| kanamoriさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.88点 | 書評数:2515件 |
| No.2515 | 5点 | 遠い悲鳴 フレドリック・ブラウン |
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(2026/10/01 14:54登録) ニューメキシコ州アロヨ・セーコの田舎町で、ジェニー・エームズと名乗る若い女性が殺される事件が起きて8年の歳月が流れていた。神経衰弱の治療を終えて、気分転換のためこの地に滞在していたジョージ・ウィーヴァーは、友人の雑誌ライターから、事件をもう一度洗い直し資料を提供してくれるよう頼まれる。ジェニーが住んでいた家を借り受けたジョージは、事件当時の目撃証人や新聞編集者など関係者を精力的に訪ねてまわるが、犯人の画家の男の行方はおろか、ジェニーの身元さえ分からない。やがて、山間にこだまするコヨーテの叫びにも似て、ジェニーの遠い悲鳴がジョージの耳もとまで響いて来るようになった……………。 フレドリック・ブラウンお得意の仕掛けモノの匂いがプンプンするノン・シリーズの作品です。 サイコ・サスペンス風の雰囲気が多少ありますが、本編の大部分は捜査の素人ジョージの調査活動の描写で占められていて、やや物語が起伏に欠ける点が気になりました。ジョージの推理が妄想に近づいて行く点も想定内で、あまり面白いとは思えないです。というのは、冒頭にセンテンス全文に傍点を付けた”犯行シーン”の描写が置かれているのに、そっちの方面には触れずに、何かと妻ヴィと二人の娘の家族の話題が入ってくる。最後まで読めばその理由は分かりますが、伏線を溜めた割りには、それほど効果があったとは思えなかった。 |
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| No.2514 | 6点 | 取り違えた封筒 ティモシー・トラント警部補の事件簿 パトリック・クェンティン |
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(2026/09/29 13:31登録) ニューヨーク市警・殺人課のトラント警部補を主人公とする、本格ミステリ20編を収録した中短編集。昨年の「このミス」我が社の隠し球のコーナーで告知があって出版を楽しみにしていた作品集です。英米のクラシック・ミステリの翻訳を中心に同人出版を精力的に行ってきた三門優祐氏の編訳で、初の商業出版になります。自身による巻末解説の書誌情報の充実ぶりと、底本を初出誌に統一する拘りには感心させられました。 トラントが出てくる作品は、戦前の30年代の未訳長編3作と、50年代半ばのダルース夫婦モノ「女郎ぐも」を初めとする巻き込まれ型サスペンスの脇役(敵役?)という認識があって、その間を埋める40~50年代前半の時期に書かれていた中短編の謎解きモノをまとめて読めるのは嬉しい。 収録作でいうと、やはり長めの中編の標題作「取り違えた封筒」が一番の注目作です。結婚式を控えたヒロインが受け取った花嫁介添人の女性からの手紙が何故か花婿宛だったことから事態が悪化し、結果的にヒロインが殺人容疑を受ける事件に巻き込まれる話。サスペンスフルな展開からトラントが登場してからフーダニットものの謎解きミステリになる。(ネタバレなしの説明が難しいw)、プロットは後の代表作の「わが子は殺人者」などに繋がる”巻き込まれ型サスペンス⇒謎解きミステリ”のパターンの原型と言えそうです。終盤の二転三転する謎解きが圧巻です。 短編の中で気に入ったのは、「白いカーネーション」「脚光と殺人と」(「さよなら公演」の別題あり)「ローラ、其は氷の女」の3篇です。短編でもキッチリした伏線と気付きの妙味を味わえますが、少ない枚数の作品で人物関係が複雑なものは、中編または長編にすればより面白くなりそうな作品も散見された。 また掌編並みの作品に出てくるトラントの姉フレダや甥のコルヴンとのやり取りはユーモアがあって楽しい。 |
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| No.2513 | 4点 | 野球が好きすぎて 2021‐2025 東川篤哉 |
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(2026/09/25 16:36登録) サブタイトル通り、2021年から25年の5年間のプロ野球界のトピックを、無理やり謎解きミステリに絡めたユーモアミステリ短編集の第2弾です。前作同様に、警視庁・捜査第一課の若手刑事の神宮寺つばめと、父親で警部の勝男の熱烈ヤクルトスワローズ・フアンの父娘が狂言回しになって、最後は野球居酒屋に現れる謎のカープ女子が謎解きを披露して終わるという、こうやって書いていても実によくわからない連作短編集です。野球に興味がない読者は尚更面白さが分からないのではないかと思います。 作者は広島カープのフアンを公言していて、話題もセ・リーグが中心ですが、コロナ禍による影響が下火になっているとはいえ、当初は無観客試合などがあってペナントレース自体が盛り上がりに欠けたことも関係があるのかな、ギャグのほうもイマイチで、ミステリの趣向と共にネタ切れ感が明らかにありました。 個別に見ていくと、「狼とキツネのダンス」と岡田監督ネタの「死に際のアレの問題」は共にダイイングメッセージ・ネタですが、お~ん、これは酷しい。 ミステリとしてプロットがまずまずと感じたのは「あの犬に憧れるのはやめましょう事件」ぐらいかなあ。 |
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| No.2512 | 6点 | 夜がまだ明けない 井上先斗 |
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(2026/09/23 11:51登録) しがない探偵事務所に勤める”僕”こと、若い探偵の苗場清志郎が遭遇する5つの謎で構成されたハードボイルド連作短編集。 舞台が三軒茶屋、下北沢、原宿、吉祥寺と、いかにも若い作家による26歳の私立探偵モノで、令和の時代らしい独特の雰囲気を醸し出しています。同時に、探偵のクールな言動と視点は過去のハードボイルド小説の様式を正当に受け継いでいるようにも思えました。謎解き部分は、日常の謎風のものから、本格ミステリ並みのトリッキーものまで多彩です。ハードボイルドの定番のガシェトである”失踪”が起点になっているものが多いですが、持ち逃げ、消失、雲隠れ、家出と”失踪”にも色々あります。 一話目の「ヴィンテージ」は古着屋のアルバイト店員がいなくなったホワイトダニットもので、業界の内情などは興味深いものの、まあシリーズのイントロダクションのような作品。 「消えた歌声」は、ロック・バンドの女性ヴォーカルが突如”姿を消した”ホワイダニットもので、これはある時点で真相が見えてしまう。次の「レモンジュース」は、苗場の元カノのようなジョブホッパーの女性が依頼人で、ストーカー対策案件が異様な様相を見せる。隠されていた構図の意外性もなかなか。 「溶けるように」は、追跡対象の男が乗り込んだはずのエレベーターから忽然と消失する、不可能興味が充実し多重推理も楽しめる編中で最もパズラー志向の強い作品です。 最後の「夜がまだ明けない」は、女子中学生の家出の案件から、刑事事件に発展するシリアスな内容で結城昌治の真木シリーズを思わせるところもあるが、探偵の行為の裏には苗場自身の過去があった。 |
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| No.2511 | 5点 | ボーンヤードは語らない 市川憂人 |
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(2026/09/20 14:08登録) 米国と思われるU国A州の警察署に勤務する、マリア・ソールズベリー警部&刑事の九条蓮のバディものの本格ミステリ・シリーズの4作目。初の短編集で4編収録されています。 個々の作品は時代や主人公を変えるなどして色々と工夫されており、その点では楽しめます。これまでシリーズを読んできた人は、より楽しめるかもしれません。(わたしはそれほど熱心には読んでいませんが) 標題作は、空軍基地の飛行機の墓場(ボーンヤード)で発見された不可解な死体の謎を、ジョン・ニッセン少佐が二人に相談する話で「ジェリーフィッシュ」の後日譚ですが、謎解きモノとしてあまり惹き付けられるものが無かった。 「赤鉛筆は要らない」は、蓮が高校生時代に新聞部の女性の先輩の自宅で遭遇した雪密室の殺人事件の話。体格差があるとはいえ、現実的には無理があるトリックと、アンフェアとまでは言えないにしても視点人物の内面描写などスッキリしない点が気になった。視点人物の問題点については「ボーンヤード」にもある。 「レッドデビルは知らない」は、名門ハイスクールに入学させられた問題児”赤毛の悪魔”ことマリアが、唯一の親友が殺された事件に対峙する話、叙述の騙りはともかく、こんなに複雑な工作をする必要性が感じられない。 最後の「スケープシープは笑わない」は、マリアと蓮がコンビを組んだ最初の事件で、これも社会問題的テーマ、それがあって3編いずれも後味がいいとは言えない。 |
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| No.2510 | 6点 | 世界怪奇実話傑作選 アンソロジー(国内編集者) |
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(2026/09/17 14:00登録) 長谷川海太郎は、1928年に中央公論社の特派員として欧州に滞在、ロンドンの大型古書店で怪奇事件の資料を買い漁り、帰国後に同社の中央公論に1929年から33年にかけて牧逸馬のペンネームで、その資料を元に33編の犯罪実話を連載し評判になる。林不忘名義の丹下左膳シリーズの人気もあって一躍流行作家になった。本書は、中央公論に掲載した怪奇実話の中から島田荘司が、資料的価値や物語としての面白さ、ミステリー界に与えた影響などを考慮し14編を選んだ傑作選です。 もっとも、昭和の初めの日本のほとんどの読者にとっては、目新しく興味深いエピソードということもあったのでしょう。その辺の時代性を考慮する必要はあります。 「切り裂きジャック」や「タイタニック号沈没」などは、後年多くの研究書や関連書籍が出ていますから、さほど興味を惹く部分がないということもあります。ただ、事件直後のメディアの扱い方は多少気になりました。切り裂きジャックの想定犯人像が当初から外国人の外科医を挙げていたとは思わなかった。タイタニック号の惨事は、生死を分けた幾つかの群像劇とは別に、電信係のSOS打電に関する行き違いのエピソードが印象的です。 「マリー・セレスト号」の謎は事実のみの記載で物足りない感じがありますが、まあこれは実話を記すものなので、推理推測の類いがないのはやむを得ない。 「怪奇実話」といっても、猟奇的犯罪や惨劇ばかりではなく、奇々怪々な珍妙な事案などあり結構バラエティーに富んでいるのが面白い。「テネシー州、猿裁判」は聖書原理主義者がアンチ進化論を裁判の対象にした話、「マタ・ハリ」は第一次大戦時のドイツ諜報部門の踊り子の女スパイのエピソードで、共に初めて読む話で興味深かった。 最後に「クリッペン事件 血の三角形」ですが、名前はピーター・ラヴゼイの「偽のデュー警部」のオマージュの元ネタということで知ってはいましたが、これが滅法面白かった。まるで謎解きミステリ顔負けのどんでん返しあり、クリッペン医師が毒殺の知識を得るためコナン・ドイルに再三接触するエピソード、愛人を男装させカナダを目指し豪華客船で高跳びする、大西洋のデュー警部の追跡劇とサスペンスフルな逮捕劇などなど。 おまけに、近年実施したDNA鑑定では地下室から見つかった遺体はクリッペンの妻のものではなく、冤罪が取り沙汰されているらしいとか。本物のデュー警部の立場はどうなるw まあ100年前の事件なので、どうにもならない。 |
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| No.2509 | 6点 | 陽炎 松本清張 |
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(2026/09/15 15:42登録) ”清張短編レア・セレクション”と称して今年の7月から中公文庫でシリーズで出ているテーマ別の短編集で、第3弾の本書は、時代・歴史ものが9編収録されています。「点と線」の大ヒットで執筆の中心が推理小説になる以前は時代小説を多く書いていたようで、その時期の作品が大半です。 編中で最もレアなのは標題作の「陽炎」で、1951年に福岡県警の機関誌に寄稿した”女敵討ち”がテーマの時代小説です。それを含め前半の収録作は、武士を主人公にしたものが続き、武士道や武士の生き様、逆に武士なのになぜ?というような、「半席」の青山文平のホワイダニットものを思わせる読み味の作品もありました。ただ、当時の清張がそういったミステリー的な趣向を意図して書いていたとは思えません。 歴史ものでは、肥後藩・加藤清正の孫で、江戸詰の三代目・光正のイタズラが藩の凋落を招く「五十四万石の嘘」と、家康の末男・忠輝の数奇な運命の「二すじの道」が印象的。 最後に置かれた「穴の中の護符」は、なんと半七捕物帳の完璧なパスティーシュで、謎解きミステリとしても驚きの出来映えでした。 |
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| No.2508 | 6点 | 黄昏の銃声 C・J・ボックス |
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(2026/09/13 11:46登録) グリズリーによる狩猟ガイド襲撃事件の調査で山中にいた猟区管理官ジョー・ピケットは、ヒューイット判事が狙撃されたという緊急の連絡を受ける。弾はいっしょに自宅にいた妻に当たり、彼女は瀕死の重傷を負ってしまった。判事は過去に自分が有罪の判決を下した者の中に犯人がいるとみなし、検事や警察署長、保安官らの法執行官を集め捜査を命じる。そのメンバーに加わったジョーは、射撃のプロである盟友・鷹匠のネイトに協力を仰ぐが、家族を持ったネイトの周リにも麻薬カルテルの刺客の影が…………。 ワイオミング州の猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とする冒険サスペンス・シリーズの、なんと20作目で、安定の面白さです。ということで、今回は冒険スリラーの要素は控えめで、主題は捜査小説、フーダニットものの謎解きミステリになっており、前作の終盤の郡庁舎前の惨劇を踏まえたサイド・ストーリーを含め、諸々の伏線がきれいに回収される作者のテクニックが一番の読みどころと言えるでしょう。しかもジョーの天敵とも言える義母のミッシーの襲来さえ事件の裏の構図の伏線だったとは。もはや恒例のネタになっている感があるジョーのピックアップ・トラックの運命も然りです。ラストで示唆される長女のシェリダンの今後の役割も楽しみです。 |
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| No.2507 | 6点 | 囁く逆婿 怪民研に於ける記録と推理 三津田信三 |
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(2026/09/09 13:28登録) 無明大学3回生の瞳星愛は後輩の民恵の代理として、彼女の義姉の美々子の結婚式に出席することになった。ただ花嫁の美々子は亡くなっており、その儀式は彼女の恋人に模した生き人形を婿とした「霊婚儀礼」という旧家に伝わる妖しげな風習で、さらに1年前の美々子の雪密室での怪死事件について民恵から聞かされた愛は、怪民研の天弓馬人に相談するが、彼女の向かう奈良県の旧家・百古里家には想像を絶する恐怖と、戦慄すべき謎が待ち受けていた…………。 怪民研シリーズの3作目です。前作の”嫁首様”に続いて、今回は”逆婿様”を寿いでいます。このシリーズは、役割分担が明確になっており、前半から中盤のホラー体験は瞳星愛が担当で、刀城言耶の助手のわりには怪奇現象が苦手な天弓馬人が最後に登場して謎解きを行うパターンで、今作も同様です。 美世刀自を当主とする女系の百古里家の姻戚関係が、再婚・養子縁組みが絡んで複雑で大変ですが、愛が式場である屋敷の離れに到着時に即、その辺の問題は一掃されます。 生首を抱える首なし死体など今回もホラー要素は強烈ですが、多くの死体が出てくる割には、事件自体は意外と単純に思えました。それを無理やりグダグダした展開にしていて、結末の付け方もムヤムヤしており、その辺は評価が分かれそうです。 |
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| No.2506 | 7点 | 『石球城』殺人事件 北山猛邦 |
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(2026/09/06 15:36登録) 終末感が漂うファンタジー系の異世界本格の大作です。作者のデビュー作から始まる『城』シリーズの最新作と位置づけられる作品かもしれませんが、プロローグで少年が”最果ての海”を目指して氷原を彷徨するシーンは少年検閲官シリーズの「オルゴーリェンヌ」に近い雰囲気があります。 物語は、高い城壁と闇に囲まれ太陽が見えない、クローズド・サークルな街”石球城”の中で終始進行し、城壁に沿って立つ13基の灯台が現場となって、13人の灯台守リの巫女が連続して密室状況で首なし死体で発見されていく派手な展開です。何処からか迷い込んできたその少年を助けた、城内に住む青年ロメリアが探偵役になって、この謎解きをするのですが、殺害動機や頭の持ち去りと密室にする理由が、石球城のルールに起因するものと明らかにされており、この辺は異世界モノの便利なところです。WHYはなしで、一応は密室殺人のハウダニット一本に絞った謎解きになります。 ただ、密室と言っても堅牢なものとは言えず、窓が開いていても高所だからとか、石球が塞ぎ脱出不能とか、周りに足跡がないとかで、云わば”緩い密室状況”なのですが、城の由来である大きさの異なる真球の石球が密室を構成する要素であり、同時にトリックのアイテムにもなっている点はなかなか上手いと思います。昔から、密室トリックのタイプの優劣で、”心理的トリック”が”物理的トリック”に優るみたいな出典不明な謎の言説が染み付いているのですが、後半に明らかになる”高度に成長する密室”の、最後の13番目の密室が意外なことに前者でした。 これだけ続けて密室トリックを読まされるとダレるところもありましたが、たしかに最後は文字どおりの驚天動地な真相が待っていました。 |
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| No.2505 | 6点 | 幕が上がれば誰かが誰かに殺される ベンジャミン・スティーヴンソン |
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(2026/09/02 13:44登録) 自称”信頼できる語り手”(で、饒舌すぎる語り手でもある)ミステリ作家のアーネスト・カニンガムを主人公としたシリーズの3作目です。今回はクリスマス特別編ということで、300ページに届かないコンパクトな作品に仕上がっていて、そのためなのか、前2作のような読者に語りかけるメタフィクショナルな作風はわりと控えめで、そういった無駄口が鬱陶しいと感じていた人も純粋にパズラーとして楽しめるかもしれません。 発端は元妻のエリンからの助けを求めるメール。エリンは同棲していた恋人のライル・ピアースを自宅で包丁で刺殺した容疑で逮捕されていた。被害者のライルは某財団の理事長を務める富豪で、クリスマスを控え経営していた劇場でマジック・ショーを予定していた。無実を訴えるエリンのために、アーネストが聴き込みを始めると、その劇場には怪しい関係者が勢揃いしており、さらにマジック・ショーの最中に舞台で第2の殺人が起きる……………。 もちろんフーダニットが中核の謎ですが、付随する謎がいくつかあり、ひとつはエリンの両手が本人が気が付かないのに血塗れになった原因(ハウダニット)、ライルの”クリスマス”というダイイングメッセージ、ライルが警察に連絡した”殺人予告”の意味などなど。 物語は、劇場があるオーストラリアの世界遺産ブルーマウンテンズにある街で終始進行し、最後は観光地のロープウェイのゴンドラの中に関係者を集めての決着と、演出が凝っていましたが、謎や疑問点の全てに伏線があったことが最終的に明かされるものの、読者が推理出来る類いのものとは思えなかった。 |
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| No.2504 | 6点 | 斜陽館殺人事件 P・J・フィッツシモンズ |
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(2026/08/30 11:48登録) ロンドンの紳士倶楽部で余暇を過ごしていた高等遊民のアンティ・ブジュレーは、伯爵家の末裔で旧友のフィドルズから電報を受け取り、一族が暮らすサセックス州の田舎の森の中に立つ城館へとやってきた。事件は、館の一角にある塔の三階の密室状況の書斎から伯父のセバスチャンが墜落死したものだが、直前に争う声や物音があり、殺人事件と見なされていた。斜陽の途をたどる英国貴族の館で名探偵の推理がきらめく密室謎解きミステリ! このところ英国で増えてきた感があるアマチュア探偵が登場するクラシック・ミステリ風の本格ミステリで、時代設定も1928年とまさに黄金時代まっただ中です。ただ本作のユニークな点は、”もしP.・G・ウッドハウスが不可能犯罪ミステリを書いたら?”というコンセプトにあります。 ウッドハウスと言えば執事のジーヴスですが、本作に登場する執事は貴族制度に疑問を持つリベラルで、もう一人の老従僕は102歳で、ジーヴスのような役割は務まりそうにありません。(もっとも執事が探偵役のユニーモア・ミステリは先例がありますし)、で、”遊歩者”こと、探偵役アンティが英国風のシニカルな語りで全編にわたってユーモアを醸し出しています。飄々とした風貌はミルンの「赤い館の秘密」のギリンガム君の再来を思わせます。 肝心のミステリ要素は意外としっかりしていて、カーの初期作品を思わせる密室の塔からの墜落死のトリックも面白いですし、フーダニットに関しもユーモラスな場面にその伏線を混ぜる手法が巧妙です。シリーズは既に10作以上書かれているようですが、このレベルであれば続けて翻訳出版してもらいたいですね。 |
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| No.2503 | 7点 | キル・フォー・ミー キル・フォー・ユー スティーヴ・キャヴァナー |
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(2026/08/27 14:12登録) 「古い映画は観る?」「ヒッチコックの映画よ。『見知らぬ乗客』は?」ウェンディが言った。 タイトルから察せられるよう、本作は「交換殺人」をメイン・テーマにしたサスペンス小説です。物語は主に犯罪被害者である二人の女性の視点で交互に進行していきます。 アマンダは、幼い娘を誘拐された上に殺害され、夫は自殺。有力容疑者が浮かぶが優秀な弁護士によって起訴を取下げされてしまう。その男を自らあだ討ちしようと試みるも、接近禁止措置の壁により果たせないでいる。 もうひとりの女性ルースは、深夜自宅に侵入してきた暴漢から負った傷害により子供を持てない体になった。犯人には”青い眼”という特徴があったが、正体は不明だった。そして、夫のスコットと共にレストランで食事中に偶然に”青い眼の男”を見つける。 一方、精神的に追い詰められていたアマンダはグループ・セラピーの施設に頼り、そこで知り合った女性から「交換殺人」の提案を受けることになる。 このように、だらだらと粗筋紹介を書いていても、一向に本作の凄さを伝えられないですが、最後の”ドッカーン!”だけではなく、中盤過ぎぐらいから、徐々に明らかになっていく意表をつく構図の変転と、その異様さはなかなかのモノです。そこへ導くまでの手法としては、国内の新本格の某作を思わせる側面もありますが、作風としては「赤毛の男の妻」のビル・S・バリンジャーが一番近いのではと感じました。ネタバレぎみですが、手垢の付いたミステリ趣向「交換殺人」に別の有名なミステリ趣向を組合せて効果的なサプライズを演出しています。そこが一番評価する点です。 巻末解説で触れられている、10年ぐらい前に翻訳出版された「弁護士の血」のエディ・フリン・シリーズの残りの作品や、CWAのゴールド・ダガー賞を取った作品など、今後のキャヴァナーの翻訳が楽しみになってきた。 |
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| No.2502 | 6点 | 水上都市の冒険 島田荘司 |
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(2026/08/24 11:54登録) 運河に繋留されたダルマ船に住み込み、クラスで誰からも相手にされなかった「ぼく」江口富雄に、ただひとりアメリカ帰りの御手洗くんが話しかけてくれて友達同士になる。そして、沖仲仕のぼくの父親が画家殺しの容疑で逮捕された事件に対し、名探偵のごとく真相を突き止めたのも彼・御手洗くんだった。別クラスの鈴木えり子を加えた中学生3人組は、街で起きる事件に次々と出くわす。(第1話「汐汲坂の殺人」等より) 水上生活者、”アイノコ”、ヒロポン、街頭テレビ……… 昭和30年代の港町・横浜を舞台に、中学生の御手洗くんが、各話で快刀乱麻の謎解きを発揮するジュブナイル・ミステリの連作短編集です。 御手洗の子供時代の事件簿だと「Pの密室」がありますが、幼稚園児の御手洗が警察を差し置き殺人事件を解決したリ、ピタゴラスの定理を使って密室殺人を謎解く小学校2年生といった、天才ぶりを披露したいがあまり、特殊設定のミステリか!とツッコミが入る作品集になっていましたが、本作は年齢相応の真っ当なジュブナイル・ミステリになっています。以下、2話目以降の話の寸評を挙げておきます。 2話目の「踊る人形」は、なんか最近同じ様なネタの作品を読んだような気がするw 「火事マニア」は、”八百屋お七”のエピソードをホワイダニット・ミステリに取り入れた某短編とは別の真相を用意した作品で、編中の個人的ベスト。 「マジシャン御手洗くん」は、メイントリックがクロフツ先生の某長編が由来ではないかと。 最後の「歯磨きチューブ」は、第1話に出てきたホステスの同僚が殺された話で、展開に冗長さを感じるも、独自性がある動機が印象的。 全体的に探偵役が小学校の高学年ぐらいでも成立しそうですが、たぶん作者が書きたかったのはエモーショナルな青春ミステリなので、小学生ではなく中学生探偵団になったのかもしれない。 |
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| No.2501 | 7点 | 少女は殺人の夢を見る 阿津川辰海 |
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(2026/08/21 17:34登録) 東京大学の読書サークル「月夜のお茶の会」に入会した獏田格(ばくた・いたる)は、二年生の先輩・夢見灯(ゆめみ・あかり)が主催する読書会に参加する。そこで彼女が淹れた紅茶を口にすると強烈な眠気に襲われ、課題本の名作ミステリに酷似した「事件」に夢の中で巻き込まれてしまう。その夢の世界の謎を解かないと、現実に戻れない?………というような特殊設定の連作ミステリ短編集。 マニア向けに寄りすぎているきらいはあるものの、これは読んでいて非常に愉しかった。本格ミステリ黄金期の巨匠、カー、クリスティ、クイーン、新本格ムーヴメントの嘗ての旗手、法月綸太郎、綾辻行人ほか、乱歩主導のリレーミステリの古典「五階の窓」を含め、6編の名作ミステリを”もどき”ながら単なるオマージュに留まらず、部分的に新たな要素を加えたり、設定をアレンジしながら「別解」を導き出すという離れ業に近いことまでやっています。 作者はもともと、過去の名作ミステリにインスパイアされたような作品やオマージュ風のミステリを幾つか書いて来ていますから、自身が大学時代に所属していたサークルをモデルにして、そのような思いが本作に凝縮されているように感じました。 読書サークルが舞台なので、主人公の獏田と古参メンバーとのマニアックなミステリ談議やウンチクも愉しいですし、中には作者の評論じみた作品分類や分析も出てきて、色々な楽しみかたができて読み応えがあった。 個別のエピソードに関して書きたいことがありますが、出来れば後で追記することにします。 |
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| No.2500 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖V ~扉子と謎めく夏~ 三上延 |
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(2026/08/18 13:28登録) 栞子と大輔が海外在住のコレクターの本の買取りで不在の夏休み、両親に代わって古書堂を任された県立高校2年生の篠川扉子は、期間限定のアルバイトで高校の後輩・恭一郎と共に留守を守る事になるのだが………。黒いフレームの眼鏡を外せば美人の母親に似た顔立ちで、本に対する好奇心と洞察力も母親譲り。だが異なるのは何事にも物怖じしないその性格。お客の特殊な「相談」に首を突っ込まないよう、密かに扉子の監視役にと恭一郎を雇った栞子の思いを他所に、扉子は持ち込まれた古書にまつわる謎を次々と解き明かしていく。 ビブリア古書堂のひとり娘・扉子をメインにした新シリーズとしては5作目で3話を収録。正直なところ新シリーズの方はそれほど熱心に読んでいなかったので、アルバイトの恭一郎が前々作からの再登場ということも途中まで気付きませんでした。シリーズ通算では12作目になる本作は、扉子が店に居るところにアルバイトの男子が登場するシーンで、ああ、これはシリーズ第1作のオープニングで、アルバイト五浦大輔の初登場の場面の再現では、と感じました。 1話目のお題は「シャーロック・ホームズの帰還」(岩波文庫、昭和13年初版) 戦時中、南方の戦地で言葉が通じないはずの日本兵捕虜とイギリス軍将校との、ホームズ譚を介した不可解なコミニケーションのハウダニットと文庫の落書きの秘密。まあ「帰還」と言えばアレでしょう。 2話目の「森山大道「写真よ、さようなら」」は、文香叔母さん(栞子の妹)の持ち込みネタで、昭和47年初版のプロの写真集を巡って、復刻版、署名版、贋作などと、関係する男女の思いが錯綜する話で、複雑だけどミステリとしてはなかなか面白かった。 最後は「中原中也「山羊の歌」」がお題で、以前に宮沢賢治「春と修羅」の事件に出てきた初版コレクター・玉岡昴とお久し振りのアノ人物が登場し、今後の不穏な展開を匂わせて終わります。 |
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| No.2499 | 6点 | 夜の喜劇 東川篤哉 |
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(2026/08/16 13:34登録) 著者初の”ノン・シリーズ短編集”(仮)だそうで、5編収録されています。内容的には、倒叙もの、アリバイ崩し、密室殺人、挑戦状付きのフーダニットと、バラエティに富んでいながら、作風はタイトルからも察せられるように、作者の持ち味である脱力系のギャグ&ユーモアが健在です。 昔からノン・シリーズの短編集は避けられがちな風潮があって、西村京太郎、島田荘司、東野圭吾といったベストセラー作家ですら、キャリアの初期に2、3冊しか出していない。東野はたぶん生涯で1冊のみ。(ベストセラー作家だかからこそ?かも) 、連作短編集だと、読む方はキャラ読み志向で安心感もある、書く方は設定を一から考え無くていい、編集者も売れるから連作を書くよう勧める、といった事情があったのでしょうか? おそらく米澤穂信の「満願」のヒットで潮目が変わったのでしょう。最近はノン・シリーズの短編集がぼつぼつ出るようになりました。 さて前置きが長くなりましたが、個別の感想は下記の通りです。 「鳥越さんは立派な被害者」は、作者の作品で最近目立って増えてきた倒叙もの、悲惨な笑える話は、やはり犯人視点が効果的なのだろう。コロンボ風のオチもグッド。 「アリバイのある容疑者たち」は、田舎のローカル線を小道具にし”読者への挑戦状”が挿入されたフーダニットものですが、多重解決的なプロットで読者をとことん翻弄させる凝りに凝った作品です。余詰めの潰し方もなかなかです。 「どうか僕を占ってください」は、カリスマ占い師に恋愛相談に来て殺人事件に捲き込まれた主人公という、割りとありがちな話でトリック的にもイマイチと思っていましたが、最後の主人公のセリフがジワる。 「暮林紅子の誤算」は、密室殺人を扱った倒叙ミステリで、ブリテンの例のパロディ短編をより複雑にして捻ったような作品です。 最後の「陽奇館(仮)の密室」も、倒叙✕密室モノだが、最終的に明かされる密室トリックは.、叙述の技巧でカムフラージュされてはいるものの、「あとがき」を読むと、もはや作者も読者からのツッコミを待っている感さえあるw |
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| No.2498 | 7点 | 地雷グリコ 青崎有吾 |
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(2026/08/13 16:04登録) 都立頬白高校の一年生・射守矢真兎(いもりや・まと)は、女子高生ながら、勝負事にはやたらと強い。 文化祭の場所取りを賭けた生徒会の役員との罰則付きグルコ・ゲームを皮切りに、次々と現れる強者を倒し、”実践向上(キャリアアップ)”を目指す。だが、ギャンブルはどんどんスケールアップして行く。 今作は学園モノだが謎解きミステリではない。一言でいえば「頭脳バトル」です。 子供の遊びをモチーフにし、それに特殊ルールを加えたゲームの数々、百人一首を使った神経衰弱、独自手を追加した「自由律ジャンケン」、歩数と文字数を入札できる「だるまさんがかぞえた」など、頭脳戦、情報戦、心理戦が繰り広げられる。相手が仕掛けたワナを見破リ、イカサマを暴く、ルールの盲点を見つけるというバトルゲームであり、コンゲーム的な面白さを味わえます。乱暴に言ってみれば、”女子高生版の「麻雀放浪記」w”です。ただ、それからノワールの要素を取り除いて、替わりに青春小説の成分を多めに入れた感じがあります。 3年前に本書が出て評判になりましたが、オリジナル・ゲームによる頭脳戦ということだったので、個人的には、ルールの理解など面倒クサそうだったのでスルーしました。今回文庫化になって手にしましたが、巻末解説の小川哲氏の思いが同感でビックリしました。既存のゲームにこの程度のルールの追加であれば問題はありません。ただ、最終話の特殊設定の「ポーカー」ゲームは、ポーカーの運の要素を抑える一方で、頭脳戦の範囲を逸脱してる感は否めない。 |
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| No.2497 | 6点 | ハウスメイド3 最後の秘密 フリーダ・マクファデン |
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(2026/08/10 11:54登録) ”必殺仕事人のハウスメイド”ことミリーを主人公としたシリーズ、まさかの第三弾。 前科者のミリーは庭師のエンツォと結婚しハウスメイドを引退、今は40代の主婦で小学校高学年の娘と低学年の息子を持ち、一家4人で郊外の一軒家に引っ越して来たのだが……………。 隣人のセレブな妻スゼットは何かとエンツォに色目を使い、夫のエンツォの行動も何処か怪しい。さらに向かいに住む詮索好きで息子に過保護なシングルマザー・ジャニスの言動にもイライラさせられる。全体の半分を占める第一部は、ミリーを狂言廻しにした、ご近所トラブルと子育てトラブル風のエピソードが語られていくファミリードラマ風の展開で、面白くないと言うことはないのですが、前2作とはだいぶ方向性が違う感じがあります。本筋とは関係がなさそうな60代のハウスメイドの登場や、ジャニスの言動などは終盤の急展開の原因の伏線になっている。 とにかく第二部の最後に、ある人物が発する一言が爆弾となってからの急展開がなかなか読ませます。さすがに第1作には及ばないけど、そこそこ楽しめるサスペンスでした。ちなみに、本書の原題は”Housemaid is watching”で、やっぱり松本清張オマージュでした(違) |
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| No.2496 | 6点 | 痛苦の聖母 ジョン・ブラックバーン |
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(2026/08/05 12:00登録) ”血の伯爵夫人”ことエリザベート・バートリの伝説に材を取った新作舞台「痛苦の聖母」が、ロンドンのペガサス劇場でまもなく初日を迎えようとしていた。主演のスーザン・ヴァランスは大女優ながら傲慢・不穏な性格で悪評があった。ゴシップ紙の記者ハリー・クレイは、暗い過去を持つ医師トレントンが彼女の元に出入りするのを目撃する。 また別の日、パブの隣のブースで窃盗団の三人組の、財宝の所在と遭遇した恐怖体験についての密談を漏れ聞いたハリーは、特ダネの臭いを感じ取り、彼らを追跡調査していると、次々と不審死に遭遇する。やがて事件はトレントン医師や女優のスーザンとの関連が見え隠れしてきた。精神科医ミリアムと知り合ったハリーは、悪夢のような事態を防ぐべく開演直前のペガサス劇場に向かう……………。 80年代以降のキングやクーンツが人気を博する前の、モダン・ホラーの先駆者とも言われる英国人作家ジョン・ブラックバーンの1974年の作品です。国際謀略スリラー担当の英国情報部カーク将軍や、バイオ・ホラー担当のレヴィン卿というレギュラーキャラクターが出てこない単発モノなため、かえって先が読めないというか、物語の全貌が分からない。伏線を効かせたミステリ要素が楽しめて、また怪奇趣向の強い作品です。翻訳既刊でいえば「闇に葬れ」に近い感じを受けました。 17世紀のハンガリーの伝説、「血の伯爵夫人」エリザベート・バートリの悪魔じみた所業と、その後日譚が重要な要素になっていますが、本文で説明があるので知らなくても問題はありません。(ちなみに、島田荘司の「アトポス」にも不必要なほど詳しく書かれているw) |
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