第二の銃声 ロジャー・シェリンガム |
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作家 | アントニイ・バークリー |
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出版日 | 1994年12月 |
平均点 | 7.43点 |
書評数 | 23人 |
No.23 | 7点 | みりん | |
(2024/04/21 17:01登録) う…すこし期待しすぎたか? 【色々ネタバレ注意】 草稿なんていくらでもひっくり返せるからなあ。 先にやったのは向こうみたいだが、フェアさや犯罪心理を掘り下げるエピローグなども含めてこちらの方が圧倒的に好みではある。その作品とはまた別の有名なアレとかアレとかが思い浮かんだが、この頃の英米ミステリでは夜神ライト的思考が流行していたんですかね? 大ネタに隠れて、名探偵へのアンチテーゼ部分もあり。また、今後の探偵小説では数学的進化が廃れ、心理学的な要素、すなわち人間性の謎について焦点が当たるという将来的展望もあり。このままバークリーを読み進めていくと、パズラーにハッキリと見切りをつける瞬間が訪れるのでしょうか。楽しみです。 ※まあ、少なくとも国内の本格は21世紀を迎えても未だ数学的進化を遂げているようで安心ですよ笑 |
No.22 | 8点 | ʖˋ ၊၂ ਡ | |
(2021/07/22 14:24登録) 殺人そのものは単純なもので、入り組んだトリックなどとも無縁だが、丁寧にこしらえた設定ゆえに、前提が一つ変わるだけで推理も大幅な修正を強いられる。そのどんでん返しにも似たダイナミックな方向転換が読みどころ。結末は予想をはるかに超えてくる。 |
No.21 | 6点 | ミステリ初心者 | |
(2021/06/15 00:27登録) ネタバレをしています。 個人的には毒チョコ以来のバークリー作品です。 読み初めは、なかなか読みづらかったです。一気に登場する登場人物、様々な場所設定、エリックのキャラクター、いけ好かないピンカートン(笑)。しかし、シェリンガムが登場したあたりからピンカートンが変わっていき、物語も明るくなっていき、そこからは時間をかけずに読み終えることができました。 推理小説的要素は、事件が1件だけにもかかわらず、二転三転する展開が濃厚で満足感が強いです。多重解決的なのりもあり、さらに最後にはどんでん返しが2回ほどあります(笑)。 私は、この小説が作中作になっていることを知って、嫌な予感がしました(笑)。まあ、こういう展開では、まず記述者犯人を思い浮かべますよね。私の知っている、超有名作品の記述者犯人ものは、この作品よりもわずかに早く出版されているようですね。 私の嫌な予感は最後には当たっていたのですが、まあとりあえず記述者の記述を100%信じるとして作品を読み進めました(笑)。メタ的な読みで、なんとなくエリザが犯人だと思いました。理由は犯人ぽく無いからです(笑)。 どんでん返しが楽しめる作品ですが、真相を当てるのは不可能かと思われます。あえて隠している記述がありますし、そもそも偶然の要素が強すぎますよね。 不満を書きましたが、ピンカートンの恋愛小説としてもなかなか楽しめました(笑)。被害者がくずなので、後味が悪くならないのもいいですね。シェリンガムが無能っぽくなってしまって残念なのですが…。 |
No.20 | 7点 | 人並由真 | |
(2020/05/23 16:49登録) (ネタバレなし) 評者もどっかで大ネタはすでに聞いてしまっていた(涙)ものの、読み進みながら、あれ、本当にソレがこの作品? としばらく違和感がつきまとっていた(この辺の感覚は、たぶん8年前の臣さんのレビューといっしょだと思います)。そういう意味では、こういう状況ならではの妙なテンションを楽しめた。 殺人ゲームの準備から、ラブコメチックになる中盤までは、なんと筆の立つ作家なんだろう、改めてバークリーすごい、と思わされた(まだそんなに冊数読んでないけど)のだが、殺人事件の確定以降はやや退屈。いや、周囲の登場人物ほぼ総勢が、ピンカートンに同じような視線を向けてくるあたりは笑ったけれど。 終盤の真相はくだんの大ネタ如何よりも、いかに犯人が(中略)な心情で犯行を遂行していたのか、そのイメージに唖然となった。個人的にはこの作品のキモは、ずばりコッチの方です。 シェリンガムの扱いはなあ……。この時点ですでにかなりシリーズが進んでいたんだけど、やはりしれっとこういうポジションに就かされるキャラクターか。シリーズの残りの未読作品をこれから消化していくのが楽しみ。 |
No.19 | 8点 | 弾十六 | |
(2019/10/30 00:25登録) 1930年出版。国書刊行会の単行本がどうしても見つからないので、創元文庫を買い直しました。 工夫に満ち満ちた物語。素晴らしい状況設定。主人公の女性観も面白い。欠点はあまりにパズルのピースが繊細に組み合わされ過ぎて人工的に感じられてしまう、というところ。ゲームとしては最高の出来です。黄金時代の一つの到達点、ただしヒネくれまくり。なので、まともな本格探偵小説をある程度読んだうえで評価すべき作品だと思いました。 私の興味は「殺人ゲーム」(p68)の実態。余興として当たり前のように実行されます。ここでは後で参加する数人のゲスト客のために、先にいるメンバー全員でアイディアを出し合って殺人芝居を作りあげる、というスタイル。探偵役のゲスト客が到着する前に、真に迫った殺人芝居をやってるので、探偵役は後で証言を聞きまくったり、現場を調べたりして真相究明をするのでしょうね。(これ以前の作品で「殺人ゲーム」への言及がある作品を探しています… 起源が知りたいのです。) 以下トリビア。原文は入手していません。 事件発生は1930年6月8日水曜日と明記。(実際は日曜日ですが…) p7 献辞: A・D・ピーターズ(A.D. Peters)は当時バークリーのリテラリーエージェントで、その妻Helenは1932年に離婚後、バークリーの二度目の妻となった。(この作品の頃には絶賛不倫中?) バークリーは弟の妻とも関係するなど人妻大好きだったらしい。(ということは、本作のゲス男って実は…) だとすると、この献辞ってかなりの悪質物件ですね。 p17 二十二口径のライフル: 小口径ライフルとしてポピュラー。兎などの小動物や小型鳥類の狩猟用。弾は.22 long rifleが一般的。 p46 騎士パラディン: Paladin、高位の騎士の称号。人名かと思った。ラモー作曲のオペラLes Paladins(1760)も「遍歴の騎士たち」 p88 煙草と棒紅(リップスティック): 現代女性を言い表わす文句。「そういう呼び名だったと思う」とあるので不正確? 見つかりませんでした。 p136 四時半きっかりにお茶: いつもの習慣。 p149 二十番径の散弾銃: 20 bore、米国のgauge。.615インチ=15.6mm。12ゲージより小さい。 p295 四半サイズの女物の靴: 英国サイズ4.5なら日本サイズ23.5相当か。 |
No.18 | 6点 | いいちこ | |
(2019/04/29 18:00登録) ミステリの新たな地平を切り開いた点で、非常に歴史的意義が大きい作品であることは認める。 しかし一方で、1個のミステリとしては、謎そのものが魅力に乏しい、犯行計画が杜撰、偶然の影響が大きい、推理における論理性・必然性が弱い等、多くの点で相当に甘さも感じてこの評価 |
No.17 | 7点 | makomako | |
(2019/03/30 22:40登録) 多くの方の書評のようにこの作品が傑作であることは間違いないのだと思います。 古典的本格推理小説に対して大胆な新しい試みを行ったことには敬意を表します。 まずはばかばかしいような殺人劇場が登場人物により演じられ、被害者を演じるみんなから殺したいほど憎まれている男が本当に殺されてしまう。誰からも犯人と目されたピンカートン氏は濡れ衣を晴らすため友人の高名な探偵を依頼する。しかし彼は犯人を暴いたりhぽたとえ犯人であっても他人に傷つけたりしてはいけないといったへんてこな条件を探偵にかす。有能な探偵は次々と真相を暴く。次々ともっともらしい仮説が登場し、犯人が推理されるがすべて否定される。この辺りで私の頭は全く混乱してしまうのです。なんと複雑なお話なのでしょう。でも最終的に何とか解決したようになるのですが、最後にどんでん返しが来る。これでうーん凄いと思う方は高得点の評価をするのですが、私はちょっとなあといった印象。 推理小説には銭形平治が投げた銭は必ず当たる。外れて犯人が逃げたといったはかげたことにはならないといった暗黙の了解があると思うのですが、本作はこの暗黙の了解を破っているのです。 あーあ。水戸黄門が印籠出したら相手にそれって何って言われたような感じの終わり方のようでした。 |
No.16 | 9点 | 青い車 | |
(2016/01/24 23:45登録) 図書館で借りるなどして今まで読んだバークリー作品は7作で、まだ『試行錯誤』『ピカデリーの殺人』などは未読です。そのため現時点で断定すべきではありませんが、今までの中で最高傑作は本作と思います。バークリーの騙しの技巧が冴えた作品で、意外でないようで意外な犯人の設定です。しかし普通探偵は名推理で必ず犯人を当てて見せるものですが、ロジャー・シェリンガムはことごとく外していますね。そこがアンチ・ミステリー的というやつなのでしょうか? |
No.15 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2015/10/23 17:59登録) 新本格ですね。 殺人劇が生んだ現実の殺人に、自白合戦x推理合戦の複雑怪奇な噛み合わせがね、多重解決の退屈な空回りに陥らず本当にこの人は上手いなあと思わせますね。色んな違和感や齟齬にいちいち意味があってね。 冒頭ピンキーとヒルヤードの間で取り交わされる探偵小説論には泣けるくらいの旨みがありましたね。 ジョンが負けたと思ったとシリルが思い込んだ地の文のあたりからゾクゾクする違和感が醸造し始めたね。。殺人劇ごっこの言い出しに乗っかって、えも言われぬ燻し銀の鋭い指摘を会話文で言わせまくり。。アハハ。(← そんなシーン本当にあったっけ??) あと、本作の思い切りの良いユーモアは私かなり好きですね。アイルズ名義の「殺意」に漂ってた中途半端ブラックユーモアよりずっといい。ブランドにさえ通じるかも。しかし、被害者も困った奴だが語り手も相当に嫌な奴でないか?ヒルヤードには好感が持てるぞ。 それにしてもこの作者は本当に企画で仕掛けて来るのが好きなんですね。クリスティが上向きにぶち上げる派手な企画好きだとしたら、バークリーは前向きに深堀りし続ける滋味の強いそれという感触。「手記」を扱うマナーからして両者の違いははっきりしています。 ところでこの小説、題名に『第二の銃弾(THE SECOND SHOT)』って、何故そこまでこだわるんだろう「その事」に殊更に、って読んでる間ずっと思ってたんだけど、読了してみて嗚呼成る程ね、と。 そぃや「弁護側の証人」も似たような経緯で納得したものだったなあ、題名付けの機微に。 (ここからちょっとネタバレか) ゲストに呼ばれた三人の推理作家が結局全員チョイ役で終わったってのが何とも、地味ながらなかなかの皮肉を感じましたよ。 |
No.14 | 9点 | ロマン | |
(2015/10/20 16:10登録) 大邸宅でゲストを招いて行われた推理劇は被害者役の人物が本物の死体となって発見され、嫌疑を掛けられたピンカートンは素人探偵シェリンガムに助けを求めるが……ピンカートン氏の草稿・独白には途中まで苛々させられたが、そこには二重三重作者の巧妙な仕掛けが・・それは巧いズルい、そして見事! |
No.13 | 8点 | ボナンザ | |
(2014/08/07 23:51登録) 確かにこれは傑作。 二転三転する展開と最後のどんでん返し、この作品自体が持っている意味を考えると、私はこれを毒入りチョコレート事件よりも上に置きたい。 毒入りチョコレート事件を読んだのはもう十年も前になるが、私もその間にこういった作品をより評価できるようになったのだ。 |
No.12 | 7点 | あい | |
(2013/03/26 10:26登録) 毒入りチョコレート事件と同じで色々な推理が楽しめるが、明かされた真実には、驚きこそあったものの正直納得できない部分もあった。しかしながらライフルのトリックは良くできていた。 |
No.11 | 6点 | HORNET | |
(2012/12/23 18:41登録) 読み進めるにあたっては面白かった。主人公(書き手)に感情移入しやすい書き方がその大きな要因。殺された男に対する不快感を共感的に受け入れられる点も大きい。 が、発表年次を見ても、二番煎じという感は否めない。「毒入り」の方が新鮮味があった。人間が描けているという点ではこちらの方が部があるが・・・。前例があるだけに結末の衝撃度も落ちた。 ただ、氏の作品で最も自分が面白く、他にない秀逸さを感じるのは、作中の探偵を「名探偵」として終わらせないことにいささかの躊躇も感じない構えである。 |
No.10 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2012/04/21 19:12登録) 伏線はかなり明確に書かれていたのですが、素通りしてしまいました(笑)。ピンカートン(殺人嫌疑)とアーモレル(被害者エリックの従妹)のやり取り、そして結婚までしてしまう滑稽さ、さらに名探偵の取り扱いのユニークさ(毒入りチョコレートも同様)が際立っていました。真相はもちろんですが、ストーリー自体が非常に楽しめました。 |
No.9 | 7点 | 臣 | |
(2012/04/05 10:27登録) 初読作品、初読作家です。評判どおりの素晴らしい作品でした。 「○○事件」とネタは同じ、というネタバレ情報に触れていたうえでの読書なのでそれほど期待しなかったのは事実です。でも読んでみると、もしかしてあのネタバレ情報はガセだったのと思わせるような展開でした。すぐれた描写力によるものなのでしょう。細かなところを再読でおさらいせずとも、そのことがわかります。 メインの仕掛けこそ「○○事件」に似ていますが、背景、動機については「△△事件」や「××事件」にも似ているようにも思います。後半の自白合戦は芥川の「□□□」みたいにもみえました。 また、長編に殺人が1件という少なさは問題なしです。これをもったいないと嘆くことはなく、むしろこれだけ多数の要素が含まれているぜいたくな作りに感心頻りです。 聞けばこの作家、国内に紹介されたのは近年になってからとのこと。この手の変則的な作品は受け入れがたい、ということからなのかもしれませんが、個人的には感情移入もでき、余韻にも浸れるベストな作品であったようです。むしろ欧米でこそ本作のようなスタイルは嫌われるのではないでしょうか、あの主人公、あのラストですから。 「炎に絵を」や「兄の殺人者」などで感じられたストレートな本格要素、ストレートな物語性、ストレートな感情移入によるものとは質の異なる読後感が得られたことにも満足しました。 経験の乏しい多感な頃に本作に出会っていれば、という残念な気持ちもありますが、これから楽しみが増えたことをいまは素直に喜ぶべきなのでしょう。ハズレもないようですので。 |
No.8 | 5点 | りゅう | |
(2012/01/16 20:15登録) 皆さん、結構評価が高いですが、個人的にはあまりしっくりこない作品でした。推理劇の最中の殺人、アーモレルの検死審問での爆弾発言、シェリンガムのはったり推理、自白合戦など面白い展開なのでしょうが、謎自体に魅力がなくて、ストーリーも個人的には単調に感じました。一番不満に感じたのは、真相に必然性がないことです。考えられる解の一つにすぎず、別に他の真相であっても、ああそうですかといった感じです。真相を示唆するような伏線はほとんどなく、論理的な推理もありません。シェリンガムはボンクラ探偵という役回りなのでしょうが、せめてどの銃弾で被害者が撃たれたのかという議論ぐらいはしてほしかったと思います。一発の銃弾を撃ったジョンがもう一発の銃声を聞いていないという設定も、その議論をさせないためなのでしょうか。現場の見取り図が付いているのですが、本文中で記されている道がどの道を指しているのかわかりにくかったのも不満点です。犯人の設定や犯行〇〇の錯誤は予想していた範囲内であり(必然性がないので断定できるものではありませんが)、意外性は全く感じられませんでした。 |
No.7 | 7点 | あびびび | |
(2011/08/08 16:44登録) 最初からニヤリとさせられる構成。だれにでも殺人のチャンスがあるという点では「毒チョコ」の要素もたっぷり。 最後の最後でミステリ好きを納得?させる訳だが、しかし文章が瑞々しく、洗練されている。外れのない作家だと思う。 |
No.6 | 8点 | E-BANKER | |
(2011/06/26 16:12登録) R.シェリンガム・シリーズ。 最近発売された「創元文庫版」で読了。 ~高名な探偵作家の私邸でゲストを招いて行われた推理劇。だが、そこで被害者役を演じる男は、2発の銃声ののち、本物の死体となって発見された。事件発生時の状況から、殺人の疑いを掛けられたピンカートンは、素人探偵シェリンガムに助けを求める。二転三転する論証の果てに明かされる驚愕の真実。探偵小説の可能性を追求し、時代を超えて高評価を得ている傑作~ 確かにこれは「傑作」と読んでも差し支えないかもしれません。 作者の推理小説家としての技巧を「これでもか!」と詰め込んだような作品ですねぇー。 まぁ、「手記」という形式を取っている時点で、これは読者を「騙しにかかってるな?」という察しがつくわけです。 途中、検死審問の場面辺りから、「推理」やら「仮説」やら「偽証」やらが次々と語られはじめ、徐々に騙され感が増していくような思いが増していく・・・ そして、やや唐突に一旦事件は解決したかと思いきや・・・ここからが「さすがバークリー!」というべき騙しのテクニックが開陳されていきます。 銃声に関するトリックそのものは、よくある「手」であり、驚きはないのですが、非常に凝縮された時間内でアリバイやら、○○殺人の仕掛けやらが謀られ、そこに偶然の要素まで絡んでくるわけですから、もはや読者に全貌を把握するのは困難では?・・・ 今回は、もしかして、シェリンガムは普通の「名探偵」の役どころなのかと思ってたら、やっぱり、シェリンガムはシェリンガムだったんですねぇ・・・(何か可哀想) トータルでは、「さすがの1作」、「一読の価値十分」という評価です。 (これほどハズレのない作家というのも珍しい気がしますねぇ・・・) |
No.5 | 7点 | mini | |
(2010/10/05 10:23登録) バーディン「悪魔に食われろ青尾蠅」、クリスピン「愛は血を流して横たわる」、バークリー「第二の銃声」の3冊が創元文庫で文庫化されるらしい 昔々であるが、「殺意」などのアイルズ名義を除いて、まだ「毒チョコ」と「試行錯誤」位しか読めなかった頃、日本でのバークリーの評価はパッとしなかったらしい 「毒チョコ」は名作ではあるんだけど、名探偵のはずのシェリンガムが推理合戦の順番が最後じゃないというのが理解されなかったんだろうね、 昔はね、本格というものを堅苦しく解釈していた形式主義で保守的な読者が多かったんだろう この作が翻訳されたことで、普通の本格としての形式論を当て嵌めるのが適切ではない作家だという認識がやっと定着したのである 当サイトでもkanamoriさんも御指摘の通り、バークリーという作家が見直された契機となった作品であるし、某女流大家の某超有名作の弱点だった、語り手が手記を書く必然性を改善している点なども御指摘の通りだと思う その後他の作も続々と訳されて全貌が明らかになってきたのである その中でバークリーの特徴が直接的に出ている作としては「最上階の殺人」や「ジャンピング・ジェニイ」の方がより鮮明だと私は思う しかし特徴が出ているかどうかではなく、出来映えで言うと作者の代表作の一つかもしれない 実は肝となるトリックの一つで叙述じゃない方のトリックは見破ってしまった その部分の描写の箇所で、おっ、やってるやってる、と丸分かりだったが、おそらくその時点で見抜いた読者はかなり多いはずで、こんなのが見抜けないようでは初心者だろう しかしそのトリックだけが肝でもないから、見破れ易い点は作品としての瑕疵に入れないで置いとこ 野球の投球に例えると、変化球が続いた後、次は直球だろうと予想した打者が狙い通りだと思ったら、裏の裏でチェンジアップだったみたいな感じか |
No.4 | 7点 | kanamori | |
(2010/08/08 18:55登録) 国書刊行会の世界探偵小説全集で出て評判を呼び、一気にバークリー未訳本の翻訳ラッシュに火をつけた作品。 パーティの余興中の殺人で容疑者になった友人からの依頼で迷探偵シェリンガムが乗り出すというストーリー。 なんといっても友人のピンカートンの特異な造形が面白く、真相が分かってから再読すると、彼のいろいろな言動が皮肉なユーモアで真相を内包していたことが分かります。メインの仕掛けも、その手段をとる理由が某有名作品と比べて必然性がある点は評価できると思います。 |