ずっとお城で暮らしてる |
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作家 | シャーリイ・ジャクスン |
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出版日 | 1994年12月 |
平均点 | 6.89点 |
書評数 | 9人 |
No.9 | 8点 | クリスティ再読 | |
(2024/10/16 16:16登録) 「記憶」を使って、自分の周囲を再解釈して自分のためだけに再配置する行為。 「呪術」ってそういうものだと思うんだ。私たちの生活のこまごまとしたあたりに「呪術」は存在するわけで、そのような「呪術」とそれに囚われて自ら「祟り神」と化した姉妹の寓話。 うんだから、村人たちからの「悪意」が決定的に向けられた瞬間から、この屋敷は村にとっての「消すことのできない罪の象徴」と化し、それを姉妹は守り続ける....永遠に、生きながら伝説と化して。 これはホラー小説というよりも、ホラーの舞台裏を描き切った作品。やや特異な「真実」を突いてしまった寓話だと思うよ。 |
No.8 | 4点 | sophia | |
(2024/10/09 19:39登録) 主人公の少女のとりとめのない独白、無駄に細かい描写、会話の噛み合わない登場人物たち、最後まで解き明かされないいくつもの謎。このような作品は大の苦手です。分類的にはホラーのようですが、怖くないのですよね。ただただ理解不能で登場人物に対する不快感だけが残りました。長らく海外作品を読んでいないということもあって、何となくタイトルに惹かれたこの作品に手を出してみたのですが、海外作品にますます苦手意識を持ちそうで、チョイスを失敗してしまったという気持ちでいっぱいです。 |
No.7 | 5点 | 蟷螂の斧 | |
(2024/09/02 17:18登録) 「くじ」の書評は、「オチのない短篇集」。本編も同様な印象。よって、結論。ミステリーとして読んではいけない作家さんですね。少女の病んだ心を延々と読まされ、それで?・・・。一番、驚いたのは姉の年齢(苦笑)。肌に合わず残念。 |
No.6 | 7点 | みりん | |
(2024/05/26 18:29登録) 翻訳物だからか?ミステリではないからか?すげえ時間かかった。262ページ4h29min読了。 所詮有象無象の悪意なんてものは、生来的純粋な悪意には到底敵わないということだろうか。 超常現象や怪異が襲ってくるようなホラーしか読んだことがなかったので、これがモダンホラーというやつか、、、と新たなジャンルに巡り会えて少し感動。夢野久作『ルルとミミ』とかに近い。 ちなみにこの作品はAmazonで「ギフトとしてよく贈られる商品 第3位」らしい。おめえ狂ってるぞと伝えたい方が多いのだろうか。 |
No.5 | 7点 | レッドキング | |
(2024/05/19 20:42登録) 第二人称の狂気ホラーが、Who(見え透いてるが)ダニットミステリ踏み台に、第一人称の狂気へ反照し、グリム童話風ファンタジーとして、限りなくメルヘンに近づく・・素晴らしい。 ※当サイト見るまで、この作家の名前すら知らなかった(^^;) 興味そそられ、さっそく・・・ |
No.4 | 7点 | ◇・・ | |
(2024/05/15 20:12登録) 自分の内なる狂気の世界こそ正常な世界であり、外部の日常世界は悪魔の徘徊する異世界だと信じている少女が主人公。 彼女は、両親と兄と叔母を殺害したと疑われている姉、現在のことには一切無関心で過去の世界に生きている叔父の二人と一緒に大きな館に住んでいる。そこに正常人の従兄弟チャールズがやって来た時から、惨劇が始まる。 狂人の観点から語られる閉じられた世界の恐怖。戦慄と優しさ、グロテスクと悲しみの入り混じった静かなホラー小説である。 |
No.3 | 8点 | ROM大臣 | |
(2021/10/05 14:50登録) 忌まわしい大量毒殺事件の起こった屋敷に隠れ棲む、生き残りの美人姉妹。好奇と嫌悪をこめて姉妹を白眼視する町の人々。財産目当てに屋敷に乗り込む青年。大好きな姉を迫害の手から守ろうと孤軍奮闘する主人公メリキャット。 本書はいわば、ひとつの屋敷とその住人が「魔のもの」と化してゆく過程を克明に綴った稀有なる物語であるのだが、陰惨な設定とは裏腹に、その語り口は不思議なほど晴朗で、それゆえにまた、背後にわだかまる狂気の底深さを実感させもする。 |
No.2 | 8点 | 八二一 | |
(2021/02/10 21:13登録) 読んでいて不安になる小説。幻想的で美しく、恐ろしい。人の悪意と狂気が渦巻いている。読んだ後には嫌な夢を見そうだ。 |
No.1 | 8点 | tider-tiger | |
(2016/03/20 12:54登録) 過去にブラックウッド家では忌まわしい毒殺事件が起こった。そのため、生き残ったメリキャット、伯父ジュリアン、姉コニーは未だに村人から忌み嫌われている。だが、メリキャットは病的な空想に彩られた狭い世界にコニーと一緒に居られればそれで幸せだった。ところが、美しくも病んだその狭い世界に従兄のチャールズが闖入、メリキャットのお城を変貌させようと試みる…… 四十代半ばで亡くなった作家の最後の長編。とんでもないものを遺していった。傑作。 特に第七章は素晴らしい出来栄え。私はこの章が本作の最良かつ最狂の部分だと考える。この章は何度読み返したかわからない。 ~木曜日はあたしにとっていちばん強力な日。チャールズと決着をつけるにはふさわしい日だ。コンスタンスは朝、ディナー用のスパイスクッキーを焼くことにした。もったいない話だ。あたしたちのだれかが知っていたら、わざわざ焼くことはない、今日が最後の日になるのだからと教えてあげられたのに。~以上 第七章書き出し まあ一家の過去の事件に多少のミステリ要素はあるも、本作をミステリとして読むのは無理ですな。八点としておきます。 人によって物語の構図や印象について大きく異なる感想を持つと思われる。 結末にしてもハッピーエンドと捉える方もいれば、私のように身の毛もよだつバッドエンドだと感じる方もいるだろう。 この物語には狂気VS悪意、狂気VS善意の押し売りといった構造がある。 ややこしいのは悪意を持たれる側、善意を押しつけられる側が普通ではないところ。虐げられる善人の話などではもちろんないし、嫌な奴ばかりが出てくる話というのでもない。読んでいる側の立ち位置が揺らぐのだ。 作品内に渦巻く悪意に慄く人がいれば、狂気に圧倒される人もいるだろう。 解説(桜庭一樹)では狂気よりも悪意に重点が置かれていた。私の読み方とは異なるが、それでも彼女の下した結論には賛成せざるを得なかった。 すなわち、この作品は『すべての善人に読まれるべき、本の形をした怪物である』 対して当の作者は澄まし顔で「そんなたいそうなものじゃない。わたしはただ物語を書いただけよ」とでも言うのだろう。 ※シャーリィ・ジャクスン女史は短編『くじ』が猛烈な非難を浴びた時、「わたしはただ物語を書いただけ」と嘯いた。 ※シャーリィ・ジャクスンがどのような作家なのか、miniさんが『くじ』の書評において簡潔かつ的確に書かれているのでそちらを参照して下さいませ。 2016/10/29 以下を削除しました。 |