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ミステリの祭典

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此の世の果ての殺人

作家 荒木あかね
出版日2022年08月
平均点5.93点
書評数14人

No.14 6点 パメル
(2024/02/12 06:23登録)
翌年の3月7日に小惑星テロスが阿蘇に衝突し、日本はもとより世界が破滅的被害を受けることが明かされる。運命のその日まであと二カ月余り。それが公表されて以来、不安と恐怖から日本は騒乱状態に陥り、自死する人や衝突地点から少しでも遠ざかろうと日本を脱出する人が後を絶たず、九州にはほとんど人が残っておらず街はゴーストタウン化している。
そんな中、自動車教習所のイサガワ先生とハルは、教習所の車のトランクに押し込まれた女性の惨殺死体を発見する。イサガワは元刑事で、成り行きでハルは捜査の助手を務めることになる。ハルとイサガワは警察に赴き、そこで博多や糸島でも同様の他殺死体が発見されていることを知らされる。なぜこんな時に、わざわざ殺すのか。どうせあと少しで人類が、皆死んでしまうのにという驚きがまず湧き起こる。
テンポのいいシーンを様々な人物が彩る。主役二人のバディぶりや、狂気の正義感イサガワ、拷問された弁護士、飛び込みの検視依頼を引き受けた胆力ある女性医師、警察庁の若きキャリア官僚、逃亡中の兄弟、ハルのひきこもりの弟、福岡残留村なる運命共同体を運営する女性政治家。
もちろん連続殺人の謎も興味深いが、彼女たちの出会いのドラマなど読みどころは多い。極限状況でむき出しになる苛烈な正義感、利他的な献身や犠牲などから生まれる連帯や友情。切なくも心に染み入る温かさがある。

No.13 4点 mozart
(2023/08/03 14:39登録)
K-Pg境界の再来というSFチックな特殊設定があまり活かされていないような…。確かに犯行動機がそれで説明できるんでしょうけど。人物の描き方もちょっと平板な印象を受けました。ただ、作者はまだ若いので今後に期待したいところです。

No.12 6点 みりん
(2023/07/29 16:30登録)
江戸川乱歩賞繋がりでこちらも読んだ。
自動車学校の先生と生徒の女性コンビが終末の世界で連続殺人を調査するためにドライブする話。
徐々に仲間が増えていくこのRPG感がたまらない。魅力的な設定に終末を感じさせない女性コンビの軽快な会話、そして骨格は本格ミステリ。読後感もなぜか心地良い。
どうせ2ヶ月後には全てが滅んでしまうのになぜ殺人事件が起こるのか。そのホワイダニットを期待するとわりとありきたりで少し拍子抜けするかも…?
イサガワ先生の苗字がずっとカタカナで何かあると思っていたら何もなかった(笑)


23歳でこんなの書けるの尊敬する。同年代でこんなことやってのける人がいるのにエンタメを消費するだけの自分が情けなくなってきます。そろそろ脳内で妄想している「すべてがiになる」を執筆する時がきたか。

No.11 5点 take5
(2023/07/15 13:03登録)
乱歩賞に惹かれて読みました。
設定が地球破滅ということで入り込みにくく、
人物は魅力的なのですが、
設定が生かされているとは言えず、
この点数になってしまいました。
自分の23才の頃と比べると、 
作者の力は感じますが。
偉そうですみません。

No.10 5点 ひとこと
(2023/05/28 17:43登録)
設定は素晴らしかった。

No.9 7点 HORNET
(2023/03/31 21:38登録)
 日本に小惑星が衝突することが発表され、その衝突を2か月後に控えた世界。社会は、何とか生き延びようと必死になる人、滅亡を受け入れて残りを過ごす人、絶望して自死する人らでパニックになっていた。そんななか小春は、淡々と自動車の教習を受け続けていたが、ある日教習者のトランクに入った女性の死体を発見。自動車学校の教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める2人だった――。
 上記のような特殊世界設定でなかなか惹かれる冒頭だったが、結果的にこの設定が生きたのは「大量殺人の煙幕」という点だけに感じる。ちゃんとしたフーダニットのミステリで面白かったが、特殊な世界を舞台としたことがそのミステリに寄与している感じはあまりなかった。
 むしろ主人公と教官のイサガワ、それぞれのキャラ立てが物語の面白さを支えている。なかなかに意外な犯人だったが、謎解き以外の部分を飾り立てて面白く仕上げている作品という印象ではあった。

No.8 6点 モグラの対義語はモゲラ
(2023/01/11 18:26登録)
読んだのは単行本版。それしかないし。
終末ものという特殊設定は、雰囲気作りには一役買っていたと思うが、ミステリそのものには余り活かされていないと思った。主人公たちや犯人の動機作りに関わる程度で、ロードムービー的な要素も含めてあくまで小説を楽しませるための要素と言った感じ。そして終末ものとして読むなら色々とベタなようにも感じられた。
ミステリとしてはそこそこ面白かったが、斬新で素晴らしいというものでもない。無難にまとめていて、フーダニットの理屈は綺麗だと思う。突飛すぎて物理トリックが好かないという人や読者を騙すうえで白々しさを感じる叙述は好かんという人には勧めやすいかも。
どのキャラクターも好きになれなかったから点数これくらいかなあ。
死ぬほどどうでもいいけどこれ系の作品をセカイ系っていう人いるけど、セカイ系はもっと世界の命運が決まってない物なので多分違う。

No.7 6点 名探偵ジャパン
(2023/01/08 15:01登録)
 ある種の特殊設定ものですが、他のそれと比べて「特殊味」が薄味で、私なんかはそれがいいと好感を持ったのですが、肝心の、この作品ならではの設定を活かす、という面では少し消化不良だったかなと思います。
 犯人も予想できますし(かなりベタ)、ミステリ的な味付けも薄めで、漏れてくる前評判から結構な期待値でもって読んだせいもあってか、もうひとつ突き抜けるものがなかったかなという印象でした。
 とはいえ、若干23歳での江戸川乱歩賞受賞、というトピックでも沸いた作品で、その年齢を考えれば十分伸びしろは期待できますし、数年後くらいにはミステリ界を席巻する存在になりうる可能性は秘めているだろうなと思います。周りの面倒くさい大人が色々言ってくるかとは思いますが(お前みたいなのだよ笑)頑張ってほしいです。

 少し話がずれますが、この受賞年齢の件に関して、有栖川有栖が「選考委員は作者の情報を知らされないまま選考しているので、年齢が受賞に影響を与えることは絶対にない」と言っていましたが、最終選考に残る前の下読み段階では考慮対象となるでしょうね。同レベルの作品が競ったら、若い作者のほうが選ばれるはずです。100歳とかまで年齢を重ねてしまえば、それはそれで話題になるから無視できないでしょうけれど。

No.6 6点 suzuka
(2022/12/18 15:35登録)
リアル寄りの人物描写とフィクションの終末世界がバランスよくマッチして、独特の世界観が上手く表現されていると思います。
ミステリー部分は可もなく不可もなくという感じでした。

No.5 5点 虫暮部
(2022/10/26 11:42登録)
 ミステリとしてはシンプル。余計なことをしなかったおかげで “物語としては悪くないのにミステリ要素がごちゃごちゃして邪魔” になることを免れている。怪我の功名? とか言っては失礼か。
 とはいえ、捻らなくてもいいから、あと一歩深み、または驚き、が欲しかった。キャラクター的にも今一つ共感出来ず。行方不明者はてっきり蟹針図夢だと踏んだんだけどな~。

No.4 6点 sophia
(2022/10/23 20:13登録)
世界の滅亡を仕方のないものと受け入れ残りの人生を淡々と生きるハルと、この期に及んでもなお正義の暴走に歯止めがかからないイサガワのコンビには引き付けられるものがありますし、文章も読みやすいのですが、ただいつになったら面白くなるのかと思っているうちに終わってしまった感があります。私のように派手なギミックを期待して読むとがっかりするかもしれない渋い作品です。ミステリーではなく純文学だと思って読んだのなら違う読後感を持ったかもしれません。偶然が幾重にも積み重なって出来たストーリーも賛否が分かれるところだと思います。

No.3 8点 人並由真
(2022/10/08 06:16登録)
(ネタバレなし・途中まで)
 主要キャラクターの魅力、ストーリーの転がし方、印象的で胸に残るシーンの続出、小出しに明かされる謎の真相、そして何より(おっさんがこれを言うのはヒジョーに気恥ずかしいが・汗)あまりにも堂々たる、極限状況の中での人間賛歌! 
 一方で人間の心の闇や弱さにも目を向けながら、その陰鬱さをある種のカタルシスで砕くため、主人公の一方、イサガワ先生のキャラクター設定を存分に機能させている。
 そんなキャラクターの配置ぶり&作劇のバランス感覚もとても素晴らしい。イサガワ先生はブルース・ウェインの変種だね。

 帯が見えない読み方をしていたので、読了後に、作者がまだ23歳だということを初めて知ってぶっとんだ!!

 弱点はどうしても、割と早めに犯人の推察がついちゃうこと(だってね……)。

 しかしソコを差っ引いても、とても読みごたえのある良作。
 今年の収穫のひとつとしたい。


 



(以下、ミステリ要素とは関係ない部分でややネタバレ。)

 文生さんや選考者の方々もおっしゃる&言ってるとおり、正にこの10年の間に<終末・地球最後の危機の中での犯人捜し>ものをいくつも、東西の新作ミステリのなかで読んできた。しかしこんなのが5冊も10冊も続々と書かれるのなら、タマに一本ぐらいは、最後にいきなりなんの前振りもなく唐突に外宇宙から光の国の巨人が太陽系に飛来して、地球に激突する小惑星を一瞬でぶっとばして人類を救うオチで終わるデウス・エクス・マキナ作品を読みたいとホンキで思う(汗・笑)。
 ええじゃないか、ええじゃないか、どうせフィクションなんだし。
 エピローグ部分までに、ミステリとしてのタスクを必要十分に消化しておけば、誰も文句は言わんだろ。

 まあいつかこの手の作品の過剰供給のなかで、そーゆーモンも出てくるだろうとは思っているけれど(そうか?)。
 たぶん、最初にやった人はずっとエバれるぞ。

No.2 7点 文生
(2022/09/16 20:59登録)
小惑星激突による人類滅亡が近付く最中に事件の謎を追うというネタはベン・H ・ウィンタースの『地上最後の刑事』と同じですが、こちらは女2人終末紀行といった感じで独自の趣があるのがよい
ミステリとしては大トリックや驚愕のどんでん返しがあるわけではないけれど、巧妙なプロットで意外な真相を浮かび上がらせることに成功しています。
個人的に大好きな終末ものにミステリを掛け合わせ、破綻なくまとめ上げた点を評価してこの点数

No.1 6点 フェノーメノ
(2022/09/15 18:05登録)
もうすぐ地球が滅びるなかで巻き起こる連続殺人。
乱歩賞作品だがしっかりと本格派の作りになっていて好感触。

犯人が明らかになると細かな疑問点に説明つくのもうまい。まあ、こういうの最近の他作品でも見たことあるけど……。この犯人の属性はありがちで、感心すると同時にちょっとまたかとも思ってしまった。

全体的に小綺麗な作品という印象に終始して、巧いんだけども、良くも悪くもの新人らしさみたいなものはあまり感じられなかった。まあしかしよくできたパズラーなのではないでしょうか。

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