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ミステリの祭典

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邪悪の家
エルキュール・ポアロ/別題『エンド・ハウスの怪事件』『エンド・ハウス殺人事件』『断崖の家』

作家 アガサ・クリスティー
出版日1959年01月
平均点5.76点
書評数21人

No.21 6点 人並由真
(2024/04/18 18:26登録)
(ネタバレなし)
 1932年の英国作品(1931年に雑誌連載で初出)。ポアロ(ポワロ)ものの第6長編。

 先日、閉店した少し離れた方の近所のブックオフの店仕舞いセールスで、新潮文庫の『エンド・ハウス殺人事件』を50円で買ってきた。ポケミス『邪悪の家』は間違いなく持ってたと思うが、読んでいたようなそうでなかったような……。いずれにしろ、実質的に白紙の気分で最後まで読み終えた。

 翻訳は当時のベテランで1950年代から仕事をしている中村妙子女史だが、1988年に初版の新潮文庫版はこの時点での新訳のようで、とても読みやすい。
 ストーリーの進行は、定石の作劇にさらに補助線を引いたような安定感で心地よく読める。真犯人のバレバレぶりは異論はないが、隠された動機の方はなかなか面白い。
 ちなみに今回読んだ新潮文庫版では、本文のあとに読んでください、として、ある登場人物について叙述の不自然さを訳者の中村女史自身がしている。それに関しては、確かにそういえばそうだ。

 トータルでは出来はよくはない方の作品ということになるのだろうが、それでも読んでいるうちは楽しかった。nukkamさんのおっしゃる、深読みしすぎて~の件は、よくわかる(笑)。

◆最後に、これまでの何人の方のレビューで<この作品は、別の巨匠作家のあの作品を想起させる>という主旨で、具体的な作家名と作品名まで引き合いに出して語っておられるので、事実上、そっちの作品のネタバレか、限りなくそれに近いものになっている。被害を受けたので(大泣)、これから過去のレビューをご覧になる方に、そのつもりでお読みくださいと、ここでその旨、警告させていただきます。

No.20 6点 nukkam
(2022/12/21 12:54登録)
(ネタバレなしです) クリスティーはプライヴェートのトラブルで1920年代後半は(「アクロイド殺害事件」(1926年)は例外として)不調期で、1930年の再婚を機に復活したと言われています。本書はエルキュール・ポアロシリーズ作品としては「青列車の秘密」(1928年)以来となる1932年発表のシリーズ第6作の本格派推理小説です。もっともクリスティー作品としてはまだ平均点クラスといった感じです。容疑が転々とする、クリスティーならではのプロットではあるのですがミスリーディングの手法がこの作者としてはシンプルで真相を見破れる読者が多いと思います(深読みして引っ掛かる読者もいるでしょうけど)。個人的には完全復活はシリーズ次作の「エッジウエア卿の死」(1933年)からだと思います。

No.19 4点 レッドキング
(2020/06/29 00:28登録)
探偵の現前で起きたヒロインの殺人未遂と人違い殺人。彼女には狙われるべき財産も、生じるべき感情的軋轢も乏しかった。探偵の丁寧な覚書付きフーダニットミステリ。容疑者はA~I、そこにJを加え、さらにKが・・
※1932年頃の中産階級「淑女」にとって、コカインだの麻薬パーティーだのって、結構普通の「文化」だったのね。

No.18 5点 虫暮部
(2020/03/30 12:23登録)
 ネタバレするけれど、ラストの部分が良く判らない。
 ポアロが犯人に仕掛けた罠は“然るべき状況を整えれば、犯人はFに濡れ衣を着せるべく行動するだろうから、そこに見張りを付けておく”と言うこと?
 弁護士は口が堅く、ポアロは遺言状の内容を教えて貰えなかった。従って偽遺言状の騒ぎはポアロにとって想定外。“偽造者をとっちめましょう”と言ってNを芝居に引っ張り出したのではない。じゃあどう説明したのだろう?
 “降霊会であなたが登場すれば犯人は驚いてボロを出すでしょう”とか? 名目はどうであれ自分にとって好都合な状況だから話に乗るかな?
 20章がまるごと意味不明。Jは自殺もしくはうっかり自分を撃ったということ?
 ポアロが電報で確かめたかった二点とは何か? “本名”と“手術の日程”?
 斯様に、きちんと作中に書いておいて欲しかった事柄が色々ある。

No.17 6点 蟷螂の斧
(2019/12/19 17:54登録)
現在のミステリーファンには犯人を”推測し易い”作品であり、けして犯人が真の意味で”判る”などとは言えない作品だと思います。また、著者のポアロに関する意向とまったく違う評価となってしまった作品でもあると思います。本作は、ポアロもの6作目で、ポアロという探偵が世間的に確立した作品です。著者は本作にある通り、実はポアロを引退させたかったのですね。しかし、諸事情でその後30作品近くポアロものを書かざるを得なくなった。更にいえば、例の作品(1975年発表)の内容、書かれた時期、経緯を斟酌してみれば、この点は明らかでしょう。そういう意味ではエポックメーキング的な作品といえるのかもしれません。内容は実にクリスティー氏らしいミスディレクションをふんだんに使用した良作だと思います。惜しい点は怪しい人物を創造しなかったことと、ポアロの登場が早すぎるため、読者は余裕を持って犯人の推測が可能であったということですかね。


(ネタバレあり)法月綸太郎氏の「1932年の傑作群をめぐって」の~「災厄の町」(1943年エラリー・クイーン)はクリスティの「邪悪の家」と類似~に関して。手元にメモがあるのみで詳細は忘却しましが、類似点は手紙を悪用し、毒殺されそうになる被害者を装うというプロットが共通ということでした。


No.16 8点 りゅうぐうのつかい
(2017/10/28 12:16登録)
ここの書評を読んで、コウゲツさんの書評に一番共感しました。
皆さん、犯人がわかりやすいと書かれているけど、その背景にある動機までちゃんと見抜いたうえで、犯人がわかったと書いているのだろうかと疑問に感じました。何となくこの人が犯人くさい、なんてわかったことにはなりませんよ。ちゃんと、ポアロのように説明できなければ。私も犯人を疑いはしましたが、最初の殺人の動機に全く思い至りませんでした。
動機に直結している犯人が偽装したある事柄は、青い車さんが書かれているように予想しにくく、特に日本人読者には予想しにくいものです。この犯人の偽装に納得しにくいことが、この作品が高く評価されない理由になっていると思います。
また、数々の伏線が盛り込まれていて、それが真相に活かされている点も高く評価できます。ちゃんとチェックしなければわからないような細かすぎる伏線が多いですが。
クリスティ再読さんが書かれているカードの機会に関する指摘は卓見だと思いますが、ポアロがカードを出したことを知っている人物は他にもいるし、やはり、最初の殺人事件の動機が示せないことには犯人を特定するわけにはいかないのではないでしょうか。

No.15 5点 風桜青紫
(2016/08/05 11:17登録)
普通の作品である。クリスティーに慣れていれば、犯人も読んでいる途中にわかるだろう。とはいえミスリードをしかける課程は十分楽しめたので5点。これがクリスティーの作品としらなければ、6点ぐらいはつけていたかもしれない。

No.14 6点 青い車
(2016/02/10 21:57登録)
今の読者からすると、犯人は見え見えかもしれません。(僕はまだ子供の頃NHKのアニメ版で既に犯人を知っていたので、どれだけわかりやすいか判断できませんが)。また、メインの仕掛けは秀逸であるものの、イギリス人ならともかく日本人にはまず予測できないためあまり感心することができません。そこが国内では評価が辛くなっている原因であり、損をしています。本国の読者にとっては申し分なくフェアだったのでしょうし、勿体ないですね。総合すると、初期のクリスティーの作品群の中では一枚劣るものの、破綻なくまとまったまずまずの出来と思います。

No.13 5点 ボナンザ
(2015/12/23 22:16登録)
あらすじを読むと犯人がわかってしまうのが残念だが、当時としてはよくできた内容ではなかろうか。

No.12 5点 クリスティ再読
(2015/11/03 23:44登録)
評者的には「みさき荘の怪事件」(邦題としてはコレが一番好き)...幼少のミギリに児童向けリライトで読んで、「え、この人が犯人に決まってるじゃないの..」でイキナリ真犯人が分かってしまい、がっかりしてそれ以来ずっと敬遠していた作品である。なので今回は、クリスティがいけないのか、それもとリライターがダメだったのか、虚心坦懐に判定してみようと思う。

本作、分かりやすいメインの謎以外にはあまり大した謎がないんだよね。毒入りチョコの件は肩透かしだし...作者は触れてないけど、カードの機会を考えると犯人は別途に明白だと思うよ。動機は犯人の見当がつけば、クリスティの常套手段だから、それほど難しくないように感じたけどなぁ。まあ本作はキャラ描写をちゃんとすればするほど、バレやすくなる作品なので、あまり突っ込んでなくて、クリスティの中でもすっきり薄味のライトな感覚である。そこらへんゴテゴテして混乱した印象を与える「エッジウェア卿の死」とは大きく違う。

なのでそもそもミステリとしてはたいしたことはない、という結論は変わらないが、そう印象の悪い小説でもなかったじゃないか、という感じ。どっちか言えば児童向けの方は少女小説くらいのノリ(ニックのキャラは華やかだしね...あと子供向きのお説教にも使えるか?)で採用されたんじゃないのかなぁ。まあ、子供向けミステリならば、犯人当てではどうでもいい「ABC」とか「オリエント急行」あたりにしておくのが無難な気もするね。

なので結論:悪いのは評者。イヤミなマセガキだったわけ。これぞサープライズエンディング?

No.11 8点 コウゲツ
(2015/07/05 14:00登録)
マギーが殺された時点で、まぁ犯人は予測がつくのですが、なぜマギーが殺されなければならないのか?が全く分からない。
犯人だけでなく、マギーを殺した動機も謎解きのシーンの前にわかったという読者は大分少ないのではないでしょうか。
初めて読んだ時、動機がポアロの口から語られた瞬間、その動機の意外さ(そしてシンプルさ)に”ああ!そういうことだったのか!”と思わず口に出して叫んでしまいました。
あと、手紙(マギーが書いた手紙&マイケル・シートンが書いた手紙)に隠されたヒントのさりげなさ。こういうヒントをさりげなく巧みに織り込んでくるところがクリスティのすごいところなのではないかと。

No.10 6点 斎藤警部
(2015/06/01 13:53登録)
いかにもアガサ女史の企画意図が透ける様で犯人は見え見えですが、、楽しく読みました。 やっぱり雰囲気が良いのです。 何なんでしょうねこの、事件が連発してるのに明るく爽やかなムードという不思議な空気感は! 邦題は「エンド・ハウスの怪事件」が好き。

No.9 7点 あびびび
(2014/04/14 17:46登録)
クリスティーの作品としては中間レベルと見ていたが、最低点の方もいて、「?」と混乱したが、自分的には十分楽しめる展開だった。だいたいにおいて、クリスティーの作品は犯人が当たらないが、これは以前に映像を見ていたにもかかわらず、終盤まで犯人が分からず、ずっとポアロのような心境だった(自分は創造性がない!)。

ある意味「検察側の証人」のような印象を持った。

No.8 5点 E-BANKER
(2012/10/03 23:16登録)
エルキュール・ポワロ物の第6長編。
創元版だと「エンドハウスの怪事件」だが、今回は早川のクリスティ文庫で読了。

~名探偵ポワロは保養地の高級ホテルで、若き美女ニックと出会った。近くに建つエンド・ハウスの所有者である彼女は、最近3回も命の危険にさらされたのだとポワロに語る。まさにその会話の最中、一発の銃弾が・・・ニックを守るべく屋敷に赴いたポワロだが、五里霧中のままついにある夜悲劇は起きてしまった!~

いい意味でも悪い意味でもクリスティらしさの見える作品ではないか?
他の方の書評を見てると、評価が二分しているようだが・・・
要はラストに明かされる「意外な真犯人」が「意外」に思えるかどうか、という点に評価の良し悪しがかかっているという印象。

こういうプロットはクリスティの作品ではかなり既視感を覚えるのは確かだろう。
メイントリックは平たく言えば「人物誤認」なわけで、これが如何に無理なく読者を騙せるのかがカギになる。
でもって、これはレベル的には分かりやすい・・・かも。
主人公と誤認されて起きた殺人事件という部分が、ミステリー好きにとっては十分結末を予想させるものに留まっている。

まぁでも、うまいといえばうまいよなぁ・・・(どっちだ?)
初心者であれば、十分サプライズ感を味わえる作品だろうと思うし、トータルで評価すれば平均レベルというところに落ち着く。
(不振に悩むポワロの姿が見もの。でも、ラストの小芝居はいるのか?)

No.7 5点 江守森江
(2011/02/16 05:43登録)
これって「エンドハウスの怪事件」の別タイトルだったのね(>_<)
コメディと評判なフランス版ドラマを観て直ぐに犯人が分かってしまったが、かなり以前にスーシェ版とアニメ版まで観て原作をおさらいしていたのだから当然と言えば当然で、ラロジエール警視より自分が名探偵だと思った私がバカでした。
ビデオ録画してあるアニメ版を以前一緒に観ていた息子とフランス版ドラマも観たので「お父さんて忘れっぽいね」と言われて一層落ち込んだ作品でもある。
最近、トランクルームにダンボール箱保管していたスーシェ版ドラマのビデオを引っ張り出して来て観たが、クリスティ作品云々よりポアロを演じる役者としてのスーシェが一番好きだ。
アニメ版を観た時の話だが嫁と息子は犯人登場時に一番怪しいと指摘したらしい(息子談)
ミステリー・ドラマ等で(論理的ではないが)直感や役者の格から犯人指摘させた時の嫁の正解率はそこらの名探偵顔負けで凄い(なので私は嫁の鋭さと報復を考え、いくらスケベ心があっても恐ろしくて嫁一筋から逸脱出来ない)

No.6 5点 seiryuu
(2010/11/28 16:57登録)
事件は犯人の決め手が弱くてイマイチに思ったけど
ポアロがスランプ気味やむきになるところが面白かったかなと。

No.5 1点 mini
(2010/11/12 09:59登録)
私が読んだクリスティ作品中で最も駄作だと思ったのがこれだ
いやこれがさぁ初期の1920年代の作だってぇのならまだ情状酌量の余地はあるんだよ
1932年作って事はさ、つまり作者が軌道に乗ってきた言わば脂が乗り始めた頃の作なのだ
もっともカーとか他の作家でもね、不調時期なら仕方ないがその全盛期において、傑作群の中にポツリと駄作書いちゃう場合も結構あるからね
「邪悪の家」がまず酷いのは犯人の隠し方がメチャ下手糞な事で、まるで初心者用テキストかと思う位だ
この犯人が分からなかった読者はそれこそ自分の頭の回転の鈍さを疑った方がいいんじゃねぇの?って位バレバレ
「葬儀を終えて」レベルになると初心者が見抜けなかったとしても、そりゃ作者が上手いせいで読者側の頭が悪いわけじゃないよと慰められるが
他の要素もクリスティの悪い面が全面的に出てしまったようで、薄っぺらな登場人物とこれも下手なミスディレクションといい、およそ誉める要素がまるで見当たらない

話は変わるが、クリスティ作品の邦訳題名は、早川=英版、創元=米版に準拠している場合が多いが、この作は創元版の方が英版の原題通りなんだよな、なぜなんだろう
私は英国作家のものは英版準拠の題名で読みたいので、普段は早川版で読むんだけど、これは英版準拠の創元文庫版「エンドハウスの怪事件」の方で読んだ

No.4 6点 ミステリー三昧
(2010/10/30 00:48登録)
<ハヤカワ文庫>ポアロシリーズの6作目(長編)です。
あらすじを辿るだけでおおよそフーダニットがわかります。このプロットにおいて、もし意外性を追求するならこの人が犯人であれば面白いかなと、読み始めから簡単に予想が付いていたので(はい、自慢にはなりませんが。)犯人の名が指摘された瞬間はあまり驚きがなかったです。空気読み過ぎなくらいベタな展開だったと思います。ですが、フーダニットを覆い隠すためのミスディレクションの妙は楽しめたので、その点は評価したいです。とりあえず全員を怪しくさせる言動はもちろんのこと、ポアロの行動があてになっていない。少なくとも本作のポアロは一貫して、犯人に惑わされているので、ミスリードを誘発させる引き金を自ら読者に突きつけていると思います。表面上では読者に対して丁寧な気配りが成されていますが、裏を返せばそれを鵜呑みにするとミスリードを助長させる要因にも成り得ている辺りが巧いです。国内ミステリ(ドラマ、小説、アニメ、マンガを含め)でもありふれたプロットなので作者の狙いに気付きやすいけれども、表現悪いですが味付けがお上手なのでテンプレート的な作品として読む価値がありました。私的には評判通りの佳作止まりですが、国内ミステリを今後評価する上で参考になったので読んで正解でした。

No.3 6点
(2010/05/13 21:45登録)
本作と次作『エッジウェア卿の死』については、ポアロにいつもの冴えがなかなか見られません。他の作品ではいつの間にか推測をつけてしまっているのですが。途中でポアロが容疑者の一覧と注釈・疑問点を書いて見せてくれるのも、クリスティーよりクロフツとかを思わせるぐらいです。
犯行計画そのものの出来は、悪くないという程度だと思いますが、結局使い方がうまいんでしょうね。くどいところから予想はつくのですが、殺人犯以外の登場人物たちのごまかしもあり、惑わされます。ポアロが18章で真相に気づく2つの手がかりの組み合わせは、シンプルで説得力があります。
冒頭部分でくじかれたポアロの自尊心が結局最後には妙な形で満足させられるのは愉快でした。

No.2 10点 okutetsu
(2009/07/01 05:18登録)
当時は完全にクリスティの手法にひっかかり、ラストで衝撃を受けました。今思えばなんであんなに引っ掛かったのかと思うようなレベルなんですけど…
思い出の名作なので高得点です。

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