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ミステリの祭典

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白夜行

作家 東野圭吾
出版日1999年08月
平均点7.93点
書評数121人

No.121 10点 ぴぃち
(2024/08/20 20:56登録)
幼い頃にある事件の渦中にいた雪穂と亮司の、その後の20年が断章のように綴られる。しかし彼らを直接描くのではなく、他の人物の事件や物語の背後に彼らの存在を匂わせるだ。
彼らの周囲を綿密に描くことによって、彼らの輪郭が浮かび上がる。人物も事件の顛末も、直接書かないことで逆に大きなインパクトがある。

No.120 7点 みりん
(2024/07/08 23:12登録)
膨大な数の登場人物と多様な事件により、物語は複雑に展開していくが、芯となるプロットは一本道。まさに「白夜行」 物語は終始湿度が高く薄暗いノワールサスペンスであり、どちらかというと「極夜行」では?と疑問を抱く。とある人物から「白夜行」というタイトルの意味が語られたとき、突如東野圭吾に最近読んだ宮部みゆきが宿ったように感じた(笑)
あらゆるベクトルに無限散乱した物語は、十九年の時を経て、一つの物悲しい真実に収束する。
読了後の余韻が強烈であり、もう少し贅肉が削ぎ落とされていたらさらに高評価でした。やはり凄いな東野圭吾。

No.119 10点 zuso
(2024/04/15 22:20登録)
十九年前の事件が発端で、その頃小学生だった人物に、ずっと付きまとう事件の影が、ある周到さをもって次第に実態を現してくる。そして多様な登場人物が、それぞれに鎖状に絡まり、ほつれ合い最後には犯人へと繋がる。
そこまでの過程が、映画のカットバックのように経過していく。その時の流れが、タイトルの「白夜行」と調和しており素晴らしい。

No.118 7点 蟷螂の斧
(2024/01/18 15:54登録)
全体の流れが悪いと感じました。その原因は連作短編を長篇に書き直したことにあるようです。事前の寄せ集めの情報から、二人の逃避行の物語と勝手にイメージしていましたが全然違いましたね(笑)。余計なエピソードが多く全体がぼやけてしまった印象です。もっと短ければ9点献上できたと思います。二人の心理描写を描かないことが特徴なのかな?。刑事がいい味を出していました。

No.117 10点 ぷちレコード
(2023/12/13 21:49登録)
出足こそ質屋殺しを刑事たちが追う警察小説風だが、だんだんと青春小説の趣になっていく。事件の関係者、つまり質屋の息子と自殺を図った女性の娘が事件の影響を受けて、どんな生活を歩んだかをなんと二十年に渡って追跡し、同時に二十年前の事件の謎を解いていく。
物語の時間は先へ先へと進みながら、逆に関係者たちはひたすら過去に向かい探索の道を探り、徐々に夜とも昼ともつかぬ白夜を歩まざるを得なかった男と女の絶望的な孤独を、痛ましいトラウマを通して描き切る。
警察小説、青春小説、サスペンス、暗黒小説の魅力が渾然一体となった一大叙事詩の傑作。

No.116 7点 ALFA
(2023/02/23 08:19登録)
事件発生からエンディングまで、約20年の歳月をたどる重厚なクライムノベル。
(以下ネタバレします)



動機や犯人二人の関係性などの謎解き要素もあるが、本質は「けものみち」や「火車」に通じる犯罪小説だろう。
あまり得意ではない心理描写を省き、たとえと出来事だけで二人の関係を暗示するのがいい。

老刑事の迫力とくたびれ加減がいい味を出している。終盤、かつては容疑者の一人だった居酒屋の女将との会話の中から、事件の輪郭が浮かび上がってくるのが印象的。

エピソードが多すぎてそれぞれが必ずしも着地していないこと。トイレットペーパーの買いだめなど、各時代のトピックが多すぎてわざとらしいことを減点してこの評価。

No.115 9点 猫サーカス
(2021/03/30 17:54登録)
一九七三年、大阪の近鉄布施駅近くにある七階建ての空きビルで男の死体が発見されるところから始まる。それから二十年、時間の流れとともに新しい場所と新しい人間が次々と登場し、そこに過去の登場人物たちがまた現れ、奥行きを広げていく。この事件の真相を解明に退職してもなお執念を燃やす刑事が、真犯人を突き止めるというストーリー。目まぐるしく移り変わる時代に、それぞれの季節を生きようとする者と、それを拒否してモノクロームの夜を生きるしかない者がいる。彼らが二十年に渡ってつくり、壊していく人間関係の中に、現代人が心の中に押し込めている孤独感や愛憎のかたち、虚無を浮かび上がらせていく社会派ミステリである。現世は極楽と思えば極楽、地獄と思えば地獄。モノクロームの冬に花を咲かせようと白夜を行く者の哀切さは、時代の陰に張り付いた虚無を実感させる。

No.114 8点 じきる
(2020/08/30 16:07登録)
800ページ越えながら読者を飽きさせない抜群の面白さ。
意図的に主役2人の描写をぼかす手法もミステリアスで私は好きです。

No.113 8点 雪の日
(2020/04/15 15:20登録)
重く悲しい物語

No.112 6点
(2018/10/31 23:03登録)
悲しい物語と思う。
その影響は長く続いた。

No.111 6点 レッドキング
(2018/05/23 14:11登録)
ミステリでない物としてならばとても面白い。
ミステリとしてはそれほどは面白くない。
「絡新婦の理」とかと同じだ。

No.110 5点 ねここねこ男爵
(2017/10/13 22:34登録)
面白いけど、長い。
長さが苦痛にならないのはさすがの力量だけど、長い。
正確に言うと、こんだけ長いならもうちょっと具体的に書いても良い部分があるでしょうというのと、後半になると各エピソードの流れとオチが推測できるようになってしまうのがキツい。「最初は警戒→でもすぐ色仕掛けで陥落」がバレバレなので…。あるときは色仕掛け、あるときは破綻への工作みたいに仕掛けのバリエーションを期待してはいけないのだろうか。
オチはああするしかないとは思うけど、あっさり。

No.109 10点 MS1960
(2016/08/06 17:36登録)
途中でほぼ事件の全体構造や主要人物二人の関係性が見え、結末的にも、いわゆるどんでん返し(意外な犯人、意外なトリック)といったものはない。にもかかわらず、中盤以降、読み進めれば読み進めるほど「更に読み進めたい」と思わせる魅力を持つ作品。ラストで少女がサンタクロースから切りえのトナカイをもらったことを話す部分では鳥肌がたってしまった。間違いなく、傑作。ササヅカ元刑事がいい味を出している。

No.108 8点 パメル
(2016/05/28 11:39登録)
主人公二人の関係性がこの物語の最大のポイント
二人が絡むシーンは描かれていないし心理描写もほとんど無し
読者に想像させるという手法を使っている
秘密の共有と幼い頃の体験が関係性のカギを握っている
歪んだ愛情を持つ男と心を失った女のこの世を生き抜こうとした哀しい物語
読後感は悪いが分厚い本でありながら捲るページが止まらない
夢中になって読んだ一冊

No.107 7点 tider-tiger
(2016/05/27 01:57登録)
いくつかの短編が昭和史をなぞるように並べられ、二人の人物がそれらに関与していることによって最終的に一本の線となる。この構成は面白い。
二人の関与をもう少しぼかした方が良かったかもしれないなとは思った。種明かしが早過ぎるし、わかりやす過ぎる。
800頁を越える大作だが、相変わらずのリーダビリティで、さらに構造としては短編の積み重ねといった趣なので中だるみは感じられず、最後まで面白く読めた。
最重要人物二名の内面描写を排し、彼らの会話は皆無、接触を示すようなエピソードさえほとんど存在しない。スタート地点が示されるだけで、その後どのように絆が育まれていったのかは一切書かれず、絆によって生まれた彼らの行動のみが書かれる。この試みも興味深かった。この試みが成功しているかと問われると、残念ながらという気もした。雪穂は怖ろしい女だと作中人物から何度も口に出されるなどせっかくの試みを殺してしまうような拙さは頂けない。間接的に描く道を採ったのだから、やはりここは遠回しに感じさせて欲しい。ただ、作品自体はこの試みで面白くなった。
わからないことがあまりにも多いので想像で補うしかない。
亮司が雪穂にあれほど尽くしたことは納得できる。
読後感は良くないが、ラストも納得できる。
亮司は雪穂を愛していたのか。私はNoの可能性もあると思っている。
雪穂は上昇志向の強い女なのか。これもNoの可能性があると思う。
二人の間に絆など本当にあったのか。こんな想像したくもないことまで想像させられた。いずれにしても容疑者Xよりこちらの方がよっぽど献身の物語だと感じた。
ちなみに本作で私がもっとも共感を寄せたキャラは菅原絵里だった。

No.106 10点 斎藤警部
(2016/04/12 05:50登録)
こないにオモロい小説、無いで。。。。。。。。 ジョーが燃え尽き飛雄馬は去るも清張新作まだまだ出る、既に第四次の中東戦争、ジャイアンツ九連覇も長嶋不振、そないな時代、皆の心に何かが起こる予感ですって。。準主役級、重要脇役群多数登場し丁寧に印象深く書き分けられるが、主役の二人だけ一切の直接心理描写を棄てた徹底ハードボイルド文体で描かれる為まるで奥行きある切り絵細工の様に明らかに他から浮かび上がって(時に奥まって)見える、彼らが何を話し合い、お互いをどう思っているのか、一切触れられず。。 苦笑を噛み殺す、か。。泣き声を受け「0から9に変更」やて。。! 桐原はなかなか面白い奴だ、圭吾さんはこういうのが好きなんだろうね、なんて序盤は呑気に構えていたもの。。 主要登場人物(のベアまたは三人以上)が次々に入れ替わるエピソード繋ぎのタペストリーはよく出来たDJセットにも通じる小気味良さだ(元々は連作短篇集だってんだから!)。気付かないうちミステリの毒素にじわじわやられて行く仕組みだナ。 悪知恵実行はピカイチでもいざと言う対人振る舞いは最低のバカが登場、まさかそれすらも故意なのか。。 読後、いや読了ちょぃ前から目に入るもの九割方がこの物語のアナロジーと映って仕方無かった。大阪の刑事が東京風煮込みのうまさを認めるシーン、沁みたねえ。お次は納豆の天ぷらと来た!山手線田町駅近くの大阪風串揚げ屋でも納豆包み串揚げやっとったな。ぐいっと来た台詞「私は誰の敵でもありませんよ。」

セブンイレブン日本上陸一号店、ゲームプログラムにも著作権が必要や、聖子ちゃんカット似おぅとるよ、阪神優勝の年の大阪の物語、バブルか。。 終盤に至るにつれ 時の流れが等比級数ばりに加速しやがる(この長さの小説でやられるとエネルギーの大きさも甚大だ、クソ!)。昔の事件捜査経緯をつらつら語るセミ半七捕物趣向の部分もまた良し。。そして終結部(と言っても全体が長いだけに長い!)で濃縮あらわに本格推理海域へと舵を切る。サムシングってやつがキラキラだ。。これは東野圭吾が松本清張の域に突入した作品ではないのか。「砂のなんとか」を彷彿とさせられずにいらりょうか?だが清張の裏を張って(いや、これは書かないでおこう)。残りページがか細くなっても結末予想が全く落ち着かないこの泡立ち感こそ清張マナーへのオマージュそのものか?そのくせ行方知れずの嫌な予感ドミノ倒しは一部の隙も無いんだぜ?最終ラウンドで初めて顔を見せたまさかのチョイ役がやっぱり、まさかの鍵を握る動きを見せるのか!?あまりにも意外な人物って誰や誰や!!これぁもはや、体感的に大河ドラマやないかーーー(墜落)

悲劇ながらもあっさり済ませたラストはね、いかにも「小説は終わっても登場人物の生活は終わらない(死んだ者を除いて)」という大事なことに意識を向かせるかの様でね、良いと思いますよ。推理クイズもどきの消失トリックを挿んで来るのさえ、哀しい結末と相俟って絶妙な道具遣いになっているしね。 雪穂さん、これからが本番やね。

No.105 7点 風桜青紫
(2016/01/18 00:54登録)
『砂の器』と『白昼の死角』を足し合わせたような作品だが、完成度はこの二作品を上回っているのではないかと感じた。桐原と雪穂の関係を当人たちの口から語らせないことで、むしろその結び付きが強固になっている。簡単に口で表せるものじゃないからこそ品位があるのよね。桐原も雪穂も作品が進むにつれどんどんグゥの音もでないような悪党になっていくんだけど、二人の成長を幼少期から見れている分、「なんて悪いやつなんだ!」ってな腹立しさより、「どうしてあなたは変わってしまったの……」というような物悲しさが生まれてくる。理想的な悪党小説の形を東野圭吾は絶妙なアイデア力で成し遂げたといえるでしょう。不感症(?)の桐原が死体に出しちゃってるあたり、桐原→雪穂は間違いないのだろうけど、逆はどうなんだろうか(笑)。

No.104 5点 ボナンザ
(2015/10/04 10:18登録)
確かに周辺人物の描写は良くできている。
その一方であまりにも主人公二人の描写が不十分で、桐原がなぜあそこまで献身的だったのかわからない。
最終章くらいはその描写を残すべきではなかったか。

No.103 8点 E-BANKER
(2015/01/25 15:43登録)
1,100冊目の書評は東野圭吾の一大傑作とも言えるこの作品で。
文庫版で800頁超という分量であるが、それを感じさせない圧倒的なリーダビリティと目眩く展開。
すでに地上波ドラマ&映画化もされた名作。

~1973年、大阪の廃墟ビルでひとりの質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂・・・暗い眼をした少年と並外れて美しい少女は、その後まったく別々の道を歩んでいく。ふたりの周囲に見え隠れする幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「確証」はない。そして十九年・・・。息詰まる精緻な構成と叙情詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く傑作長編ミステリー!~

うーん。久し振りに時間を忘れて読み耽ってしまった。
それだけ「面白かった」ということだろう。

ふたりの周りで起こる事件の数々・・・明言こそされないが、すべてふたりが引き起こし、特に雪穂は、その才覚と美貌で成功への階段をのし上がっていく。
亮司はともかく、雪穂の心中は決して作中では明らかにされない。
あくまでも第三者を通して、雪穂という人物が描かれるというスタイルが貫かれる。
でも分かるのだ! 読者は「雪穂」という女性がどれほど恐ろしい人間であるかを! しかもジワジワと・・・

紹介文にもあるが、亮司と雪穂はまさしく「心を失った人間」として描かれている。
そして、読者は多くの関係者の証言や遭遇する事件を通じて、徐々にふたりの動機、更には「心を闇」を知ることになる。
巻末解説では、ノワール小説の第一人者(?)である馳星周氏が「人間の心の暗い側面、邪な断面を描くのが(ノワール小説だ)」と書かれているが、これほどに深淵としてダークな人間の内面を描いている作品は初めてかもしれない。
(しかも繰り返すが、雪穂本人の内面描写は一切なし、というのがスゴイところ)

確かに、本作のプロットそのものは決して目新しいものではないのかもしれない。
(こういう作品を書いてみたいという作家は多そうな気がするのだが・・・)
ただ、作品としての構成力、そして読者を引き込む圧倒的なリーダビリティはやはり「東野圭吾」だと唸らされた。
並の作家ではこうはいかないに違いない。
未読の方は是非ご一読していただければと思う。それほどのパワーと魅力を備えた作品。
(ラストはあれでよかったのだろう。でも後日譚が是非読みたい気はするよなぁー)

No.102 7点 初老人
(2014/04/16 02:03登録)
ネタバレあります。


凶器の点から真犯人にたどり着くことはそれほど難しい事でないし、雪穂と被害者の間に何があったか察する事も可能だが、その事だけを持ってこの作品の価値を落とすような事にはならず、主人公ふたりの外からの描写により、存在感が増している。




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