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ミステリの祭典

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mozartさんの登録情報
平均点:6.02点 書評数:208件

プロフィール| 書評

No.208 6点 傷痕のメッセージ
知念実希人
(2024/05/14 07:18登録)
終盤の展開-探偵役が主人公に(勿体ぶっているかのように)なかなか「真相」を告げないこととか最後で主人公が絶体絶命状態の時にギリギリ救いが間に合うとか「意外な」真犯人とか-がややベタでしたが、緊迫感のある展開は面白く父親が隠し続けた秘密の真相もなかなか衝撃的でした。

どうでも良いことですが今回の事件では桜井刑事がほぼ自由に動けているのに天久鷹央の助力を頼まないのは今作がパラレルワールドの別作品だからなのか彼女が興味を持つような「謎」がないからなのかというと……やはり後者なのでしょうね。


No.207 7点 可燃物
米澤穂信
(2024/05/13 10:47登録)
表題作はちょっとあっさりしていた感がありますがそれ以外はなかなかミステリーとして読み応えがありました。意表を突く凶器とか動機とか真犯人とかいった「王道」をしっかり踏まえているところに感心させられたし。
分類は「警察小説」となっていますが著者のインタビュー記事によると単にミステリーの舞台として警察を選んだだけであるとか。とは言っても実際の捜査現場における緊迫感がリアルに伝わってくるようで著者の筆力に改めて感服しました。
たしかに葛の内面の描写が不十分(?)なのかも知れませんがそれだけに例えば「命の恩」での葛の目を通した香苗の描写やラストの「~までは把握した(中略)警察が関与する余地はない」という淡々とした地の文に彼のキャラが滲み出ているようでなかなか秀逸な表現手法なのだと思っています。

それにしてもいくら脳の活動に糖分が必要といってもカフェオレと菓子パンだけでは不適切にもほどがあるのではないかと糖尿病予備群の自分としては心配になっています。


No.206 5点 蘇る殺人者 天久鷹央の事件カルテ
知念実希人
(2024/04/22 09:18登録)
天久鷹央の事件カルテシリーズの場合相当コアな(医学的)知識がないとその謎を解くことはできないような設定になっていることが多いと思います。本作も○○ー○(○○○)の存在を知らないと「蘇る殺人者」の真相に辿り着くことは不可能かと。確かに○○○を検索すれば実例とともに解説されているサイトは少なからずあるのでノックスやヴァン・ダインの「禁じ手」には該当しないのでしょうが。というわけで本作も最後の謎解き部分では意外な真相ではなく真犯人に関する伏線の回収のされ方とか途中のキャラ同士の掛け合いとかを楽しむものとして読みました。
それにしても天久鷹央の性癖(言動を含む)は所謂「変人探偵」としてもぶっ飛んでいて犯罪者に「同類」と言わしめるほどなのですがいかにして読者に「許容範囲」と思わせるかはサブ・キャラの描き方を含めて作者の筆力にかかっているのでしょう。
自分としてはまぁこの程度なら大丈夫かな、と。


No.205 5点 魔弾の射手 天久鷹央の事件カルテ
知念実希人
(2024/04/15 08:28登録)
本格ミステリーとして読むならば(諸々無理っぽい設定は置いておくとして)そのキモとなるべき「遠隔殺人」の謎解きに関していうと、このシリーズでは当然のようにアレなので医学的知識のない自分には無理だったわけですが、本作では天久鷹央のツンデレぶり(嫉妬?)が特に微笑ましくてちょっと好感が持てました。


No.204 6点 好きです、死んでください
中村あき
(2024/04/08 13:57登録)
タイトルからの予想に反して「本格度」は意外と高かったと思いました。フーとハウをテーマにストーリーを進めつつ実際はホワイ・ダニットが(ちょっと前にさわがれた社会問題を想起させる)メインテーマになっているという。なので最初の密室事件の謎解きはちょっとアレでしたが犯人と被害者との関係性をからめてのことでもあり許容範囲かな、と。

ただ今作の読後感はあまり良くなかったのも事実です。もっとも作者の技量からして今後の作品にはまだまだ期待は持てそうですが。


No.203 7点 午後のチャイムが鳴るまでは
阿津川辰海
(2024/04/02 17:00登録)
第1話、第2話あたりでは「普通の」青春ミステリーかなと思っていましたが第3話から俄然面白くなってきて第4話の違和感もさほど気にならず第5話できれいにまとめあげてくる作者の筆力に改めて感嘆しました。菅原はちょっとカッコ良過ぎですが。

自分の高校生時代には昼休みは1時間もなかったけれど早弁をして目一杯時間を確保した上でグランドでの球技とか結構「濃密」な時間をクラスメート達と過ごしていたことも思い出しました。


No.202 6点 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック
鴨崎暖炉
(2024/03/24 20:10登録)
前作同様感心しました。

密室殺人のための物理トリックが(文字通り)スケールアップしていてこれだけのアイデアを惜しみなく披露する作者の力量にはただただ驚くばかりです。
オマケとは言え〇〇も絡めてきたし。

関係ないけれどやはり彼女はヤンデレなんでしょうね(最近こういうパターンが多いような気が)。


No.201 6点 天久鷹央の推理カルテ
知念実希人
(2024/03/23 17:35登録)
可愛らしい容姿で天才的な頭脳と専門分野での追随を許さぬ博識に加え驚異的な推理能力を持つ若い女性医師が変人(奇人)探偵役でワトソン役(?)の相棒男性へのツンデレ的な掛け合いとかこの手のキャラ造形としてはパターン化していますが謎解きとしてはそれなりに楽しめました。勿論医学知識ゼロの読者としては推理する手立てがないので所謂本格ミステリーとして楽しむことは難しいと思いましたが。

(ややネタバレ)
「毒」の正体については生活習慣病治療中の身としては割と有名なことなので想像の範囲内でしたが○○症候群はさすがに分かりませんでした。


No.200 5点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック
鴨崎暖炉
(2024/03/17 17:58登録)
感心しました。

これだけの密室を作り出す様々な物理トリックを正面から打ち出してきた作品というだけで、登場人物のキャラに魅力がないとかそもそも各トリックのフィージビリティが低すぎるんじゃないかとか言った「真っ当な」感想を封じ込めるだけのパワーを感じました。


No.199 5点 黄土館の殺人
阿津川辰海
(2024/03/13 08:24登録)
(超)序盤から(分かりやすく?)真犯人の正体が仄めかされていたこととかについては特段ネガティブな感想に繋がらなかったけれど、やはり一連の犯行に偶然の要素が関わっていたことに不満が残りました。葛城も「偶然さえねじ伏せ」る「膂力」のない「凡才の犯罪」と表現しているし(著者の言い訳?)。
今回は「地火水風」のうちの「地」の災害つまり「地震」がテーマになっていて何より偶発的・突発的に起きる自然現象であるため意図的な設定だったのかも知れませんが。

キャラについても飛鳥井はともかく葛城も友人である田所に対して「万年助手」であると言い放つとかエキセントリックな探偵と言うより単にイヤな奴になっていてそのあたりもちょっと残念だったかな……。


No.198 4点 推しの殺人
遠藤かたる
(2024/03/06 16:19登録)
ややネタバレ……かも(謎解きメインの作品ではないので構わないよね?)



「このミステリーがすごい!文庫グランプリ」受賞作ということですが、登場する男性達が一人を除いてゲス野郎ばかりで対するアイドル三人組も結局のところ犯罪者と共犯者でありそれぞれのキャラにも魅力は乏しくて、例えば事件が露見しそうな状況でハラハラするとかいった共感もなく、エンディングも無理矢理感があってちょっと期待外れだったというのが率直な感想です。


No.197 4点 ブラック・ショーマンと覚醒する女たち
東野圭吾
(2024/02/26 14:06登録)
書き下ろし二編を含む全六編の短編集ということでサクッと読めました。前作に比べると全般的に「薄味」で個人的にはやや期待外れの感も否定できません。武史の変人ぶりもやや抑えられていて真世とのかけあいもイマイチだったし。できれば続編は(もしあれば)長編で読みたいところです。


No.196 6点 ヨモツイクサ
知念実希人
(2024/02/14 19:08登録)
所謂バイオホラーではあるもののどんでん返しと様々な伏線をしっかり回収する「衝撃の結末」に至る本格ミステリーということで世間の評価が高いのは理解できるのですが、ヨモツイクサ、アミタンネ、イザナミ、イメルヨミグモの生態や外観がうまくイメージできなくて個人的にはちょっと…といった感想でした。多分グロい描写が余り頭に入らず結果的に重要な箇所を斜め読みしていたせいなのでしょう。ただ結末の破壊力は相当なものであることは事実でその点は感服しました。



(疑問点:ネタバレ注意)
鍛冶達を貪ったヨモツイクサ成体が茜を襲わず弱点である腹部を晒したりアミタンネや現イザナミの攻撃から守るのは彼女を自分の生みの親(イザナミ)と認識しているからであるならば何故(椿の意識など持ち合わせていないはずなのに)小此木は襲われないのだろうか?アミタンネが小此木を襲わないのは彼が茜と比べて「取るに足らない」対象であるからという記述はあるけれど。それから小室紗枝から「生まれた」ヨモツイクサ幼体も茜に仕える「兵隊」であるはずなのに何故攻撃してきたのだろうか。生まれたばかりで右も左も分からないから?う~ん、やはりちゃんと読めていないのでしょうね。


No.195 5点 11文字の檻
青崎有吾
(2024/02/04 14:20登録)
非ミステリー作品や「超短編」ミステリーとかが含まれているのでまっとうな感想は難しいのですが少なくとも表題作は短編(中編?)ではあるものの主人公が試行錯誤しながら正解/脱出に至るロジックがしっかりしていて読み応えがありました。

(ややネタバレ)
ただ最後の統括管理責任者の疑問に対して縋田の回答だけではちょっと弱いような。檻の中ではみな極限状態だったろうし。小説のラストを思いっきり引っ張っておいて続きはここを出てから、とでもしたのだろうか。


No.194 6点 ファラオの密室
白川尚史
(2024/02/03 12:31登録)
古代エジプト時代の物語であるとかそこで信じられていること(冥界の存在や死者の蘇り等)が「事実」であるとかいったことを所謂特殊設定モノとして受け入れることが前提となっていますがミステリーとしては結構「本格」でした。某作家のようなややバカミス?風の密室トリックもあったし。最後の「どんでん返し」も謎とは直接関係ないかも知れませんが伏線の回収という意味ではそれなりに納得の行くものでした(勿論最後まで気付きませんでしたが)。


No.193 5点 君に読ませたいミステリがあるんだ
東川篤哉
(2024/01/26 10:44登録)
作中作(連作)と最後での「仕掛け」にはそれなりにひねりがあって良かったと思うのですが、キャラ同士のやりとりを含めてラストシーンとかちょっと引いてしまう印象があったのも事実です。
以前は烏賊川市シリーズをはじめ本作者の作品群がとても好きだったのですが近年の作品にはそれほど魅力を感じなくなっている自分に気付きました。本作品も従来作のテイストと何ら変わるところはないと思うのですが……。
多分昨今のラノベ風/青春ミステリーとか特殊設定モノとかを好んで読むようになった自分の感性が変化したのだと思います。


No.192 7点 でぃすぺる
今村昌弘
(2024/01/24 19:29登録)
最初はちょっと……となりましたが(所謂特殊設定モノを含む)従来のミステリー的価値観と常識(?)を一旦捨てて再読するとこれはこれで作中に「魔女」からの助言で示された前提条件に対して「ロジカル」に合致する解になっていることに気付いてすこぶる納得させられました。三人が登場するシリーズ物として続編を読みたいところですがなかなか難しそうではありますね。
ちなみにジャンルは「その他」となっていますが「『新』本格」としても良いのかも。


No.191 8点 地雷グリコ
青崎有吾
(2024/01/21 18:38登録)
初読段階ではポピュラーなゲームに追加されたルール(とその立て付け)に対する深い洞察力と対戦相手の心理状態から想定される戦略を先読みする能力が「異常に」優れた主人公の明晰な頭脳を単に後追いでトレースすることでひたすら「感心する」物語かなと思いましたが、再読してみてミステリー作品として散りばめられた伏線・回収と読者向けのくどいほどロジカルかつ丁寧な(図解も含めてやや説明的な)解説がツボにはまってしまいました。それに加えて登場人物のキャラ設定(特に塗辺クン)が実に秀逸で非常に楽しめました。
これだけのストーリー展開を面白い読み物として作り上げることのできる作者の頭脳にもただただ驚嘆するばかりです。


No.190 6点 あなたが誰かを殺した
東野圭吾
(2023/11/08 20:36登録)
発売日から数日遅れで図書館に予約したら18人待ちになってしまって昨日になってようやくゲットできました(一気読みしました)。図書館ではすでに予約が200人以上の待ち状態になっていてさすが紫綬褒章受章作家の人気シリーズというべきか。

で、加賀恭一郎の「○○が××を殺した」シリーズ(?)なわけですが予想に反して事件は(意外な真相も含めて)最後でちゃんと明らかにされます。それにしても相変わらず加賀はカッコイイですね。今作では「検証会」の司会&アドバイザー(?)であって、事件を直接担当する捜査官として関わっているわけではないせいか、いつもより「粘着度」は控えめでしたが。

どうでも良いことですが最初の方で登場人物の名前が漢字だったりカタカナだったりしたのは単にどういう漢字なのか知らなかった人物の視点で書かれていただけでしたが、ひょっとして叙述トリックかも?と邪推してしまいました(汗)。

(図書館に返却する前に再読したので追記)
地の文(というのかな?)の視点が何人か書き分けられていてその中には「犯人」も含まれているわけで、最初の方にちょっと疑問符が付く表現があったような…。まぁ、ギリギリセーフなのかも知れないけど。


No.189 6点 翼がなくても
中山七里
(2023/11/04 20:52登録)
ミステリーとしてはほとんど想像通りの展開だったので安心して読めました(と言ってもこの作者のことだから最後に何かどんでん返しが待っているのかも知れないとページが残り少なくなってからちょっとハラハラしましたが)。

沙良のキャラはちょっと誇張されていますが、二十歳そこそこの若者であればあのような「凝り固まった」考えに囚われてしまうものなのか、と思わせておいて最後は…、というのもベタベタの展開だったのに感動してしまいました。

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