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ミステリの祭典

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僧正の積木唄

作家 山田正紀
出版日2002年08月
平均点6.20点
書評数5人

No.5 4点 文生
(2020/08/11 13:53登録)
― 僧正殺人事件は解決していなかった!アメリカに渡っていた金田一耕助けが真実を解き明かす!!
という非常にワクワクする内容なのに全然乗れなかったですね。
まず、山田正紀節と原典の雰囲気が水と油だし、本格ミステリとしてもこれといって魅力がない。
それに社会問題とかをこの題材に持ち込んでほしくなかったというのが正直なところ。
山田正紀自体は好きな作家なのだが、「桜花忍法帖」といい、パスティーシュ作品には向いていないと思う。
全部自分色に染めてしまうから。

No.4 7点 虫暮部
(2020/04/07 10:09登録)
 刊行直後に読んだ時はあまり楽しめなかった。原因は明白なので此度再読するにあたっては万全の準備を心掛けた。ヴァン・ダイン『ベンスン殺人事件』から『僧正殺人事件』まで順に読み、平行して横溝正史も何冊かチェックして金田一耕助のキャラクターを再確認しておく。満を持しての本書である。
 トリビュートとは言え徒におもねった物ではない。例えば文体は概ねいつもの山田正紀そのまま。原典の文章が持つ旧時代ゆえの靄に鉋をかけて1930年代のニューヨークをくっきりと甦らせている。ファイロ・ヴァンス等の扱い方も、愛情ゆえに厳しくならざるを得ないと言った感じだ(一方で金田一耕助については愛情だだ漏れ)。
 続けて読むと、『僧正殺人事件』の動機の背後に暗示される広がりは、まさに山田正紀の守備範囲。ヴァン・ダインを補完しているように見せて、それに留まらず自分の場に持って行くあたり強かだ(その割に、明かされる真相はしょぼくて残念)。
 ネタバレ防止で幾らか曖昧な表現のところはあるが、さほど気にならなかった。但しこちらを先に読むと『僧正殺人事件』の犯人も見当が付いてしまうと思う。従ってやはりあちらを読んだ上で臨むほうが良い。問題は、『僧正殺人事件』が“ミステリ読みの基礎教養”の座をもはやキープ出来ないだろう、と言うこと。

No.3 8点 スケスケ
(2004/03/09 23:40登録)
「僧正殺人事件2」! そして金田一耕助! という訳で、ガチガチの本格ミステリを予想しつつわくわくしながら読んだが、これは意外にも歴史に重みを置いた作品だった。作者が、作品の中で「僧正殺人事件」の真犯人を独自に推理し、その人物と大量破壊兵器の問題をからませた点は、やや強引である感は否めないが、それでもこの作品が、実は現代世界へのメッセージをも含めたものであることを読者に伝えている。
「僧正殺人事件2」の犯人の犯行動機にもう少し本作の軸である当時の歴史問題を深くからませてほしかったなど、不満もあるが、ミステリ的にも最後まで飽きさせず、終始楽しめたので、この点。

No.2 7点 由良小三郎
(2002/11/04 20:31登録)
何か感想を書くのが、難しいミステリのようで、横溝作品読んでいないし、名探偵ファイロ・バンスは記憶の彼方です。開き直って書くしかないですが、若き日の金田一耕介像悪くなかったです。歴史ミステリみたいな側面もあるので、いろいろな、サイド・ストーリやエピソード詰め込むというのも見せ所ですが、ややこなれてないエピソードも多かったような気がしました。

No.1 5点 フリップ村上
(2002/09/19 20:56登録)
僧正殺人事件は終わっていなかった。 続発する惨劇。風雲急を告げる大戦前夜のニューヨーク。 解決に乗り出すのはアメリカ放浪時代の金田一耕助!
という、オールド・ファンにはそれだけでたまらない設定。
大陸浪人金田一の活躍は、ファンなら誰もが一度は思い浮かべる夢物語だが、 おそらく長編は本作がはじめて。
ていうより、これは「やったもん勝ち」の世界で、 ミステリ・プロパーではない作家ならではの冒険(暴挙?)とも言える。
で、肝心の内容の方はというと……。
私の個人的見解では、この作家には基本的なミステリ・スピリット(ぶっちゃけ、ミステリが本気で好きって感じ) が欠落しているような気がしてしかたがない。
何ゆえ金田一が終始着物姿で通すようになったのか、 という理由付け等、楽しく読める場面も多々あるだけに、解決のあっけなさが惜しい。

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