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ミステリの祭典

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流れ星と遊んだころ

作家 連城三紀彦
出版日2003年05月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点 みりん
(2024/03/30 22:41登録)
同著者『ため息の時間』『カイン』と同様にBLを含む複雑な三角関係がテーマの物語。乱歩といいミステリ作家はBL好き多め(?)
結局誰が誰を好きなのか、その矢印が中盤以降ごちゃごちゃになり、恋愛小説としてクドイ。あと後期の作品であるからか、情景描写がほとんどない(その代わりに謎の比喩表現が多い笑)。
不自然な叙述で気になって読み進めていくと、待ってましたよコレ!という感じではありますが、長編を支えるには少し物足りずsophiaさんと同意見です。

No.3 6点 sophia
(2021/09/21 19:32登録)
復刊を機に読んでみましたが、だいぶ疲れました。本作は技巧派ミステリの肩書き通りの作品ですが、技巧を凝らし過ぎたあまりストーリーは支離滅裂です。メインの三人の関係が面倒臭すぎますし、全員ひねくれ者で何がしたいのかが分かりませんでした。例えが秀逸な心情描写は著者の持ち味だと思いますが、今回はくどくどしさも感じてしまいました。長編だからなのでしょうか。

以下ネタバレ

一人称視点と三人称視点が入り混じるという奇妙な構造の意味を考えると叙述トリックを疑うのは必然であり、身構えて読んでしまったために種明かしにそこまで驚けませんでした。「俺」の使い分けを許容するかどうかでこの作品の評価は決まるのかもしれませんが、自分はずるいと感じてしまいました。不必要に思えた三人称視点をちょくちょく挟むのは二人の「俺」のクッションの役割だったのでしょうが、それを加味しても力技の印象を拭えません。読むのに使った労力に見合ったリターンではなかったというのが正直なところです。

No.2 7点
(2020/07/27 15:54登録)
 八年前、大スター花ジンこと花村陣四郎に拾われて以来、マネージャー兼付き人として影のような生活を送ってきた北上遼一。だが常に罵倒され蔑まれる生活も、そろそろ限界に達しつつあった。そしてちょうど四十三歳の誕生日を迎えた九月二十三日午後八時十分、遼一は新宿二丁目のバーで安っぽいウイスキーを飲んだのを切っ掛けに、あるカップルと運命的な出会いを果たす。
 秋場一郎と柴田鈴子。美人局気味に彼に絡んできた二人だが、遼一はその秋場にふときらめくものを感じる。来週から撮影に入るはずの映画『神々の逆襲』の安田刑事役に、花ジンを蹴落としてこいつを送り込むのだ。六十になるベテラン監督の野倉哲は素人を使うのが巧い。突拍子もない話だが、役柄に嵌った雰囲気とこいつの演技力があれば・・・。駄目で元々、半端な泥沼を抜け出して、最初から負けがわかっているような賭けをするのも悪くない。
 遼一は逆に秋葉を脅して丸め込むと、明日のカメラテストを受けることを承知させる。無謀な賭けの第一歩は始まった。だが二人三脚でスターへの道を歩むには、あと一週間のうちに花ジンをひきずり降ろさなければならないのだ・・・
 紆余曲折の末、俳優・秋場駿作は花村陣四郎の代役に抜擢され、その年の映画賞を総ナメ。その後も数々のテレビドラマ、コマーシャル、二度目の映画出演と、三人の関係性に支えられスター街道を突っ走る。だが彼には、他の二人にも明かしていない過去の犯罪があった――
 『女王』に続く著者二十六番目の長編。雑誌「小説推理」平成九(1997)年六月号~翌平成十(1998)年六月号に掲載された同名作品に加筆・訂正を加えて刊行されたもの。連作短編集『一夜の櫛』および『夢ごころ』『たそがれ色の微笑』『萩の雨』各前半収録の諸作と執筆時期は重なります。
 俳優のみならずマネージャーから監督まで、演技が日常の芸能界。メインキャラ各人も脅迫する側される側と、序盤からコロコロ立ち位置を変える油断のならない展開。渋る秋葉をあの手この手で誘導する傍ら、花ジンと正面切って対峙したり、いくつかのヤマを越えながらストーリーは進みます。
 過去回想の多用に加え、場面ごとに繰り返される一人称→三人称への切り替え。何かあるなと思わせるものの、容易にネタは割れません。個々の出来事の裏はある程度予想しましたが、流石にこの仕掛けは読めなかったな。お家芸の大胆な反転劇を、〈花葬シリーズ〉のある作品で用いられたテクニックが支える形。大掛かりな分、驚きはこちらの方が大きいです。
 タイトルがただの星ではなく「流れ星」なのでビターテイスト。複雑に絡み合った三人の関係が決定的なスキャンダルを期に消滅し、それと同時に物語は完結します。この部分も濃密ではあるけどその前、作者の狙いが明かされたとこで実質終了してるなあ。後は付け足しかエピローグかな。でも中年オジサンが最後の花火を打ち上げる話なので、コケてもどこか爽やかですけどね。

No.1 6点 E-BANKER
(2014/06/23 22:22登録)
2003年発表の長編作品。
作者の最終長編となった「造花の蜜」のひとつ前に発表された作品という位置付けとなる。
『巨星墜つ』という帯の惹句が寂しさをそそる・・・

~傲岸不遜な大スター「花ジン」こと花村陣四郎に隷属させられているマネージャーの北上梁一はある夜、ひと組の男女と出会う。秋場という男の放つ危険な魅力に惚れ込んだ梁一は彼をスターにすることを決意。その恋人である鈴子も巻き込み、花ジンから大作映画の主役を奪い取ろうと画策する。芸能界の裏側を掻い潜りながら着実に階段を上る三人だが、やがてそれぞれの思惑と愛憎が絡み合い、事態は思わぬ展開を見せる・・・。虚々実々の駆け引きと二十三重の嘘、二転三転のどんでん返しがめくるめく騙しの迷宮に読者を誘う技巧派ミステリーの傑作!~

これはもう反転につぐ反転だ!
冒頭からしばらくは、「これって本当にミステリーなのだろうか?」という展開が続き、正直戸惑いながら読み進めることになる。
連城らしい粘っこい台詞回しこそあるものの、これといったミステリー的な趣向はないままなのだ。
それが、双葉文庫版のちょうど250頁目で一転することになる!

いやぁーこれには「やられた」。
さすが連城というほかない。
まさかこういう「仕掛け」が施されているとは予想していなかった。
確かに冒頭から一人称と三人称が入り混じって書かれていて、「これは何かある」という思いこそあったけどなぁ・・・
もう、本作はこのトリックを味わわせてもらっただけで満足という感じだ。

それ以外は他の佳作に比べるとインパクトに欠けることは否めないし、特に終盤はもうひと捻り欲しかったなというのが正直な感想。
ということで評価はそれほど高くはないけど、連城ファンなら読んで損はない作品だろう。
しかし、返す返すも早すぎる死が惜しまれる・・・後は未読の作品を大事に読んでいきたい。
前にも書いたけど、こんな作品書ける作家は現れないだろうなぁ・・・

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