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ミステリの祭典

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スケスケさんの登録情報
平均点:9.33点 書評数:3件

プロフィール| 書評

No.3 10点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2004/03/14 21:22登録)
途中までは本格っぽくない流れだったので、これはきっと叙述トリックが仕掛けられているな、と思いながら読んでいたのに、それでもラストには驚かされた。
この作品の最も優れた所は、トリックの出来云々ではなく、トリックと物語のテーマとの間にはっきりとしたつながりがあることだろう。トリックが単に物語の付加的な要素としてくっつけられているのではなく、このトリックがなくては成立しない、またトリックという形で最後に真相を明かすことで、テーマがより浮き彫りになる物語が作り上げられている。
そういう意味で、この作品はミステリの一つの完成型と言うことができるかもしれない。この作品が「本格ミステリ・ベスト10」のみならず、「このミステリーがすごい!」でも1位を勝ち取ったのも、そういう理由からだろう。


No.2 10点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2004/03/10 00:10登録)
「バイバイ、エンジェル」を読んだ時は、作者は作品のミステリとしての力不足さを圧倒的な思想論で覆い隠そうとしてるのか?と思ったが、これを読んで、そうではないことを思い知った。
複数のトリックが惜しげもなくちりばめられ、その一つ一つは決して派手なものではないが、それらが全て、完成されたジグソー・パズルのように無駄なく、隙間なく組み合わさっている。
森博嗣が、笠井潔の作品について「一つ一つの部品が、ビス、ナットに至るまで、全て最高級品で作られている」と論じているが、正にその通りであると思う。ともかく、この作品が現代本格の一つの到達点であることに疑いはないだろう。


No.1 8点 僧正の積木唄
山田正紀
(2004/03/09 23:40登録)
「僧正殺人事件2」! そして金田一耕助! という訳で、ガチガチの本格ミステリを予想しつつわくわくしながら読んだが、これは意外にも歴史に重みを置いた作品だった。作者が、作品の中で「僧正殺人事件」の真犯人を独自に推理し、その人物と大量破壊兵器の問題をからませた点は、やや強引である感は否めないが、それでもこの作品が、実は現代世界へのメッセージをも含めたものであることを読者に伝えている。
「僧正殺人事件2」の犯人の犯行動機にもう少し本作の軸である当時の歴史問題を深くからませてほしかったなど、不満もあるが、ミステリ的にも最後まで飽きさせず、終始楽しめたので、この点。

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