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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:258件

プロフィール| 書評

No.258 5点 ネバーランド
恩田陸
(2024/04/28 13:09登録)
恩田陸を読むとノスタルジーにたっぷり浸れる…ミステリじゃないけどいいねこういうの。平日の睡眠時間を削って、ではなく休日にゆっくり読むと更に心地よい。
腐のにおいも少々…


No.257 5点 パニック・パーティ
アントニイ・バークリー
(2024/04/28 01:37登録)
シリーズ最終作!ロジャー・シェリンガム最後の事件!!感動のラスト!!!…とはならずにヌルッと終わってしまいました笑 ドライですねぇバークリーさん…
評点の低さに身構えてしまいましたが、サスペンス小説としてまあまあ面白いですよ。孤島に集められた15人のうち1人だけいなくなると、そこからはパニック小説が始まります。食糧の調達とか住処の確保とかサバイバル要素もあればもっと面白かったかもなあ…
テーマはおそらく極限状態に垣間見える人間の本性という(よくある)ヤツなんだろうな ※自分にはそれくらいしか読み取れず(´-ω-`)
推理できる要素がほぼありませんでしたが、「主催者の目的」についてはわりと納得のいく良いサプライズでしたね。3人ほど血の通ったキャラがいてそこも良し。


シリーズを読み終えて、バークリーの印象は逆張りおもしろおじさんって感じだ。一気読みするには勿体無い作家だったな。王道探偵小説×10→バークリー×1 くらいの配分で読み進めるのが正解だった気がする。なんにせよ黄金期英米ミステリは未読作ばかりなのでこれからが楽しみです。
んーところで、1作目と2作目にだけ登場したワトソン役のアレックって何だったんだろうなアイツ。


No.256 8点 ジャンピング・ジェニイ
アントニイ・バークリー
(2024/04/26 16:25登録)
久々の倒叙ミステリですねぇ
シェリンガムが殺人の証拠をなんとか揉み消そうとあれこれ奔走する作品。序盤は登場人物+扮装姿を覚えるのが辛く、30ページ進めるのに1時間かかりましたが、それを乗り越えると一気読みできるほど面白かったです。今作はシェリンガムが窮地に立たされる!?という展開もあり、検死審問では「こいつヘマすんなよぉ…」と願うほど、ハラハラさせられました。
全体を通してバークリー節が炸裂しており、オチだけでなく過程も全てアイロニカルです。これがロジャー・シェリンガムシリーズの最高作ではないかな?
次でラストか…『パニック・パーティ』の評点を心配しつつ(笑)、シリーズのラストをこの目で見届けることにします。


No.255 7点 地下室の殺人
アントニイ・バークリー
(2024/04/24 03:07登録)
モーズビー警部視点による警察捜査小説のような感じで新鮮でした。これまたなかなか楽しい(^^)
そしてついに、シェリンガムの小説家としての実力が第二部「ロジャー・シェリンガムの草稿」にて発揮されます。「シェリンガムさん、これで終わりですか。残念だな。ちょうどおもしろくなってきたところなのに」とモーズビー警部が嘆いてますが、大変共感です。私もローズランドハウス校ストーリーをもっと読みたかったですね。

【以下結末を仄めかすような記述あり】


警察捜査小説という新たな趣向意外で今作1番の見どころは、犯罪心理の追求>>>物的証拠の追求 というシリーズ共通(?)のテーマを長編第八作目にしてようやく達成できたところではないでしょうか。シェリンガムの心理探偵っぷりがやっと実を結んだのではないかと思います。今回は被害者がそこまで悪者とは思えず(描写不足か?)、結末にもやもやした感情が残ります。



解説は『最上階の殺人』に引き続き真田啓介氏。ちょうど同氏のバークリーについてのブログで↓の弾十六さんが紹介されたことでタイムリーな方!30ページほどあり、バークリーへの愛が溢れています。
バークリー作品では"ストレートが逆に変化球"  良解説でした。


No.254 7点 最上階の殺人
アントニイ・バークリー
(2024/04/22 03:23登録)
くぅ〜毎度毎度よくもまあ真面目な探偵小説読者をコケにするようなプロットが思いつくねぇ(褒めてます)。まさに笑劇の結末!!まあシリーズを通してワンパターンではあるんですが、演出の勝利です。今回もロジャー・シェリンガムがド派手にやってくれます。モーズビーとの勝負は今のところ大目に見て引き分けということで

今年の2月に刊行された創元推理文庫の方で読みましたが、『第二の銃声』と同様にフォントサイズが小さすぎて発狂しかけました(怒)
解説の「バークリーvsヴァン・ダイン」では2人の作家の両極性について述べられてて、非常に興味深かったです。この2人はバリバリ同年代の作家みたいです。ヴァン・ダインってE.Qに影響与えてるくらいだから、もっと古い作家(ポー・ドイルの次くらい)だと勘違いしてたよ…笑


No.253 7点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2024/04/21 17:01登録)
う…すこし期待しすぎたか?

【色々ネタバレ注意】




草稿なんていくらでもひっくり返せるからなあ。
先にやったのは向こうみたいだが、フェアさや犯罪心理を掘り下げるエピローグなども含めてこちらの方が圧倒的に好みではある。その作品とはまた別の有名なアレとかアレとかが思い浮かんだが、この頃の英米ミステリでは夜神ライト的思考が流行していたんですかね?
大ネタに隠れて、名探偵へのアンチテーゼ部分もあり。また、今後の探偵小説では数学的進化が廃れ、心理学的な要素、すなわち人間性の謎について焦点が当たるという将来的展望もあり。このままバークリーを読み進めていくと、パズラーにハッキリと見切りをつける瞬間が訪れるのでしょうか。楽しみです。

※まあ、少なくとも国内の本格は21世紀を迎えても未だ数学的進化を遂げているようで安心ですよ笑


No.252 7点 絹靴下殺人事件
アントニイ・バークリー
(2024/04/20 19:53登録)
ロジャー・シェリンガムという探偵の性格上、いまひとつ緊張感に欠けるこのシリーズですが、今作は比較的シリアスな雰囲気が漂っていました。アレックもアントニイも不在なのが一つの要因だと思います。しかしラストのユーモア溢れる仕返し!!待っていました(+1点) 前作『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』を読んでからのほうが確実に楽しめるでしょう。
ロジャー・アレックコンビが恋しいなあ…戻ってきてくれい!

※ん、そういえば本作(シリーズ4作目)の次が『毒入りチョコレート事件』なのか。てっきり「犯罪研究会」とやらがシリーズを通じて徐々に結成されていくもんだと思ってたな・・・ちと残念。てかそれなら『毒チョコ』に出てくるあの6人目の探偵は一体誰??

フランス警察とイギリス警察の違いなどもなかなか興味深く…
つーかシェリンガム完全レイシストだなこれ。ドイツになんの恨みが…あ、第一次世界大戦か


No.251 8点 ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎
アントニイ・バークリー
(2024/04/19 09:56登録)
いやあ痛快、痛快!
現代ではありふれていますが、ロジャー・シェリンガムがたどり着いた○○○○トリックは、本作が探偵小説史上初の試みなのでしょうか?? そうだとすればバークリーの発明であり、もし私がコレを世界で初めて考案できたならば、膝をついて歓喜し、堂々と世に出すことでしょう。

【以下未読の方は読まないことを推奨】



しかし、バークリーは易々とソレに飛びつくほど、甘くはありません。発明とも言える○○○○トリックを惜しげもなく犠牲にして、メタ・ミステリに昇華させます。あぁ…なんてアイロニックな作家なのでしょう… ますます好きになってしまいます。しかし、『ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎』などという微妙なタイトルよりも『○○○○』にした方が良かったのではないでしょうか。nukkamさんもおっしゃっているように名を残せたかもしれないのに…


No.250 6点 ウィッチフォード毒殺事件
アントニイ・バークリー
(2024/04/17 21:04登録)
突然ですが問題を出しましょう。
クリスティ(17) クロフツ(12) ヴァン・ダイン(4) クイーン(5) カー(0)とするとバークリー(?)←このカッコの中に入る数字は何でしょう。(国書刊行会『レイトン・コートの謎』の巻末解説より引用・改題)






「77」と正解できた方、バケモノです。尊敬します。()の中の数字は長編第一作が邦訳されるまでに要した年数とのことです(カーはや!)。 なんでこんな問題を出したかというと、このシリーズのレビュー数がこんなに少ないのが不思議だったからですが、ようやく分かりました。このシリーズを日本語で追えるようになったのはつい最近のことだったんですね。その幸せを噛みしめながら、これからも続きを拝読いたします。

ロジャー・シェリンガムは私にとって大変魅力的な探偵です。読者に隠し事をしないのもそうですが、ロジックや物的証拠より人間の心理を重視する探偵ってのも珍しいです。決め手は結局証言なんかいってツッコミは置いておきます。2転3転した先の真相は脱力系ではありましたが、言われてみるとたしかに盲点でした。あと、他の方も触れておられますが、本筋以外の最大の注目点はシェリンガムの尖りすぎた女性観でしょう。エクスキューズも用意して保険バッチリです笑

珍しく誤植っぽいを見つけたので指摘(初版なので、版によっては治ってるかも)
晶文社(ハードカバー) p293の最後の行 
× アレンは暖炉のそばで〜
○ アレックは暖炉のそばで〜


No.249 7点 レイトン・コートの謎
アントニイ・バークリー
(2024/04/15 16:59登録)
こちらも面白かった。やや拍子抜けの密室をバチっと決めてくれていたら8点以上でした。
ロジャーとアレックの軽快な会話がずっと楽しいです。ホームズ、ポアロ、レーン(くらいしか知らない笑)の推理のもったいぶり具合にイラっとする私のような読者におすすめです(国内だとこういう系の探偵代表は御手洗か京極堂?) 最後に全て明かされた方がカタルシスは増大するので一長一短ではあります…
本作は最後の推理が最も衝撃的だったので、一長の方でしたね。
あと、単行本182ページあたりの『少なくともあの女は兄さんだって言ってたね』ってユーモア部分がよく分からなかった。


【ここからネタバレ】



誰も不幸にならないラストは素晴らしいですが、今後もこの2人のホームズワトソンコンビは継続してくれるのでしょうか。それを祈るばかりです。


No.248 6点 空を飛ぶパラソル
夢野久作
(2024/04/14 19:19登録)
収録作は『空を飛ぶパラソル』『いなか、の、じけん』『復讐』『ココナットの実』『怪夢』『キチガイ地獄』『老巡査』『白菊』からなる8編。怪作『白菊』は読むたびに評価が上がる。未読の5編を書評。

空を飛ぶパラソル 6点
米澤穂信『王とサーカス』の先取りで、ジャーナリズムへの警鐘。2編を通して主人公がまるで成長していないというナンセンスユーモア(?)も夢Qっぽくてイイ。
『死後の恋』に通ずるような猟奇描写もあり
"その途中の処々に鶏の肺臓みたようなものが、ギラギラと太陽の光を反射しているのは脳味噌であろうか" 角川文庫p10より

復讐 7点
予想がつくベタなオチだがそこに至るまでの過程がかなり面白い。この時代の精神病の扱いについて再認識できる。

ココナットの実 4点
エラ子がかわいい。萌える。

キチガイ地獄 8点
お得意の独白体。とある男のドラマティックな半世だけでも楽しめるし、狂気を感じさせつつ少し笑ってしまうようなオチも秀逸。途中で「誰もさわれない〜♪ 2人だけの国〜♪」という歌詞が頭の中で流れた。これが1番!

老巡査 4点
夢Qにしては超平凡なお話。うだつの上がらない老巡査のサクセスストーリーです。


No.247 7点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2024/04/14 11:56登録)
個人的にはABCに匹敵するくらい面白かったです。
国内の有名古典にも同じものがありますが、本作はこういう系のトリックの元祖として、ABCと同等クラスの評価をされるべきなのでは…?と思いました。


【以下トリックのネタバレあり】



それとは別の時間差毒殺ケミカルトリックの方ですが、すごくユニークな発想ですね!こういうの好きですよ。ですが、底に溜まった沈殿物を無警戒に飲み込んでしまうものなのだろうかと少し気になってしまいました。どういう状態の液体か分からないのであまりなんとも言えませんが…
あと、ラストの決定的証拠の隠し場所についてですが、食べた方が良いと思います(追記:と思ったら他の方が全く同じことを指摘していました笑)

と不満点が2つほどありましたが、全体的には処女作と思えないほどハイクオリティな本格であり、大小さまざまなプロットやお手本のようなミスリードが楽しめる良作で間違い無いでしょう。


No.246 3点 金閣寺
三島由紀夫
(2024/04/13 17:41登録)
三島由紀夫が登録されているなんて知らなかった。クライム/倒叙で合ってんのかな?
昔はジュンブンガク楽しめねぇ…こんなのよりミステリー読もうぜ!って感じだった
でも今読むと・・・・

ジュンブンガク楽しめねぇ…だった( ; ; )

【以下ネタバレ。少年漫画『進撃の巨人』のネタバレもガッツリあるので要注意】


読了後の感想としては「こいつエレン・イェーガーじゃん」である。で、他に同じ感想を抱いた人がいないかを検索して確かめると、見事にとあるブログ(面白かったのでおすすめ!)がヒットして感動した。
『進撃の巨人』の主人公エレンは「外の世界」を未開の理想郷、ひいては自由の象徴と信じて、それを原動力に進み続けます。しかし、物語中盤で外の世界では同じように人間が住んでいることが明かされるのです。最終的にエレンは外の世界を平らにする「地鳴らし」を選択し、壁外人類の大量殺戮を決行します。エレンはその恐るべき過程を眺めながら「これが自由だ ついに辿り着いたぞこの景色に」と呟くのです。そう、これと似たようなシーンが『金閣寺』にもあります!!

自由→美  壁→吃音症  外の世界→金閣寺  地鳴らし→放火
にそれぞれ置き換えると、あら不思議!『進撃の巨人』のエレンが『金閣寺』の溝口に変わります!ちなみに嘘です。どうやら溝口が金閣寺を放火した理由はそこまで単純じゃないみたいですね。見どころは金閣寺の美の本質とされる"虚無の予兆" 。よく分からないのにカッコいいです(誰か解説して!)


No.245 7点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2024/04/10 02:33登録)
300ページまるまる解決編!! "推理"小説としてあまりの無駄のなさに感動を覚えるレベルでした笑
推理合戦+アンチミステリって感じで、『虚無への供物』とは皮肉る部分は異なっているけれども、通ずるところがありますね。

めっちゃ楽しめたけど、あえて不満点【以下ネタバレを含みます】

あらかじめ推理に使われる材料が揃ってから、6通りの解決を示されれば「おぉ…すげぇ…」ってなるのですが、隠された情報を後出しされて推論を立てられると、「ほーん、なるほど」程度になっちゃいます(これなんで?)
うーんでも作者がアンチミステリの部分を主張したいからこそ、あえて情報を後出しにしたと思われるので、これに関しては不満を言ってもしゃーないか… ちなみに私はシェリンガムの推理が1番好き!! 特にユースタス卿に届いたチョコレートは○○○○○で、後に犯人が○○○○○という工夫の部分は、非常に感心しました。


※あとこれ多重解決の元祖なんですね。はじめて刀城言耶シリーズを読んだ時は「この探偵すげぇ…斬新すぎんだろ…」となったけども、アントニイ・バークリーの功績だったのか。じゃあ10点満点付けないとダメな気がしてきたな。
好きになる作家が三津田信三、白井智之、方丈貴恵となぜか多重解決作家ばかりなので、元祖を読めて良かった。とりあえず、ロジャー・シェリンガムシリーズは追いかけます。


No.244 7点 押絵の奇蹟
夢野久作
(2024/04/07 22:03登録)
『瓶詰の地獄』『ルルとミミ』に続く兄妹サーガ。
ピアニスト・トシ子の出生について、3つの解釈が提示されるリドルストーリーとなっており、謎解きが好きなら超おすすめですよ!! 夫婦児というのがすべて丸く収まる解釈ですが、私は頭メルヘン読者なので、3つの解釈の中で最もぶっ飛んでいる"押絵の奇蹟"とやらを信じたいところです。『ドグラ・マグラ』では人間は細胞単位でモノを考え、心理が遺伝するという「脳髄論」が大変衝撃的な内容でありましたが、こちらの『押絵の奇蹟』でもソチラに通ずるような新説があり(わざわざ論文調の書物まで載せて笑)、非常に楽しめました。「脳髄論」「胎児の夢」よりは説得力に欠ける内容でしたが、短編なので仕方がないでしょう。
テーマは「プラトニック・ラブは遺伝学を乗り越えられるのか」であり、夢野久作はその答えを読者に委ねている… ということにしておこう

『氷の涯』と『あやかしの鼓』は他の書評で書いたので割愛
とにかく、『押絵の奇蹟』を表題にした角川文庫グッジョブです!


No.243 3点 レベッカ
ダフネ・デュ・モーリア
(2024/04/07 21:21登録)
"どこでこわれたの oh フレンズ"
で有名な神バンド、この小説から名前とってんのかな?

こじつけておくと、この作品もマキシムとわたしが友情関係(とても短いが)から恋愛関係に発展し、ギクシャクするところから始まる。わたしがマンダレーに招かれ、先妻であるレベッカの存在に劣等感を抱くパートが長くてかなり退屈でしたね(この作品を元ネタにした泡坂妻夫『花嫁のさけび』を先に読んだせいで、展開も大体知ってたし)。
ハードカバーで600ページ弱と大長編ですが、400ページあたりから、起承転結の"転"が訪れ、ようやく面白くなってきます。
で真相とオチに関してですが、正直どちらもふーんって感じでした。結末を読んでから1章を読み返すと、ああ…そういう描写だったのねと。8時間読んだご褒美としては少し物足りなかったです。

「英米のベストセラー」「20世紀のゴシックロマン」「ミステリーの金字塔」と評価されている大名作にこんな元も子もない感想しか出てきません。情けないです。内面を深く抉るような心理描写や文学的価値が評価されている理由は大変よく分かりましたが、単なるパズルミステリーが好きな方にはおすすめできません。

あと、個人的には「マンダレー」より乱歩の『パノラマ島』の方がはるかに魅力を感じました。比較対象としておかしいかもしれませんが。


No.242 6点 花嫁のさけび
泡坂妻夫
(2024/04/04 23:40登録)
また騙されちまった! 泡坂妻夫の騙しの業には今のところ全敗。

【直接的なネタバレはありませんが、未読の方は読まないことを推奨】

序盤はロマンス溢れる雰囲気で悪くはないが、血みどろの惨劇を求める私のような読者にとってはかなり退屈だ。しかし、恩田陸の解説によるとこれらはすべてダフネ・デュ・モーリア作の『レベッカ』という名作小説を下敷きにした壮大なミスリードだったらしい…!私のように古典の教養がないと、こういうオマージュが楽しめなかったりする(笑)
んで、その仕掛け以外の密室トリックですが、ありきたりすぎて驚きはなかったですね(気づけはしませんでしたが)
騙しの姿勢と密室トリックが相殺して6点


恩田陸が解説で、"「あっと驚くトリック」を求めて巷を徘徊する本格ミステリのファンとして読んだ時は衝撃を受けなかったが、同業に手を染めてこの作品の凄さがわかった"的なことを書いているので、玄人好みの作品だと思います。私はまだ前者です笑

結論:古典と触れ合うことは大事!


No.241 7点 危険な童話
土屋隆夫
(2024/04/02 23:26登録)
泡坂・笹沢・連城・鮎川と続けて書評してきたので、なんとなく読むならこのタイミングだろうと思い、初の土屋隆夫作品を手に取る。

童話ってロマンチックで幻想的で意味深で夢があって好きだ。なにより、本筋とどう絡んでくるのかと期待感が膨らむ。凶器消失に無敵のアリバイ、もう面白くないわけがない。実際に童話の使い方のうまさに感心した。あと、こういう動機には弱いなあ…犯人がトリックに○○○を利用したのも、犯人なりの復讐なんでしょうね。でも、わりと魅力的だった謎が主人公木曾刑事の手によってちまちま解決されていくので、ちょっとだけ損した気分に…何も知らされていないワトソン役が語り手で、最後に探偵役が全て種明かしをする様式だったらさらに驚けたかも(笑)

とにかく、今後も継続して読むことが決定した作家さん。しかしなあ、1960〜1970年代ってこんなにもレジェンド作家達が揃っていたのに、なんで"本格"が冬の時代を迎えていたのかよく分からんな。普通に黄金期では? まあ当時のことは何も知らんので、あんまりテキトーなこと言わんとこ


No.240 6点 憎悪の化石
鮎川哲也
(2024/03/31 13:26登録)
鬼貫警部シリーズ第二弾
【直接的なネタバレはありませんが、未読の方は読まないことを推奨】

メイントリックは超シンプル。鬼貫サンは苦戦したけど、現実の警察が少し調べたら真っ先にバレそうですねぇ… そしてアリバイトリックが露呈した時点で殺人犯と確定するため、リスクリターンが…まあ推理小説って大体そういうもんか
もうひとつのアリバイトリック(今となってはインパクト薄目だが当時なら斬新?)の方がメインで良かったのではと思います。
しかしながら島荘の吉敷竹史シリーズしかり、アリバイ崩しものはそのトリック自体より警察の地道な捜査のプロセスを楽しむものだと認識しているので十分楽しめました。中盤でアレがデカデカと載せられ、メタ的に犯人が確定してしまうことだけは勘弁してほしいが

終盤で唐突に日本の暗部にスポットが当たるのもまたこの時代の本格における一興ですね(笑)


No.239 6点 流れ星と遊んだころ
連城三紀彦
(2024/03/30 22:41登録)
同著者『ため息の時間』『カイン』と同様にBLを含む複雑な三角関係がテーマの物語。乱歩といいミステリ作家はBL好き多め(?)
結局誰が誰を好きなのか、その矢印が中盤以降ごちゃごちゃになり、恋愛小説としてクドイ。あと後期の作品であるからか、情景描写がほとんどない(その代わりに謎の比喩表現が多い笑)。
不自然な叙述で気になって読み進めていくと、待ってましたよコレ!という感じではありますが、長編を支えるには少し物足りずsophiaさんと同意見です。

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