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ミステリの祭典

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奇術師

作家 クリストファー・プリースト
出版日2004年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 Tetchy
(2013/10/13 00:53登録)
19世紀末から20世紀初頭にかけて一世を風靡した二大奇術師の対決の物語。しかしそこはプリースト、単純な話にはならず、得体のしれない双子の存在が物語の物陰から見え隠れする。それはまたプリースト特有の、自身の存在、そして住まう世界が揺らぐ感覚でもある。

物語の大半を占めるのはこの2人の奇術師アルフレッド・ボーデンが生前遺した自伝とルパート・エンジャの日記という手記だ。その中心にあるのはそれぞれが発案した瞬間移動奇術の正体だ。
それがやがていつの間にか一人の人物の存在というものへの疑問へのと変わっていく。
瞬間移動奇術を通じてアルフレッド・ボーデン、ルパート・エンジャという名前を持つ存在は一人の男だけの物なのかを問う物語、というのは大袈裟な表現だろうか。

そして驚愕の真相が明かされるが、正直この真相は分かりにくい。なぜならこの顛末を語るのは誰なのか解らない「わたし」だからだ。この私はルパートなのか、それともアンドルーなのか最後まで解らないからだ。それまでの物語の流れから推測するのみ。

プリーストの、存在という基盤が揺らぐ書き方はさらに曖昧になってきている。読者もその理解力を試される作家だと云えよう。二度目に読むとき、違和感を覚えた記述の意味が解る、二度愉しめる作品の書き手でもある。しかしこれほど頭を揺さぶられる読書も久しぶりだ。次は読みやすい本でも手にしよう。

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