home

ミステリの祭典

login
サマー・アポカリプス
矢吹駆シリーズ 別題「アポカリプス殺人事件」

作家 笠井潔
出版日1981年10月
平均点6.91点
書評数22人

No.22 5点 バード
(2024/09/29 20:19登録)
濃厚な歴史探求とミステリが混ざった意欲作。と褒めるファンも多そうだが、私には合わなかった。
まず歴史パートが退屈すぎる。カケルはカタリ派の謎を解くことを重視していたが、このパートは興味持てないと非常に厳しい。
一方事件パートは結構好き。見立ての意味も明確な点が好印象で、フーダニットやホワイダニットが十分楽しめる。ラストのどんでん返しはそれ程だったが。

配点は物語3点にミステリ的な良さで+2。

No.21 8点 八二一
(2024/08/25 20:45登録)
矢吹駆シリーズの第二作。
複数のトリックが惜しげもなく使われ、推理していくプロセス、手掛かりの与え方、登場人物の行動を想像したりするところなどは、見事としか言いようがない。思わず発想の虚を衝かれるような巧いトリックもある。

No.20 9点 じきる
(2021/05/23 18:09登録)
カタリ派や黙示録など宗教衒学が非常に重厚で、決して読みやすくはないものの、思想対決や二転三転するストーリーの展開と併せて楽しめる。ミステリとしても事件全体の構図や見立ての理由の処理が素晴らしく、コテコテの本格ガジェットも相まって陶酔感に浸れる。

No.19 7点
(2020/04/15 09:46登録)
 膨張したサハラ砂漠が地中海全域を残らず貪婪に呑み込んでしまったとさえ思える、灼けつく猛暑の夏。謎の日本人青年・矢吹駆はラルース家事件(前作『バイバイ、エンジェル』)の根源たる暗黒思想に対抗する〈天啓(イリュミナシオン)〉の流れを追い、中世南仏史の研究者シャルル・シルヴァンに接触する。シルヴァン助教授はギリシア思想の流れを汲むオク(南仏)語文明の根幹となる、中世異端カタリ派の信仰の中心であった〈太陽の十字架〉の在処を示す、かつて存在したはずの〈ドア文書〉を捜し求めていた。
 ルイ14世の腹心であり、絶大な権勢を振るった財務大臣コルベールの一族が、ブルボン王家の接収前に歴史から削除したドア文書――それを追うのは彼だけではない。シルヴァンの教え子ジゼールの父親で、フランス有数の産業複合体(コングロマリット)総帥オーギュスト・ロシュフォールも発掘という形で、原子力発電所の建設予定地である地元ラングドックを調査していた。
 建設反対派でラングドック自立派MRO(オクシタニ解放運動)の指導者であるセットの女教師シモーヌ・リュミエールは、せっぱつまった口調でカケルに告げる。「この都会にいてはいけません。家に寄らないで、できれば外国に行ってしまうのです」
 その直後イエナ橋にほど近いセーヌ岸の路上で、カケルは何者かに襲撃され、肩に銃弾を受けた。オクの秘宝を狙う者へのMROの警告か、カケルによって首都組織を壊滅させられた秘密結社〈赤い死(ラ・モール・ルージュ)〉の報復か、それとも?
 銃撃された矢吹駆とラルース家の事件の傷も癒えぬ語り手ナディア・モガールは、ジゼールの招待を受けてパリを離れ、警視庁のバルベス警部と共にロシュフォール家所有の南仏モンセギュールの山荘、エスクラルモンド荘へと向かうが、カタリ派の聖地で彼らを待ち受けていたのは黙示録の四騎士が導く、戦慄の四重殺人事件だった・・・
 雑誌『野生時代』昭和五十六(1981)年四月号一挙掲載分に加筆され、同年十月に角川書店から刊行された、矢吹駆シリーズ第2作。『バイバイ、エンジェル』以上に重厚な筋立てで、以前は私的日本ミステリベスト10の一角に位置していましたが、今読み返すと力作だけどそこまでではないなと。
 四重殺人の前半は静で後半は動。準密室と密室をじっくり検討したあとは、モンセギュール峰を舞台に繰り広げられる第三第四の殺人、カーアクション、追跡劇、そしてどんでん返しと二転三転の畳み掛けるような展開で、凄まじい緊迫感と盛り上がりを見せます。
 ただオチと結び付いたカケルとシモーヌの思想対決ですねえ。これをどう評価するか。前作の犯人が踏み絵を迫った口実を、更にエグい形で切り札として利用する。若かりし頃は単に凄えなでしたが、トシ取って改めて見ると「それは結局お前の弱さちゃうんかい」と。
 ここまでマウンティングする意味が不明ですし(カケルによるとシモーヌは〈思想的対抗者〉)、このシリーズからは今に至るまで納得のいくものは得られておりません。それはカケルの生き方で答を出すしかないと思うんですが、ずっと煙に巻かれたままです。密室部分が弱いだけにこのハッタリが作品の肝なんですが、うまく逃げてんなと。主題は前作の継承なので、『バイバイ、エンジェル』の余熱と、シモーヌ・リュミエールというキャラクターの輝きだけで持たせた感じ。
 小説としては多重構造でミステリをゴシック風に覆い、その底流として西洋文明を貫く黒魔術VS白魔術、世界を二分する霊的闘争の流れがある。なのでどこがミステリやねんというくらい延々と宗教歴史の薀蓄が語られる訳ですが、ここからナチスに突入するあたり、作品全体を象徴する〈太陽の十字架〉関連の背景はまんまヒロイックな伝奇小説なんですねえ。雑誌「ムー」的要素の塊。次に『ヴァンパイヤー戦争』『サイキック戦争』へ行くのも分かるわ。
 シリーズ当初からの構想かどうかは不明ですが、そんなのが作品の根幹だとあまり本気にするのは考えもの。再読するとオカルト史部分の濃さに驚きます。ゲテなのは前作も一緒だけど、これは単なるガジェットに留まらず、精神的な背骨を半分アッチ側に突っ込んだ小説。膨らみは大幅に向上していますが、かといって必要以上に評価する気にはなれません。

No.18 7点 名探偵ジャパン
(2019/11/30 15:25登録)
中盤に差し掛かる手前くらいまでは、「やばい! 俺、この本投げちゃう(いわゆる「壁本」ではなく、難しすぎてギブアップしちゃうという意味で)かも!」と思っていたのですが、辛抱して山を越えて読み切って良かったです。

突き詰めちゃえば、世界の転覆を狙うテロリスト集団が送り込んでくる刺客と、探偵矢吹駆との対決がこのシリーズの図式のようで(矢吹シリーズは一連の連続ストーリーのため、前作の内容や犯人が以降の作品内で出てくるのは仕方のないことで、それなくしては話が成立しないのだと私は思います)、「名探偵対犯罪組織」という極めてオーソドックスな対立構図を、ここまで分かりにくく複雑に描けるのが逆に凄いよと思います。
作者の頭が良すぎるため、単純な「正義対悪」の構図ひとつを描くのにも、(作者自身が)納得できるだけの膨大な知識と思想を注ぎ込みまくらなければならなかったり、矢吹が「じっちゃんの名に賭けて!」的な単純な迎撃態勢をとることなく、刺客との対決に消極的なのも、このシリーズを分かりにくくしている要因な気がします(文庫版の解説で奥水光が、探偵小説に登場する名探偵のことを「いやに勿体をつけるばかりで眼前の事態には頑なに介入せず、したがって犯罪を未然に防がず、「驚くべき真相」が露呈する瞬間まで、犯人のほしいままな振る舞いを座視し続ける探偵の、ほとんど共犯者ともいうべき曖昧な態度」と書いていますが、矢吹に対する当てつけにしか聞こえないのは私が本作を理解しきれていないからでしょう)。

ただ、各事件の様相はまことに「ド本格」していて非常に好みです。「撲殺と弩とで二度殺された死体」いいじゃない。「完全な密室内で首つり死体」いいじゃない。解決も竜頭蛇尾になることなく素晴らしく、これらのアイデアをもっと凡人にも分かりやすい形で作品化できていたら……いや、できなかったからこその笠井潔なんだろうなと思います。でも、この不器用さもかわいいです。
続編の『薔薇の女』も当然読みますよ。

No.17 7点 ことは
(2019/11/17 13:02登録)
思想対決については、1作目より有機的に絡んでいて、なかなか読ませる。ミステリ部分は、犯行方法が迂遠にすぎる気がするが、許容範囲かな。安定感があるので、矢吹シリーズでは代表作になるのもわかる。

No.16 7点 クリスティ再読
(2019/08/04 23:06登録)
夏だ!アポカリプスだ!なんてのは評者だけだろう(苦笑)。去年は「寒い」方で特集したけども、今年は「夏」でまとめようか。前作「バイバイ・エンジエル」は真冬だったけど、本作は南仏ラングドックの暑い夏の話である。黙示録殺人事件とまあ、大上段に出たもので、だから四人の騎手になぞらえての連続殺人...カーか横溝正史かってくらいのおどろおどろしい怪奇趣味。
が、パズラー的にも準密室1,密室1,アリバイ工作など結構充実している....のだが、探偵役のヤブキカケルに謎を解明するヤル気がないのが奇観というものだ。前作だと「現象学的探偵術」が非常に効果的だったのだが、今回は標準的なパズラーのごく平均的で常識的な解決。前作のショックには程遠いし、前作は想定外状況からの「モダン・ディテクティヴ」になってた良さがあるんだけど、本作は犯人プランが無意味に凝りすぎている。カケルのヤル気はシモーヌ・ヴェイユを仮託したキャラとの思想的対決に振っていて、ここに作者のリキが入っているのが見て取れるのだが、評者はこの議論は買えないな。結構イイ気なテロリズムの是非についての議論だよあれはね。しかもこの議論がミステリの側と噛み合っているように思えないんだなあ。あの議論、この本作じゃなくて前作への注釈みたいなもので、ヴェイユなら「バイバイ・エンジェル」のテロ思想をどう克服するか?と聞いてみました、というノリのものだよ。だから前作の犯人バレしてるからどうこう以前に、前作読んでないとまったく「お話にならない」。
どうせ黙示録というのなら、イエスの再臨で携挙された真のクリスチャンが、滅亡する地上を眺めても神と一体化する喜びの中で少しも心を傷めない..なんてあたりを突っ込んだ方がいいんじゃない?なんて思うのだよ。まあそもそも「黙示録殺人事件」なんて発想自体が、キリスト教をファッションで誤魔化せる日本人らしいものだと思う。
なので本作、ハッタリは大変見事だと思うけど、ハッタリほどには内容が伴っていないように思う。たぶん本作と次の「薔薇の女」を書いて、こんなことがしたいなら、伝奇アクションの方がいいんじゃない?と作者は思って「ヴァンパイアー戦争」にしたと思うんだ。バタイユ神話をベースにした霊的闘争史観なんだから、本作+次作、ということでしょう?
いろいろイチャモン付けたくなる作品だけど、客観的にはエンタメとして力作である。甘目に7点。カタリ派ウンチクがヘヴィとか皆さん言うけどさ、怪奇派スリラーくらいで読めばいいんだよ。この人太田竜みたいにかなりオカルト入ってるから、真に受けないようにね。

No.15 5点 あびびび
(2016/01/03 12:22登録)
宗教的歴史の薀蓄は、「カラマーゾフの兄弟」で懲りている(世界的名作に対して失礼だが)。4分の1を読み飛ばしてしまった。ただ、「黙示録」の意味がなんとなく理解できたのは収穫だった。

自分の読解力からすれば奇書に近いが、それでも殺人現場や犯人の推移に対しては本格を感じたし、語り継がれるミステリだと思った。ただ、密室や殺害方法に対しては、苦笑するしかなかった。

No.14 8点 ロマン
(2015/10/21 11:40登録)
黙示録を見立てた連続殺人という事件設定は如何にも本格探偵小説的ながら、それをカタリ派や人間存在に纏わる善と悪に絡め、哲学的、思想学的、宗教学的問答の中に断片として組み込んでしまう発想は著者ならでは。学が足りず全てを理解する事は出来なかったが、その詩情溢れる文章は読んでいるだけで頭の奥がジンと痺れるような陶酔感を与えてくれた。物語と論戦が分かち難く結び付いた構成は美しい。それでも個人的な好みを言うなら、よりスッキリ読める前作を選ぶか。盛り沢山の内容に読了後は心地良い疲労感があった。

No.13 8点 E-BANKER
(2014/11/06 21:03登録)
「バイバイ・エンジェル」に続いて発表された矢吹駈シリーズの第二長編。
南仏地方を主な舞台に、圧倒的なスケールと壮大な宗教史に彩られた連続殺人事件。
本格ミステリー好きには決して避けては通れない作品だろう。

~ラルース家事件の傷心を癒しきれないナディアは、炎暑のパリで見えざる敵の銃弾を受けた駈に同行し南仏地方を訪れる。心惹かれる青年と過ごすバカンスは、ヨハネ黙示録を主題とした連続殺人の真相究明へと一変する。二度殺された死体、見立て、古城の密室殺人、秘宝伝説、曰くある過去・・・絢爛に散りばめられたモチーフの数々が異端カタリ派の聖地というカンヴァスに描き出されるとき、本格ミステリーの饗応は時空を超えて読む者を陶酔の彼岸に誘う・・・~

これは・・・「大作」という冠に相応しい作品。
前作「バイバイ・エンジェル」は首切りの謎にフォーカスした作品だったが、本作は紹介文のとおり密室あり、見立てあり、二度殺された死体ありと、とにかく盛りだくさん。
本格好きには堪えられないガジェットに彩られている。

「密室」は南仏の都市カルカソンヌの城壁内という広い空間を舞台としているのがミソ。解法そのものはやや拍子抜けかもしれないけど、まずはその舞台設定そのものに賛辞を贈りたい。
「二度殺された死体」については、アリバイトリックと有機的に繋がっているのが面白い。特にアリバイについては「分単位」という細かさ!
そして、それらの“背骨”ともいえるガジェットが「見立て」ということになる。
「見立て」を出してくるからには、その必然性というのが問われるわけで、そこに真っ向勝負を挑んだ野心作ともいえる。

他の皆さんが書かれているとおり、キリスト教の異端「カタリ派」を中心とした宗教史の蘊蓄で多くの頁を占めているところが、本作の評価を微妙にしているのだろう。
確かに蘊蓄に酔っている部分はあるのかもしれないけど・・・でもこれがなかったら「笠井潔」じゃないからなぁー
(当然ながら「見立て」にも関わってくるのだし・・・)

ということで、読了まで時間はかかったけど、個人的にはなかなか楽しい読書にはなった。
「やっぱり、ミステリーはこうでなければ」と再認識した次第。
まっ、この辺は好みの問題ですから・・・

No.12 5点 ボナンザ
(2014/10/11 01:24登録)
バイバイ・エンジェルに続く伝奇ミステリ第二弾。
オカルト趣味というよりは本筋に関係ない蘊蓄の連発で、本筋が良作なだけに残念。
それでいて黒死館のような強烈な印象を残さない。
まあ、最終章は佳作。

No.11 7点 メルカトル
(2014/01/09 22:29登録)
再読です。
これはもう、超本格ミステリと言っても差し支えないのでは。よって、ミステリマニアは避けて通れない作品だと思う。勿論、無理強いはしない、なぜなら、全体の半分くらいが宗教の歴史や薀蓄が語られているのだから。しかし、だからこその重厚さであり、これなしではただの普通のミステリになってしまうね。
事件はヨハネ黙示録の見立て殺人となっているが、連続殺人事件ではあるものの、それほど複雑ではなく、トリックなどもそれほど凝ったものではない。しかし、後半の二転三転する展開はとても読み応えがある。
丁度400ページから、突如本格ミステリらしさを発揮して、それまでの宗教云々は一体何だったのかと思うほどである。それにしても、殺人の動機は小難しい小説のわりには至って普通なので、そこはやや拍子抜けの感がある。
一つ勉強になったのは黙示録の意味合い、なるほどそうだったのかと納得。

No.10 5点 makomako
(2012/06/24 08:50登録)
 とても読みにくい小説でした。重厚で複雑なないような上に、登場人物はカケル以外は外国人ばかり。全く興味のない宗教的薀蓄を航も長々とやられては読むほうが苦痛になる。もうすこしさらっと書けないものか。二転三転とする犯行の結論はある意味で非常によく考えられたように見えるが、その間に長々と哲学的(に見せかけた?)お話を読まされては興味半減となる。
 カケルの態度もはらだたしいばかりかほとんど共犯ではないか。まあ大体の探偵は似たような行動をとるのだが、初めから真相が分かっていたのに自分にとってはたいした問題ではないといって次の殺人を見逃すのはいくらなんでもひどすぎるでしょう。もうちょっと違う設定はなかったものかねえ。
 まあ内容は充実しており話もよく考えられているので、これをもっとコンパクトに分かりやすくしたら素晴らしい傑作が出来上がったの思うのですが。
 わたしの感想としては、評論家はあくまでも評論家であり、その人に実践させるとうまくいかず弁明だけが上手といったところでしょうか。

No.9 8点 りゅう
(2011/07/05 20:04登録)
 読みにくいですが、ミステリとしてもミステリ以外の部分でも良く出来た作品だと思います。
 日本人作家の作品ですが、舞台がフランス、登場人物は探偵役の矢吹駆以外は外国人、文章も硬質で、翻訳作品を読んでいるような感じです。おまけに、途中で西洋の中世宗教史に関する薀蓄が延々と語られ、矢吹駆とシモーヌの思想対決があるなど、気軽に読める内容でもありません。この薀蓄の部分がスラスラと読めて、完全に理解できる人は相当な知性の持ち主ではないでしょうか(私は相当苦労しましたし、十分に理解できたとは言えません)。薀蓄の部分が事件の謎と密接に関わっているので、外せない内容ではありますが。400ページくらいまでは読み進めるのに苦労したのですが、最後の謎解き部分になると、俄然面白くなります。事件全体は、黙示録(アポカリプス)に基づく見立て殺人で、見立てにしっかりとした意味があり、納得できるものです。4つ(実質的には5つ)の殺人事件が起こるのですが、特に1つ目の殺人事件が優れており、謎の設定が魅力的で、使われているトリックも秀逸です。「二度殺された死体」の謎に関する真相も納得です。途中でナディアとジャン=ポールの2人の推理も紹介され、不完全なところはあるのですが、これもなかなかのものでした。
 宗教と正義の問題、原子力と人間との関わりなど、考えどころの多い作品でもあります。また、最後に矢吹駆がシモーヌに対して行なったあることには驚かされました。

No.8 7点 kanamori
(2010/07/31 15:22登録)
フランスのある別荘を舞台に、ヨハネ黙示録に則った見立て連続殺人を描いた、矢吹駆シリーズの第2弾。
登場人物は、語り手のナディアを始め主役の探偵以外フランス人ばかりで、異端派の宗教・思想論議など衒学趣味に溢れていることもあり最初はとっつきにくいが、中盤以降のスリリングな展開に惹きこまれた。
密室などトリックの真相は腰砕けの感もありますが。

No.7 5点 測量ボ-イ
(2009/05/04 10:43登録)
ミステリというよりも、難しい宗教史を読まされているよ
うで、あまりピンとこなかった作品。密室トリックめいた
ものも出てきますが、文章だけの説明で何だかよく判りま
せんでした。
氏の3部作では他の「バイバイ・エンジェル」や「薔薇の
女」の方が良かったです。

No.6 6点 nukkam
(2009/04/01 18:01登録)
(ネタバレなしです) 前作の「バイバイ、エンジェル」(1979年)も決して軽い作品ではありませんが1981年発表の矢吹駆シリーズ第2作の本格派推理小説の本書は重厚感がぐっと増しました。前半は中世の宗教史の知識が半端でなく、その分謎の魅力がややもすると霞んでしまったようなところもありますが第4章の終盤あたりからは前作でも見られた思想対決的な雰囲気が濃くなり、息苦しさと緊張感を同時に味わいました。そして鮮やかな謎解きの後に訪れる、あまりの後味の悪さは高木彬光の某作品を連想しました。なお作中で「バイバイ、エンジェル」のネタバレ(犯人の名前を堂々と公表)しているのはいくら原作者といえどマナー違反ではないかと思います。

No.5 8点 イオン
(2004/03/31 21:30登録)
矢吹シリーズの中では一番本格っぽい作品。そして、おもしろい。

No.4 8点 ギザじゅう
(2004/03/10 13:19登録)
二度殺された死体、見立て殺人、密室…と本格のケレン味も高く、前作以上にレベルの高い作品ではあるが基本的に楽しめたかどうかという採点はしづらい。
前作同様にこのテーマを探偵小説の形にしていることには疑問もあるが、ニコライ・イリイチも出てきて(名前だけ)矢吹駆の運命の輪が具体化してきたので、のシリーズがどうなっていくかという点で気になることではある。

No.3 10点 スケスケ
(2004/03/10 00:10登録)
「バイバイ、エンジェル」を読んだ時は、作者は作品のミステリとしての力不足さを圧倒的な思想論で覆い隠そうとしてるのか?と思ったが、これを読んで、そうではないことを思い知った。
複数のトリックが惜しげもなくちりばめられ、その一つ一つは決して派手なものではないが、それらが全て、完成されたジグソー・パズルのように無駄なく、隙間なく組み合わさっている。
森博嗣が、笠井潔の作品について「一つ一つの部品が、ビス、ナットに至るまで、全て最高級品で作られている」と論じているが、正にその通りであると思う。ともかく、この作品が現代本格の一つの到達点であることに疑いはないだろう。

22中の書評を表示しています 1 - 20