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ミステリの祭典

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007/ゴールドフィンガー
007

作家 イアン・フレミング
出版日1960年01月
平均点7.25点
書評数4人

No.4 7点 たかだい
(2025/08/13 19:23登録)
本家イアン・フレミングによる『007』は短編集「バラと拳銃」しか読んだ事がなく、しかもその短編集自体シリーズから見たら異色作が多めという事で本格的(?)な007は本作が初となる
ショーン・コネリー版で映画化され、「ゴ〜ルドフィンガ〜」というエンディング曲のフレーズが妙に頭に残る作品だったが、本書はその原作である
金に異常な執着を見せる悪党「ゴールドフィンガー」とジェームズ・ボンドの対決という単純明快なストーリーながら、大まかにポーカー、ゴルフ、ノックス・フォート、飛行機と4Rに渡る攻防が描かれ、手に汗握るスリリングな展開は流石007と素直に思った
映画ほど派手なアクションシーンはあまりないが、かといってスパイ小説特有の難解さも(良い意味で)ないので読み易く、前述のように手軽に緊張感を楽しめる作品に仕上がっていると感じた

No.3 7点 クリスティ再読
(2018/03/18 00:32登録)
問答無用に007である。映画の印象だと大冒険アクションなのだが、小説だとフォート・ノックス襲撃は後半1/3ほどで、ボリューム的にはずいぶん小さい。そのかわり、ゴールドフィンガーのカードのイカサマを暴くのと、ゴルフの勝負のウェイトが大きい。なので地味か...というとそういう印象を与えないのが、フレミングの腕の冴えのように感じる。
ボンドというと、例の「ウォッカ・マティーニを。ステアせずにシェィクで」が有名なように、イギリス紳士らしい奇矯で偏頗なコダワリがあって、それをいつでもどこでも押し通すのだが、実はこれはダンディズムというものなのだ。というのも、内容が奇矯でしかも実にトリビアルなコダワリであればあるほど、コダワることはたかが恣意、ということになる。しかしそれが恣意であればあるだけ、それを押し通すことは「奪われざる自由意志」といったものの象徴となる...ウオッカ・マティーニへのコダワリも拷問への抵抗力も、ボンドにとってはまったく等価なものなのだ。ここらの事情をカードやゴルフで「命がけで遊んでいる」ボンドの姿を介して、魅力的に描けているように思う。それこそボー・ブランメル以来のイギリスのダンディズムの最後の後継者というべきだろう。こういうボンドの美意識を一番まったりと楽しめるのが、たぶん本作。
映画はそういう意味じゃ別物。評者はオッドジョブ(ハロルド坂田)への愛が深すぎて、見ていて苦しくなるほど萌えに萌え狂っていた...ハロルド坂田やゲルト・フレーベだけじゃなくて、この頃のボンド映画ってキャスティングのセンスが神がかっているなぁ。

No.2 7点
(2013/02/27 10:20登録)
映画シリーズの中ではかなり人気のある作品。
一時、とくに「ロシアより愛をこめて」との比較で、派手なだけで幼稚との評価もあったが、本作映画版ぐらいに派手さがあったほうが007らしいといえる。

原作も映画版と同様、楽しめる要素が盛り沢山。冒頭のギャンブル対決、中盤のゴルフ対決、拷問シーン、ゴールドフィンガーの用心棒・オッドジョブの登場シーンなど、見せ場はたくさんある。なかでも、ゴールドフィンガーとのゴルフ・マッチプレイの場面は、ページを繰る手が止まらなかった。

ゴールドフィンガーの企てた犯罪計画は、たしかに想像を絶するものだった。でも、彼の金(ゴールド)への執着心や、ボンドにしつこくつきまとう姿勢からすれば、この悪党は決して大物らしくはないし、影で糸を引く黒幕のような正体不明な人物でもない。極悪非道な、わかりやすいワルだった。
こんな悪党の設定の仕方や、白黒のはっきりした対決構図も、この作品が受ける理由なのでしょう。

とにかく楽しめること間違いなし。スパイ・スリラー小説ではなく、超娯楽スパイ・アクション小説を楽しみたいときには、絶対にお薦めです!

No.1 8点 蟷螂の斧
(2012/07/19 15:50登録)
007シリーズの映画化第3作目(1964)、本の方は7作目(1959)。スパイ小説の古典ですが、スリル・スピード感(賭博対決、ゴルフ対決、飛行機内対決など)があり楽しめた。映画とは違いボンドの内面の弱さが垣間見れて面白い。愛車アストンマーチンのカーナビ追跡システム搭載(本では発信音波追跡)は、当時絵空事と思ったものですが、そのカーナビが実用化されるなんて夢のようです。解説(ハヤカワ・ミステリ)は若竹七海氏でシリーズ中本書が一番とのこと。直近読んだ山田正紀氏(おとり捜査官)は映画では本作が一番とありました。ちなみに7のつく日にIMAGICA BSでシリーズ放映中です。

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