| 百年の時効 |
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| 作家 | 伏尾美紀 |
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| 出版日 | 2025年08月 |
| 平均点 | 7.67点 |
| 書評数 | 3人 |
| No.3 | 8点 | 人並由真 | |
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(2026/01/28 12:55登録) (ネタバレなし) 三日かけて(実質2日で)、昭和編→平成・令和編とその区分で、それぞれイッキに読んだ。 巻頭の主要登場人物表をコピーして余白に各キャラの情報を書き込み、さらに自作のメモで登場人物一覧リストを補遺しながら、読み進む。 非常に腹ごたえのある作品だが、こちらの現代史の記憶に訴えて来る物語の流れ、さらに相応の格調はあるがリーダビリティの高めの文章とあいまって、スラスラ頁がめくれる。 昭和編の主人公コンビ、鎌田&湯浅もいいが、平成編の方の主役・草加の、ややこしい立場のなかで苦悩するキャラもいい。 最後まで読了すると、事件の内実は込み入ってるようで、実は存外に良い意味でシンプルな面もあり、その辺は得点要素。しかし情報の物量攻撃のなかで、中盤で一度疑った大ネタを失念し、最後にムニャムニャ……。 これも確かに昨年の国産の収穫のひとつであろう。 数年後、文庫化されて誰か解説を書くミステリ評論家は、ユーナックの『法と秩序』とかウッズの『警察署長』とか引き合いに出すんだろうな、と予見(ちなみに評者はまだ後者は未読)。 いやミステリ的なネタバレともなんとも関係なく、単に三世代ものの大河警察小説ロマンというだけの話だけど。 |
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| No.2 | 6点 | 虫暮部 | |
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(2026/01/18 14:55登録) この事件、解くのに長大な時間を必要とする類の謎だとは、“必要” の定義は置いとくとして、あまり思えない。そこだけ見ればスッキリとしたパズラーにしても良かったくらい。 解決に五十年もかかったのは、人員配置やら何やらの警察サイドの事情が大きい。なかなかアイロニックである。 あと、私は “元号とは計算が面倒なだけの無意味なシステムである” と思っているクチなので、本作に限らず “(改元で)一つの時代が終わりを迎えた” とか大仰かつ感傷的な記述を見ると笑ってしまう。 章題にも元号を掲げているが、日本人だけがそこに変な色分けを幻視してしまうのだ。“法律や価値観、それに慣習も異なる” のは確かだが、キー・ワードに元号を使ってしまうと客観性が乏しくなると思う。 |
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| No.1 | 9点 | HORNET | |
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(2026/01/12 23:28登録) 昭和49年3月、東京・月島の4人家族の夫婦と娘が殺害され、幼い長男だけが生き残る無残な事件が起きた。その後別件で逮捕されたある男が「私がすべてやった」と自白し、捜査は終結。だが、捜査にあたった刑事・湯浅と鎌田は、現場には4人の実行犯がいたことを突き止めており、真相には至っていないと忸怩たる思いを抱えながら退職した。しかしその思いは次の刑事、また次の刑事へと引き継がれ―50年を越えて受け継がれた刑事たちの執念が、真相を解き明かす― 真相にたどり着けなかった刑事の無念を、三世代にわたって引継ぎ追い続ける壮大なストーリーは圧巻。湯浅、鎌田の2人が実行犯の一人と見定めていた男の死により、止まっていた捜査の歯車が再び動き出す序盤から、「昭和編」「令和編」「平成編」へと移っていく展開は非常に読み応えがあり、かつ、途切れない面白さだった。最後に捜査を受け継ぎ、真相に導いた女性刑事・藤森菜摘がおいしいところをもっていっている感はあるものの、むしろ物語の厚みは前半の2人の刑事の捜査にあると感じる。非常に面白かった。 全く私事であるが、この年末年始に本棚にある、前から「どこかで再読したいなぁ」と思っていた作品をいくつか読んだ。その中で佐々木譲の「警官の血」も再読したのだが、大河的な作品の雰囲気が本作と似通っていて、重厚な警察捜査を描いたミステリの魅力を改めて堪能した年末年始となった。 |
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