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ミステリの祭典

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変調二人羽織

作家 連城三紀彦
出版日1981年09月
平均点6.71点
書評数14人

No.14 6点 ボナンザ
(2021/09/03 12:21登録)
どれも見事に決めてくれる洒落た短編集。初期だけあって切れ味抜群。

No.13 7点 じきる
(2021/06/17 21:27登録)
後の名作たちのような濃密な世界観はなくとも、技巧のトリッキーさと美文はデビュー作でも発揮されてますねぇ。
発想を小説に落とし込む技術は流石の一言です。

No.12 7点 クリスティ再読
(2021/01/16 20:18登録)
「変調二人羽織」はデビュー作なんだよね。話が縺れすぎる難はあるんだけど、最初から「やりたい世界」が確固としてある、のが凄いところ。噺家の破鶴の高座を見てみたくなるくらいに、その「破格」の芸の描写が魅力的(芸道小説得意だもんなあ)。その情念とミステリの仕掛けが噛み合って、それを東京の空を飛ぶ丹頂鶴のイメージで総括してみせる。文章が気負い過ぎなのが微笑ましいけど、処女作としてこれ以上のものって難しいと思う。
あとはやはり「六花の印」だと思う。明治の人力車と現代の自動車、男と女、カットバックで語られる2つの話の共通点と、それがどういう仕掛を狙っているのか?が、事件の謎とはべつに興味を引いてくる。そして、止まった銀時計という共通項が、2つの一見自殺に見える事件のトリッキーな真相を暴き出す....それを語る老刑事の思い出と影に隠れた男との因縁。いや短編ってのが信じれないくらいに話が盛りだくさん。
としてみると、「メビウスの環」とか「依子の日記」とかは、「ボアナル風」で評価できてしまうようにも思う。やはり「変調二人羽織」と「六花の印」には、作者がため込んできた「書きたいことの混沌」を窺わせるエネルギーという、このデビューの時期でしか味わえぬ、「時分の花」の面白さがある。これを整理して熟成したのが「戻り川心中」の諸作ということになるのだろう。

No.11 7点
(2020/10/06 09:56登録)
 刊行順では『戻り川心中』に続く二冊目だが、単行本あとがきにもある通り、事実上こちらが著者の処女短篇集となるもの。「十年前、まだ僕が大学生だった頃(中略)父が読んでも犯人のわからぬ推理小説を書いてみようか――」そう気負いこんで書きあげた「依子の日記」を始め、第3回幻影城新人賞入選のデビュー作「変調二人羽織」など、初期からの発表順に全五篇が収録されている(改稿された「依子~」以外は、各篇いずれも1978年1月号から「幻影城」誌にほぼ毎月掲載されたもの)。連城のデビュー翌年に創設された、1981年度第3回吉川英治文学新人賞の候補作でもある。ちなみに前年第2回の受賞作は、同じ幻影城出身者である栗本薫の『絃の聖域』。
 冒頭の二篇、表題作と「ある東京の扉」はいずれも不可能犯罪を扱っているが、語り口は饒舌に過ぎまだ練れてはいない(落語の古典演目「盲目かんざし」を巧みに改変した「変調~」のアリバイトリックは捨て難いが)。それが次作「六花の印」を機にガラリと変わる。
 明治三十八(1905)年と昭和五十年代の東京、人力車と乗用車の同シチュエーションでの道行きが交互に描かれ、七十年以上の歳月を隔てて繰り返すように起こった車中の拳銃自殺事件が、周到な企みと奇しき縁で結ばれていたことが最後に判明する。本書の白眉であり、作者の数少ないハウダニット物の中でも絶対に落とせない作品。当時読んでいて〈化けた〉と思った。あるいはデビュー作のちょうど一年前に掲載された亜愛一郎シリーズ「G線上の鼬」に挑戦したのかもしれない。だが〈花葬シリーズ〉に並ぶ連城初期の代表短篇だけあって、題名を象徴する"雪の痣"での収斂といい、纏め方はこちらの方が上である。考え抜かれた犯行や細かな伏線も申し分ない。
 これに続く「メビウスの環」「依子~」は、いずれも少数精鋭の登場人物たちで構成されたボアナル風の反転もの。リドル・ストーリーめいた前者は少々切り詰め過ぎだが、疎開先の人里離れた一軒家で繰り広げられる愛憎劇を描いた後者はなかなか凄まじい。戦前、文壇に確固たる地位を築いた作家・滝内竣太郎とその妻・依子。二度に渡る闖入者の訪問が、彼らの完全な破滅を招く。叙述トリックを組み合わせることにより、反転の構図を強化しさらに悲劇性を高めている。良く出来た作品だが、流石に「六花~」には勝てないか。
 ベストスリーは「六花の印」、表題作そして「依子の日記」。短篇「ある東京の扉」は変則の推理コメディであり、集中でも少し異色の味わいである。まだ全体の方向性が定まっていないのは初期ゆえの事だろうか。ただこれにも転機となる「六花~」にも、いずれも著者独特のシンメトリー嗜好が仄見えている。

No.10 7点 take5
(2018/08/05 12:21登録)
連城節炸裂、成る程!と唸る短編集。
40年近く前、初期の作品なのですが文章がとにかく練られています。
最後の作品、依子の日記は反転が鮮やか、恐れ入る出来栄えです。

No.9 8点 斎藤警部
(2018/05/31 12:19登録)

変調二人羽織(表題作)      
おゝ、これぞ文学と不可能殺人の融合(笑)! 処女作からこの反転の抉りの深さ、やばいです。 鶴が一羽、東京の空を舞った夜、引退を控えた悪評芬々の落語家(こちらも鶴の異名あり)が最後に開いた一席にはわずか五名の招待客。 或る捻った趣向のもと、弟子との二人羽織で演じられる高座にて、停電の間隙を突き。。。 事の次第を語るはくたびれ気味の現役刑事と、若くして辞めた後輩との往復書簡。 多重解決によく似た大きな反転を繰り返し、、折原ティックな最終反転は初め蛇足と見えたけど、警察小説的人間ドラマとしてはそこが肝要なわけですね。  8.4点

ある東京の扉               
不思議と堅実なリアリティがある、ユーモア自慢の一篇。チンピラ文士(?)の売り込む推理小説ネタをベースに脳内事件話が拡がる。アリバイ破りの焦点は、交通の事情により密室状態の東京都からどうやって埼玉県某市まで行けたか。 走りながら考える、進化する多重解決(!)の味わいは格別。 ラヴェルのあの曲がそんな大胆な盲点トリックの隠喩にねえ。。 私も敬愛する某作家を冒涜する下劣な駄洒落には大笑い。 7.7点

六花の印
冒頭からすぐ、時系列のホッピングが笑うほど凄い。戦中明治の世と戦後昭和の世、時代小道具は違えど相似に満ちた二つの死を待つ短い旅程。。あいつを殺して俺も死ぬ。あの人が死んだら、私も。。。。 違和感の軋む表題に趣を付与するラストシーンは達者な筆の所為か取って付け感まるで無し。 よくも最初期からこんな超絶技巧の銘品を。 参った。  8.8点

メビウスの環              
冷たい仲の俳優夫婦は本当に殺し合って(?)いるのか。。 んーー .. 連城期待値のクライテリアでは物語と文章要素は俗に過ぎ、ミステリ要素はヒネリが無さ過ぎで凡作範疇。。。  と思うと最後の思わぬ●●●●●趣向に討たれます。 でもやっぱどこか弱い。 7.2点

依子の日記               
復員後、田舎に隠遁して仕事を続ける著名小説家とその妻、そこを訪れる編集者の若い女。 物語は、この女を殺そうと夫婦で決意した日の「妻の日記」から始まる。 女の豹変と過去の重圧、そして嫉妬、事件、新たな苦悩に新たな疑惑、そしてまさかの、新たな、、、、 新たな、、 目視水深を遥かに超えて渦巻く闇の嵩張りに包まれちまう、こりゃあディープな一篇。 9.4点

著者によるあとがき、推理小説を書くきっかけとなった父親の話、風のようにさり気ない筆致が泣けます。


No.8 8点 ALFA
(2017/03/05 10:42登録)
作者自身のあとがきにもある通り、ぎりぎりまで犯人がわからない五つの短編。
評点は「変調二人羽織」8、「ある東京の扉」6、「六花の印」10、「メビウスの環」6、「依子の日記」8
フェイバリットは「六花の印」。明治と現代のカットバック構成が最後に辻褄が合うのが見事。トリックは物理的にきわどいが。
他は「メビウスの環」は怒涛の反転攻勢、「ある東京の扉」はミステリ風味のコメディ、とそれぞれ持ち味が違うのは楽しいが表題作を含めてやや「とっちらかった」印象は否めない。
表題作の美文調に名作「花葬」シリーズの予兆を見ることができるが。

No.7 6点 まさむね
(2015/09/21 22:43登録)
 作者の処女作(表題作)を含む、初期5作品で構成される短編集。
 表題作「変調二人羽織」は、第3回幻影城新人賞受賞作だけに、なるほど、最後までの捻り込みが作者らしい。しかし、個人的に最も印象に残ったのは、「六花の印」。明治と昭和をリンクさせた中での、意外性が素晴らしい。
 他も、一筋縄ではいかない作品が並んでいますが、全体的な完成度となれば、その後に発表された短編集に譲るかな…という印象。

No.6 6点 kanamori
(2011/09/04 17:47登録)
探偵小説専門誌「幻影城」でのデビュー作である表題作や、新人としては異例の「幻影城」に一挙掲載された3作品など、最初期の作品5作収録(講談社文庫版)。
デビュー同時代に読んでいた者としては思い入れ度が高いのだけど、今回再読してみて、叙情的な物語とトリッキィな仕掛けが融合した後の作品と比べると、トリック先行で強引なところが目につき、さすがに完成度では「戻り川心中」などには及ばないなという感想。
そのなかでは、明治時代と現代の相似形のような二つの話を交互に描き終幕で結合させた「六花の印」が花葬シリーズに通じる趣きがあった。

No.5 5点 E-BANKER
(2010/08/22 21:51登録)
「幻影城」発表作品を中心とした短編集。
文学的にも味わい深い作品となっています。
①「変調二人羽織」=ひっくり返しの連続で騙し絵のような作品。刑事二人が手紙のやり取りで事件を解くというのも変わってます。真相は肩透かし。
②「ある東京の扉」=一応アリバイトリックものですかねぇ・・・結局、何がどうしてどうなったか判然とせず。
③「六花の印」=時代を異にする2つの事件を並列進行させつつ、最後に交わらせる手法。なかなか鮮やかではあります。
④「メビウスの環」=面白い趣向かもしれませんが・・・なんかモヤモヤ感が残ってしまう。
⑤「依子の日記」=「日記」といえば当然なかに仕掛けがある、というのが常道ですが・・・やはり大きな仕掛けがありました。そうきましたか。
作品のレベルは十分な高さなのですが、どうも個人的な好みからはずれていて、短い作品なのに妙に読みにくさを感じてしまいました。その分辛い評価に・・・

No.4 5点 nukkam
(2010/07/22 18:29登録)
(ネタバレなしです) 1981年発表の第2短編集ですが収容されている作品はデビュー作の表題作など初期作品ばかりです。父親の「どれを読んでもすぐ犯人がわかってしまうので退屈だ」という不満がミステリーを書くきっかけというだけあって結末の意外性を追求した作品が多いです。もっとも普通に犯人当てをしている作品は表題作ぐらいで、本格派系の作品でも読者が推理に参加しにくいプロットの作品が多いのですが。個人的に1番意外性を演出できたと感じたのは犯罪小説の「依子の日記」でした。

No.3 8点 江守森江
(2010/04/29 08:09登録)
初期の本格ミステリを5編収録した短編集。
タイトルそのままに一人二役と二人一役で捻る素晴らしい解決だけでなく、多重な解決を提示し、最後は脱力な落語オチで締める表題作。
タイトルとアリバイ崩しの多重解決をミスリードに、脱力オチが楽しい「ある東京の扉」
過去と現在の並列描写が上手い「六花の印」
タイトル通りに、反転しながら先頭に還り循環する「メビウスの環」と粒ぞろい。
しかし、この短編集の肝は「依子の日記」だろう!
日記形式のお手本と云える作品で、今やこの手の形式が抱える弱点である、読まれる事を前提にした悪意や操りが透ける点だが、作者の技巧と捻りに「見せ方が上手いとはこの事か!」と感嘆し、全く弱点に感じない。
名作「戻り川心中」でも打ち破れなかった嗜好の壁を超絶技巧で打ち破り文句なしの満点。

No.2 7点 こう
(2008/08/04 23:45登録)
 これもトリッキーな連城三紀彦らしい短編集です。「戻り川心中」のような雰囲気は全くなくトリックに力点が置かれており個人的にはこの作品集や「夜よ鼠たちのために」が気にいっています。但しすべてが及第点とは言えず不満の残る作品もあります。
 トリッキーさでは「メビウスの環」、「依子の日記」が気にいっています。

No.1 7点 ギザじゅう
(2005/06/27 05:06登録)
『変調二人羽織』 (講談社文庫)

 連城の処女作「変調二人羽織」を含む第二短編集だが、作品の古さからいえば第一短編集といっても間違いではなさそうだ。
 様々なタイプの作品が入っていて、どれも水準以上の出来だが、まだこの頃では話の展開のさせ方がかたいように感じた。また、小説のトリックと物語の融合性も、『戻り川心中』などと比べると、やや乖離気味で連城らしさがまだ開花していない。
 そのあたりをクリアしていて、かつ意外な真相に持っていくという意味では、「メビウスの環」「依子の日記」が好み。探偵小説を強く意識した表題作も面白いが。

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