方舟 |
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作家 | 夕木春央 |
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出版日 | 2022年09月 |
平均点 | 8.34点 |
書評数 | 32人 |
No.32 | 7点 | nukkam | |
(2024/09/16 05:54登録) (ネタバレなしです) 作者にとって第3長編作品となる2022年発表の本書を私は講談社文庫版(2024年)で読みましたが、「各方面から激賞を受ける」と評価されているのも納得の本格派推理小説です。フィナーレでこれほど劇的効果を上げた作品は某国内作家の(やはり第3長編の)1967年発表の本格派推理小説が匹敵するぐらいではないでしょうか。極限状況下という舞台と論理性豊かな謎解きを巧妙に組み合わせています。巻末解説を書いた有栖川有栖でなくとも色々と感想を語りたくなるような作品です。 |
No.31 | 8点 | いいちこ | |
(2024/05/31 17:55登録) すでに各所で散々批評されているとおり、叙述そのものは、文筆家としてあまりにも稚拙・拙劣と言わざるを得ない。 それゆえに、特殊きわまる舞台設定・状況にもかかわらず、緊迫感・リアリティがまるでなく、違和感だけを感じる読書が続く。 一方、終盤で展開される探偵による真相解明は、非常に堅牢かつロジカルで、よくできている。 そして、エピローグで明かされる真相は、近年まれに見る抜群の奇想。 以上のとおり毀誉褒貶が非常に激しい作品だが、これらを総合すると「きわめてよくできたライトノベル」というような印象を受けた。 8点の下位としたい。 この内容で平均的な作家が執筆していれば、さらに高い評価としたことは間違いない |
No.30 | 10点 | hsiyehmeipo | |
(2024/04/14 21:25登録) エピローグまでは、正直高評価の割に微妙と思ってしまったが、 エピローグの破壊力が抜群すぎた。 |
No.29 | 7点 | E-BANKER | |
(2024/01/28 14:04登録) 2022年度の各種ミステリーランキングを席巻した本作。いつ手に取ろうかと熟慮していたわけですが、新年早々手に取ることになるとは・・・(たまたまです) 果たして評判どおりの面白さなのか? どうしてもハードルが上がるのでツライところかもしれませんが・・・ 単行本は2022年の発表。 ~九人のうち、死んでもいいのは・・・? 死ぬべきなのは誰か・・・? 大学時代の友達と従兄弟と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人の家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し扉が岩で塞がれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入し始める。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。誰かひとりを犠牲にすれば脱出できる。生贄にはその犯人がなるべきだ。犯人以外の全員がそう思った。タイムリミットまでおよそ一週間。それまでに僕らは犯人を見つけなければいけない~ そういうことか・・・なるほど。 エピローグまで読んで、やっと皆さんのご意見や評価の理由がよく分かりました。 エピローグの前だったら、ロジックのよく効いた出来の良いミステリーくらいの評価だったでしょう。 本作のカギは、ロジックによるフーダニットではなくて、あくまで“ホワイ・ダニット”=動機だったわけだ。 作中の探偵役である翔太郎の口では、動機なんて分からないしどうでもいい、と敢えて言わせておいてのこの反転。 うーん。なかなか思い付けないミステリーの組み立て方かもしれない。 繰り返しになるけれど、エピローグ前ならば何となく収まりの悪さが気になっていた部分が、実は大いなる「欺瞞」につながっていたということだから・・・ こういう本格ミステリーへのアプローチのやり方もあるのかと感心させられた。 普通、動機メインだったら、登場人物の人となりをもうちょっと掘り下げる必要があるだろうけど、本作のプロットだったら、ある意味人物は記号的でいいんだからなあー いやいや、本当に感心させられた。 新年そうそう感心させられた。←クドイって・・・ |
No.28 | 8点 | ミステリ初心者 | |
(2023/07/21 18:23登録) ネタバレをしております。 かなり評判がいい作品なので、読むのを楽しみにしておりました! 文庫化までとても我慢できませんでしたね! まずは解決編前までよみ、そこからは既読の方に少しずつヒントをもらっていろいろ考察する読み方をしました。難易度が高い作品であったため、これは大正解でしたw 隅から隅までこの作品を味わいました やや特殊な状況でのクローズドサークルです。謎の地下施設に、水位が上がってきて、タイムリミットがあります。一人を犠牲にしてそれ以外が助かるという人狼ゲームめいた趣向がありました。 クローズドサークルなので当然読みやすいですが、さらに極限まで無駄がないです。ほぼすべての文が犯人当てあるいはドンデン返しにつながっております。なんとも侘び寂びを感じますねw(ちょっと違うか…?)。その為、解決編前まで一気に読み終わることができました。 また、最近の推理小説によくある、漫画的な容姿と性格をした超人的能力の美少女が事件を解決!なんてこともなく、文章はあくまで純粋な推理小説です。ラブロマンス的な表現も最小限でした(これは、もうすこしあったほうがラストが映えたかもしれませんがw)。漫画的キャラクターやギャグっぽいのも嫌いではないですがw 推理小説的要素について。 有栖川有栖さんの帯の文の通り、論理的な犯人当てとドンデン返しが楽しめます。本来はあまり両立しない印象のあるこの二つですが、ドンデン返しが犯人当てを全く邪魔しておりません。どちらも高い水準であり、理想の推理小説と言えます。 私は、ヒントをもらいながらでしたが、犯人当てについては当てる事ができました。不満もあるのですが後記でw しかし、どれだけヒントをもらっても、ドンデン返しの展開だけは予想できませんでした;; 頭のどこかで、無意識に、地下三階を通って非常口までダイビングするのは不可能と思い込んでいたようです;; なんというアホでしょうか…;; 不満点について まず、論理的犯人当ては難易度が高すぎます! この本全体として、重要な部分はもっと重要らしくわかりやすく書いてほしかったですw 何でもないような一文が、のちにとても重要だったりしますね…。ウェスなんて、欠片がすこし扉に付着するヒントぐらいあってもいいのにw さやかが部屋変更しましたが、あれって小説的にははじめから別々の部屋で寝ていた方が良くないですか? 犯人はさやかの変更後の寝室を知っていたようですが、私は知らないのではないか?知っている人物のほうが犯行が楽なんじゃないかとめちゃくちゃ考えましたw あとはまあ、若干の胸糞というか、犯人だけが生き残る作品は心がもやもやしちゃいますねw 総じて、最近の質の高い推理小説のトレンド?の犯人当てとドンデン返しを両立した作品の中でもトップクラスに質の良い作品であり、かつ、無駄なキャラ付けや話がでてこない本格推理小説の正統進化系を見た気がしますw ドンデン返し~っときくと、安易でどこかでみたような叙述トリックがちょっとついているだけの作品もたたありますが、この作品はチープな叙述トリックに頼らずに真っ向から驚かせてくれました。叙述トリックは大好きですけどねw |
No.27 | 9点 | mozart | |
(2023/06/21 18:00登録) 率直に感服しました。タイムリミットのあるクローズドサークルでの連続殺人という「ど直球」のミステリー展開で目が離せなくなり、最後の反転で度肝を抜かれそういうことだったのかとカタルシスに至るという実にまっとうな感想でした。 |
No.26 | 9点 | makomako | |
(2023/06/17 06:59登録) 久しぶりに本格ミステリーらしい、しかも精緻でできの良い作品に出合えました。 このサイトの評判が高いのも当然で、本格物が好きなら読んで損はないと思います。 まずとんでもないシチュエーションが比較的無理なく設定されて、これは本格推理小説の挑戦ではないかと、興味深々となりました。 ホームズ役もワトソン役もちゃんと出てきて、閉鎖空間での脱出と密室殺人という二つの要素があまり無理なく語られるので、途中でやめられなくなり一気に読み進むこととなりました。 このお話は本格物でなく冒険小説としてだって成立しそうですが、本書は立派な本格物としてのお話となっています。 なかなか良い推理小説でこれで一件落着と思っていたら、最後に見事にやられました。これ程見事にやられたのは久しぶりです。 1点減点は動機の点でやや納得しにくかったことです。 |
No.25 | 6点 | ひとこと | |
(2023/05/28 16:06登録) 面白い!…けど評価されすぎ? |
No.24 | 8点 | 測量ボ-イ | |
(2023/05/21 17:10登録) このサイト、及び世間の高評価を見て拝読。 たしかに、これは・・・ですね。 有栖川氏を彷彿させる犯人限定のロジックに、 やはりこの作品の真骨頂は、最後のどんでん返し でしょうね。 幅広いミステリ好きにおすすめできる一編。 |
No.23 | 8点 | みりん | |
(2023/05/17 23:53登録) "本格ミステリが生き残るための《たったひとつの冴えたやりかた》がここにある。 ──法月倫太郎 帯コメより引用 どうでもいい余談 何を読ませても「こりゃつまらん!面白いの待ってこい」と罵る親に『方舟』を読ませると「これこれこういうのがイイ」との評価を頂いた。 |
No.22 | 9点 | SU | |
(2023/05/16 21:16登録) 現代でしきりと語られる多様性の在り方に通じる「人は誰かに必要とされなければ存在する価値がないのか」という命題が舞台設定と絶妙に嚙み合っている。絶体絶命の極限状態にあっての殺人動機、至って素朴で単純な殺人をドライに成立させたところに感服。 生身の人間ドラマや人間関係と切り離した先に冷徹なまでに真相を求める本格ミステリの世界に、人の心を見誤る危うさを示すラストが新しい。 |
No.21 | 9点 | 密室とアリバイ | |
(2023/05/10 18:54登録) 正直言うと古今東西1位になるほどの作品ではない しかし「衝撃のラスト」「どんでん返し」を謳っておきながらフーダニットで反転する作品が圧倒的に多い中(それが悪いとは言わないが少し衝撃性に欠ける)、この"反転"は見事だ |
No.20 | 8点 | haruka | |
(2023/04/23 22:21登録) 舞台設定も良いし謎解きもフェアで面白かった。 最後のオチは想定の範囲だったけど、全体的に凄く上手い作家だと思った。 |
No.19 | 8点 | take5 | |
(2023/04/23 17:58登録) 皆さんの評価が高い理由と、 自分の読後感を合わせて考えます。 本書未読の方は目を通さない方がよいでしょう。 まずたった300ページで荒唐無稽寸前の設定を 納得させる筆力が高い。 無駄なページがない。 次に探偵の謎解きに収まらない 登場人物の心理描写と その人称の扱いがうまい。 最後は探偵は消えちゃうので。 そして、勿論反転の切れが素晴らしい。 直前に試されている事が、 後から悔いても戻れない 人の性を描き切っているので、 あれ以外の展開はないといえます。 挿入される図もシンプルでよいです。 タイトルも哲学的です。 人は自らを生かすために 選別する生き物、それは 生の本能とも言えるのではないでしょうか。 みんなで助かれ! と思われる方もいるでしょうが、 犯人から逆算するとこの展開が より必然性を帯びるでしょう。 最後に、この作品が将来 古典的名作に成りうるか、 ということを考えます。 現代の社会的背景を切り取っているか、 人間の本質を描き切っているか、 そのことを鑑みて、、、 私には第一の点だけがマイナスで この点数です。 偉そうな物の言い様ですが、 私見お許しください。 |
No.18 | 9点 | まさむね | |
(2023/04/14 23:21登録) 謎の地下建築物内のクローズドサークルでの連続殺人。ほほう。方舟内部からの浸水。タイムリミットがある中でのロジカルな犯人特定。いいね。先進性云々はともかく、この時点で7点がちらつくワタクシ。 でも最大のポイントは最終盤。「反転」とは、まさにこういったことを指すのであろう、と感心しました。最後の二人の会話も印象的。語弊を恐れずに言いますと、ブラック感は勿論ありながらも、一方である意味での清々しさを感じた自分も否定できないし、「方舟」というタイトルも趣深い。プラス2点で。 各種ランキングでの評価が高かった理由はよく分かります。一読の価値あり。 |
No.17 | 6点 | レッドキング | |
(2023/03/17 21:22登録) 第三作目、これも面白かった。麻耶雄嵩以降にも、この手の「捻くれ者」出て来て実に嬉しい、今後も愉しみ!(^^)! 素晴らしき舞台設定に、3点。 探偵役の犯人限定ロジックに、1点。(残念だがロジックに「穴」がある) 驚愕のトンデモどんでん返しオチに、2点。・・計 6点。 ※連続性のロジックに成ってない・・とか、それ以前に、人殺しになるより、「皆で協力して一人二人水中脱出させて、救援呼んで来させる」て風に意思働かないか?普通・・てな野暮は言わんとこ、面白かったし。 |
No.16 | 5点 | ALFA | |
(2023/01/28 13:57登録) ロジックの美しいミステリ。 本格ミステリと見せかけたサスペンスが本質か。 いかにもなクローズドサークル、しかもタイムリミット付き。いかにもな殺しの手口。いかにもな探偵。そして明かされるいかにもな動機・・・ こうして作者は我々の思考を本格ミステリのフレームにはめておいて、衝撃のエンディングをかます。 明かされた真の動機はシンプルかつ根源的なもの。犯人は途中はっきりと口にしている。 犯人の最後の告白も、状況を考えるとエグイ。 最大の減点要素は登場人物が記号的であること。その割に最後の大技には強烈な「情」が絡んでいること。全体が豊潤な物語性に支えられていれば申し分なかったが、すべてはラストの大ネタのための長い前振りとなってしまった。 それでもなかなか読み応えのある作品です。 |
No.15 | 10点 | ミステリーオタク | |
(2023/01/12 17:15登録) 基本、ミステリは文庫で読むことにしているが、本作のここでの評価があまりにも高いので我慢できなくなり、ひっさびさに単行本を入手して読んでしまった。(記憶がないが2冊買ってしまった) 以下は未読の人は読まない方が宜しいかと。 文字通り、タイムリミット付きのクローズドサークル・ミステリ&デスゲーム。(サバイバルゲームといった方が正しいかも) しかしエピローグ前までは実質「よくできた推理小説」という印象を越えるものではなかった。「最後の葛藤」では心が火照ったが。 そしてエピローグ・・・これはさすがに予測不能。帯を読んでいなかったので、流れから感傷的なエンディングを想像していたら・・・タマげた。これほどの高評価にようやく納得。 ただ、アノ人の「期待と準備」には何とも言えない皮肉な甘酸っぱさを感じてしまった。最後は究極の「告白」でもあったよね。自分ならどうしただろう・・・今までの人生で一番・・・だった人をイマジンして・・・いや、今の・・でも・・ 追記:もし後日、警察の徹底的な捜査により全てが明らかになったらどうなるだろう。スゴ腕の弁護士がついたら「カルネアデスの舟板」に持ち込める可能性はないだろうか。 |
No.14 | 8点 | 虫暮部 | |
(2022/12/08 13:08登録) 確かに絶妙な設定だし、ロジックは上手く出来ているし、スリリングでリーダビリティも高い。でも近年の若手本格勢に良くある空気感だし、学習能力の高さでそつ無く組み立てた既製品て感じだし、何故そこまで高評価なのかは判らんな~、と思っていた。読了寸前までは。こんな反転があるか。これは見事。 前2作に比べ文体が随分スリムに変化していて、これが内容に合わせてコントロールしたものなら立派。文体で世界観を盛って行くようなああいう書き方は一般受けしないから方向転換しよう、と言うことなら、フツーに近付いちゃってちょっと淋しい。 |
No.13 | 8点 | 名探偵ジャパン | |
(2022/12/01 20:03登録) 今までまったくノーマークの作家だったのですが、いきなりやられましたね。これは2022年の各ミステリ賞を総ナメするんじゃないですかね。面白かったです。 この舞台設定、状況設定に無理があるという感想を持つ人もいるかと思いますし、実際私もそう感じはしますが、今どきであれば「特殊設定」でいかようにも逃げることも出来たのに、あくまで現実世界で出来ることだけでやりきったのは素晴らしいと思います。設定の強引さなどの欠点を払拭するだけの完成度は十分保たれていると思います。 ※※※ 以下、ネタバレに繋がる感想です。 ※※※ 最後の大オチもいいのですが、殺人の動機に大オチに繋がる動機が隠されていた、というのも渋い高評価ポイントだと私は思います。上手いですね。 |