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ミステリの祭典

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エレファントヘッド

作家 白井智之
出版日2023年09月
平均点8.00点
書評数8人

No.8 10点 hsiyehmeipo
(2024/05/02 21:59登録)
前半から後半まで何回も「え、そういうこと?」となる超展開。

メイントリックもめっちゃグロくてめっちゃすごくてめっちゃやばくて、何食べたらこんなトリック思いつくんだってレベル。

すごさとやばさとグロさにドン引きしっぱなしでとても面白かった。

No.7 7点 レッドキング
(2024/03/06 08:41登録)
「縦系列タイムワープ」ではなく「横並列パラレル世界」が主ネタの「SF」と、作者十八番の超絶ブっ飛びトンデモトリックの結合具合が半端なく凄い。元々、脱力レベルの「SF」設定と、笑いたくなる位のグロヘド描写が「ウリ」の作家だが、今回、また輪をかけて・・・。真相より一つ前のダミー解釈、「寒暖」「満空」パラレルパラドックスのトリックがグンバツに面白く\(^o^)/。(真相は結局、パラレルよりタイムワープに比重傾いちゃうもんね)
※にしても、こんな事言うの野暮だが、「哲学」やイデオロギーを現実政治に持ち込む愚かさに比べれば、全然、罪ないけれども、理論物理学の、「数学」または「形而上学」的論拠から、小説拵えちゃうってのはなぁ・・・やっぱヤボだな、やめとこ。

No.6 9点 みりん
(2024/02/12 01:30登録)
年末に本サイトの「みんな教えて」機能にて、よんさん主催の「このミス予想」というとても楽しい企画がありましたね。私はそこで参加者9人のなかで単独最下位を取ってしまいました( ; ; )  そんな私でも読む前から明らかに異彩を放っていた『エレファントヘッド』は的中させましたよ。ドヤ

【ネタバレあります】


白井智之作品は謎解き以外の無駄が一切なく(ほんとか?)、純粋なパズラーとしての密度が尋常じゃないくらい高い。それ+特殊設定のせいで読んでいる間は疲れるけれど、そんな疲れを吹き飛ばすカタルシスがある。今回でいえば最後に明かされるアレがそう。
白井作品史上最高のトリックなだけでなく、特殊設定ミステリ史上最高にして最恐のトリックと言っても過言ではない(はず!)。
ただ、エンタメとしての面白さももちろん保証するが、こんなことを思いつく作者への畏怖が勝ってしまうなあ。シスマ打って読む前に戻りてぇ…
でもハウとホワイのバランスを考えると『名探偵のいけにえ』の方が好みかな。白井作品制覇記念に10点満点にしておこう。

No.5 8点 人並由真
(2023/11/25 13:05登録)
(ネタバレなし)
 序盤部で「え、こっちが(中略)」と軽く驚き、しかし油断はしないぞというつもりで、いつもの登場人物メモを取りながら読み進める。
 で、まあ、こういう作品なので……その人物メモも(中略)。

 白井節が炸裂した、悪趣味グロ、さらにスプラッター感覚まで滲ませた、しかして実によく練り上げた特殊設定パズラー。

 世界像はいささかややこしいが、ポイントの部分を咀嚼するとそんなに難しくもない? かもしれない。どこか藤子F作品に通じる部分もある。

 最後の大ネタ~(中略)ダニットには絶句。

 またひとつ、作者は異端の優秀作パズラーを著した、という感慨。
 体力のある人がすぐに読み返せば、いろいろと忍ばせてあった伏線の妙に驚きそうな作品である(いささか無責任な物言いだ・汗)。

No.4 8点 HORNET
(2023/10/26 22:22登録)
 精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
 謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。多重解決ミステリの極限!
(「BOOK」データベースより)

 冒頭では家族思いの父として描かれていた主人公・象山晴太が「ヤバいやつ」と分かるや否や、物語はどんどんとんでもない展開に。時間遡行というSF設定に立ったうえで、その特性を生かした独特のストーリー展開と仕組みに引き込まれてしまう。エログロが適度に(?)ちりばめられており、作者の味がよく出ている作品である。
 薬剤「シスマ」による時間遡行と人生の分裂を基盤としたミステリの仕組みは、やや複雑ではあったが非常に巧みに仕組まれていて感じ入った。さらにはその仕組みを生かした物語のオチにはゾッとさせられるものがあった。
 昨年「名探偵のいけにえ」でミステリ界の認知度を一気に上げた、奇才・白井智之の衰えない勢いを十分に感じられる一冊だった。

No.3 7点 名探偵ジャパン
(2023/10/21 00:04登録)
 いやあ、凄いものが出てきましたねぇ。
 並の作家が書いたら、ただだた荒唐無稽で馬鹿馬鹿しい、という評価になってしまいそうな本作の特殊設定も、作者の筆力でもって強引にねじ伏せられて、読まされてしまいます。
 凄い作品なのですが、作者の作風は健在(笑)ですので、万人におすすめはいたしかねますね。逆に、白井智之大丈夫、という方は絶対に読むべきでしょう。

※以下、少しネタバレ的な感想。





 作中は主人公の身辺しか描かれていませんが、この設定だと、世界中のあちこちで謎の死が続出していることでしょうね。恐ろしい話です。

No.2 7点 文生
(2023/10/08 19:32登録)
狂気とグロの安定の白井ワールドで、前半は本格ミステリというよりはサイコサスペンスのようです。そこからとんでもない展開によって怒濤の推理合戦が始まるわけですが、これがアイデアの宝庫といった感じで次から次へと超推理が飛び出してきます。「空前絶後の推理迷宮」という謳い文句に偽りなしです。ただ、奇抜な推理を導くために特殊設定を用意し、さらにそれをいじくり回すやり方に対しては好みが分かれるかもしれません。少なくとも、自力で真相を言い当てるのはほぼ不可能です。正直、自分は途中からついていけなくなりそうになりました。しかし、それでも本作には特殊設定ミステリの極北というべき異様な魅力があるのは確かです。そうした点を総合的に鑑みて点数は7点ぐらいで。

No.1 8点 メルカトル
(2023/10/06 22:20登録)
本格ミステリ大賞受賞の鬼才が仕掛ける、空前絶後の推理迷宮。

精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。
Amazon内容紹介より。

これを面白いかと聞かれると、残念ながら微妙だと答えるしかありません。しかし、この作品は悪魔的な奸計と緻密な理論を武器に、己の路線をひた走る白井智之の真骨頂だと言えるかも知れません。私のイメージとしては畏怖と深い溜息とがない交ぜになったものでしょうか。
グロは少々控えめながら健在です。前作で見せつけた実力とはまた違った意味で凄い傑作を書いたなと思います。

ネタバレにならないように書きますが、特殊設定の本格ミステリでありながら、それを逆手に取ったようなトリックが光ります。本質は正統派のパズラーと呼んで間違いないと思います。そして多すぎる伏線を見事に回収し、ロジックを徹底的に追求した本格巨編です。
個人的には前作の方が好みです。しかしながらロジカルで端正なミステリが好きな読者はこちらの方が読み応えがあって合うかも知れません。やや詰め込み過ぎな印象は否めません。だからちょっと難解な部分もあったり、複雑だったりして軽いミステリ好みの人を遠ざけてしまう可能性も捨てがたく、万人受けするとは言えないですねえ。でも各ランキングに名を連ねるのは間違いないでしょう。

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