない事でしょう。これで一件落着してスッキリという訳にはいきません。これと云ったメッセージ性があるでもなく、起こった事象を只々追い掛けました、みたいな印象は最後まで拭えませんでした。 |
No.1852 | 2点 | イデアの再臨 五条紀夫 |
(2025/01/30 22:13登録) 朝起きたら、壁に四角い穴が空いていた。あるべきものがない? これって……世界から■が消えている!? 誰も異変に気がつかない。混乱する僕に突然、金髪の同級生が告げる。「ここは、小説の中の世界。俺たちは登場人物だ」……次々と消されていく言葉、混沌を極める世界で、僕たちは犯人の正体を突き止められるのか!? 紙の本ならではのギミックが炸裂する究極のメタ学園ミステリー、爆誕。 Amazon内容紹介より。 そもそもこの作者はメタの概念を履き違えているとしか思えない、1ミリも面白さが感じられないメタミステリの駄作。実験的な作品を目指したものと考えられますが、それが成功しているとはとても思えない、単なる色物的な何かに落ちてしまっています。別に紙の本じゃなくても再現可能です。 登場人物に魅力がなく、人間らしさも感じられません。主人公に感情移入も出来ず、一体何を読まされているのか、何がしたいのかが理解不能です。ぶっ飛んだ設定が好きな私ですが、流石にこれは許容範囲を大きく超えています。何事もやり過ぎは良くないってことでしょうかね。全然笑えません。いや本当にに笑い事ではなく、全くの時間の無駄でした。まあ反対意見も訊いてみたい気もしますが、誰も読まないと思いますので何ともアレなんですが。 |