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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.66点 書評数:540件

プロフィール| 書評

No.540 5点 暁星
湊かなえ
(2026/03/31 21:36登録)
元首相銃撃事件から着想を得た作品だと思うが、宗教2世の壮絶な半生を通して、政治と宗教の癒着やカルト宗教というタブーに切り込んでいくのかと期待したが、途中からラブストーリーになってしまった。こんなことを書くのは不謹慎かもしれないが、カルト宗教を解散に追い込むほど世間を大きく揺るがしたあの事件を目の当たりにした後では、このフィクションの意義がやや霞んでしまったように感じた。


No.539 6点 真実の眠る川
ウィリアム・ケント・クルーガー
(2026/03/29 00:20登録)
生まれた所や皮膚や目の色で
いったいこの僕の何がわかるというのだろう
読後に思わずこの名曲を聴いてしまいました。

1950年代アメリカミネソタ州の田舎町。町を流れる川で、ナマズに喰われた地主の死体が発見された。
事件はさほど重要ではなく、関係者の中で共に故郷を追われたインディアン(ネイティブアメリカン)と日本人女性にスポットが当たる。元軍人の保安官の捜査を通じて、戦争の傷跡や民族迫害の歴史を問いかける。まあ俺には勿体無いレベルに重厚で上品な文学作品だな。英題は「the river we remember」邦題の方が詩的でいいっスね…
500ページの二段組で紙面がびっしり埋まっているので体感は1000ページほど

※実は初ポケミスデビュー!今まで縦横比が気に入らず避けていた


No.538 7点 デスチェアの殺人
M・W・クレイヴン
(2026/03/21 11:46登録)
シリーズを追うごとに分厚くなっているこのシリーズ。物語全体の仕掛けはどこかで読んだことのあるような内容であり、事件の目玉も使い古された○○○○○トリックの乱打である。しかし、事件の背景に鎮座している悪事は、どんどんダークさが増している。それこそポーがPTSDになる程には。
シリーズの方向性が今後変わるような示唆もあり、最新作の翻訳が待たれる。ポー出生の謎についてはしばらくお休みかな?


No.537 6点 桜葬
斎堂琴湖
(2026/03/08 17:55登録)
バラバラ死体を路線に放り投げ、火を放ち、札束をばら撒いた後、駅のホームで投身自殺した男は満ち足りた顔で死んでいた…

動機一本に絞った内容で、あらすじ通りの実に不可解ともいえる犯人の行動が、3年前に起きた爆破予告事件を中心に徐々に明らかになっていく。
渦中の人間たちはいずれも大小様々な理不尽を抱えており、その理不尽を互いに押しつけ合って起こった悲劇だった。氷室だけは理不尽に向き合い、自分なりに答えを出して警察になった。例え利己的な目的であっても立派だと思う。だが、この事件のように、この世にはどうしようもない理不尽もある。ああ…犯人にとっては止むに止まれぬ理由だった…仕方がなかったんだ…というような結末の一歩先が読みたかった。


No.536 7点 アナヅラさま
四島祐之介
(2026/03/07 17:00登録)
当たり外れの大きい印象があるこのミス新人賞だがこれは個人的に当たりだ。
ホラーという要素を盾にして、説明できない部分をぶん投げるのではなく、あくまでミステリーとして決着させた上で、ホラー的解釈も残すというところがいい。

ただ、一点どうしても理解できない点がある。

ヤクザが死体と車をどこに隠したのかとドローンを飛ばして探索した時に、なぜ大穴が見つけられなかったのかという点だ。

【ここからはネタバレ】


私の読み違えでなければ、ここに関してはホラー(超常現象)として解釈するしかないのではないか。

初代アナヅラ様は2代目アナヅラ様を犯す時に謝罪の言葉を述べていたことから、何かしら虐待された経験があり、被害者の気持ちが分かる側の人間なのだろうと推察される。2代目と3代目のアナヅラ様はどちらも実の父親から性的虐待や暴行を受けていた。
つまり、この「大穴」は過去に虐待を受けて、心にぽっかりと穴が空いたような人間にしか認識できないのではないか。
ヤクザには見えなかったが、実際に人や車が消失しているということから「大穴」は実在する。だが、「大穴」を認識できる者、「大穴」に魅入られる者には法則があるのだとそう解釈した。

私の予想では、大穴とは口の比喩でカニバリズム的なオチかと思っていたら本当にただの大穴だった。「いやメ○ドインア○スじゃあるまいし、そんな大穴が日本にあるわけねえだろw」と、ミステリー好きの中には許容できない方が一定数いると思われます。そこを除けば、文章はワンセンテンスが短くスピード感があり、キャラクターはどこか漫画チックで、バトルありホラーありとエンタメ性が高くかなりおすすめです。


No.535 9点 妖星伝(一)
半村良
(2026/03/01 20:34登録)
序盤は、文章が格式高いNTR系アダルト漫画というカンジで少し面喰らい、鬼道という超能力をメインにしたバトルもの、江戸時代版の「甲賀忍法帖」なのかなあと思いながら読んでいると、中盤のRPG展開からスケールが無限に拡大していき、夢中になって読み耽ってしまいました。この作品は小説という媒体の無限の可能性を感じさせます

異星人を登場させることで、地球という星の特異性を描写し、人間はなにゆえ生きるのかという普遍的なテーマに落ち着くのでしょうか。

p150より引用
「米を作るものが米を食えんとはどういうことだ。何ひとつ作り出さぬ者ほどよく米を食うとはどういうことだ。武士がいったい何を作る。いくさ、人殺し、他に何の能があろう。それでいて百姓の上にいる」

嗚呼…400年たってもこの星は変わっていないようです…

ツカミとしては120点満点の内容です。
ただ、こういう風呂敷の広げ方が尋常じゃなく上手い作品には、幾度となく裏切られている(漫画あるある)のでまだ様子見です。
また面白そうな長編シリーズに手を出してしまった


※↓の雪さんのあらすじは無料で公開していいレベルじゃないです。妖精伝(二)を読む時の人物整理にありがたく使わせていただきます。特大感謝。

※おそらくサイトのルール的には上下巻とかと一緒の扱いなので、妖精伝(一)〜(七)で作品登録を1作品にまとめるべきなのでしょうが、既存の登録に従って、1冊ずつ感想を書いていきます。


No.534 5点 ボタニストの殺人
M・W・クレイヴン
(2026/03/01 19:34登録)
今回はポーの友人であるエステル・ドイルの逮捕という衝撃的な幕開けです。そして、本シリーズ初の密室でその数も二つありますが、両方とも『ブラックサマーの殺人』と同じくらいがっかりするので期待は禁物。今回は珍しく犯人当てがなく、評価できるのは射撃残渣のトリックくらいか。
ただ、シリーズとしてはかなり意外な進展があるので重要な回です。
そっちか〜 恋愛フーダニットも外したぜ


No.533 6点 祝祭の子
逸木裕
(2026/03/01 02:02登録)
これも文庫で購入し、少し前に一気読みしました。
新興宗教×ミステリーの内容で、幼少期から洗脳を受けた5人の忌み子がそれぞれの生きる理由を探し、懸命にもがく話です。そして、それ以上にアクション描写が漫画レベルで躍動していたのが1番記憶に残っています。教祖がただの良い人なので、祝祭さえなければ今の私はこの地上の楽園に入信しますね。


No.532 7点 さよならジャバウォック
伊坂幸太郎
(2026/03/01 01:43登録)
ちょっと前に読んで書評を忘れていたのだけど、面白かったのは覚えています。確か、脳に寄生生物「ジョバウォック」が宿るとリミッターが外れて人間の剥き出しの暴力性が発露するみたいなSF設定で、DVに悩む主婦が夫を撲殺するシーンから始まったはず。最近感銘を受けた『Ank a mirroring ape』に少し似た設定ですね。
音楽に造詣のある作者らしい展開とどんでん返しというよりサプライズ的な展開が2つありました。ジャンルは倒叙・サスペンス・SF・本格のどれかと思われます。


No.531 7点 影の告発
土屋隆夫
(2026/03/01 01:20登録)
百万回同じこと書いた気がするが、戦争が深く影を落とすこの時代のミステリーの雰囲気は定期的に読みたくなる。読み応えがあるし、インタールードの幻想性?リリシズム?とやらはこの作家の持ち味っぽい。
確かに言われてみれば『時間の習俗』らしさがあるし、トリックのリアリティが必ずしも面白さに繋がるとは限らないけど、それなりに盲点ではあった。ただ、『危険な童話』で取れなかったのに、これで推理作家協会賞取れたのはよくわからんな。刺青や獄門島が取れなかった話と同じようなもんか


No.530 7点 グレイラットの殺人
M・W・クレイヴン
(2026/02/14 17:35登録)
シリーズ4作目。安定して面白いし、700ページの長さだが無駄な描写があまりない。
今回は「MI5」という英国の暗躍組織が登場。日本の公安警察みたいなもの?
毎度犯人当て・動機の解明で終わらずに、犯人が判明してからの1対1での対決という劇的な展開に定評のある本シリーズだが、今回はそれに加えてMI5との諜報戦要素もあり。イギリス政府が隠蔽したかった秘め事がまるまる動機に繋がっており、スケールの大きい作品に仕上がっている。政治色もあり、英国民ならさらに評価は上がっただろう。
「ワシントン・ポーの出生の謎」というサイドストーリーがシリーズを通して着々と進んでいくのもシリーズ読者としては気になるところ。実はMI5はこのためだけに登場させたのでは?


No.529 7点 キュレーターの殺人
M・W・クレイヴン
(2026/02/10 19:36登録)
個人的にミステリーのオチで使われると萎える要素「上位者による操り」。しかし本作は実行犯を操るキュレーターの存在が物語中盤で手法まで明かされていたので逆に良かった。1作目『ストーンサークルの殺人』で描いた警察を手玉に取る狡猾な犯人像はここで一歩進化している。文生さん指摘の「この動機でこんな回りくどい手法を取るか?」とnukkamさん指摘の「途方もない偶然」については確かに自分も気になったが、このシリーズは映画のような迫力あるサスペンスと劇的な犯人との対決を描いてくれるので飽きない。
ポーとティリーの微笑ましさも相変わらず。くっついてもいいし、ずっとこのままの関係でもええですな(^^)


No.528 6点 ブラックサマーの殺人
M・W・クレイヴン
(2026/02/04 21:20登録)
早速シリーズ2作目に。書評被りはたまたまですよ(笑)
6年前に死んだと思われていた少女が生還したことで、ワシントン・ポーの捜査ミスによる誤認逮捕が発覚するというあらすじ。前作に負けず劣らずのヒキを用意できているが、確かにサスペンス要素は前作より弱いし、やや反則気味のトリックが用いられているという点でもイマイチだった。
キャラクター小説としては上々なので続きも読みます。
エドガーにポーにドイルまで登場したら…さすがに?


No.527 8点 ストーンサークルの殺人
M・W・クレイヴン
(2026/01/28 19:09登録)
英国推理協会のゴールド・ダガー賞なんざどうせ俺のお口には合わないぜと斜に構えて読んだところ、これが期待以上に面白かった。今まで英国の警察ミステリーをほとんど読んでいなかったので、色々な要素が新鮮に感じた。動機は特に日本ではあまり描けないでしょうね。個人的には両方頭脳担当のポーとティリーのコンビが至高。ミステリーというジャンルは結局キャラクターが大事なのかもしれない。

主人公の名前がポー、愛犬はエドガーって流石に狙ってるよね…?

【ネタバレ】


犯人の死が不確定ということは、続編で登場したりするのだろうか。本当に良いところで終わりやがった。結論として、自分もシリーズの続きが早く読みたい。


No.526 4点 ポー傑作選3 ブラックユーモア編 Xだらけの社説
エドガー・アラン・ポー
(2026/01/27 19:35登録)
傑作選3も出ていたようです。
今回はブラックユーモア編。ポー小説全集でわけわからんつまらんとなっていた作品も、翻訳者の解題を読むと「ああ、そういう皮肉だったのか」とおおよそ理解できる良書です。これは100ページに及ぶ作品解題が本体と言っても過言ではありません。例によって2読目のはずなのにほぼ全て初読の読後感(メッツェンガーシュタイン除く)でした。200年前の捻くれ者のユーモアや皮肉を理解できたところでなんなんだという気持ちもあり、こんなのはポー心酔者しか読まなくていいでしょう。私は信者ではないのでこの評価。
ちなみにブラックユーモアの要素が微塵もないと思っていたミステリー仕立ての傑作『長方形の箱』が載っているが、解題を読むと確かにユーモアの範疇なのかと。
まあネタ切れっぽいので傑作選4は出ないでしょう恐らく。


No.525 8点 禁忌の子
山口未桜
(2026/01/25 12:27登録)
自分と瓜二つの溺死体を検死するという冒頭から求心力はそこそこあるが、これを引っ張られるとシラけるところ、勿体ぶらずに中盤で明かしてしまうところに作者の余裕を感じた。
むしろこれは囮だ。この物語の着地点はそれを数段飛び越えた遥か先にあるのだと。密室ですらロジックのための駒として使い捨ててしまう余裕ぶり。
数学の背理法と条件分けを巧みに駆使した推理のあとに、明かされる真相は一見突飛のように見えてその実ロジカルで、衝撃成分が最大化された。
傑作。さすが、鮎川哲也賞はレベルが違うと感じた


No.524 6点 地獄の奇術師
二階堂黎人
(2026/01/24 22:17登録)
仰々しい文章に芝居がかったセリフ、衒学的な巻末注釈で読んでて恥ずかしくなる部分が定期的にくるけど、雰囲気はすこぶる好ましい。流石、加賀美雅之の師匠さんだな。『地獄の道化師』についてはあえて(?)注釈つけないのね。犯人が露骨に分かりやすいのも乱歩の通俗長編のオマージュだと推察される(笑)
『カナリヤ殺人事件』とかが許せるならぜひ
スロースターターとのことでシリーズの続きが楽しみ(^^)


No.523 7点 犯罪者 クリミナル
太田愛
(2026/01/22 00:07登録)
上巻が今までに読んだことのない切り口で面白かった。
たまたま駅前の噴水にいたはずの4人の人間がなぜ殺されたのか?生き延びた繁藤を含めて被害者の5人に隠された共通点、いわゆるミッシングリンクを探すミステリーとしては極上の出来。suzukaさんのおっしゃる通り、中盤で明かされてしまいますが…
「あと十日。生き延びれば助かる」
タイムリミットサスペンスの逆?プロの殺し屋から十日間逃亡する生活はピンチの連続で読み応え抜群。
最後はなんであんなビターな終わり方にしたんだろう。勧善懲悪以外許せない!というわけではないが、これでは今までの苦難や彼らの犠牲は一体なんだったんだろうと思ってしまいます。ここまで丁寧に描写してくれただけに…

私は「サスペンス」に1票!


No.522 8点 もつれ星は最果ての夢を見る
市川憂人
(2026/01/18 18:26登録)
いつもの特殊設定ではない立派な"SF"ミステリー
毒舌AIと中小企業エンジニアのコンビはマリア&蓮から年齢いじりを取り払った程度の既視感のある造形(笑) 亜光速航行、量子テレポーテーション、もつれ粒子対、惑星探索等々…ノーランが映画化したらさぞ面白そうなガジェットを下敷きに五十光年離れた惑星で銃殺遺体が見つかるというもの。基礎的な量子力学の内容はイチからレクチャーしてくれるのでかなり親切です。
こういうのを読むたびに、宇宙空間や宇宙船などのディティールをどうやって調べ上げるのだろうと感心するばかりです。
途中からもう殺人なんてどうでもいいじゃんと思うくらい話が壮大になり、SF要素が面白くなっていくのでジャンルはSFに投票しておきます。
好き度では『揺籠のアディポクル』、凄い度では『もつれ星』に軍配かな

【ネタバレのような何か】
ドラえもんのコミックス17巻に登場する「バイバイン」みたいな展開ですね。本作はここまで壮大にしたのに、とても綺麗に話を収束させたなあと、風呂敷の畳み方にも感心しました。


No.521 9点 Ank: a mirroring ape
佐藤究
(2026/01/12 19:38登録)
なにこれ。書評数1件で埋もれていい作品ではないと俺の中で話題に。

人間だけがなぜここまで高度な言語を習得できたのか?本書では「自己鏡像認識」という人間と類人猿(チンパンジー・ボノボ・ゴリラ)にしか持ち得ない能力が鍵であると主張します。そして、なぜ古人類は死に絶えているのか?という謎にも、大胆で斬新な発想を披露します。
数多のミステリーのように、人工的に神秘性のある謎を構築しなくても、人間という神秘を探究するだけでここまで面白くできるのだと示してくれました。未曾有の読後感というのは言い過ぎか。「平成のドグラ・マグラ」と称されるべきだったのはデビュー作『QJKJQ』ではなく、この作品だったのではないでしょうか。『ドグラ・マグラ』よりも論説は幾分かわかりやすくエンタメ性も高いです。テーマとストーリーの連動具合では『幽玄F』の方が良かったが、発想力や斬新性で遥かに上回り9点。もう少しミステリー仕立てであれば満点献上でした。

私は今までにSFを3作ほどしか読んでいないのだが、本作がそこまで話題になっていないのを鑑みると、これが平均的な水準なのだろうか。だとしたら凄いジャンルだ。

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