sophiaさんの登録情報 | |
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平均点:6.94点 | 書評数:370件 |
No.370 | 4点 | ずっとお城で暮らしてる シャーリイ・ジャクスン |
(2024/10/09 19:39登録) 主人公の少女のとりとめのない独白、無駄に細かい描写、会話の噛み合わない登場人物たち、最後まで解き明かされないいくつもの謎。このような作品は大の苦手です。分類的にはホラーのようですが、怖くないのですよね。ただただ理解不能で登場人物に対する不快感だけが残りました。長らく海外作品を読んでいないということもあって、何となくタイトルに惹かれたこの作品に手を出してみたのですが、海外作品にますます苦手意識を持ちそうで、チョイスを失敗してしまったという気持ちでいっぱいです。 |
No.369 | 6点 | 成瀬は信じた道をいく 宮島未奈 |
(2024/10/04 18:52登録) 前作は構成が凝っていたのでミステリー的な仕掛けを期待してしまい失敗したのですが、本作は特にそういうひねりもなく、時系列通りの客観的な成瀬あかり史という王道の描き方で安心して読めました。おかげで尚更ミステリーではなくなりましたし、当サイトにおける評点としてはこんなものになってしまうのですが、いやしかし最終話はミステリーではないですか?「成瀬はどこへ消えたのか」これは立派なミステリーでしょう。伏線もしっかりと提示されていますし、正直言ってこれは当てたかったですねえ。第3弾もありそうなので次はリベンジさせて下さい。そして成瀬シリーズはミステリーであると言わせて下さい(笑) |
No.368 | 9点 | 少女には向かない完全犯罪 方丈貴恵 |
(2024/09/16 16:28登録) ネタバレあり あらすじを読むと特殊設定ミステリーのように思われるのですが、それは調査手法や展開のために用いられるだけであり、対象となる事件そのものは現実的なものです。本作は本格でありサスペンスでありクライムノベルでもあるという実に贅沢な構図。慎重で臆病だった烏由宇が行動的に、短絡的で向こう見ずだった音葉が思慮深く、互いに成長していくバディものとしても優れています。読んでいてオーバーラップしたのは「レオン」「ゴースト/ニューヨークの幻」「シックス・センス」「デスノート」あたり。そして個人的に納得のいく多重解決ものを初めて読んだ気がします。強いて言うと、ある人物に罪を着せるプランが偶然に助けられている点がマイナスポイントですかね。しかしこの作家さんは本当に傑作しか書きませんね。 |
No.367 | 7点 | 六色の蛹 櫻田智也 |
(2024/09/08 00:03登録) ●白が揺れた 8点 ●赤の追憶 8点 ●黒いレプリカ 6点 ●青い音 6点 ●黄色い山 8点 ●緑の再会 採点不能 前作「蝉かえる」と比べると当たり外れのある印象。犯行態様の杜撰な「黒」とトリックの必然性のない「青」がいまひとつ。「黄色」はまさかの続編でしたが、真相が明らかになるラストシーンに魞沢の蛹の講釈が重なるのが秀逸で、ここが今作の最高到達点であろうと感じました。その後のエピローグ的な「緑」は不要だったかと思います。しかし謎解きを通して人間の悲哀を描き出すのが相変わらず上手いですね。 |
No.366 | 7点 | 明智恭介の奔走 今村昌弘 |
(2024/08/25 23:16登録) 「〇〇の殺人」と銘打たれる剣崎比留子シリーズの緊迫感とは好対照のコミカルな作品集です。剣崎比留子のような天才型ではありませんが、ミステリー愛をエンジンに日常に潜む謎に取り組む努力型の明智恭介の姿勢には好感が持て、それだけでも読む価値があるというのに、どの作品もレベルが高いです。これを読んだ今「屍人荘の殺人」を再読したら泣いてしまうかもしれません。 追記 いつもこの方の作品は高評価してばかりなのでたまには難癖でも。「泥酔肌着引き裂き事件」に関して。そこまでやったなら覚えときましょうよ。というか、そこまでやれるなら泥酔してないでしょ(笑) |
No.365 | 6点 | 成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈 |
(2024/07/30 17:38登録) このサイトで扱う対象の作品なのかなとは思いますが、既にいくつか書評が登録されているので私も書かせていただきます。第3話で全然違う人物の話になったことや、第4話以降の駆け足っぷりに翻弄されましたが、滋賀県密着型および新型コロナウイルス流行の世相を反映という特性がなければまあ普通の作品かなと思います。成瀬は言うほど奇人でもありませんし。それでも絶賛されているのだから最終話で大きなサプライズがあるのだろうと期待してしまったのはミステリー読みの悪い癖なのでしょうか。その後どうなったのと思う人物もおり、続編ありきの作品なのかなあと考えました。 |
No.364 | 5点 | 超短編!大どんでん返し Special アンソロジー(出版社編) |
(2024/07/23 22:29登録) 前作はなかなか楽しめたので期待して読んだのですけれども。最初の森見登美彦「新釈『蜘蛛の糸』」が大変素晴らしく、以後それを超えるものは残念ながらありませんでした。まあまあよかったのは「イズカからユウトへ」「試験問題」「飯の種」「美味しいラーメンの作り方」「おとうちゃん」ぐらいでしょうか。 |
No.363 | 7点 | ぼくらは回収しない 真門浩平 |
(2024/07/19 00:05登録) これは多くの人が7点評価なのも頷ける実に手堅い独立短編集ですね。純粋な謎解きの部分も優れていますが、各短編にはそれぞれ特色があります。推理のアプローチ法が鍵となった「街頭インタビュー」「速水士郎を追いかけて」。動機が鍵となった「カエル殺し」。過去と未来にテーマを置いた「追想の家」。そして最後の「ルナティック・レトリーバー」はこの3つの集大成と言える作品でした。若手らしからぬ構成力を持っており、今後に期待できる方だと感じました。 |
No.362 | 7点 | 早朝始発の殺風景 青崎有吾 |
(2024/07/09 00:39登録) 薄味の連作短編集なんですが、私は好きですね。青春とは薄味で意味のないものであり、劇的である必要はありません。これくらいで丁度いいのです。限られた人数で、限られた空間で、限られた時間で繰り広げられる高校生たちの駆け引きおよび敗者のいない決着が何とも言えず心地よかったです。 |
No.361 | 7点 | ベーシックインカム 井上真偽 |
(2024/06/28 00:24登録) ネタバレあり 初めの四話の単体の評価は正直に言ってどれも今一つかなあと思っていたのですが、最終話を読んで著者の思惑を知り、その思い切った構成力にただただ舌を巻くばかりであります。ただ人類は最初に書いた四話の方の道を歩むのではないかと私は危惧しているのですが、どうなるものでしょうか。なお「もう一度、君と」の最後のやつは蛇足に感じました。 |
No.360 | 6点 | 星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン |
(2024/05/30 23:15登録) 専門的な記述が大部分を占め、かつ硬い翻訳で読み辛いことこの上ありません。電話帳を読まされたみたい(「占星術殺人事件」より)で、全体の8割方を斜め読みしたんじゃないでしょうか。真剣に理解しようと熟読していると後ろから肩を叩かれそうな作品です(「超理系殺人事件」より)。曲がりなりにも読了できたことだけが収穫で、再読しないと理解を深めることはできなそうですが、その気力は残っていません(笑)もう少し研究者たちの人間ドラマのようなものを入れてくれるとめりはりが利いて読み易かったのかなあと思います。 |
No.359 | 8点 | アリアドネの声 井上真偽 |
(2024/05/03 21:53登録) ドローンってそんなことが出来るんだという驚きは随所にあるものの、ストーリーを見ると訪れる危機を順繰りに乗り越えていくだけで特に意外性はなし?残りページ数もわずかだしこのままあっさり終わるのかなと思いきや。久しぶりに感涙ものでしたが、ある人物の言った「頑張りすぎる人がいると困る」はそうだろうなと思いますし、一概に感動の押し付けにはなっていないところにもこの作品の価値を感じました。あとユーチューバーのやつはもっとしっかり懲らしめてほしかったです(笑) |
No.358 | 7点 | 11文字の檻 青崎有吾 |
(2024/04/24 23:25登録) 寄せ集めの短編(掌編)集で「恋澤姉妹」と「11文字の檻」以外に読む価値を見出せませんが、その素晴らしい2作に免じて7点を付けます。「11文字の檻」で繰り広げられる「ゲーム」は「地雷グリコ」と通底しているように感じます。こういうのが向いている作家さんかもしれませんね。 |
No.357 | 7点 | プロジェクト・インソムニア 結城真一郎 |
(2024/04/17 21:11登録) ネタバレあり 特殊な状況下のフーダニット、ハウダニットとしては出来がよかったと思いますし、真相はなかなかに強烈なインパクトがあります。ドリーマーたちが肌で感じる違和感、疑念が口の軽い蜂谷君(笑)の補強によって確信へと変わっていくサスペンス構図も上手いです。ただし、ある人物の「××が欲しい」がやはり不自然で受け入れ難い。それを手に入れてどうするのよ、という。クライマックスに主人公が陥る「夢なのか、現実なのか」の板挟みを作り出すためだけの布石に思えます。それから全編を通して文章がやや読みにくい。世界観の難しさを差し引いても情景描写があまり上手くないと感じました。 |
No.356 | 7点 | 変な絵 雨穴 |
(2024/04/12 22:37登録) 前作「変な家」は一つのエピソードに継ぎ足しを重ねて長編にした感じがありましたが、今作は最初から最後まで計算して構築された作品になっており、小説らしさが格段に向上しています。無駄な登場人物が全くおらず、使い捨てのように思われた人物を含め全員がリンクして真相を紡ぎ出していく様は圧巻。欲を言えば、文章を練ることでもっと小説らしくすることもできそうなのですが、基本的にYouTubeが活躍の場の方にそれを求めるのも違うのかなあと思います。くどいほど随所に図を挿入するところからしても読み易さ、分かり易さを重視しているのは明らかでありますし。今作ぐらいの塩梅がベストなのでしょう。それにしても殺害シーンが・・・怖い |
No.355 | 9点 | 地雷グリコ 青崎有吾 |
(2024/04/06 19:15登録) 最初の2話は肩慣らしといったところで、その後段々ときな臭いゲームに巻き込まれていく展開が面白い。ギャラリーの客観視点や対戦相手の視点、真兎の視点とカメラの切り替えが巧みで、駆け引きの妙を描くことに成功しています。しかもゲームとは、戦略とは、人生で大切なものとは、といった重いところまで軽快なタッチで描いて3人の女子高生の爽やかな友情物語に仕上げており、青春ミステリにもなっています。「カイジ」や「ライアーゲーム」が大好きな私にとっては最高の作品でした。こういうものを小説であまり読んだことがないので、おまけして9点にします。 |
No.354 | 8点 | ちぎれた鎖と光の切れ端 荒木あかね |
(2024/03/25 00:20登録) デビュー作からいきなり終末モノだったので2作目以降が心配だったのですが、この人は本物だと確信しました。「十角館の殺人」を思わせる冒頭と怒涛の連続殺人。他にも「十角館の殺人」を思わせる箇所はいくつもあります。海上コテージという変な舞台設定は十二分に活かしていますし、小道具に着目した推理合戦や第一発見者が連続して次の被害者になってしまう意外な理由も面白く、第一部は文句なしの10点。しかしながら第二部は6点。第二部でやりたかったことは分かるのですが、予定調和のゴールへ向かって駆け足でまとめたという感じがしますし、第一部のコテコテの本格ミステリーとの食い合わせが悪いです。もっと歴史的傑作たり得た惜しい作品でした。最後にひとつ。「お前は背の低い人間を何だと思っているんだ」には笑いました。 |
No.353 | 7点 | 好きです、死んでください 中村あき |
(2024/03/17 19:49登録) ネタバレあり ラノベ調の作品かと思っていましたが、意外としっかりした文章で語彙も豊富です。本作は共通の要素を持った二つの場面が交互に進行する形ですが、そうなるとどういう類のギミックが仕込まれているかはおおよそ見当が付きますので、すっきり騙されたという気分ではありません。しかしながら学校パートには更にギミックがありまして、それは見抜けなかったのですがだいぶ力業であります。特にSNSの「こいつOUTで、男新メンプリーズ」がですねえ。なのでそちらはあまり評価できないのですが、メインの孤島パートに限って言えば、茶番に思われた序盤の推理劇がしっかり伏線として機能し、現実の殺人事件の手がかりとも相まって変則消去法推理につながっていくという高等技術があり満足できました。 余談になりますが私はSNSは一切やりません。理由は本作でも語られているような負の部分に嫌悪感を持っているからなのですが、現実でも本作のような誹謗中傷による事件はありましたし、今後こういうテーマの作品が溢れていくのだろうかと考えると暗澹たる気持ちになるのでありました。 |
No.352 | 6点 | あなたが誰かを殺した 東野圭吾 |
(2024/02/20 23:11登録) 腹黒一族の内紛パターン。別荘地で殺人事件が起きて、たまたま居合わせた加賀恭一郎が解決するというようなオーソドックスな展開を思い描いていたのですが、東野圭吾には珍しい凝った構成の作品でした。内容は自分の苦手な時系列パズルだったので、整理していくのがとても大変でした。特に加賀が殺人の順序を4パターンに絞ったところが頭が痛かったです(読了後にも自分で改めて検証してみましたが、他のパターンもある気がして釈然としませんでした)。結局時系列を完璧に把握することは諦めました。その論理正しいの?と思うところも多く、緻密なようでいて粗い作品だと思います(阿津川辰海の「蒼海館の殺人」のような)。それでも節目節目で一癖も二癖もある登場人物たちの正体が暴露されていくという趣向があり、引き付けられたので何とか挫折せずに読めはしたのですが。事件解決後にとある登場人物の独白で語られる後悔がよかったです。ところでこの作品はタイトルだけ見て例のシリーズの第3弾かと思っていましたが、クイズ形式でない以上は別物と捉えるのが妥当でしょうか。 |
No.351 | 7点 | アミュレット・ホテル 方丈貴恵 |
(2024/02/01 22:13登録) 本作は物理的な意味ではなく、治外法権的な意味での変わり種のクローズドサークルものと言えるかもしれません。起こる事件も「密室殺人」「衆人環視の毒殺事件」「人間消失」「凶器消失」とバリエーションに富んでおり飽きさせません。特に第一話「アミュレット・ホテル」の密室を作った理由と、第四話「タイタンの殺人」の5年後にまた事件を起こした理由に目から鱗が落ちる思いでした。続編も期待できそうですね。 |