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ミステリの祭典

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Rinaさんの登録情報
平均点:6.78点 書評数:9件

プロフィール| 書評

No.9 6点 #真相をお話しします
結城真一郎
(2025/02/10 12:42登録)
YouTubeやマッチングアプリ、リモート飲み等の現代ならではの要素がテーマとなっている短編集です。
以下、各編の簡単な書評です。
※若干のネタバレを含みます。

・『惨者面談』(5点):テーマは「中学受験」。伏線の回収は丁寧ですし、ラストも捻りが効いています。が、驚きに欠ける気が……。
・『ヤリモク』(4点):テーマは「マッチングアプリ」。こちらも伏線の張り方/回収の仕方、共にお手本のように綺麗です。ラストも捻っています。しかし、「驚き」というよりも「納得」の方が強いです。決して面白くないわけではありません。なんとなく一昔前に流行った「意味が分かると怖い話」に読後感が似ています。
・『パンドラ』(6点):テーマは「精子提供」。このテーマでこんな話が読めるとは!いや、逆にこのテーマだからこその物語とも言えましょうか、発想に感服です。辿り着く真相も中々に良いですね。
・『三角奸計』(6点):テーマは「リモート飲み」。サスペンス色が強く、読み進めるごとに緊迫感が増していくストーリー運びが素晴らしいです。ラストで急にアクセル全開になるのも爽快でした。読後タイトルを見返すと邪悪な笑みが……。
・『#拡散希望』(9点):テーマは「YouTube」。お見事!読者の想像の斜め上を行く大技を繰り出すことによって、物語の世界観を根底から覆す程の衝撃を読者に与えることに成功しています。日本推理作家協会賞受賞にも納得の傑作です。

どの話も、短編ミステリとして丁寧な出来です。「謎があり、伏線が張られ、それらが全て回収されると同時に真相が明らかになっていく」というミステリの基本がしっかりと抑えられたお手本のような短編ミステリが多いです。
その為、若干驚きに欠ける作品もあります。
しかし、本書の面白い点は、各編でそれぞれ現代的なテーマを扱うことで、そういったミステリの基本型に則りながらも真新しい読み心地の作品を生みだしている点でしょう。
本書は今後、令和の時代を代表するミステリとなるのではないかと思います。


No.8 7点 深追い
横山秀夫
(2025/02/10 11:27登録)
とある地方にある「三ツ鐘署」を舞台とした連作短編集です。
以下、各編の簡単な書評です。

・『深追い』(8点):「亡くなった夫のポケベルにメッセージを送り続ける未亡人」という何とも魅惑的な謎とエッジの効いた真相。本短編集の冒頭を飾るにふさわしい名編です。余談ですが、読んでいる最中連城三紀彦の『花葬シリーズ』がなぜかずっと頭の中に浮かんでいました。
・『又聞き』(8点):夏の海で起きた悲劇。過去を探るうちに浮かび上がる真相は……。素晴らしいです。
・『引継ぎ』(8点):伝説の泥棒と父の遺志を継ぐ警察官の物語。緊張感のあるストーリー展開と捻りの効いたラストには息を吞みました。個人的にこの話が本短編集のベスト。
・『訳あり』(6点):出世コースから外れた刑務係長、定年間近の巡査、悪い虫がついたと噂される捜査二課長、警察官になれなかった男。様々な人々の物語が終盤、見事ひとつに収斂していく様は圧巻でした。
・『締め出し』(6点):凄惨な強盗殺人事件の事件解決の鍵を偶然手にしてしまった生活安全課少年係の若い巡査。警察組織の息苦しさと暗号解読にも似た華麗な謎解きが楽しめました。
・『仕返し』(6点):ひとりのホームレスの死からここまで話が広がるとは……。ラスト、主人公のとる行動がいいですね。
・『人ごと』(5点):花好きな老人の奇妙な言動に隠された真意が徐々に明かされていく一編。これまでの6編に比べミステリ度は低いですが、その分人情譚として面白いです。読後感もよく、おだやかな心持で本を閉じることができました。それにしても最終話の重要なアイテムが花とは、また『花葬シリーズ』が脳裏に……。

全体を振り返っても非常に質の高い短編集だと思います。警察官を主役に置いた重厚な人間ドラマと短いページ数の中で展開される鮮やかな謎解きが7回も楽しめ、満足感が高いです。
警察小説好きの方だけでなく、キレのある短編ミステリを求めている方にもお勧めです。


No.7 9点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂妻夫
(2024/12/06 11:51登録)
※若干のネタバレがあります。
※本作未読の方は、なるべく予備知識ゼロの状態で本編を読むことを強くお勧めします。


素晴らしい。その一言に尽きます。
よって以下の長々しい駄文は読まなくても結構です。暇のある方だけ読んでください。

「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」という有名な言葉がありますが、まさにその通りですね。本作こそがそれです。
作者の泡坂妻夫は、よくもまぁこんな仕掛けを思いつき、しかもその思い付きを完璧な状態で形にしたなと深く感心しました。
読後は最早驚愕を超え、感動の極致です。ひとり拍手喝采しながら、静かに本を閉じました。
この作品に掛けられた並々ならぬ労力に思いを馳せると、目頭が熱くなってきます。ミステリを読んだ時にだけ得られる感動が、この一冊には詰まっていました。

本当に、素晴らしい。
しかも、本作はただの“仕掛け本”だけで終わることなく、しっかりとストーリーでも読者を楽しませてくるのだから凄い。
トンチキな迷探偵が胡散くさい宗教団体と対決するトンデモ話かと思いきや、しっかりと筋の通った本格ミステリとなっているのだから驚きです。例えあの仕掛けがなかったとしても、本作は優れたミステリとして評価されることでしょう。

一切の隙の無いミステリとは、まさにこのような作品を指すのだと思います。
作者の「読者を楽しませてやる!」という気概を全力で感じることのできる、オールタイム・ベスト級の名作ミステリであると思いました。
「ミステリ小説」のひとつの究極形態です。


No.6 4点 アルキメデスは手を汚さない
小峰元
(2024/12/05 16:59登録)
「死んだ女子高生を妊娠させた相手は誰だ」という魅力的な謎から、連鎖的に事件が発展していく前半の展開は非常に面白かったです。しかし、後半は正直微妙だなと感じました。

密室やダイイング・メッセージ、時刻表を用いたアリバイトリックといった、本格派の要素が多く盛り込まれた隙のない内容であるにも関わらず、出てくるトリックもそこまで驚けるような代物ではないため、あまり本格ミステリを期待して読むと肩透かしをくらってしまいます。
かと言って社会派ミステリや青春ミステリの観点から見てみても、「う~ん」という感じです。
ひとつの読み物としては面白く、途中で飽きることもなく一気に読めるほど読みやすくもあるのですが、その分読後の満足感はイマイチです。
時代感覚の違いと言ってしまえばそれまでですが、登場人物たちの言動にもあまり感情移入ができず、最後のタイトル回収も軽く感じてしまいました。

と、ここまで言いたい放題言ってしまいましたが、本作が後世の青春ミステリに与えた影響などから鑑みても、本作には一読の価値が十分にあると思います。
(実際、某大人気作家の方も、本作を読んだことがきっかけでミステリ小説を書いたと言っていましたし。)
あまり肩肘を張らず、物語の流れに身を任せながら楽しんで読むことをお勧めします。


No.5 7点 卒業−雪月花殺人ゲーム
東野圭吾
(2024/12/04 16:28登録)
個人的に、かなり好みの一作です。
若き日の東野圭吾の活き活きとした文章と、どこか青臭い登場人物たちの青春物語が絶妙にマッチしていて、読んでいてとても楽しかったです。

犯人の動機や青春真っ盛りの登場人物たちの言動に疑問を抱く読者もいるかもしれませんが、青春なんていうものは皆このようなものじゃないでしょうか。
膨れ上がった自意識や繰り返す自己嫌悪、将来への過度な不安や先を考えない無鉄砲な言動、誰かのちょっとした言葉に必要以上に喜び、怒り、哀しみ、楽しくなる。そういった誰しもが経験のある“イタい青春”がある日突然、殺人という行為と結びついてしまう。
本作は、そんな青春ミステリ特有のアブナイ空気感を巧く表現した作品であると感じました。

また、密室トリックの真相も、作者の後の某シリーズを彷彿とさせるような大胆なもので非常に面白かったです。ただし副題にもなっている「雪月花ゲーム」は図解があるとはいえ少々複雑で、読者が理解しきる前にどんどん先に進んでいってしまったように思います。作品の肝にもなる部分なので、もう少し分かりやすく書いてほしかったです。
終盤の畳みかけ方などは、流石後の大人気作家だなという感じでした。


No.4 6点 ジキル博士とハイド氏
ロバート・ルイス・スティーヴンソン
(2024/12/04 12:21登録)
※若干のネタバレをしています。


恐らく世界で最も有名な「〇〇〇〇」をテーマに書かれたホラー小説です。もはや古典中の古典であるが故に、現代日本でこの作品を手にするほとんどの人たちがこの作品は「○○○○」の小説だと知った状態で読み始めることでしょう。もちろん私もそんな現代人の一人でした。
しかし、それが最大の罠だったとは……。

本作は優れたホラーであると同時に、間違いなくミステリです。しっかりとした謎があり、それが論理的に解き明かされていきます。そして最後に判明する驚きの真相こそ、まるで現代の基礎教養かのような顔で各所でネタバレされまくっている「〇〇〇〇」なのです。もう、ショックを超えて悲しいです。

さて、なぜ私が本作をミステリと捉えたかと言いますと、まず先述した通り本作にはきちんとした“謎”とそれに対する“解決”がある点。また、奇妙な遺言状・消える容疑者・密室・ミスディレクション・手記による告白と言ったような、今日のミステリ作品における重要なファクターを多分に含んでいる点などから、現代のミステリ作品と照らし合わせた際に本作が実にミステリ的な構造をしていると考えたからです。
作者が一体どのような意図で本作を執筆したかは分かりませんが、ホームズ登場以前のミステリ黎明期にこのような作品が書かれていたということを、非常に嬉しく思います。


No.3 7点 きみとぼくの壊れた世界
西尾維新
(2024/12/04 11:34登録)
その他の要素が多すぎるような気もしますが、本格ミステリとしてよくできています。
「もんだい編」を読んだ時点では推理のための手がかりがあまりにも少なく、正直ミステリとしての出来を疑ってしまったのですが、「かいとう編」には素直に驚きました。いや、本当に素晴らしい。
死体や事件現場の状況・登場人物の人数を極端に制限したことで、無駄のない(?)作品に仕上がっています。推理の過程も見事です。
西尾維新はどうしても文体の癖や突飛なキャラクターばかりが取り上げられがちですが、もっとミステリ作家としての一面も評価されるべきだと思います。


※以下、若干のネタバレをしています。


本作のトリックには剣道が大きく関わっており、恐らく剣道に関する基本的・常識的な知識がある読者であればとある違和感に気がつき、それが推理のヒントになるように作者は書いているのではないかと思いました。しかし、10年以上剣道を嗜んでいる私は、反対にその違和感に一向に気がつかなかった……。
恐らく、剣道に親しみ過ぎているからこそ、その場面を頭の中で勝手に自分のよく知った剣道の状況で想像してしまったためだと思います。
こちら側に利があっただけに、悔しいです……。


No.2 7点 禁忌の子
山口未桜
(2024/12/04 10:59登録)
ミステリにおける“謎”というのは、その作品の主役でなければならないと私は常々考えております。その観点から見れば、本作冒頭で提示される「主人公と瓜二つの溺死体」という謎は、本邦ミステリの中でも屈指の魅力的な主役であると言えるでしょう。
更に、本作が非常に優れている点は、その魅力的な謎を出発点としてスピーディーかつスリリングな展開を次々と連続させ、終盤では目を見張る程に華麗なロジックによる緻密な推理を繰り広げるというかなり詰め込んだ内容ながらも、常にリーダビリティの高い文章で読者を引っ張っているところにあると思います。
また、現役の医師でありながら子育て中の女性という作者だからこそ書けたテーマ・描写が作品の随所に見られた点も好印象でした。


No.1 8点 犬神家の一族
横溝正史
(2023/08/10 17:07登録)
先に映像化作品を視聴していたため、犯人やトリック、ストーリーの展開などはあらかじめ知った状態で読みましたが、かなり楽しめました。
奇妙な遺言状、怪しい一族、絶世の美女、そして見立て殺人と言う魅力的な設定と、遺言状に記された“ルール”に縛られたある種デスゲーム的な趣のあるストーリー展開は、この令和の時代にも十分通用する面白さであると思います。
ただし、犯人やトリックなどは今読むと少し古臭く、意外性に欠けるかと...。
とは言っても、この作品がその後多くの作家・作品に多大な影響を与え続けている点、国内での圧倒的知名度・映像化頻度などを考えると、日本ミステリの代表的作品と言えるのではないでしょうか。

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