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ミステリの祭典

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アンジェリック

作家 ギヨーム・ミュッソ
出版日2025年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2026/02/04 09:25登録)
心臓の病で入院中の元刑事タイユフェールがシューベルトの音色で目を覚ますと、病室にはチェロを演奏する見知らぬ少女が立って居るという、なんともシュールなシーンから始まる本作は、いかにもフランスミステリらしいエスプリの利いた作品です、一気に物語に引きこまれます。
その17才の医学生ルイーズの用件は、アパルトルマン6階の自宅から母親が転落死した真相を洗い直して欲しいというものです。おお、これは退職刑事によるベットディテクティヴかと思いましたが、実際はこのコンビによる実地の探偵活動が、始まります。
本作の構成が変わっているのは、同じアパルトルマンの上の階に住んでいた画家の男が同時期に亡くなっているという情報を探偵コンビが得た段階で、物語が中断し、第二部で別の人物の視点で、墜落事件の真相や別の犯罪が語られていくのです。
第三部で再びコンビの探偵活動に戻りますが、読者にとっては、既に知らされている事実を読まされることになるわけで、その辺は工夫が必要だったかなと思います。第三部には一応別のサプライズが、用意されてはいますが。
いずれにしても、なかなか面白い作品で、年末ランキングなどであまり取り上げられていなかったのが不思議です。本当は深く突っ込んで評したい点もありますが、管理人さんが「ネタバレは禁止していない」と宣言しているとはいえ、実態はやや違うので、クレームがあってもすぐ抹消出来るよう、下記に、それに関わるフレーズだけ書いておきます。
と言う訳で以下はネタばらしです。


①まるで天使のようなアンジェリックは反語?
②パトリシア・ハイスミスの某作とは、「なりすまし」テーマのプロットは勿論のこと、共に主人公の名前がタイトルになっている(邦題)点など、共通点がある。

No.1 8点 人並由真
(2026/02/04 05:24登録)
(ネタバレなし)
 2021年9月6日。コロナ禍のパリのアパートの6階から、元トップダンサーのバレリーナで52歳のステラ・ペトランコが転落。死亡した。ステラの娘で、飛び級医大生でもある17歳の美少女ルイーズ・コランジュは、入院中のパリ警視庁元警視で47歳のマティアス・タイユフェールに接触。事故死と認定された母ステラの死の経緯の再調査を願うが。

 2022年のフランス作品。

 結論から言うと、非常に面白かった。
 これで評者が呼んだミュッソ作品は4冊目のはずだが、これがダントツに一番、出来がよろしい。

 中盤でいきなり物語の外側が割れ、中味が見えたようになる……? が、当然ながら紙幅はまだまだ残っているので、このあと何があるのかとハラハラワクワク読み進めるが……(後略)。

 とはいえたぶんミュッソの頭の中にあったのは、1950年代の欧米の某・名作ミステリだろうね。だがそれを良い意味でパーツのファクターとして取り込み、プロットレベルで二つ三つヒネることで独自の作品にしている。
 
 全部で300ページ足らずだが、エネルギッシュでパワフルな展開。
 サプライズのために一部の登場人物の思考をゆるくしてあるような箇所もまったくないではないが、まあ許容範囲。
(逆に本作を低めに評価する人は、その辺のラフさを突いてくるかも知れんが。) 

 作者は20作以上も長編を書いていながら、邦訳はまだ3分の1以下? というのがもったいないなあ。翻訳者の吉田氏はこれで翻訳家業を引退だそうだけど(長らくお疲れ様でした&ありがとうございました)、今後もミュッソの未訳の秀作が紹介されることを願う。

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