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ミステリの祭典

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パチさんの登録情報
平均点:7.00点 書評数:1件

プロフィール| 書評

No.1 7点 方舟
夕木春央
(2025/07/14 01:40登録)
読みやすくて刺激のあるエンタメ小説でした。
気になったのは、作品の主題を語るため、最後のどんでん返しのために駆け足で進みすぎて、なんでこの可能性を試さないの?と思ってしまうところが多々ありました。

殺人事件が起きたことで、全員の意識がそこへ行ってしまった……
だけでは片付かないほどの極限状態なので、もっとあらゆる悪あがきはして欲しかったです。
出口を塞ぐ岩をどうにかしてどける方法の試行錯誤、鉄扉を外して岩を削る、岩の横を掘る、など試しもせずに早々に諦めてしまうし、
簡易的な地図と、土砂崩れで封鎖した非常口の不鮮明な映像を見ただけで、地下3階の捜索を断念するのも不自然。
別の道があるかもしれなし、押せば土砂をどかせるかもしれない(もちろん、それをされると物語的には不都合ですが)。
あと、10名もの人が地震のあとに行方不明になっていて、世の中は騒ぎになって捜索はされてるだろうし、救助が来る期待を語る人が一人くらい居てもいいと思う。

別にその結果駄目でした、でも構わないけど、悪あがきしている描写が少なすぎる。
中盤以降にやっと家族の父親が少し悪あがきするくらいしかない。
あまり行動が描写されないトラブルメーカーっぽい男性キャラが1人いますが、こいつが上記で挙げたような行動を一切せずに、何日間も黙って過ごして、物語的に必要なときだけちょこっと描写されるのも、なんとも物足りない。


主題部分の「犯人を犠牲にして助かること」への葛藤はくどいくらいに描かれているわりに、そうせざるを得ないくらいの状況であることへの説得力が不足しているので、ややモヤモヤが残る作品でした。

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