六色の蛹 魞沢泉シリーズ |
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作家 | 櫻田智也 |
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出版日 | 2024年05月 |
平均点 | 6.60点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 7点 | HORNET | |
(2025/02/02 16:54登録) 昆虫好きの青年・魞沢泉(えりさわせん)。その興味のもとに全国処々を訪ね歩く彼は、行く先々で事件に遭遇する―ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件(「白が揺れた」)。ある日花屋に来て、季節外れのポインセチアを欲しがった女子高生の真意は?(「赤の追憶」)。ピアニストの遺品から一枚だけ消えた楽譜の行方は?(「青い音」)。とぼけたキャラながら実は人に寄り添う優しさをもつ、魞沢の精度の高い謎解きと叙情漂う良質なドラマ6編。 切なくそして心温まる「赤の追憶」、先行書評にもあるように結末を待たずとも真相は見当がつくが、その予感も含めてじんわりとした感動があってよい。その後日譚が、最終話「緑の再会」により描かれているのも嬉しかった。 個人的にはそれ以上に、「白が揺れた」の続きが描かれている「黄色い山」が最も印象に残った。 |
No.4 | 7点 | 人並由真 | |
(2024/12/27 21:42登録) (ネタバレなし) 第二短編集は(なぜか)未読なので、久々のシリーズとの再会であった。 評判のいい「赤の追憶」はミスディレクションにまったくひっかからず、当初からダイレクトに作中の真実の道筋を辿りながら読んだので、いまひとつ皆さんの高評がピンと来ない。 (いや、ヒューマンドラマとしていい話だということに、確かに異論はないが……。) 「黒いレプリカ」の読み応え、「青い音」のストーリーテリングぶりも悪くなかったが、個人的に圧巻だったのは「黄色い山」。泡坂というより連城の初期短編だと思う。 法月先生は「泡坂フォロワーから脱皮し」と現状の作風をホメているみたいだけど<21世紀に現れた、亜愛一郎もの路線の後継者>というだけで大した事だと思っているので、個人的には今のこのままで、もうしばらく連作短編シリーズが続くのを願っています。 |
No.3 | 6点 | まさむね | |
(2024/09/16 17:14登録) シリーズ第三弾の連作短編集。前作まで各短編のタイトルは虫に関係する語句が入っていましたが、今回のタイトルは色で統一。虫との関係性も、前2作より薄くなっているような気がします。 マイベスト短編は「赤の追憶」で、シンプルだからこその鮮やかさが印象的。短編らしい短編です。他の作品の出来栄えには、ちょっと波があったかも。連作短編集としての「まとまり」はシリーズで一番だと思うのですが、この点は好き嫌いが分かれるかもしれません。 |
No.2 | 7点 | sophia | |
(2024/09/08 00:03登録) ●白が揺れた 8点 ●赤の追憶 8点 ●黒いレプリカ 6点 ●青い音 6点 ●黄色い山 8点 ●緑の再会 採点不能 前作「蝉かえる」と比べると当たり外れのある印象。犯行態様の杜撰な「黒」とトリックの必然性のない「青」がいまひとつ。「黄色」はまさかの続編でしたが、真相が明らかになるラストシーンに魞沢の蛹の講釈が重なるのが秀逸で、ここが今作の最高到達点であろうと感じました。その後のエピローグ的な「緑」は不要だったかと思います。しかし謎解きを通して人間の悲哀を描き出すのが相変わらず上手いですね。 |
No.1 | 6点 | メルカトル | |
(2024/09/03 22:16登録) 昆虫好きの心優しい青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。行く先々で事件に遭遇する彼は、謎を解き明かすとともに、事件関係者の心の痛みに寄り添うのだった……。ハンターたちが狩りをしていた山で起きた、銃撃事件の謎を探る「白が揺れた」。花屋の店主との会話から、一年前に季節外れのポインセチアを欲しがった少女の真意を読み解く「赤の追憶」。ピアニストの遺品から、一枚だけ消えた楽譜の行方を推理する「青い音」など全六編。日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞を受賞した『蝉(せみ)かえる』に続く、〈エリ沢泉〉シリーズ第3作! Amazon内容紹介より。 あまり記憶がないですが、前作はもう少し虫と事件の繋がりが強かった気がします。本作でも滑り出しは様々な虫に関する薀蓄が絡んできますが、その後の展開にはあまり関わって来ません。意外だったのは、ミヤマクワガタに関する記述で、そんな事があるのかと驚きました。これが二話目の『赤い記憶』で、全作中最も印象的であり出色の出来だと思いました。 それとエピローグに当たる『緑の再会』が爽やかな演出で、後味の良い締めくくりになっています。 本来ならもっと高評価であっても良かったのかも知れません。それは後に書評を書く方に委ねたいと思います。個人的には、色々残念な作品との印象が強く、あと一歩何かが足りなかった様な思いが拭い切れません。魞沢のキャラに関しては、あまりしつこさがなく飄々としているところが逆に良かったのではないかと思います。あとがきにも其処に触れられていますが。 |