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ミステリの祭典

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たかだいさんの登録情報
平均点:5.75点 書評数:20件

プロフィール| 書評

No.20 9点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2024/11/21 06:35登録)
個人的に好きな作家の一人である知念実希人作品という事で、発売当初から期待しつつ最近(と言っても2〜3ヶ月前だが)ようやく読む機会が持てたので、早速、一気読みした
そんな者の感想としては、率直に言って今まで読んだ知念実希人の作品の中で一番好きかも知れない
元々殺人を企てた者が余計な罪まで着せられる事を恐れ、いわゆるワトソン役を自ら買って出て探偵に真相を推理させようとする
この構図が結構珍しくて好きな一方、塔の性質を利用した大小様々な仕掛けが散りばめられていてトリックの観点からも不満は無かった
真の真相とでも言うべき最後のどんでん返しも鮮やかに決まっていたと思うし、やはり知念実希人の作品中、最も面白い(現時点での)最高傑作は本作だと個人的には思います
小ネタとして、著者の他シリーズの人物に軽く触れられている箇所があり、他にもネタを知っているとニヤニヤできるような遊び心があるのも魅力の一つかなと思いました


No.19 6点 殺し屋、やってます。
石持浅海
(2024/11/19 23:53登録)
現代に生きる殺し屋の物語なのだが、ミステリーとしての視点が面白かった作品
主人公は殺し屋で、殺し屋は仲介人2人を経て依頼人から殺人を依頼される
そんな依頼人もしくは標的の不審点に気付いた殺し屋が、その不審点を調査し解き明かしていくというのが大体の本筋であり、そこら辺がこの作品の長所にして唯一無二だと思った点です
また、謎は解き明かしつつ淡々と依頼もこなす殺し屋の姿勢も(話として)好感が持て、伊坂幸太郎の「殺し屋シリーズ」と比べたら時、リアリティはこちらに軍配が挙がる気がしました
視点の面白さと、文章の読み易さで思った以上に楽しめた1冊です


No.18 6点 トラップ・ハウス
石持浅海
(2024/11/19 23:32登録)
様々な罠が張り巡らされたトレーラーハウスに閉じ込められた男女による脱出と謎解きの物語
トレーラーハウスに仕掛けられた罠が、画鋲だったり針だったり、乗ったら足が取れる椅子やら、潜り込むと天板が落ちるテーブル等々、なんとなく痛みが分かりやすい罠ばかりなのが嫌らしいというか、変に凝った罠じゃないのが妙にリアリティがある感じ
サスペンスの度合いと、話を一気に読ませる文章は個人的には文句なし
ただ、終盤からラストまでがとにかく勢い任せ!って感じが濃く、謎解きという意味ではイマイチ
もっとも、(これは作者・石持浅海の作品全般に言える事な気はしますが)ライトな語り口で一度読み始めたら一気読みさせてくれる勢いがある作品でしたので、期待した通りには楽しめた満足のいく1冊ではありました


No.17 5点 バーニング・ダンサー
阿津川辰海
(2024/11/17 00:25登録)
突然、全100種類の特殊能力に目覚める者達が世界中から現れるようになった世界観の元、その能力を悪用する者と、それを取り締まる者による攻防を描いた特殊設定のミステリー
ライトノベル的な設定の元で、一夜に二人もの人間を殺害した正体不明の能力者の謎に迫るミステリーを描くという筋書きはわりと好きです
ただ、ミステリーとして能力を根幹に据えるならもっと設定を詳細に詰めるか、いっそのこと能力バトルと言って差し支えない程度に派手にバトらせる方が面白いかった気が…
良かれ悪かれミステリーに比重がいっている分、どこかこじんまりとしている感があり、面白いんだけど物足りないという微妙な感想に至りました


No.16 8点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2024/11/16 18:17登録)
いわゆる「天才 vs 天才」の構図で展開されるガリレオシリーズ初の単独長編
湯川も認める天才数学者が企てた鉄壁の護り、その真の狙いも含めてメイントリックとも言える仕掛けが面白かった
また、それを実行した男の、文字通り、狂おしいまでの献身には頭が下がる。もちろん、倫理的にも社会的にも決して正しくはないのだが、そこまで人を愛してしまったのなら仕方がない
ラストで彼にとってのバッドエンドを迎える宿命なわけだが、それも含めてこの作品の犯人はどこまでも真っ直ぐに人間的で嫌いになれない。そんな魅力があるように思えて、ガリレオシリーズとしては短編も含めて、この「容疑者Xの献身」が一番好きです


No.15 7点 アリアドネの声
井上真偽
(2024/11/16 07:32登録)
地震災害によって地下に取り残された女性(全盲かつ耳も聞こえない)を、災害用ドローンを駆使して地上まで安全に誘導するーという災害救助をテーマとしたサスペンス作品
発売当初から期待していた作品で、実際、その期待通りの作品でした
道中、ドローンの不調といった機材トラブルであったり、人間関係の不和も起こり、事故現場にも単純に危険箇所が連続し、一筋縄ではいかない誘導劇が楽しめる
また、全盲の筈なのに部屋の明かりを付けたり、誘導困難な状況で的確な行動を取る女性ーーこの、話が進む毎に膨らむとある疑惑がストーリーに彩りを与えてくれる。最後の最後に明らかになる真相では、カタルシスが最高潮に達します
非常に面白い作品でした


No.14 9点 さまよう刃
東野圭吾
(2024/11/16 06:44登録)
個人的には東野圭吾作品としても、ミステリー小説としても一番好きと言ってもいいくらい推しの作品
少年犯罪に巻き込まれて愛娘を亡くした男の慟哭と、ふとしたきっかけからタガの外れた男が起こす復讐の行方を描く
テーマが非常に重く、社会派な印象が濃い。少年犯罪という人によって千差万別な意見で何かと議論が絶えないデリケートな問題を正面から描いている
それに対する、被害者遺族側の解答というか、正直かつ危うい答えが「男の行動」であるように思う。私としては心情としては理解出来るし感情移入もできたが、人によっては完全拒絶で受け入れられない人もいるだろう。その辺りの両極さも、個人的に本作が良いと思えた一つの要因です
とりあえず、(東野圭吾作品全体的に言える事だが)文章が読み易い事、ストーリーにミステリー特有の難解さがなく分かりやすい事から、あまり読書の習慣がない人にも読んでみて欲しい1冊


No.13 2点 誰そ彼の殺人
小松亜由美
(2024/11/16 06:21登録)
素材は良いのに、お話として面白く感じない感じ
全体的にお堅い印象が拭えず、なにやら専門書でも読んでいるような気分になってきて、私には合わない文体でした
やはり小説(フィクション)は程々のリアリティで書かれるのが一番入り込み易いな、と読んでいて感じた作品で、短編集とはいえ非常に読みにくかった作品です
素材は良かったと思うだけに、もうちょい肩の力を抜いてライトな作風に仕上がっていれば…と惜しさも少なからずあった残念な1冊でした


No.12 6点 ゴルフ場殺人事件
アガサ・クリスティー
(2024/11/12 23:44登録)
クリスティの作品は「ABC殺人事件」や「そして誰もいなくなった」、「オリエント急行の殺人」といった超有名所しか読んだ事がなかったが、改めて他作品も読んでみようと手に取った1冊
内容は割と地味な感じだが、主人公・ポワロと火花を散らすパリ警視庁の刑事、相棒にして語り手のヘイスティングスと謎の美女など、各々キャラ同士の絡みが濃かった印象
また、さらっと地味とは言ったが、単純なようでいくつかの要素が絡み合った真相は「なるほど」と思わせる部分もあり、内容自体は面白かった
特定の作品に関するネームバリューが大き過ぎるが故に本作はマイナー扱いで不利な立場だが、読んでみるとそんなビックネームに負けないだけの面白みも確かにあると思える作品でした


No.11 4点 おまえの罪を自白しろ
真保裕一
(2024/11/10 06:53登録)
数年前に映画化したのを機に読んでみたタイトルで、真保裕一の作品としてはその数年前に「ホワイトアウト」を読んで以来のご無沙汰
まず、誘拐物のミステリーとしては異色の作品で、そこが魅力なのは間違いない
よくある莫大な金銭を要求される営利誘拐と、その受け渡しに際する犯人と警察の緊迫のやり取り…そういったものが本書にはない。何故なら、犯人の要求は「罪の告白」であり、当然、犯人と警察のやり取りが極端に薄いから
国会議員の幼い孫娘が誘拐された事に端を発し、総理官邸をはじめとする議員らの策謀、政治とのバランスに揺れる警察官僚、そこに金銭を求めず罪の自白を命ずる犯人の思惑も絡みつくリアルな人間模様が見所となる異色さは誘拐ミステリーとして随一かと思う
ただし、そのオチも含め終盤での風呂敷の畳み方に少し雑さを感じなくもない
誘拐に新たな境地を見出した意欲作だとは思う一方、一つのミステリー作品としてはトータルで思い返すとイマイチだと思いました


No.10 6点 麒麟の翼
東野圭吾
(2024/11/10 06:35登録)
新参者としてドラマ化もされている加賀恭一郎シリーズの(短編含め)9作目にあたる作品
瀕死の身で日本橋まで移動して生き絶えた男の謎を、刑事・加賀恭一郎が追う
正直なところ、派手なトリックや秀逸な真相があるわけではなく、どっちかと言えば聞き込み等による地道な捜査で徐々に事件の輪郭が浮かび上がってくる地味な内容です
しかし、そこに秘められた男の真意、七福神巡りの理由などに気付いてくる事で、とある過去の過ちや親子間の絆が見えて来る構成は結構好きでした
真相なんかも割とあっさりしていて、過ちに関しても最後まで補完され切れない辺り、変に救いのある円満なラストでご都合主義にするより効果的だった気がします


No.9 5点 鬼面村の殺人
折原一
(2024/11/10 06:16登録)
合掌造りの家が消失するという大掛かりなトリックが目玉の作品
本格推理物かと思いきや、内容はコメディ寄りでキャラクター同士のやりとりを楽しむ存外軽めな印象を受けた
個人的には著者お得意の叙述トリック物じゃない分、読み易いという利点を感じつつ、一方でどうせ氏の作品を読むならがっつり叙述トリックが仕掛けられている作品の方がらしくていいなという相反する感想を抱いたり…
とは言え、家屋消失という大仕掛けを含む謎や、軽妙なキャラ設定など、気軽に楽しめる軽めなミステリー小説としては十分楽しめる1冊ではありました


No.8 6点 誘拐症候群
貫井徳郎
(2024/11/09 10:28登録)
「症候群」シリーズの2作目で、今回の主題は誘拐となります
自らは矢面に立たず、ネット上のやり取りで人身掌握した女らを実働役にした幼児誘拐を仕掛け、比較的少額の身代金を要求する事で営利誘拐を成立させる
こういったミステリー作品には知能派な輩は数多居るが、作中の黒幕「ジーニアス」も先述の手口を駆使する中々狡猾な知能犯だと読んでいて楽しかった
前作に比べるとエンターテイメント性は抑え気味な気はしたが、誘拐をテーマとしたミステリーとして純粋に面白い一作かと思います


No.7 5点 失踪症候群
貫井徳郎
(2024/11/09 07:36登録)
おすすめのミステリーとしてちょくちょく見かけてた「症候群」シリーズの1作目
期待もありながら読み進めた感想としては、「まあまあ」という非常に曖昧な印象。つまらなくはないけど、一際面白いという事もない。可もなく不可もなく
主題の失踪については、それを達成する手段は面白い。こうゆうやり方もあるのかと感心した部分もあります
また、法規的手段を用いて事件を探る捜査チームという設定も、まぁアリだと思う
しかしながら、事件としての方向性が迷走気味に感じ、どこか唐突感が否めなかったのはマイナスでした。変に半グレじみたヤバい連中を事件に絡めた故に、話を無理矢理閉めた印象が強いのが原因かと思います
とは言え、文章の読み易さも加味してエンターテイメント作品としてはアリな作品かと思います


No.6 5点 老虎残夢
桃野雑派
(2024/11/09 07:07登録)
どこかライトノベルみもあり、一応、ミステリーとしても成立している奇妙な作品
江戸川乱歩賞を受賞した作品で、昔の中国を舞台とした武侠物に密室殺人を組み込んだ特殊設定なミステリー小説です
なにやら武侠っぽい超人設定がありつつ、それを踏まえても不可解な状況下での殺人という相反する条件を上手く併せて一本の作品に仕上げていると感じられました
そこに百合要素も絡んでくるのは人によって良し悪し別れそうですが、個人的には一つのエッセンスとして機能していたように思うし、百合自体嫌いじゃないので気にならなかったです
総じて、傑作や名作という程の飛び抜けた感じはないものの、難しい材料を無難に纏め上げた周作ではあったかなと思いました


No.5 4点 此の世の果ての殺人
荒木あかね
(2024/11/09 05:48登録)
世界滅亡まであと僅か。そんな荒廃した世界観の元で描かれる、いわゆるシチュエーションミステリーの一作
江戸川乱歩賞を受賞した作品で、この世界観で起こる殺人事件の真相とは!?と、前情報でハードルを上げすぎたのか、読み終えてみると微妙な印象が拭えなかった作品です
確かにこの荒廃した世界観を維持したまま、わりと上手く殺人事件の謎を絡め、さらにこんな世界に生きる人間模様も描けているとは思う
たた、物語としては良くも悪くも起伏がなく、正直、事件の真相も若干尻すぼみ気味に「ふ〜ん」で終わるような弱い印象しか残らなかったというのが正直な感想
同じ著者の作品でも個人的には次作(だと思う)「ちぎれた鎖と光の切れ端」の方が好きだし、シチュエーションミステリーとしては今村昌弘の作品のほうが徹底していて面白いと感じるので、つまらなくはないけど、どうにも中途半端な印象という残念さがありました


No.4 8点 華麗なる誘拐
西村京太郎
(2024/11/09 05:24登録)
比較的規模の大きな事件を扱う探偵・左文字進シリーズの2作目で、昔とあるTVドラマの劇場版の原作に使われた事を知り、その当時に読んだ作品です
まず、日本国民を全員誘拐するというぶっ飛んだ発想が好きな好きな作品で、その大掛かりな発想を軸に読み易い文章でグイグイ読み進められる為、誘拐ミステリーの名作と評されるのも頷ける内容となっています
もっとも、これが書かれた年代が年代な為、(私が最初に本書を手に取った十数年前ですら)最後のオチがチャチに感じるのは致し方なし…。当時は今のようなネットバンクもなければ、そもそもネットも普及してない時代でしょうし、そこは現代の感覚で読むと「なんだかなぁ」となるのはやむを得ないかなと改めて思った
そこを抜きにしても、飛び抜けた発想に面白さが詰まった名作だとは思うし、個人的にはトラベルミステリーで名高い西村京太郎作品の中でもトップクラスに好きな作品という事に変わりはないので問題はないわけですけどね


No.3 8点 ソウル・コレクター
ジェフリー・ディーヴァー
(2024/11/09 05:04登録)
毎回魅力的な敵(犯罪者)が出現し、科学捜査のスペシャリスト「リンカーン・ライム」率いる捜査チームと激しい火花を散らすシリーズの8作目
今回の敵は、気ままに己の欲望を満たし、その罪を他人に着せる「見えざる悪意」。ライムの従兄弟がその毒牙に掛かった事をきっかけに、ようやくその朧げな存在が確認される
情報化社会となった現在だからこそ、情報一つでなんとでも出来てしまうという点にリアリティがあって恐く感じられた作品。もし作中のようにありとあらゆる情報を集約するシステムが存在するなら、もしそれを個人が自由に出来たなら、相手の行動を高精度で予測する事も、データを書き換えて一般人を犯罪者に仕立てる事も容易だろう。現代ならではの恐ろしさを秘めた大作だったように思います


No.2 2点 ペンギンを愛した容疑者
大倉崇裕
(2024/11/07 22:35登録)
まず、この作品がシリーズ物だと知らずに偶々手に取った者の感想だという前提で述べさせて頂きます
動物の生態に着目したミステリーという点で、発想含めそこは面白いと思います
しかしながら、登場人物がすこぶる合わなかった為、個人的にはマイナスが打ち勝ってつまらないという評価になってしまいます
特に、いわゆる探偵役のキャラの惚け具合がくどく感じて、それを踏まえて主人公2人のやり取りが所々寒い。動物の知識は豊富な反面、慣用句などの一般知識には疎いというキャラ付けはいいのですが、話の流れが無駄に止まる上に緊張感も壊すやりとりはどうかと思いながら読んでました
シリーズ1作目から読んでいれば何らかのフォローがあったのか定かではありませんが、少なくともこのお話だけでお腹いっぱい、むしろ消化不良な私が他シリーズを読む事は正直ないかもしれません


No.1 4点 なんで死体がスタジオに!?
森バジル
(2024/11/07 22:06登録)
攻めた過激な内容を旨とする生放送の開始直前に出演者の死体が見つかった事から始まるミステリー小説。
舞台設定は非常に面白く、自ずと期待値は高かった…のですが、読了した感想としては肩透かし感がありました。
メインが生放送のトークバラエティ番組なんですが、読んでいて終始違和感が…。正直、登場人物のやりとりがTVっぽくないのがとても気になって、それが違和感として感じられ、しかもコレが本筋とはまったく関係ないのでどうにもならない。
素材を生かしきれてない感じで、非常に勿体ないと思ったのが本音です。
作品としては読み易いので、気軽に楽しむという点では良い作品だとは思います

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