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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.73点 書評数:376件

プロフィール| 書評

No.376 5点 ボーン・クロックス
デイヴィッド・ミッチェル
(2024/05/10 20:57登録)
一九八四年に十五歳だったホリーの人生を中心に、輪廻転生のような形で生き続けている時計学者、相性の良い他者を儀式的に殺害することで延命する隠者の、二大勢力の戦争を描き出していく。
複数の時代や特殊能力を持つ人間を語り手に据えながら、パズルが組み上がっていくように大きな世界を築き上げて見せる、壮大な幻想文学。


No.375 5点 めぐみの家には、小人がいる
滝川さり
(2024/05/10 20:51登録)
洋館に潜む小人の群れと少女の邪悪な交流譚。ファンタジーやホラーではお馴染みの題材だが、そこに陰湿ないじめの問題を加味。
グロテスクな小人の生態とも相まって、彼らの狩り暮らしとの共生に説得力を具える何とも陰湿なディテールの快作である。


No.374 7点 スクイズ・プレー
ポール・ベンジャミン
(2024/05/10 20:46登録)
皮肉な眼差し、誇張されユーモラスな比喩、活きのいいワイズクラック、あふれる機知と警句。一見非情な正義を求める伝統的なハードボイルド・ヒーローのようでありながら、繊細な優しさも隠し持つ。作者らしく内省的で、時に温かく抒情的で胸に迫る。


No.373 6点 長い腕
川崎草志
(2024/04/18 21:44登録)
第二十一回横溝正史賞受賞作で、ゲーム業界の内幕ものとしても興味深い作品。インターネットを犯罪の道具にする匿名的な悪意が、横溝風の土着的な雰囲気と融合しているのには感服するしかない。


No.372 6点 死神の戯れ
ピーター・ラヴゼイ
(2024/04/18 21:39登録)
住民の信頼の篤い牧師だが実はという話。不埒な性格造型、風刺の効いた皮肉な観察、意外性に富む展開で楽しませてくれる。人と食ったような幕切れには、ニヤリとさせられた。


No.371 6点 火蛾
古泉迦十
(2024/04/18 21:36登録)
第十七回メフィスト賞受賞作。イスラム神秘主義の教義が謎解きの骨子と有機的に結びついた神学ミステリで、歴代の同賞受賞作の中でも異彩を放っている。


No.370 5点 撃て、そして叫べ
ダグラス・E・ウィンター
(2024/03/31 20:43登録)
密売事件の罠にはまったギャングが、逃亡から逆襲へと転じて敵を追い詰めていく物語で、捻りのきいたプロット、独創的なキャラクター、心にしみいる脇役と申し分ないし、臨場感に満ちた銃撃場面の数々も興奮もの。


No.369 4点 必須の疑念
コリン・ウィルソン
(2024/03/31 20:38登録)
哲学思想にまで話が広がる気配をみせる謎の提起は魅力的。
だが、序盤の追跡劇におけるサスペンスの希薄さ、終盤に明かされる真相の唐突感など、小説全体としては粗が目立つのが残念。


No.368 6点 老虎残夢
桃野雑派
(2024/03/31 20:35登録)
南宋時代の中国を舞台に、武侠小説と本格ミステリを両立させている。
個性が際立つキャラクターを操り、彼等の特殊能力を活かしつつ、師が弟子に奥義を授ける直前に発生した密室状況での変死事件の謎解きを鮮やかに描ききっている。


No.367 6点 背後の足音
ヘニング・マンケル
(2024/03/07 20:20登録)
同僚刑事が殺されるシリアスな事件、綿密で着実な捜査、やがて浮かび上がる現代社会の歪み、そしてヴァランダーが糖尿病になってしまうというユーモラスな要素が、圧倒的に達者にまとめ上げられている。


No.366 7点 空白の起点
笹沢左保
(2024/03/07 20:17登録)
高額の保険に加入してほどなく殺された男の死の真相を、保険調査員が追う。トリックの扱い方も見せ方も巧みだし、人間関係のもつれを描く筆も冴えている。


No.365 5点 崩壊家族
リンウッド・バークレイ
(2024/03/07 20:15登録)
秘密という秘密が次々と明らかになっていく予測不可能なドメスティック・スリラー。個性豊かな脇役陣とそのエピソードの描き方が上手い。


No.364 6点 天空への回廊
笹本稜平
(2024/02/18 20:13登録)
世界最高峰であるエベレストの北西壁にアメリカの軍事衛星が衝突、たちまち陰謀の芽が吹き、たまたま北東壁を下降中だった日本人クライマーがそのただ中に巻き込まれていく。
高度八千メートルという極限環境におけるサバイバル・ドラマは、冒険小説本来のテーマである「人間の生命力と自然との闘争劇」を現代に甦らせた。


No.363 5点 煉獄の獅子たち
深町秋生
(2024/02/18 20:10登録)
ヤクザの抗争と、警察内部の対立。その両方に大物政治家の秘密を去就がからむ。そのため事態が複雑化し、先が読めない展開が楽しめる。
「地獄の犬たち」の前日譚にあたる、血と暴力と陰謀にまみれたクライムノベル。


No.362 7点 海を見る人
小林泰三
(2024/01/27 20:16登録)
時の進み方が異なる浜の村と山の村に住む少年と少女のすれ違いを美しく残酷に描いた表題作など、人間の歴史認識やコミュニケーションのずれを論理性と叙情性に富んだ文体で書いた問題作ばかり。


No.361 5点 生への帰還
ジョージ・P・ペレケーノス
(2024/01/27 20:13登録)
我が子を巻き添えにした強盗事件の犯人に対し、父親が復讐を挑む。大切なものを失った人間の心に痛みを切々と語りかける一方で、極限まで溜めた思いを一気に爆発させることによって、エモーショナルなカタルシスをもたらす。


No.360 9点 地図と拳
小川哲
(2024/01/27 20:11登録)
日本が建国した「満州国」に架空の都市を設定し、そこに関わる人物たちの軌跡を追う。
作者の問題意識、美学、話作りの巧みさが見事に練り合わされた架空歴史小説の傑作。


No.359 6点 芝浜謎噺
愛川晶
(2024/01/06 20:51登録)
落語を扱ったミステリはいくつかあるが、落語を演じることが事件の解決になるというアイデアは珍しいのではないか。よく実現できたものだと感心。
探偵役は落語家の寿笑亭福の助と師匠の山桜亭馬春。全体としては、ほろりと泣ける人情話になっている構成もよく出来ている。


No.358 6点 フィッシャーマン 漁り人の伝説
ジョン・ランガン
(2024/01/06 20:46登録)
「釣り人」をメインテーマとするモダンホラーというのは、ありそうで意外と少ないものだが、本書は神話的古代から現代に及ぶ、その妖しい歴史にも一部言及がなされており、貴重な作品である訳者の丁寧な翻訳ぶりも好感が持てる。


No.357 6点 永遠の森
菅浩江
(2024/01/06 20:41登録)
地球と月の動力均衡点に浮かんだ博物館惑星「アフロディーテ」が舞台。
描かれる謎と解決はミステリの醍醐味に満ち溢れ、物語はこの上なく叙情的で、心が洗われる美しい作品。

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