| もつれ星は最果ての夢を見る |
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| 作家 | 市川憂人 |
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| 出版日 | 2025年10月 |
| 平均点 | 7.50点 |
| 書評数 | 4人 |
| No.4 | 7点 | kanamori | |
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(2026/02/10 09:08登録) エンジニアの零司は、会社の上司から要請され、第39回の宇宙開発コンペに出場することになった。地球から十光年離れた未開の地球タイプの惑星に降り立った零司は、コンペ参加者の銃殺死体を発見することになる。宇宙船制御AIのディセンバーの知識を使いながら、調査を進めようとするも、何故かコンペ運営本部との通信が不能になってしまう。 宇宙という「広すぎるクローズドサークル」を舞台にした連続殺人ーー「ハードSF✕本格ミステリ」です。 本格的に物語が始まる前に、現代物理学の二つの柱である相対性理論と量子力学について簡単な言及があります。前者のウラシマ効果や、後者のシュレディンガーの猫、神のサイコロ遊び、量子もつれ等々で、ハードSFの雰囲気だけは味わうことが出来ますw 量子もつれについては、後々タイトルにも繋がるキイワードだったことが分かる。 ディセンバーが自律思考が出来るAIであることが明らかになってからは、零司とAIのバディものの捜査小説のようになります。謎ディナの毒舌執事を思わせるディセンバーが面白いです。 アシモフ「鋼鉄都市」の刑事とロボットのバディものの発展形ともいえますが、ロボット工学三原則のような規制はなく、自律思考が可能というのがキモといえます。 あとは、いつ自由の女神像が出てくるのかの興味で、チンタラ読んでいていたら、終盤にはいる直前に、それを超える驚天動地の事態が待っていました。これは凄いです。 ミステリ要素のフー・ハウ・ホワイもいいですが、やはりハードSF要素が一番の読ませどころだと思います。 |
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| No.3 | 8点 | みりん | |
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(2026/01/18 18:26登録) いつもの特殊設定ではない立派な"SF"ミステリー 毒舌AIと中小企業エンジニアのコンビはマリア&蓮から年齢いじりを取り払った程度の既視感のある造形(笑) 亜光速航行、量子テレポーテーション、もつれ粒子対、惑星探索等々…ノーランが映画化したらさぞ面白そうなガジェットを下敷きに五十光年離れた惑星で銃殺遺体が見つかるというもの。基礎的な量子力学の内容はイチからレクチャーしてくれるのでかなり親切です。 こういうのを読むたびに、宇宙空間や宇宙船などのディティールをどうやって調べ上げるのだろうと感心するばかりです。 途中からもう殺人なんてどうでもいいじゃんと思うくらい話が壮大になり、SF要素が面白くなっていくのでジャンルはSFに投票しておきます。 好き度では『揺籠のアディポクル』、凄い度では『もつれ星』に軍配かな 【ネタバレのような何か】 ドラえもんのコミックス17巻に登場する「バイバイン」みたいな展開ですね。本作はここまで壮大にしたのに、とても綺麗に話を収束させたなあと、風呂敷の畳み方にも感心しました。 |
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| No.2 | 7点 | メルカトル | |
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(2026/01/16 22:24登録) 量子テレポーテーション通信の開発によって、遠く離れた星同士でも通信が可能になった時代。宇宙開発コンペに参加するため、地球から十光年離れた星に降り立ったエンジニアの零司と相棒のAI・ディセンバーは、別の区域にいるはずの競合相手、ピエールが何者かに銃殺されているのを発見する。 ほかの参加者に事態打開の協力を求めるも拒絶され、さらにコンペ運営本部との通信も途絶えてしまい、零司とディセンバーは孤立無援に陥るが―― Amazon内容紹介より。 なかなかのハードSFだと思います。難解な表現や専門用語が頻出する場面もあり、頭の弱い私は話に付いて行くのに精一杯で、何とか想像で補って読みましたが、全容を把握できたとはお世辞にも言えないですね。再読すればそれなりに納得行くシーンもあったでしょうが、いずれにしても頭の中がぐちゃぐちゃにされるでしょう。悪い意味ではありませんよ。 ハードな割りにはライトな文体で、会話文が多くて助かりました。終盤は圧巻でこれは間違いなく本格ミステリだと思いました。外見はSFそのものではありますが、要約すればやはり作者らしいミステリだなと。様々な問題を孕んだ本作は一般読者向けではないものの、SFファンもミステリファンも十分納得の出来であり、読んで損はないと断言できるだけのものは持っている作品だと思います。 |
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| No.1 | 8点 | 虫暮部 | |
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(2025/11/22 12:33登録) 逆マトリョーシカと言うか、剥いても剥いても上には上があった。 単なる装飾に留まらない結構本気のSF設定を受けて、“作者はフェア・プレイが身上のミステリ作家だ” と言う先入観が邪魔なのでは? と途中までは思っていたが、寧ろそれは強力なミスディレクションなのか。伏線の鏤め方はパズラーの流儀ながら、こちらの思い込みを軽々超える展開に呆然。 ただ、情報量がトゥー・マッチな感はあって、終盤こうなっちゃうなら、殺人事件はもっとシンプルでも良かったかも。 |
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