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ミステリの祭典

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名探偵ジャパンさんの登録情報
平均点:6.21点 書評数:370件

プロフィール| 書評

No.370 6点 その謎を解いてはいけない
大滝瓶太
(2023/11/09 13:21登録)
 本作はですねぇ、興味を持っても、いきなり購入しないほうがいいでしょう。本屋さんで、とりあえず第一話の半分くらいまで立ち読みしてみて、それでもついて行けるかどうかを判断したうえでレジに持っていくか決めるのをおすすめします。相当に癖強めの作品なので、合わない人は絶対に合いません。
 表紙イラスト、タイトルからして、恐らく読者にいきなり「奇襲」を仕掛けることを目的とした作品ですので、内容について書くことがありません(笑)。


No.369 5点 不実在探偵(アリス・シュレディンガー)の推理
井上悠宇
(2023/10/21 19:34登録)
 昨今隆盛を極めている「名探偵大喜利」も行き着くところまで行き着いて、ついに「存在しない名探偵」が爆誕するに至りました。
 探偵役の奇抜さに対して、事件自体は小粒というか、もう少しこの探偵を活かせる事件が用意されてもよかったかなと思いました。


No.368 7点 エレファントヘッド
白井智之
(2023/10/21 00:04登録)
 いやあ、凄いものが出てきましたねぇ。
 並の作家が書いたら、ただだた荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい、という評価になってしまいそうな本作の特殊設定も、作者の筆力でもって強引にねじ伏せられて、読まされてしまいます。
 凄い作品なのですが、作者の作風は健在(笑)ですので、万人におすすめはいたしかねますね。逆に、白井智之大丈夫、という方は絶対に読むべきでしょう。

※以下、少しネタバレ的な感想。





 作中は主人公の身辺しか描かれていませんが、この設定だと、世界中のあちこちで謎の死が続出していることでしょうね。恐ろしい話です。


No.367 7点 神薙虚無最後の事件
紺野天龍
(2023/10/09 23:04登録)
 キャラクターも立っているし、事件そのものも面白いしで、とりあえず欠点が見当たらない佳作であることに間違いはないのですが、今の時代こういうのは供給過多というか。流行り廃りがあるので仕方ないことではありますが。
 本来この手のミステリは変化球だったはずですが、今やこっちが直球になりましたね。





※以下少しネタバレ※
 多重解決の中の「それじゃなくてあっちのほうが動く」というトリックは、「あっち」にいたほうの人が気付かないはずないだろ(笑)誰か突っ込んで下さい(笑)
 あと「鏡の厚さが1センチ」も、こちらのほうはあとで突っ込みが入るとはいえ、その時点で誰か「それはないやろ」と指摘して下さい。


No.366 8点 しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人
早坂吝
(2023/10/09 22:47登録)
「叙述書いたらデビューできるっていう情報商材でも売ってんのか?」(本分より 笑)
 いやあ、やられましたね。「『世界が反転』や『どんでん返し』を売りにするならここまでやりなよ」という作者の心の声が聞こえてくるようでした。
 本作は最初に舞台の平面図が挿入されているのですが、それを見て「ああ、こういうやつね」と「ははん」と思った人こそ、ぜひ読んでみていただきたい。


No.365 6点 レモンと殺人鬼
くわがきあゆ
(2023/10/09 22:39登録)
 ラストに向けての怒濤の展開は、まあ、確かに凄かったのですが、「サプライズのためのサプライズ」とでも言いましょうか。「みんなこういうの好きでしょ」という作者と、「こういうのが今売れるんだよ」という編集者の心の声が聞こえてくるようで、少し覚めますね。
 本来「どんでん返し」って、想定の外からやってくるものだと思うのですが、今はもう「これは、どんでん返しものだぞ」という、それ自体がパッケージに収まっているのを分かったうえで読んでしまっていますからね。


No.364 6点 世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
(2023/10/06 17:07登録)
 いやあ、お疲れ様でした。と作者に言いたいですね。
 大いなる一発ネタ作品で、特に語るべきことも(そもそも語れない)ないのですが、結構大変なことをやってのけたという意味で書き込まずにはいられませんでした。

 これから読もうという方には、あまりページをパラパラとめくってしまわないように、と忠告しておきます。


No.363 6点 名探偵のままでいて
小西マサテル
(2023/07/30 00:45登録)
 認知症を患い、快刀乱麻を断つが如き推理の輝きを放っていたかつてを想像できないくらいに、ほど遠い姿となってしまった往年の名探偵。だが、孫が持ち込む不可能犯罪の話を聞くときだけ、彼のその濁った瞳には全盛期の光が戻るのだ。俺たちはまだまだやれる! 後期高齢者パワー爆発! 超高齢化社会に突き進む現代日本に投げかけるミステリ!
 ……みたいなのかと思ってたら全然違いました(笑)だって、本作のタイトルからしたら、そういうことでしょう?「おじいちゃん! 名探偵のままでいて!」っていう孫の叫びじゃないですか。投稿時は違うタイトルでしたが、この改題を考えた編集者はあざといですね(笑)仕事のできる人なんだと思います。まあ、認知症を患った老人が孫から持ち込まれた謎を解く、というコンセプトは間違っていなかったのですが。

 で、内容なのですが、他の評者の方も書かれているように、探偵役の老人が「えっ? これだけの手がかりからその推理を? 凄すぎひん?」と、引くくらいの超推理をかましてくれます。もはや超能力レベル。ラスト事件の犯人特定に至る手がかりも、ほとんどが読者に明かされていなかったり、特定の知識を必要としたりと、いわゆる「後出しじゃんけん」の連発で、ミステリ(本格)としての骨格は緩いといわざるをえないでしょう。
 ですが、良作であることに間違いはないと思います。読みやすいですし、「ミステリって面倒くさい」と感じている読者にも安心して薦められます。「このミス大賞」という話題性も手伝って、ミステリファンの裾野を広げてくれる作品となるのではないでしょうか。


No.362 7点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2023/07/08 21:07登録)
 ジュブナイルとしては、耳慣れない言葉が飛び交いすぎてませんか? と感じなくもないですが、往々にして子供という存在は背伸びをしたがるものですから、これもありかと思います。
 怪盗ものとスパイもののいいとこ取りのような、騙し合いの展開は読んでいて飽きないですし、こういう知略の応酬はミステリ作家が書くスリラーっぽくて楽しめました。


No.361 2点 少年たちの密室
古処誠二
(2023/05/14 22:38登録)
 久しぶりに「読まなきゃよかった」と思った作品でした。
 城戸という登場人物に関する描写や言動が、悪い意味で生々しくて、まあ、彼が被害者となるのですが、「別にこいつが死んでもどうでもいいや」としか思えず、トリックにも動機にも「真相を知りたい」という興味がまったく引かれませんでした。
 その城戸の死後もページ数が相当あってうんざりしたため、肝心そうだと思うところだけ拾い読みして終わらせたので、的確な書評にはなっていないかもしれないですし、社会派的な問題提起として価値のある作品なのかもしれませんが、「読書」「ミステリ」に対して求めるものとか、こうあってほしいという欲求とか、まあ、ありとあらゆるものが肌に合わなかったということで、この点数で勘弁して下さい。
 あと、城戸の親(とその行為に加担した社員)にも責任はあるはずで、そこを無視したら駄目です。私が読み飛ばしてしまっただけかもしれませんが、教師(学校側)にすべての罪をおっ被せて、めでたしめでたし、では問題提起の視点もぶれてしまうと思います。


No.360 6点 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック
鴨崎暖炉
(2023/03/09 20:04登録)
 これだけのトリックを盛り込んだ作品を間隔を空けずに出してくることは、まず凄いですね。中には「そうなるかなぁ?」と思わないでもないトリックもありますが、数で勝負ということで。
 物理的密室トリックだけでなく、「後期クイーン的問題」や「○○トリック」っぽいことも仕掛けてきます。引き出しの多さを見せつけた形ですが、作中人物の口を借りて、ちょっと作者のドヤってる感じが透けて見えて、なんやこいつって思いますね(笑)。
「六」「七」と来て、次は「八」でしょうか。期待が高まります。


 以下、ネタバレ的な感想を。







「液体窒素万能説(笑)」


No.359 5点 可制御の殺人
松城明
(2023/01/08 15:23登録)
 短編として受賞した1話に、新作を継ぎ足して連作短編に構成しなおされたものだそうで、メルカトルさん評のとおり、確かに表題作とそれ以外との完成度の落差が激しいです。
「機械を操るように人の行動を制御できる主人公」という特殊設定風味の作品ですが、作中ではあくまで特殊設定は存在しない、主人公の技能だけで成立しているということで、そこがまたミステリとしてはモヤモヤ感をかもしています。主人公が「できる」と言ってしまえば何でもありじゃない?


No.358 5点 クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない
越尾圭
(2023/01/08 15:13登録)
 これはタイトルがよくないですよ。どう見てもガチガチの本格、かつ、副題からして、東川篤哉っぽいユーモアミステリと思うじゃないですか。だから「このミス」は信用できないんですよ(笑)。
 作品としてつまらないわけでは決してなく、確かに新人離れしたものがありますが、「これじゃない」という感覚が最後までまとわりついて離れませんでした。せめて「わざわざ犯行に毒蛇を使った理由」だけでもロジカルな答えが用意されていれば。
 最初から「社会派」「サスペンスもの」という気持ちで読めば、また違った印象、評価になっていたかもしれません。


No.357 6点 此の世の果ての殺人
荒木あかね
(2023/01/08 15:01登録)
 ある種の特殊設定ものですが、他のそれと比べて「特殊味」が薄味で、私なんかはそれがいいと好感を持ったのですが、肝心の、この作品ならではの設定を活かす、という面では少し消化不良だったかなと思います。
 犯人も予想できますし(かなりベタ)、ミステリ的な味付けも薄めで、漏れてくる前評判から結構な期待値でもって読んだせいもあってか、もうひとつ突き抜けるものがなかったかなという印象でした。
 とはいえ、若干23歳での江戸川乱歩賞受賞、というトピックでも沸いた作品で、その年齢を考えれば十分伸びしろは期待できますし、数年後くらいにはミステリ界を席巻する存在になりうる可能性は秘めているだろうなと思います。周りの面倒くさい大人が色々言ってくるかとは思いますが(お前みたいなのだよ笑)頑張ってほしいです。

 少し話がずれますが、この受賞年齢の件に関して、有栖川有栖が「選考委員は作者の情報を知らされないまま選考しているので、年齢が受賞に影響を与えることは絶対にない」と言っていましたが、最終選考に残る前の下読み段階では考慮対象となるでしょうね。同レベルの作品が競ったら、若い作者のほうが選ばれるはずです。100歳とかまで年齢を重ねてしまえば、それはそれで話題になるから無視できないでしょうけれど。


No.356 8点 方舟
夕木春央
(2022/12/01 20:03登録)
 今までまったくノーマークの作家だったのですが、いきなりやられましたね。これは2022年の各ミステリ賞を総ナメするんじゃないですかね。面白かったです。
 この舞台設定、状況設定に無理があるという感想を持つ人もいるかと思いますし、実際私もそう感じはしますが、今どきであれば「特殊設定」でいかようにも逃げることも出来たのに、あくまで現実世界で出来ることだけでやりきったのは素晴らしいと思います。設定の強引さなどの欠点を払拭するだけの完成度は十分保たれていると思います。



※※※
以下、ネタバレに繋がる感想です。
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 最後の大オチもいいのですが、殺人の動機に大オチに繋がる動機が隠されていた、というのも渋い高評価ポイントだと私は思います。上手いですね。


No.355 8点 逆転美人
藤崎翔
(2022/11/29 21:53登録)
 まさか、令和の時代にこういうものが復活するとは!

※※※
察しの良い方には、私の感想だけでネタバレになってしまう可能性がありますので、以下ネタバレ注意とさせていただきます
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 メルカトルさんが書かれているように「史上初」ではないのですが、かつてこの手のものを得意としたあの作家の「あれ」や「それ」を知らない若い読者にはかなり新鮮、かつ驚愕を持って受け入れられるのではないでしょうか。
 果たして「これ」を素直に驚けるか? それとも「バカミス」の烙印を押されるか、若いミステリ読者の感想を聞いてみたいところです。

 というか、帯の惹句に「紙の本ならでは!」と書かれていた時点で、「あの手」を使ってるんだろうなと察しが付いてしまいました。なので、真相を明かされても「やっぱりな」という思いが先に来てしまって、正直、帯の惹句さえなければさらに素直に驚けていたと思うと、編集者はもっと的確な仕事をしろと文句を言いたくなります。


No.354 5点 船富家の惨劇
蒼井雄
(2022/10/21 23:05登録)
 出版年を考えれば、十分にオーパーツレベルのミステリだとは思うのですが、いかんせん読みにくすぎでした。ブラウン神父ものが可愛く感じるレベル。読破するのに相当の精神力を要しました。昔の小説だからと言われればそうなのかもしれませんが、これより古い横溝や乱歩作品にそんな感想は持たなかったので、これは純粋に作者の筆力によるものなのでしょう。誰かもっと分かりやすく、短くまとめてくれと思いました。


No.353 7点 invert II 覗き窓の死角
相沢沙呼
(2022/10/21 22:59登録)
「世界一続編が書かれてはいけないミステリ」の続編の続編が登場です。
 もうここまで来ると、いたって普通の倒叙ミステリになってしまいまして、これはこれで出来が良いのですが、私は未だにもやもやしたものを払拭しきれません。
 探偵役の翡翠がチート級に無敵すぎて、対決する犯人がかわいそうになってくるのは倒叙ミステリのお約束とはいえ、それでも「古畑」や「コロンボ」などは探偵役にある種の可愛げがあり、そこまで読者(視聴者)の反感を買いはしないのですが、本シリーズの翡翠は……。私はそろそろきつくなって来ました(笑)


No.352 5点 スクイッド荘の殺人
東川篤哉
(2022/09/11 20:15登録)
烏賊川市シリーズのみならず、作者としてもかなり久しぶりの長編なのでは?
あまりに長編を書かなすぎて腕が鈍ってしまった……とは思いたくありませんが、数十年前ならいざしらず、令和の世にこれはさすがに厳しいです。バラバラ死体のトリックは面白いものがあっただけに、ここだけ取りだして短編に仕上げた方がよかったかも?
物語の舞台となる「スクイッド荘」が「イカの姿に似ている」というのも、トリックに関わるわけではなく、ただのネタに過ぎず、ここはかなり残念に思いました。


No.351 6点 君に読ませたいミステリがあるんだ
東川篤哉
(2022/07/06 17:21登録)
「鯉ケ窪学園シリーズ」まさかの復活!
 じつに7年ぶりくらいの新作で、しかも前作までの登場人物は誰も出てきません。もう新シリーズとして立ち上げたほうが良かったのでは?
 相変わらず安定の東川節が今作も炸裂。正直、どんでん返しと驚愕のラストがこれまでにないほど幅を利かせている現在のミステリ界において、場違い的な普通さですが、こういうものもありなのでは。むしろなくしてはいけない気がします。

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