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ミステリの祭典

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丸太町ルヴォワール

作家 円居挽
出版日2009年11月
平均点6.11点
書評数19人

No.19 5点 パメル
(2021/12/07 08:31登録)
読み始めてすぐに、話し言葉や言葉遊びなどラノベ風な雰囲気が漂っており、自分には合わないかもと思いながらも、どんでん返しを期待して読み進めた。
第一章では美少年と謎の女が運命的に出会い、知力を尽くした駆け引きが進行する。果たして謎の女は殺人者なのか、その真偽を突き止めるべく第三章では私的裁判が執り行われ、いかさまとはったりが横行する破天荒な法廷バトルが繰り広げられる。間に挟まる第二章では、検事や弁護士の役を務める者たちの個性的な人物像と事件の調査模様が描かれる。
審理の進められ方は、表向きは物的証拠と証言に基づき進められ、一般的な法廷ミステリと変わらない。だが双竜会の真価は、その裏で密かに進められる龍師たちの駆け引きにある。双方、必殺技を繰り出しては互いのいかさまを暴き合う。丁々発止のやり取りの末、傷だらけになった二人の龍が絡み合う。
まさにディベートという感じで、いかに聴衆を納得させられるかが重要で、証拠の捏造もばれなければOK。そんな普通ではない論理のやり取りにはハラハラさせられる。最後には「こころを狂おしくまどわせる―美しすぎる謎とはじめての恋」という謳い文句通り、甘く苦い恋愛小説として完成される。
殺しの真相自体に、たいしたトリックが使われていないこと、読者をあの手この手で楽しませようという心意気は感じるが、繰り返されるどんでん返しには驚きというより、うんざり。

No.18 7点 ミステリ初心者
(2021/05/03 18:26登録)
ネタバレをしています。

 非常に読みやすく、エンターテイメント性(?)が高い小説です。文章が軽く、テンポが良く、500弱の多いページ数のわりにすぐに読み終えることができました。ただ、やや癖が強く、人を選ぶかもしれません。
 始めは論語の語りによる、ルージュとの出会いです。それ自体が叙述トリックのある短編小説としてみても面白い出来です。論語のキャラクターが、言葉遣いが丁寧なひ○ゆきみたいで鼻につきますが(笑)。私は前に読んだ本が盲目の主人公だったため、簡単に論語が目が見えないことに気づいてしまいました(笑)。ここの章でルージュが出ますが、そのキャラクター感が絶妙で、若いような年増のような、どう解釈しても成り立つような感じです。
 次の章からは流と達也が主観となる法廷ミステリのノリになります。逆転につぐ逆転は読みごたえたっぷりです。ただ、流が女性であることは察しがついてしまいました(笑)。この性別詐称トリックは、本当に多いですね(笑)。性別が明記されていないと、警戒するようになってしまいました(笑)。
 本全体として、"誰が殺したか"や"なぜ殺したか"や"どうやったか"ではなく、"誰がルージュであるか"が最も大きな謎であり、それまで章で張られまくった大量の伏線とミスリードが回収されていきます。睡眠薬はポットに入っていたことと、紅茶に入れ替えられていたことから、あおさんがルージュであるという論語の推理は見事でした。さらにその後、もう一つどんでん返しがあり、非常に読後感のよいラストとなりました。

 以下、難癖点。
 この本では、大量の伏線やミスリードや叙述トリックが入っています。正直、5冊分はあるんではないかと(笑)。しかし、一つ一つを見てみれば、2番煎じであり既視感があります。ただ。こんなにも盛り込んでいて、本として破綻しないプロットが見事でした。

 本格推理小説に偏見があり、1冊も読んだことのない人におすすめかもしれません。

No.17 4点 Kingscorss
(2020/08/28 12:36登録)
どんでん返しが有名なこの作品。読了後に感じたのは、ただただ疲れた倦怠感。

今作の評価の大部分は最後のどんでん返しの連発をすごいと思うかどうかと、キャラクターに感情移入できるかだと思います。著者は畳み掛けるようなどんでん返しの連発で、読者を驚きと混乱の渦に誘うのを狙っているんだと思いますが、個人的にはしつこすぎて最後の方はもう早く終わってくれと願うばかり。街中でしつこく勧誘してくるチャラ男のごとくウザかったです。そのどんでん返しですが、手垢の付きまくった叙述ばかりで、わかっても特に驚くようなものでもなく、何回も繰り返されると出来の悪いマジックを何度も見せられてるように、ひたすら演者が飽きて早く終わってくれるのを願いながら待つしかありません。

キャラクター達も、誰も彼もかなり狙ったもので、受け入れられないと出てくるたびにその部分を飛ばしたくなり、彼らが発する気取ったセリフを読むたびに疲れます。

また、全体に文体がにライトノベル調で読んでて辛かったです。ライトノベル風の設定や文章、個人的に苦手なんです…

京都を舞台に行われる架空の裁判儀式上で、ある殺人事件を題材にガチンコ議論対決というプロットがちょっと新鮮だとおもったんですが、よく考えたらこれ、カプコンが出してるゲーム『逆転裁判』の舞台を京都にしただけなんじゃ…

本作を面白く感じる人は、ライトノベルが好き、深夜アニメ好き、どんでん返しのジェットコースターを苦に感じない、カプコンが出してるゲーム『逆転裁判』シリーズが好きな方たち。。。だと思います。プロット、構成、トリック、基本的なところはどれもしっかりしているので好きな方が多いのも頷けます。

個人的には今作は全然合わなかったんですが、それだけで批評を書くと失礼に当たると思うので、時間があるときに続編も全部読んでみたいとおもいます。

No.16 2点 mediocrity
(2019/09/16 18:00登録)
10年前の作品。
大して驚けない叙述トリック、どんでん返しを延々と繰り返した後に残ったのは、どうってことのない真相という小説。似たような感じの作品を数冊読んだ気がするが、最終盤くどいくらいにどんでん返しを連発するのは、この時期の流行りなのだろうか?正直面白さがよくわからないから、もう廃れていてほしいんだけど、まだ流行中なのですかね?

No.15 5点 E-BANKER
(2019/08/24 10:31登録)
この後、「烏丸」「今出川」「河原町」とつづく“ルヴォワール・シリーズ”の一作目であり、作者の長編デビュー作。
伝統ある京大推理研究会出身の作者だけに期待・・・できるか?
2009年の発表。

~祖父殺しの嫌疑をかけられた御曹司、城坂論語。彼は事件当日、屋敷に“ルージュ”と名乗る謎の女がいたと証言するが、その痕跡はすべて消え失せていた。そして開かれたのが古(いにしえ)より京都で行われてきた私的裁判である双龍会(そうりゅうえ)。艶やかな衣装と滑らかな答弁が、論語の真の目的と彼女の正体を徐々に浮かび上がらせていく~

さすが京大推理研。
綾辻行人、法月綸太郎に始まり、最近ではこの円居挽や早坂吝・・・数多の才能を輩出した名門(名サークル?)だけある。
昨今のミステリーではお馴染みの「特殊設定」が本作でも採用されていて、それが擬似裁判としての「双龍会」。
黄龍師と青龍師が互いに検察官、弁護士となり論戦を繰り広げる・・・という図式。

作者にしろ早坂にしろ、井上真偽にしろ、この手のミステリーを読んでると、「あーあ。昭和の古き良きミステリーはもう読めないんだな・・・」という気持ちになる。
これってノスタルジーなのかな? 新本格ですら、もはや遠い昔の話になった感がある。
確かにロジックは考え抜かれてるし、伏線の回収も鮮やか。何より主要登場人物すべてに役割が無駄なく付されていて、最終的にきれいに収まってるのが見事・・・なのだ。

こういうふうに書いてるとレベルの高い作品という評価になるんだろうけど、読後感とはどうしてもギャップを感じてしまう。
もちろん処女作だし、こなれていないところや荒削りなところは目立つんだけど、それ以前にどうも生理的に受け付けないというか・・・まぁー簡単に言えば、中年のオッサンにはキツイということです。

いやいや、あまり毛嫌いしないで、もう少し冷静な目線で読んでいこう。
ジェネレーションギャップって言っても、作者だってもう三十代半ばのオッサンなのだから・・・(多分)
(麻耶雄嵩の巻末解説は堅いな・・・)

No.14 6点 レッドキング
(2019/02/10 17:11登録)
実在する街を舞台に、虚構されたミステリ空間で展開するロジックのお話。ヒロインのコテコテの関西弁がたまらない。(あんな言葉話す女、現実にはいないんだろなあ、て思ってたが実際に存在していた。)

No.13 6点 風桜青紫
(2016/01/27 01:19登録)
次々と繰り出されるとんでも推理の数々に笑わせてもらいました。そのくせ当事者たちは必死にやっているのが、なんとも面白いです。しかし、論語くんはあんな結末に落ち着いてよかったのかwwwww。叙述トリックの連射が注目されてるようだけども、こちらはそこまで面白いと思えなかった。なんだかくどい感じする。それに今回メインになっているトリックは叙述で一番手垢がついてるやつだからねえ(だから円居は採用したんだろうけど)……。技術力は高いんだけど、どうにも見せ方がぎこちない気がするわけです。森川智喜もそうだけど。ともあれ、なかなか楽しい作品でした。

No.12 8点 505
(2015/10/07 01:01登録)
傑作。
一風変わった法廷モノと聞いていたが、異彩を放つボーイ・ミーツ・ガールなラブストーリーで、読者としてはニヤニヤしながら読んでしまった。
第1章の男と女の邂逅の濃密な遣り取りに惹きこまれた後は、法廷へと場面が移る。外連味溢れる演出が小気味いい。法廷モノと書いたが、何でもアリな化かし合い・暴き合いといったカオスな状況の擬似法廷。それが理路整然として物事が運ぶ様は愉快痛快。
謎の女性を巡る攻防は手に汗を握り、現場に残された手掛かりからそれぞれの解釈へ、と歩み出す敵愾心剥き出しな白熱とした模様はエンタメそのものである。
殺人事件と同列に語るべきであろう、謎の女を巡る際に露わになるトリックの配置関係とそのどんでん返しの鮮やかさは、プロットの妙を感じざるを得ない。京の町を舞台に、艶やかな言葉の数々が小粋に響くように。
作者からの読者サービス旺盛な仕掛けが多く、息を吐くほどの暇を持たせない疾走感が何とも気持ちいい。作者のエンタメに掛ける思いならではの〝新本格〟であった。
続編を期待して読みたいと思わせるだけのあるクオリティである。

No.11 6点 いいちこ
(2015/01/14 14:54登録)
まず前提としてミステリとして意味のあることをしようとしているのは理解。
後半のどんでん返しの連続は、それほど納得感がある訳ではないのだが、伏線の配置が巧妙。
読者が「ここが伏線ではないか」と気づき得るように敢えて記載に違和感を持たせつつ、それでいて読了時まで真相には辿り着けないバランスが絶妙。
メイントリックが2つ仕掛けられているが、一方が他方のトリックの隠蔽に効果を上げている点も評価。
評価が分かれるのはたぶん作風。
登場人物全員が「ティーンエイジャーかそれに類する年代」かつ「美男美女」かつ「頭脳明晰」で、ほとんど嫌味とも言える高度な知的応酬がハナにつくかどうか。
著者としてはこのあたりを察したうえで、敢えて特異な舞台設定を選び、ライトノベルタッチにすることでオブラートに包んだのだろうが、ややどっち付かずの印象。
デビュー作にありがちだが、筆致が上滑り気味である点も否めない。
以上を総合してこの評価としたが、技術的には相当レベルの高い作品

No.10 6点 虫暮部
(2015/01/08 08:03登録)
ネタが出尽くした本格ミステリにおける処世術、という感じ。悪い意味ではなく、成程こういうやり方もあるか、と思った。“携帯電話の電波がペースメーカーに及ぼす影響”という点にどの程度リアリティがあるのか判らないが、作品世界内での“設定”ということでまぁいいか。

No.9 5点 makomako
(2014/12/14 14:58登録)
 皆さんの評価が高いのに逆らって申し訳ないですが、私はこの作品は好きではありません。京大の学生さんが書いたのだから、私は頭がいいぞといった感じが丸見えに出るのはある程度仕方ないとして、言葉だけでのだましやどんでん返しだけのためのどんでん返しはどうもいただけませんでした。
 こんなことならはっきり言ってどんな結論にでも変わりうるでしょ。推理に重きをおくようなふりをしておいて、作者がここでやめとくといったところが正解なんて納得しがたいですね。
 ただ作者の力も感じましたので他の作品も読んでみるつもりです。

No.8 8点 アイス・コーヒー
(2014/10/28 19:30登録)
京都でひっそりと続けられている伝統技能化した私的裁判「双龍会」。真実を暴くことより相手を論駁することを優先させるこの特殊な論戦を描くシリーズ第一作。
争点となる事件は地味だが、その推理部分を肥大化させてさらなる仕掛けを凝らしている。一つ一つのトリックに新鮮味は薄いが、かつてないほどに繰り出される技には圧倒された。また、「双龍会」で描かれる熾烈な論戦はかなり良くできていて、読者の持久力さえ続けば楽しめるだろう。
城坂論語、瓶賀流、龍樹落花などといった珍名や、ストーリーにはかなり病んでいる香りがするものの、個人的にはその雰囲気が癖になってきている。異常なほどキャラ立ちした登場人物たちにも何とか好感が持てた。
ところで、少しやりすぎな感がある結末には「翼ある闇」へのオマージュが込められているのだろうか。この捻くれた構造は本筋のボーイ・ミーツ・ガールにも通ずるわけだが…。実際のところ、ストーリーはほとんど存在しないようなものだ。この辺りは後の作品で解決するのだろうか。
少なくとも本作がそれまでの新本格とは打って変わった一冊であることは間違いないと思う。

No.7 7点 蟷螂の斧
(2014/02/03 20:27登録)
ルージュ(謎の女)とのやり取り、私的裁判(騙しありの何でもありルール)場面、ラストのどんでん返し、それぞれ十分楽しめました。あえて言えば、伏線なしの叙述部分(片方です)は感心しなかった。というより唐突で無駄なような気がします。私的に騙されたと感じるのは、読後、あれが伏線だったのかということないと・・・。まあ、気が付かなかっただけなのかもしれませんが。あとはルージュの○○。妖艶過ぎませんか?(苦笑)。

No.6 7点 メルカトル
(2013/08/12 22:22登録)
まず冒頭で「河原町祇園」の名前が出てきたことで、一筋縄ではいかぬと知らしめられた思いがする。さすが京大ミステリ研出身だ。
ライトノベルで重要なキャラは立っているので、その点では合格だろうし、なかなか楽しめる。
ミステリには違いないが、私がこれまで読んできたどれとも性質が異なる作品であり、異色というカテゴリーでは括り切れない、何とも不思議な作風であるのは読めば納得されると思う。
第一章のボーイミーツガールの全然甘くない会話のやり取り。ここからして普通の恋愛小説とは全く違う。
そして終盤に炸裂する驚愕の○○トリック。これはしかし、誰も予測しえなかったものだろう。
なぜなら、それまでに私の読む限りではほとんど伏線が張られていないから。
だから嫌でも騙された感が印象に強く残る。
さらには、主役が何度も入れ替わる構成も実に凝っていて、それだけでも読む価値は十分あると言いたい。
読者によっては、あまり良い評価を下さないと思われるが、それだけ革新的かつ実験的な作品だということだろう。

No.5 7点 kanamori
(2012/12/15 20:47登録)
京都を舞台にした疑似裁判”双龍会”シリーズ?の第1弾。
今回全面改稿した講談社文庫版で読了。諸々の書評などの情報からちょっと苦手なタイプのミステリと想像していたのですが、そんなことはなく、全般的な印象は、えらく遠回りしたラブ・ストーリー、と言う感じでしょうか。とくに第1章の論語と”ルージュ”の心理戦風やり取りが秀逸です。
たしかにラノベ風の登場人物たちは鼻につくところがあり、連発される〇〇トリックもどこかで読んだものばかりという感もありますが、その仕掛け方は巧いと思いました。証拠の捏造など”なんでもあり”のコンゲームを思わせる裁判と、終盤の逆転に次ぐ逆転は圧巻です。
また、分かる人にはニヤリとさせる多くの小ネタも楽しい。(たとえば、たびたび出て来る”落花戻し”=「風来忍法帖」など)。

No.4 8点 HORNET
(2012/01/16 23:06登録)
 「そんなことぐらい知ってて当然」とばかりに孔子や古典の言葉を引用しながら機知に富んだ会話を交わす登場人物に、初めは嫌味も感じたが、読み進めるうちにそんな世界観にも慣れてしまった。何より、本編の核である、現代の裁判にあたる「双龍会」の場面は読み応え十分。次に何が来るか、どちらがどんな攻め手でくるのか、臨場感あふれる展開を堪能した。そう考えると、法廷ミステリという側面もある。
 どんでん返しに次ぐどんでん返しも、それまでに丁寧にちりばめられた仕掛けの賜物であり、作者の構想・構成の秀逸さに舌を巻く。フェアな仕掛けでありながら、「仕掛けありき」でそれ以外味のない文章ということはなく、人物のキャラクター・場面設定の面白さでも十分なリーダビリティがある。
 ただ、終末はくり返されるどんでん返しに多少食傷気味でもあった。「ここで終わっていてもよかったのに」と思う部分もあり、やはり最終的には仕掛け偏重だったかな、とも感じた。

No.3 8点 まさむね
(2011/07/04 22:24登録)
 ラノベ・タッチはむず痒くなるので,すごく苦手です。そしてこの作品は「講談社BOX」での刊行ですから,慎重派(?)のワタクシとしては,普通であれば決して手を出せないのですが,世間の評判の高さに負け,手にとってしまいました。
 その結果は,「凄い掘り出し物!」。いや,むず痒くならなかった訳ではない(冒頭の会話シーンなどは痒いどころか,結構カチンとくる)のですが,そこを無視して読み進めたところ,完全に飲み込まれました。連続どんでん返しが圧巻。叙述のテクニックも見事です。比較的安易な叙述を見せておいて…ってのは,よくある手法ですが,どんでん返し連発との合わせ技で見せられると…楽しいですなぁ。
 私的裁判っていう設定は,一般的には微妙なのでしょうが,少なくともこの作品の中では活きてます。法廷(?)での両者の応酬も見所のひとつでしょう。
 むず痒い&カチンとくる面もあったから減点を…とも思いましたが,作者の将来性の高さを買って8点献上!次はラノベ風味を排除した作品を書いて欲しいなぁ。

No.2 4点 ウィン
(2010/10/01 00:19登録)
ストーリーが苦手すぎてついていけなかった。ラストのどんでん返しに継ぐどんでん返しは読み応えがあるものの、置いてけぼりをくらった俺はそこすらも楽しむことができなかった。とはいえ、よくできたミステリであることは確かであり、今後の活躍が期待される作家だと思う。でも、やっぱりストーリーが人により好みが大きく分かれるタイプのものであるために、気軽には人に進められないなあ……。そこが講談社BOX刊行である所以か?ミステリ好きなら一読の価値ありと言える作品でしょう。

No.1 7点 江守森江
(2010/07/17 01:22登録)
講談社BOX=ラノベ・レーベルと思っていると手が出しづらく、本質がボーイミーツガール・ミステリでラノベ風なのも間違いない。
しかし、何度も仕込まれた叙述、怒涛の反転攻勢で読ませるルール無用な私的裁判の展開、陰の伏線からロジカルに紡がれるフーダニットと裁判のその後は、作中で「ウチらの使う技の一つ一つはもうありふれてて、誰でも知ってるもんや。せやけど、お客さんに見たい夢を見せるのは技じゃなくて腕や。・・・・」と主役の1人に語らせた通りの面白さだった。
ラストのセリフの甘ったるさがモタレたのと、舞台になる京都と京大生(作者&主役達)がさほど好きではないので減点したが満点と遜色ない。
内容と関係ないが、鬼貫警部をフリに鮎川哲也を想起させ「達也が嗤う」で落とすミステリ・マニア的笑い&大三元が揃う麻雀的笑いがツボだったので1点加点した。

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