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ミステリの祭典

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可制御の殺人
怪人的犯罪者「鬼界」シリーズ

作家 松城明
出版日2022年03月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 ぷちレコード
(2024/05/19 22:08登録)
表題作は、Q大学の大学院生・更科千冬が白川真凛を殺そうと決意するところから始まる。千冬は得意の道具を使って機械工学専攻らしい犯罪計画を立てる。いかにも倒叙もののようだが、犯罪の陰に黒幕あり。そこに関わってくるのが、真凛の知り合いの鬼界。
鬼界は、人を一つの制御システムとして捉えて操作する研究をしており、誰もその素顔を知らない謎の工学部性。どんでん返しの妙もさることながら、鬼界が千冬の犯罪にどう関わっているかがポイント。
「とうに降伏点を過ぎて」はQ大のサークル工作部からはみ出た連中の集まり、工作本部に鬼界も参加するが、その素顔というのが、という部活事件もの。
「二進数の密室」は前編に登場した工作本部の月浦一真の妹・紫音の身辺劇というふうに登場人物が連鎖していき、最終的に各編の謎を貫く全体が見えてくるという構成になっている。

No.3 5点 名探偵ジャパン
(2023/01/08 15:23登録)
 短編として受賞した1話に、新作を継ぎ足して連作短編に構成しなおされたものだそうで、メルカトルさん評のとおり、確かに表題作とそれ以外との完成度の落差が激しいです。
「機械を操るように人の行動を制御できる主人公」という特殊設定風味の作品ですが、作中ではあくまで特殊設定は存在しない、主人公の技能だけで成立しているということで、そこがまたミステリとしてはモヤモヤ感をかもしています。主人公が「できる」と言ってしまえば何でもありじゃない?

No.2 7点 虫暮部
(2022/12/28 16:16登録)
 コレは後を引く。鬼界の思考にはそれなりに共感。私もこういう感想を出力するように入力されたのか……。
 そして本書は作者にとっても振り払えない呪いになってしまうのではないか。一作目にコレを書いた作家の、二作目に同様のシステムが仕込まれていないと誰が言えるだろうか?

 それはそれとして、事件の順番。殺人の後に窃盗が来るとちょっと気が抜けてしまうな。
 或る意味でミステリをつまらなくする機械工作を臆せずぶちこむ度胸とセンスは買う。生物と無生物の区別が不要ならば、ロボットが不気味に見えるのは筋が通っているしね。

No.1 5点 メルカトル
(2022/10/22 22:43登録)
女子大学院生が自宅の浴室で死亡しているのが発見された。
警察は自殺と判断したが、
その裏には人間も機械と同じように適切な入力(情報)を与えれば、思い通りの出力(行動)をすると主張する謎の人物・鬼界が関わっていた・・・・・・。

小説推理新人賞で選考委員から
その才能を高く評価された著者によるデビュー連作短編。
Amazon内容紹介より。

工学を軸とした理系連作ミステリ。短編集と言うより長編と捉えたほうがしっくりきます。最初の小説推理新人賞で最終選考まで残った表題作は、捻りも効いていて好感触でした。一応これはこれで完結している様にも見えますが、そこに登場する性別不明の謎の人物鬼界が後の話にも絡んできます。しかし、第一話以外は何となく煮え切らない印象が強く、結末を迎える前に終わってしまう様なものばかりで、とても不安定な気持ちにさせられます。

異色であり、ある意味新機軸とも言えると思いますが、色んな意味で説明不足な感が否めず、どんどん訳が分からなくなってしまいました。表題作レベルの作品が並んでいれば7点付けたいところですが、どうにも消化不良で私には合いませんでした。工作機械、つまりロボットが頻繁に出てきたり、人間の言動を制御するとか、SFっぽい話にも付いて行けませんでしたね。
こう言ってしまっては身も蓋もないですが、この人は表題作でアイディアが尽きたのではないかとも感じ、果たしてプロとしてやっていけるのか不安が残る出来でした。

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