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ミステリの祭典

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雪煙チェイス
スキー場シリーズ

作家 東野圭吾
出版日2016年11月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点
(2017/07/16 17:04登録)
スピード感はありますが、ミステリーではないです。

No.1 7点 Tetchy
(2017/03/28 23:41登録)
感想一番乗り!の気分は本書に擬えると新雪のパウダースノーを滑降する気分のよう。

このシリーズも早や3作目。新たなシリーズとして定着しつつある。

このシリーズでは今まで『白銀ジャック』、『疾風ロンド』で見られたように読者にページを早く捲らせる疾走感を重視したストーリー展開が特徴的だが、本書も同様に冤罪の身である大学生の脇坂竜実と彼の協力者で友人の波川省吾の2人が警察の追手から逃れて無実の罪を証明する「女神」を一刻も早く捕まえなければならないというタイムリミットサスペンスで、くいくいと物語は進む。
ウェブでの感想を読むと謎また謎で読者を推理の迷宮に誘い込むのではなく、非常に解りやすい設定を敢えて前面に押し出してその騒動に巻き込まれる人々の有様を描いているこのシリーズに対する評価は賛否両論で、特にストーリーに深みがないと述べている意見も多々見られるが、それは敢えて東野氏がこのシリーズをスキーまたはスノーボードの疾走感をミステリという形で体感できるようにページターナーに徹しているからに他ならない。それを念頭に置いて読むと実に考えられたミステリであることが判る。単純な設定をいかに退屈せずに読ませるか、これが最も難しく、しかもこのシリーズでは最後の1行まで演出が施されていて飽きさせない。もっと読者は作者がどれだけ面白く読み進めるように周到に配慮しているか、その構成の妙に気付くべきである。東野氏は数日経ったら忘れてしまうけれど、読み終わった途端に爽快感が残るような作風を心掛けていることだと理解すべきである。

またただ軽いというわけではない。東野氏がスキー場を舞台にしたミステリを文庫書下ろしという形で安価に提供する目的として自らもスノーボードを嗜む氏が経営困難に瀕している全国のスキー場に少しでも客足が向くように読者に興味と関心を与えていることだ。

しかし何とも甘い結末である。ウェディングの代役を務めた根津と千晶がとうとう結婚を決意するのはシリーズの読者としては大団円としていいものの、まさか刑事の小杉が旅館の女将とのお付き合いを決意しているとは思わなかった。やはりゲレンデは恋の生まれる場所ということか。リゾートの恋は長続きしないから気を付けないと、などとついつい余計なことを思ってしまった。
根津と千晶の結婚でこのシリーズが終焉を迎えるかは解らないが、シリーズの舞台はあくまでスキー場。東野氏がウィンタースポーツを愛する限り続いていくような気がする。さて次はどんな事件がゲレンデで起こるのか。不謹慎ながらも次作を期待して待とうとしよう。

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