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ミステリの祭典

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ALFAさんの登録情報
平均点:6.63点 書評数:265件

プロフィール| 書評

No.265 7点 神の光
北山猛邦
(2026/08/15 08:41登録)
建物消失という魅力的なテーマによる5つの短編集。
それぞれに色合いが違っていて楽しい。

「一九四一年のモーゼル」と「神の光」が好み。ベタなロジックながら時代背景を織り込んだ物語性がいい。
「藤色の鶴」と「シンクロニシティ・セレナーデ」は洗練されたファンタジーとして読みごたえがあるが、ファンタジーなら何が消えてもおかしくはないからなあ・・・
「未完成月光 Unfinished moonshine」はポオで始まって三津田で閉じるunfinishedな印象。


No.264 7点 楽園
夕木春央
(2026/08/10 06:18登録)
最新作。これから読む人も多いだろうから慎重に・・・

またしてもクローズドサークルか!! と驚くが、読み終わってみると「方舟」「十戒」と三部作を成してぃることに納得。作者の企みの深さに脱帽!

WHOは絞りやすいが、HOWとWHYを探るサスペンスと割りきれば楽しめる。
禍々しくも深い愛は今度こそ成就するのか?
三作の時系列を考えると答えは明らか。


No.263 4点 熱海伊豆山殺人事件
島田一男
(2026/08/03 08:42登録)
熱海を舞台に記者、熱海署、新宿署のメンバーが入り乱れての軽ハードボイルドミステリー。
島田一流の掛け合いは楽しいし、景気よく連続殺人が起きるが、動機はお座なりでミステリーとしての満足感は薄い。


No.262 5点 その灯を消すな
島田一男
(2026/08/03 06:41登録)
因習に満ちた平家村、個性豊かな三姉妹。
ちょいワル系の南郷弁護士と地元の石橋刑事との掛け合いが楽しい。

動機を因習に依ったことで犯人像が拡散してしまったのがミステリーとしての弱さか。


No.261 7点 上を見るな
島田一男
(2026/07/31 08:34登録)
田舎の旧家、莫大な資産、復員してきた相続人たち・・・
いずれも横溝正史の代表作と被るが持ち味はまるで違う。片やホラー風味のエンタメ大作、一方こちらは軽快なハードボイルドタッチ。テンポのいい展開に軽妙な会話。
プロットは複雑なわりにラフだが十分に楽しめる。

以下微妙なネタバレ

アリバイトリックに使われる交通手段は某有名作と同じだが、ここではヒト捻り工夫があってとても有効。一方かの有名作では何の工夫もなく作品の瑕疵になっている。
島田一男が某作品を参考に修正を加えたのかと思いきや、こちらの方が発表は2年早かった。
昭和の大物ライバル同士、ここは島田の勝ち。

プロットのラフさを達者な文体が補って楽しいから少しオマケ。


No.260 7点 去来氏曰く
島田一男
(2026/07/27 07:35登録)
昭和の夏のミステリーを令和の猛暑日に読む。
開け放した窓から暑い風が吹き込む法廷、じわじわと汗の吹き出る弁護士事務所。冷房完備はデパートか銀座の喫茶店くらい・・・
昭和の夏といえば爽やかな朝のラジオ体操やスイカ割りというのは「三丁目の夕日」的ファンタジーだった。
島田らしい絶妙の情景描写と軽ハードボイルド調の会話が楽しい。

密室殺人を含む三つの事件を丁寧に組み合わせた本格ミステリーだが、その複雑な構成が無理筋とも感じられる。なにより黒幕のキャラがベタすぎ。
随所に見られるセクハラ、パワハラワードは令和コードではアウトだろうがまあご愛敬か。
「昭和ミステリー」として楽しめるのがいい。


No.259 6点 ビブリア古書堂の事件手帖5
三上延
(2026/05/25 08:58登録)
日常の謎以上、犯罪未満。
古書をキーにした謎解きはマニアにはたまらない。
お気に入りは「彷書月刊」。続く「断章」での捻りが効いている。
いずれもシンネリした物語なので、好みはわかれるだろう。


No.258 7点 エイレングラフ弁護士の事件簿
ローレンス・ブロック
(2026/04/15 09:50登録)
まずはキャラクターの勝利だろう。小柄で極めつけのダンディ弁護士。
各編ごとに丁寧にファッションコーディネイトが描かれていてイメージするのが楽しい。
ポワロをさらにファンシーにした凝りようだから、これで法廷に立ったら浮いてしまうだろう。まあ滅多に立たないからいいか・・・
ワンパターンにならないよう12編それぞれに巧みにヴァリエーションがついている。
お気に入りは第一話「エイレングラフの弁護」。究極のブラックな手法・・・のような曖昧な結末がいい。勝負ネクタイの謂われもブラック。
本格の作法であれこれ言わずに、作者の軽妙な語り口を楽しむのが吉。


No.257 7点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2026/03/28 09:17登録)
ラノベ風のタイトルに似合わぬ作り込まれた本格ミステリ。
メインとなる叙述の仕掛けにも心地よく騙される。
キャラ造形も楽しい。なかでも怪しげな霊媒師の正体が愉快。
残念なのは・・・(ネタバレします)


メインの殺しの動機が弱くトリックも場当たりすぎること。三つ目の殺しのほうが動機もトリックもはるかに本格してるのがアンバランス。
芳醇な物語がミステリ部分の弱さを補って読みごたえは十分。。


No.256 8点 世界でいちばん透きとおった物語2
杉井光
(2026/03/23 08:44登録)
ケレン味たっぷりの仕掛けが楽しい前作に比べるとぐっと本格味。作中作の扱いが秀逸。
前作の主人公がミステリ作家デビューを果たし、切れ者女性編集者と組んで探偵役に。さてはこのまま二代目有栖か。

グロ殺人とバイオレンスは作中作が受持って、本編はダークにならない謎解きで後味はいい。
構成の妙を評価して一点オマケ。


No.255 7点 変な家2〜11の間取り図〜
雨穴
(2026/02/06 08:04登録)
社会現象ともいえる一連の作品だが、内容そのものは少しも「変」ではない。
家の平面図が謎解きのキーになる結構重厚なミステリー。一見、連作短編風だが完結しないトピックもあるので本質は長編。

解決編はダミーからの反転ではなく、さらにジャンプしてのエンディングで満足感はある。
19世紀的な小説作法で緋倉家のクロニクルとして仕立てたら、それはそれで読みごたえのあるミステリーになっただろう。



No.254 7点 闇の歯車
藤沢周平
(2026/02/05 08:17登録)
一度も失敗したことのない押し込み強盗の親玉と、集められたワケあり素人の4人。
なにやら近年のトクリュウを思わせる設定だが書かれたのは昭和。時代を先取りした藤沢周平の着想がすごい。
小気味のいいカットバックやセリフ回しで4人それぞれのの物語が展開する。

親玉と4人各々にビターエンドとハッピーエンドが用意されていて読後感はいい。
楽しい時代物ハードボイルド。


No.253 7点 用心棒日月抄 凶刃
藤沢周平
(2026/01/31 09:12登録)
シリーズ第4作にして完結編。
1~3作が書かれたのは1980年前後。初期の暗い作風から一転、快活なストーリーで一躍人気作家に。
そして本作は約10年の間をおいての発表。作中では20年近い歳月が流れ、イケメン用心棒青江も今や下腹のせり出しを気にする40代半ばの重職藩士。
今回は休職する同僚の代役で半年の江戸赴任。軽い役目のはずが別の密命を帯びることに・・・

愛着のある初期のヒットシリーズに、円熟期の作者が決着をつけた格好となる。巧みなカットバックや地の文から続くセリフなど、藤沢周平らしい職人芸が楽しめる。ミステリー度も結構高い。
懐かしい脇役たち、用心棒仲間の細谷、口入れ屋の相模屋、そして因縁浅からぬ佐知それぞれが収まるべきところに収まって、まさにグランドファイナル。


No.252 7点 用心棒日月抄
藤沢周平
(2026/01/25 08:00登録)
藤沢周平は中高年男性にファンが多いという。さもあろう、作中の武士達はナリこそ二本差しだが心情は宮仕えのサラリーマンそのもの。実際、藩に仕える武士は企業戦士と重なるところが多かったんだろう。
ワケあって脱藩し、腕に覚えの剣で用心棒稼業となった主人公青江も例外ではない。
剣を交える場面こそ劇画並みの強烈さだが、本人はアウトローからはほど遠いイケメンで一本気な青年。そこそこ世慣れて、長屋の住人や派遣先を紹介する口入屋との距離感も絶妙。現代ならゴミ出しもちゃんとしただろう。

連作短編形式だがその本質は長編。有名な史実を巧みに織り込んだ快作エンタメ時代小説である。
サスペンス風味だが謎解きは余りないので評点は控えめに。


No.251 6点 暗殺の年輪
藤沢周平
(2026/01/15 10:17登録)
デビュー作「溟い海」、直木賞作「暗殺の年輪」を含む初期の5編。
謎解き1編、剣豪もの1編、サスペンス3編。

印象に残るのは、葛飾北斎晩年のうねるような情念を巧みな構成で描いた「溟い海」と、情感豊かなサスペンス「囮」。
後年のしみじみとした雰囲気とはひと味違うノワールな味わいがいい。
いずれも直木賞候補になっている。


No.250 6点 秘太刀馬の骨
藤沢周平
(2026/01/14 08:16登録)
北国の藩で筆頭家老が暗殺された。太刀筋は秘太刀とされる「馬の骨」。
六年後、この秘太刀の遣い手の探索を命じられた半十郎と銀次郎は、剣豪一人一人と立ち会うことに・・・
やがて大きな陰謀が立ち現れる。

秘太刀の探索と大きな陰謀との繋がりが今一つすっきりしないが、冒険活劇としては多いに楽しめる。


No.249 7点 華に影 令嬢は帝都に謎を追う
永井紗耶子
(2026/01/10 07:51登録)
W受賞の「木挽町のあだ討ち」は江戸の芝居小屋、こちらは明治の華族社会。どちらもちゃんと考証してあるのだろうが、江戸に比べてどうにも嘘臭く感じてしまうのはなぜか。
そもそも実際の華族制度なるものが西洋の物真似で、たかだか80年程度の仮想みたいなものだったからか。旧華族で異議のある方はご容赦!

被害者は維新の功労者で、政界の大立物かつ嫌われ者の黒塚伯爵。自ら主催するパーティーの最中に毒殺される。
探偵役は、被害者と因縁のある華族の令嬢千武斗輝子とイケメン書生の影森怜司。

丁寧に伏線が仕掛けてあるから推理する楽しみは十分。ダミーの答は簡単だが真相は難易度が高い。大どんでん返しや大団円ではなく、なるほどね・・・といったエンディング。
出来のいいパズラーなので、わざとらしい舞台設定を呑み込んでしまえば十分楽しめる。

なお被害者黒塚伯爵には実在のモデルがある。酒乱で妻を切り殺したと噂のある黒田清隆でのちに総理大臣になった。


No.248 7点 半七捕物帳 巻の三
岡本綺堂
(2026/01/09 08:32登録)
本格色の強い第二巻に比べるとバラエティ豊か。各話の冒頭では、聞き手と半七とのやりとりを通して江戸から明治への移り変わりが味わえる。

お気に入りは「旅絵師」。無個性に扱われがちなお庭番(隠密)がここでは確かなキャラクターで描かれている。絵師に化けたお庭番と秘密を持つ豪商との緊迫感のある取引は長編のような読み応え。
「雷獣と蛇」はベタな怪談が付け足されているのが違和感。出来もさほどとは思えない。「雪達磨」と「熊の死骸」では、「雪だるまの中の死体」「大火事で人々と逃げ惑う熊」など、ネタはとても面白いのに謎解き部分が半七の長い説明だけでいささか興ざめ。
それにしても捕物帳に外国人が出てくるとは思わなかった。ちょっと間抜けな不良イギリス人ロイドが加担する「異人の首」はなかなか笑える。
チョイ役のくせになぜかタイトルロールの片眼の悪ガキ「一つ目小僧」も愉快。

なかなか変化に富んだ楽しい短編集。


No.247 9点 三屋清左衛門残日録
藤沢周平
(2026/01/06 08:02登録)
時代ミステリーの名作にもかかわらずこれまで書評がないのは、作者が人情時代小説の大家と見られているせいか。
15話からなる連作短編形式だが、その本質は長編。
主人公は藩の重職「用人」を辞して家督を譲った三屋清左衛門。楽隠居のはずが絶妙な立場を見込んで様々な相談事が持ち込まれる。
慎重な扱いを要する事件や因縁話を探るうちに不穏な気配が見えかくれし、やがて藩の存続を揺るがす凶々しい企みが明らかに・・・
相棒は幼なじみで現役の町奉行、佐伯熊太。「静」の清左衛門、「動」の熊太の名コンビ。
北国の季節の移り変わり、老いの心情、複雑な謎解きが端正な楷書のような文体で綴られる。

藤沢周平は、ミステリーのお約束である読者向けの謎解きが少なく人情話が多いからピュアなミステリーファンには敬遠されそうだが、この作品はバランスがいい。

何度かドラマ化されているが、初老の仲代達也が懐かしい。濃い芸で佐伯熊太を演じた財津一郎もはまり役。


No.246 7点 半七捕物帳 巻の二
岡本綺堂
(2025/12/31 10:47登録)
江戸末期に活躍した岡っ引、半七の昔語りを明治の新聞記者が書き留めるという趣向。
所々に時代の移り変わりが顔を覗かせるのも面白い。。

第一巻はミステリーから奇譚までバラエティ豊かで玉石混淆でもあったが、この第二巻は本格推理の粒ぞろい。怪異や怪奇に始まって合理的な解決に至る謎解きが楽しい。
なかでもお気に入りは「狐と僧」。住職の正体は狐?の怪異に始まって、きわめて散文的かつ社会派風味の結末となる。
ただ、精緻に入り組んだ謎に対して構成は単調。聞き込みと勘が頼りの捜査だから解決部分はほとんど半七の説明調になってしまうのが残念。
森村誠一の理屈っぽい解説は興ざめ。

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