home

ミステリの祭典

login
ギザじゅうさんの登録情報
平均点:6.99点 書評数:238件

プロフィール| 書評

No.238 7点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2005/06/27 05:06登録)
『変調二人羽織』 (講談社文庫)

 連城の処女作「変調二人羽織」を含む第二短編集だが、作品の古さからいえば第一短編集といっても間違いではなさそうだ。
 様々なタイプの作品が入っていて、どれも水準以上の出来だが、まだこの頃では話の展開のさせ方がかたいように感じた。また、小説のトリックと物語の融合性も、『戻り川心中』などと比べると、やや乖離気味で連城らしさがまだ開花していない。
 そのあたりをクリアしていて、かつ意外な真相に持っていくという意味では、「メビウスの環」「依子の日記」が好み。探偵小説を強く意識した表題作も面白いが。


No.237 6点 企画殺人
鮎川哲也
(2005/06/27 04:56登録)
『企画殺人』 (集英社文庫)

 鮎川哲也の倒叙短編集。ただし、その出来には大いに不満が残る。使われているトリックが小粒なのは仕方がないとはいえ、「完全犯罪」に綻びができる過程もほとんど偶然のようなものが多いのがやはり不満だ。
 そういった意味では「錯誤」「偽りの過去」「蟻」「墓穴」は物足りなく、「憎い風」「尾のないねずみ」はちょっと楽しめた。しかし、最後の「てんてこてん」で今までの6編をミスリーディングとした、意外な結末を持ってくるあたりには唸った。


No.236 6点 400年の遺言―龍遠寺庭園の死
柄刀一
(2005/06/08 11:54登録)
 相変わらず大量の薀蓄に大量のトリック。ただし、龍遠寺の謎は新本格の他の作家にも似たようなものがあるぶん、直感的にわかってしまう。その他の細かい点も、推理してわかるものだろうか、と思ってしまって釈然としない点も多い。まぁ面白かったんだけど。
 他に話作りのほうにも、作者の上手さを感じた。主人公の造詣が妙にひねくれている思ったら、最後にそうもってくるとは。


No.235 6点 QED 百人一首の呪
高田崇史
(2005/05/16 20:44登録)
百人一首の解決はお見事。ただし、作者には何の悪いところはないとは思うが、読む前に巻末の表を見てしまった。犯人の知っている推理小説を読む感覚。
ただし現実の事件はイマイチ。アリバイの証言者の一種の病気と言われてもなぁ。アイデアの着想が凄い、というところまでは行っていない。まぁ理系出らしいのか?
また歴史の謎と現実の事件のバランスにも不満が残る。五芳星とかバレバレだし。この程度だったら、歴史だけでもいいと思えてしまう。
どうも辛口のコメントになってしまったが、実際のところは楽しめた。


No.234 6点 モロッコ水晶の謎
有栖川有栖
(2005/04/20 17:27登録)
マレー、スイスと正統派傑作が続いたのに、モロッコがこれですか…?ペルシャほどひどくはないけど、変化球気味の作品はいまいち好きにはなれない。さらにこの程度の中途半端な歪んだ作品もだめだ。
「助教授の身代金」はまぁ満足作品。丁寧に伏線が張ってあるのはいいが、誘拐ものとしてはどうなの?そもそもあの会話から○○を見破れるものか?
「ABCキラー」は一番つまらなかった。『ABC殺人事件』まだ捻れるやないか、とはいえ捻りすぎやろ。さらに犯人の行動が決められたように何かをなぞっているようで、説得力に欠けている。
「モロッコ水晶の謎」のこの捩れたロジックも…。あれに納得性を持たせるには、中篇サイズが必要なのもわかるが、それだけってのは…。


No.233 6点 4000年のアリバイ回廊
柄刀一
(2005/04/15 10:27登録)
 アイデアそのものは大胆で凄い!コード化された何対もの化石人骨の人物相関図を考えつつ、そこで提示された謎を推理するというのだから驚きである。ただし、それが非常に複雑で、真相そのものには意外性があまり感じられなかった。
 それと並行して語られる現実の事件もイマイチ。あのアリバイトリック自体はもっとはやくから検証されても良かっただろうし、これもまた複雑。現実とのつながりはそれなりにあったのだが…。
 だが、このような推理小説を書けるということは凄い。


No.232 6点 完全無欠の名探偵
西澤保彦
(2005/03/31 12:49登録)
都筑道夫の『退職刑事』シリーズを連作にしたような作品。
ただし電車の中で軽く読むには適したような話ではあるが、それが連作という形式に適しているかどうかは微妙なところ。ラストのまとめ方は上手いと思ったが、話が長いだけに、自分の頭の中で整理し切れていない点も多く、そのぶん驚きも半減したからである。
もうひとつ本書のポイントとして、後期クイーン問題にSF方面からアプローチした、という試みは面白い。しかし、そのアプローチ自体が問題から避けてはいまいか。


No.231 6点 六の宮の姫君
北村薫
(2005/03/31 12:41登録)
 このような文学論は大好きだし、芥川も大好きだ。が、一編の推理小説としてはラストの真相はいたって地味だ。それに、このくらいの事なら他に指摘している人がいるのではないか、と意地悪な見方もしてしまう。もっと文学的素養を身につけて、十年後二十年後に読み返したら、きっと楽しめるのではないか…。


No.230 7点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2005/03/24 18:20登録)
何となくあまり期待せずに読んだら、仰天。
登場人物ふたりという設定で、終始ふたりの推理で終わる。この手の話だとラストのおちが読めそうなのだが、これでは上手くおさめている。
膨大な伏線の張り方も見事で、本格方面からの評価も高そう。非常に読ませる作品だった。


No.229 6点 ロシア幽霊軍艦事件
島田荘司
(2005/03/24 18:15登録)
アナスタシアの謎にあそこまで合理的な解決を与えたのは見事。しかも歴史ミステリでいながら、不可能犯罪的な楽しみも味わえるという、豪華な(?)一冊。
ただし、トリックは知っているか否かの部類であるだけに、純粋にその解決で満足か、といえば難しい。脳に異常があったというのも、島田作品の流れから読めてしまう。
ついでに『緋色の研究』タイプの構成はあまり好きではない。が、概ね成功作の部類に入るのではないか。


No.228 6点 バラ迷宮
二階堂黎人
(2005/03/22 14:08登録)
全体的に小粒な印象は否めない。
「サーカスの怪人」「喰顔鬼」「火炎の魔」はちょっとした物理、化学の知識を応用しただけで、この解決にカタルシスを感じるかどうかは難しい。またフーダニット色もほとんど無いので、ますます残念。
「変装の家」はまあまあの出来か?ただネタもわかりやすい。再読したら楽しめるだろうが、そんな気も起こらない。
「ある蒐集家の死」は単純なダイイングメッセージものながら、消去法推理をしたり、推理の過程がロジカルで、そこは面白い。厳しく言えば、今時この程度のDMで読者に対抗するのもどうか?
唯一満足なのは「薔薇の家の殺人」。これもちょっとした物理の知識を応用してはいるものの、誰もが知っているような(小学生的な?)知識を利用しているために、手を叩いてしまう。やはり推理小説はこうでなくちゃ。


No.227 7点 メビウス・レター
北森鴻
(2005/03/22 13:57登録)
何ともまあ若い作品?
ネタを大量に盛り込み、どんでん返しの連続。トリックも多すぎるけれど、芦辺拓のようなしつこさも無いので安心。ただし大量にトリックがあるわりには淡白にも感じられてしまった。『メビウス・レター』というタイトルに強い印象を残すには、何かが足りなく感じるが、それを差し引いても十分面白い。


No.226 6点 猿島館の殺人~モンキー・パズル~
折原一
(2005/03/22 13:53登録)
単なるモルグ街のパロディかと思いきや、他の多くの古典のパロディ。(ただしクイーンの某名作のネタをばらし気味なので注意)解決も推理小説そのものをパロディにしたような解決で、何とも珍妙な作品。ただし、あまりカタルシスは得られなかった。鬼面村よりやや落ちる。


No.225 7点 メドゥサ、鏡をごらん
井上夢人
(2005/03/22 13:48登録)
井上夢人に関しては、推理とかホラーといったジャンル分けが、大した意味をもたないように感じる。
本作も不思議な作品だった。最初の太字は小説「石海」の記述だろうと思っていたら、その通り。と思いきや、最後でまたまた不思議な終わり方をしてしまった。読者によっては怒り兼ねないラストだったが、何とも掴み所の無い作品?


No.224 7点 ヴィーナスの心臓
鮎川哲也
(2005/03/22 13:43登録)
『ヴィーナスの心臓』(集英社文庫)

傑作フーダニット集。とはいえ、全部が全部傑作ではないが、十分面白い部類に入る。
「達也が嗤う」や「薔薇荘殺人事件」の完成度は驚異的。ややおちるが「悪魔はここに」「ヴィーナスの心臓」も良い出来ばえ。「ファラオの壺」「実験室の悲劇」もいい感じのショートショート?「山荘の死」だけネタが浅くて残念。


No.223 6点 人形は遠足で推理する
我孫子武丸
(2005/03/22 13:33登録)
これだけのネタで長編一本書いたことを評価すべきか?
バスジャック事件も、ほとんどサスペンスを盛り上げるだけの機能しかないのも残念。キャラ小説としての楽しみしか感じられなかった。


No.222 6点 保瀬警部最大の冒険
芦辺拓
(2005/03/12 19:43登録)
良くも悪くも、探偵小説、SF、etcetcの大パロディ小説。
この薀蓄(その大半は理解できないが)盛りだくさんのぶっとびぶりは読んでて楽しい。が、文章が読みづらく、場面展開も急で、話がよめなくなることもしばしば。そこが辛いが、二度三度と読めば、そのぶん楽しめるかもしれない。


No.221 8点 偽りの墳墓
鮎川哲也
(2005/03/05 15:57登録)
『偽りの墳墓』(光文社文庫)
 鬼貫警部シリーズ

 だれが犯人なのかの引っ張り方が、他の作品よりも徹底している。そのためサブトリックがなかなか多く、非常に面白い仕上がりになっている。特に電話番号のミスディレクションは上手く、ある病気が登場したときの話の展開もまた面白い。
ただし、ラストのアリバイトリック論議がやや短くも感じたのは残念。


No.220 6点 占い師はお昼寝中
倉知淳
(2005/03/01 16:13登録)
軽妙なキャラクターは猫丸先輩同様楽しめる。この語り口は大好きだ。
ただし本格としてのアクロバットは、他の諸作には足元にも及ばない。というと厳しいが、水準くらいの出来か?ただ単に、他の倉知作品が面白すぎるだけだからな。


No.219 6点 名探偵の呪縛
東野圭吾
(2005/03/01 16:09登録)
この手の作品は好きだし、ラストの作者の心情吐露にも頷ける。が、その理念の作品への具体化が上手くいっているとは言い難い。だいたいラストのおちが読めてしまうのも、そのせいだろう。この試みは評価。

238中の書評を表示しています 1 - 20