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ミステリの祭典

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バードさんの登録情報
平均点:6.14点 書評数:324件

プロフィール| 書評

No.324 7点 鍵のかかった部屋
貴志祐介
(2024/11/10 22:47登録)
密室のコンセプト短編集で、「密室劇場」以外はwhoダニットを完全に排除したいさぎ良さ。本短編集はHow and Whyに焦点が集められており、初心者も楽しみやすいgoodな構成である。

<個別書評(ネタバレあり)>
・佇む男(7点)
本短編集のマイベスト。密室の作り方も納得でき、犯人の決め手も美しい。うじからの真相到達も良いヒントだった。

・鍵のかかった部屋(7点)
全体的にギミックが凝っており、面白かった。実際はドアが壊れてしまいそうな気もするが、たまたま頑丈なドアだったということで。

・歪んだ箱(6点)
図もあったので情景はイメージしやすいが、前話に続き実現性という点は厳しいような。それともテニスボールをあの速度で連射すれば意外といけるのか?本人視点なので、同情的に書かれているが、犯人は普通に悪人ですね。

・密室劇場(6点)
密室か?という内容だが、4作の中で一番トリックの成功率が高そうな気もした。少しギャグが滑り気味なのはご愛嬌。


No.323 7点 倒錯のロンド
折原一
(2024/11/10 22:29登録)
(ネタバレあり)
初めて折原さんの本を読んだが、こういうスタイルなのね。因果応報的な結末や乱歩賞での皮肉も面白かった。折角なので他にも評判の良い作品を読んでみよう。
ただ、本作の叙述は正直微妙だと思う。メインのカラクリは分からなかったが、白鳥≠永井なことは書き方が露骨すぎで、簡単に察せてしまった。


No.322 6点 眩暈
島田荘司
(2024/11/10 21:58登録)
(ネタバレあり)
本作の一番の見所は序盤の精神病患者が書いたかのような文章が紐解かれていく点。良くも悪くも島田さんらしい無茶苦茶さは多々あるが、物語として面白かったので悪く言うつもりはない。ただし階数が一階多い事に誰も気づかない点はええ・・・、と思った。
また、各所あらすじでは『占星術』の名前を出していることが多いが、単にファンを釣る以上の意味は無かったのはちと残念。

今回6点としているが実際は6.5点くらいの感覚。あと150ページ短くまとまっていたら7点にしていたかな。『暗闇坂』に一歩及ばずだが、『水晶』よりは面白かった。


No.321 5点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2024/09/29 20:19登録)
濃厚な歴史探求とミステリが混ざった意欲作。と褒めるファンも多そうだが、私には合わなかった。
まず歴史パートが退屈すぎる。カケルはカタリ派の謎を解くことを重視していたが、このパートは興味持てないと非常に厳しい。
一方事件パートは結構好き。見立ての意味も明確な点が好印象で、フーダニットやホワイダニットが十分楽しめる。ラストのどんでん返しはそれ程だったが。

配点は物語3点にミステリ的な良さで+2。


No.320 5点 邪悪の家
アガサ・クリスティー
(2024/08/05 05:56登録)
(ネタバレあり)
良かった点と、イマイチな点がはっきりしていた。もう少し驚きのあるギミックが増えるor大技が仕込まれていれば6点も見えていた。
無難に面白いがそれ以上でもないという評価。

<良かった点>
・手紙宛先の誤認ネタ
・電報の伏線
・探偵(真相を口にする役)を利用する事で読者を自然に騙せている点
<イマイチ点>
・フーダニット(結構似た構成の本を読んだことあり、ネタを読めてしまった。)
・キャラの人物像(クリスティにしては印象薄めなキャラ多数)


No.319 7点 GOTH リストカット事件
乙一
(2024/05/14 07:26登録)
<軽くネタバレあり>
夜の章、僕の章で全6話。
ホラー味もある本作だが、僕視点で犯人達を俯瞰する立場で読めるため、猟奇犯人達へ恐怖することはない。むしろ、僕や、僕とも差別化されている森野にぞくっとする人が多いだろう。ただ、彼らも単純な恐怖の対象とは書かれておらず、むしろ等身大の学生描写も多い。ホラー雰囲気と読後感の爽やかさを両立している点が本作の魅力の一つだ。
個人的には僕に関する伏線の撒き方とそれを利用した「声」のギミックは非常に上手いと感じた。一見アンフェアな仕掛けがあるが、前までの話をベースにするとフェアな仕掛けへと化けるのが素晴らしい。

キャラクター造形:8点
ストーリー:6.5点(単話のマイベストは「リストカット事件」。「声」も、一冊の締めには不可欠なお話。)
ミステリ的ギミック:6.5点(各話の小ネタ(4点)正直レベルは高くない+僕の使い方(2.5点))
総合:7点

*以前に夜の章だけ読んだ際は、ミステリ要素のチープさが気になり今一つの評価だったが、本作の魅力は別にあると気づき評価が大幅に上方修正された。やはり最後まで読まないとまともに評価出来ない&乙一さんは構成が上手い作家だと改めて思い知らされました。


No.318 9点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2024/05/06 15:09登録)
<ネタバレあり>
主人公のキャラ設定にエッジが効きすぎており、いわゆる色物キャラ短編と決めつけて読んでいた。霊能で犯人が即分かる設定はミステリ的には禁忌なわけで。
そんな尖ったキャラを使いこなしてはいたので7点くらいかなーと何も考えずに読み進めていたら・・・。最終話でまんまとやられた。お見事です。9点以上です。

ちなみに先生の正体は察していた。連続殺人犯のフルネームを明かしているのはあからさまで、ミスリード狙いと分かる。加えて職業的に偽名(ペンネーム)が許されるキャラだったので。ただ、彼の正体なんて本作の肝でも何でもないのよね。それこそ読者の意識をそらすためのデコイ。
ストーリー上で先生は翡翠の噛ませなんだが、仕掛けのレベルでも同様に上下関係にあるので、カタルシスを得やすい構成となっている。衝撃度を上手く伝えられる構成も本作の出来をぐっと引き上げている。


No.317 5点 名探偵のコーヒーのいれ方
クレオ・コイル
(2024/05/06 15:08登録)
まったり感を醸すタイトルに反し最序盤に事件が発生する。意外と煎りの早い作品なのかと身構えたが、その後は事件も起きず割と展開が煮詰まっている印象。道中の捜査方針がほぼ直感頼みでどうにも説得力が薄いのも今一つ。
このようにミステリとして楽しもうとすると苦々しい評価となってしまう。

コーヒーについての蘊蓄や元夫婦とマダムが作る微妙なフレーバーが心地よいので、そういった部分を楽しみたい一品。


No.316 4点 変な家
雨穴
(2024/05/06 15:07登録)
最近広告で見かける本作。映画の脚本のような読み心地で、一小説としては力不足感あり。

特殊建築物ものは既に世に沢山ある。事件の動機も古臭く微妙。どんでん返しも過去の良作と比べて突出していない。
上記のように既視感のある要素が多く、ミステリ好きには勧め難い。普段活字を読まない層や、ミステリに慣れていない読者なら楽しめそう。


No.315 5点 時をかける少女
筒井康隆
(2023/09/06 19:36登録)
自分が読んだのは短編集で、表題作以外に「悪夢の真相」と「果てしなき多元宇宙」が収録されていた。表題作のみだと6点で、採点は短編集としてである。全体的にひと昔前のSF感が漂っており、私にははまらず。温かみのある文体は好き。

<個別書評>
・時をかける少女(6点)
和子の身に起きた不思議な現象と淡い青春がかみ合っている。後の2編よりも完成度は高く、中~高水準の青春ものを堪能できた。

・悪夢の真相(4点)
・果てしなき多元宇宙(4点)
現代のSF価値観で言うと両話とも古臭い&オチを見透かせる。表題作と違い、優れた他要素も見当たらなかった。


No.314 6点 乱鴉の島
有栖川有栖
(2023/08/30 16:16登録)
火村シリーズ長編への期待値くらいの出来。犯人特定のロジックも、島のメンバーの目的も、全体的にパンチは弱いが、それなりにまとまっている。

積極的に人に勧めるほどの作品ではないが、気軽に安定感のあるミステリを提供してくれる点が有栖川さんの強みとすると、6点にはぎりぎり到達。


No.313 5点 緋色の囁き
綾辻行人
(2023/07/05 06:44登録)
(ネタバレあり)

綾辻さんの本はある程度読んでいるが、囁きシリーズは初。残念ながら期待よりは下だった。(本音は5.5点です。)

冴子と校長を殺人者のミスリードに使う所は、雰囲気だしに機能している。肝心の殺人者の正体も落としどころとしては最適だろう。ただし、正体の人が○○ということの伏線は足りないと思う。矛盾はなくとも、上手さを見出せなかった。

他に細かいところで、全体的にキャラメイクが雑と感じた。綾様も結局小物であり、終盤までバックボーンを引っ張る必要を特段感じず。彼女もミスリード要因なのかしら。


No.312 5点 仁木悦子自選傑作短篇集
仁木悦子
(2023/07/05 06:42登録)
粒ぞろいで明確なハズレの無い短編だが、特筆して唸らされる話も無かった。個人的には各話の誕生秘話の書かれた解説が楽屋裏を覗いているようで楽しかった。

<個別書評(ネタバレあり)>
・かあちゃんは犯人じゃない(6点)
子供視点だからかもしれないが、変に理屈っぽくなく読みやすい。

・罪なき者まず石をなげうて(5点)
メイン三人の掛け合いが心地よい。解説によるとレギュラー化を念頭に置いていたそうだが、そうはならなかったそうな。三人の他の話も見てみたい。

・金ぴかの鹿(5点)
犯人側の計画が大味すぎる。

・暗い日曜日(7点)
作者と同名のキャラが出ているだけあって力が入っているように感じた。伏線の張り方など王道を押えており、本短編集でマイベスト。

・ねむい季節(6点)
被害者のすり替えがあり、ミステリとして少し凝っている。現代視点で本話の未来感が少し物足りないのは、現実の発展が作家の発想を超えるほどに凄まじいという事だろう。

・明るい闇(5点)
特段深みのある話ではないが、主人公がかっこいい。

・山のふところに(5点)
それほど面白みを感じず。

・死の花の咲く家(5点)
案外多くの伏線が張られていて面白いが、惜しくも6点に届かず。

・悪魔の爪(5点)
催眠が出てきた時点で、強引な話になることは予想できた。ただ強引と書いたが、悪くは無い。

・石段の家(6点)
話の筋はおおよそ読めたが、読ませる書き方だった。解説によると作者は子供目線の話の乱用を避けているらしいが、作者の得意な手法なような気がしてならない。

・自作解説(7点)
作者さんに失礼かもしれないですが、実は解説が一番楽しかったり・・・。もし、クリエーターの方がいれば話を考える際の参考になる生々しいエピソードがてんこ盛り。


No.311 8点 流星の絆
東野圭吾
(2023/06/04 21:31登録)
量産型東野作品の一つと予想していたが、予想よりはるかに好きな内容だった。某立ち位置のキャラが犯人というやり方は手垢のついた方法で、はっきり言って特に良さを感じなかったが、ドラマパートは全体的に楽しめた。

東野さんの人物描写は淡泊という意見もあり、自分もその傾向はあると思っているが、本書のキャラ描写には説得力があった。個人的には政行、行成の描写が上手いと感じた。読後感も悪くなく、作中のキャラ達はそれぞれの贖罪後に幸せになって欲しいですな。


No.310 8点 カササギ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
(2023/06/04 21:21登録)
どこからか聞こえてくる本作の評判は良いものが多く、期待していた作品だったが、そんな高いハードルを越えてくれた超良作。

本作で一番良かったと感じた点はリーダビリティ。上巻・下巻でメインの登場人物や舞台が一新されるが、作中作自体も面白く非常に読みやすい文章と構成だった。一方、ミステリギミックとしての作中作の使い方は無難なところで、あまり独創性や斬新さを感じなかった。犯人像も身勝手で、人間ドラマ的なカタルシスも弱め。そのあたりの弱点もあり、傑作へはもう1ジャンプ足りなかった。

少し厳しいコメントも書いたが、十分楽しめたのは間違いないです。


No.309 6点 ソロモンの犬
道尾秀介
(2023/05/22 08:47登録)
(ネタバレあり)

作者の読ませる力が遺憾なく発揮されており、スラスラと読める。また、本作は締め方も良い。ハッピーエンドとはいかずとも青春物は前向きな締めにかぎる。
その一方で、キャラクター造形は気に入らない方も多いだろうな。自分は主人公以外のキャラをそれ程好きになれなかった。
(リーダビリティやキャラクターへの評価は同作者の『ラットマン』で抱いたものとほぼ同じ。)

ミステリ面の評価はそれなり。どんでん返しや人物誤認ネタは仕込まれているが、肝である事故の真相は無難で、驚きは少ない。面白トリックも緻密なロジックも無いので、こてこてのミステリを求める人と本作はミスマッチかな。

総括すると、本作はベストや一押しとまでは言えないが、ミステリ要素のある青春物として及第点以上。


No.308 6点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2023/05/22 08:46登録)
(ネタバレあり)

細かな粗点は置いておくとして、殺すために直接大型犬をけしかけていたという、全く捻りの無い真相には流石に肩透かし。何か心理的なトリックで伝説を再現しており、それをホームズらが暴くという内容なら更に好みだった。

真相は肩透かしだったが、分かりやすく面白い物語でサクサクと読めた。総合的には6.5点くらいで、わずかに7点に届かない出来。ホームズ既読作の中では『緋色の研究』、『帰還』に次いで好き。


No.307 6点 満願
米澤穂信
(2023/05/14 14:51登録)
全話が最低限の水準以上で、外れの無い短編集という印象。その一方で、後味の悪い話を扱うには全体的に描写があっさりし過ぎ。短編集として外れとは言わないが当たりとも言えない。
表題作以外はこちらの感性に訴えかけてくる深みを文章に感じなかった。

<個別書評>
・夜警(6.5点)
「満願」の次に嫌な雰囲気を書けていたと思う。川藤の思慮の浅さは、昨今のSNSでやらかす輩に似ているので、印象に残りやすかったのかもしれない。

・死人宿(6点)
どこかで読んだ事あるようなオチで、ストーリーの評価は特に高くない。しかし、主人公が奮起するシーンや佐和子が失望するシーンなど分かりやすい見所も多く、個人的には好きな話。

・柘榴(5点)
嫌いという程ではないが、特に魅力を感じなかった。

・万灯(6点)
伊丹の置かれる最前線のキツイ感覚が伝わってくる描写力と、意表をつくアラムの思惑から動く展開に良さを感じた。話が少し長いので、前半はもう少し短いと更に良かった。

・関守(5点)
読んでいた最中はどういった決着になるのかが気になり一気に読み進めたが、オチはありきたりと感じたため点数は伸びず。

・満願(7点)
妙子さんの底を見せない感が不気味さを醸し出しており、収録作で一番好き。このレベルが揃っていれば短編集としても7点以上でしたね。


No.306 7点 厭魅の如き憑くもの
三津田信三
(2023/05/09 22:47登録)
初めての三津田さん本。
課題もあるとは思うが、全体的な出来は良いと感じた。この手の和風ホラーテイストの強い物語に対しては苦手意識もあるが、シリーズを継続して読んでみようと思えた。刀城言耶シリーズの中には本サイトでも高評価なものがあるので、非常に楽しみだ。

(点数内訳)
前半:4.5点(事件が起こるまでが長く、少し退屈)
後半:6.5点(面白いが、複数の視点をまたぐため冗長感はぬぐえない。)
→物語の面白さは平均で5.5点

・メイントリックに+1(書き方を考慮するとフェアな仕掛けで、意外性もあり良かった。)
・シリーズ1作目補正で+0.5
→合計7点


No.305 4点 ねじれた家
アガサ・クリスティー
(2023/03/18 12:02登録)
正直期待外れでした。犯人の意外性もそれ程だし、探偵役のきらりと光る推理の見せ場も無い。ねじれた家の人々の醸し出す人間の嫌な部分を観察して楽しむのが、本書の面白い読み方なのかな?

過去に4点を付けた『オリエント急行の殺人』よりは上だが、他のクリスティ既読作品よりは下という位置付け。

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