| 殺し屋の営業術 |
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| 作家 | 野宮有 |
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| 出版日 | 2025年08月 |
| 平均点 | 6.00点 |
| 書評数 | 1人 |
| No.1 | 6点 | パメル | |
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(2025/11/01 19:07登録) 第71回江戸川乱歩賞受賞作で、営業というビジネスの要素と殺し屋という犯罪サスペンスを独自に融合させた異色作。 主人公の鳥井一樹は、「ノルマを達成できなかったことが一度もない」と豪語する一流の営業マン。しかし、どれだけ売り上げを上げても心に虚しさを感じる日々を送っていた。そんなある夜、アポイント先で死体を発見するところから転がり始める。背後から襲われ、気づくと殺人請負会社「極東コンサルティング」の殺し屋たち・風間と耳津に口封じのため殺されそうになっていた。だが、ここから鳥井が本領を発揮する。自分に銃を突きつけている相手に命を懸けた商談を始めるのだ。 「殺し屋の営業」というこれまでにない設定がこの作品の最大の特徴で、殺されそうになった瞬間に営業トークを始めるという斬新さに惹きつけられた。また随所に散りばめられた営業トークや、ビジネス理論(パレートの法則、カクテルパーティ効果など)が、殺し屋との交渉や裏社会での駆け引きに活用されていく様は、ビジネス書のような説得力さえ感じさせた。 また、ずっと心に空虚を抱えて生きてきた鳥井が、ルール無用の文字通り命懸けの裏社会で能力を存分に発揮することで、生き生きしていくところが痛快。論理とハッタリが飛び交う騙し合い、仕掛け合いの頭脳戦が読ませる。鳥居をはじめ、極東コンサルティングの風間、耳津、籠原や周防商会の女性エージェントの鴎木美紅と相棒の殺し屋・百舌などキャラクターたちも個性豊かで魅力的である。終盤は、やや強引に感じたが、ある案件で敵対することになる鴎木美紅と百舌とのコンゲーム的展開は、ラストまでハラハラさせられた。 |
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