君のクイズ |
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作家 | 小川哲 |
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出版日 | 2022年10月 |
平均点 | 6.88点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 7点 | びーじぇー | |
(2024/11/01 21:08登録) クイズ番組に出演した三島玲央は、決勝まで進出したものの敗れる。対戦相手の本庄は、最後の一問を問題文がまだ一文字も読まれる前に、早押しで回答したのだった。やらせか、それとも不正なしで正答し得る理由があったのか。三島は本庄のこれまでの足跡を調べる一方、番組での記憶をたどり直す。 題材は、多くの人からただの知識競争、単なるゲームと思われているクイズだが、クイズプレイヤーである三島の推理や考察を追ううちに、この競技の奥深さだけでなく、併せ持つ怖さのようなものに触れることになる。 クイズの問題には途中で「~ですが」と入るパターンがあり、何について答えるべきかが決まる「確定ポイント」がある。ポイントが示されてから回答ボタンを押すのでは遅く、いかに先回りするかが勝負の鍵になる。だが、どこまで先回り可能なのか。本作はミステリとして、この謎を魅力的に描いている。 クイズは世界の全てを対象とするため、世界が変化すればクイズも変化するのだという。主人公が競技クイズのテクニックについて考えることは、人間が自分のいる世界をどのように知り、生きているかを考えることに繋がっていく。クイズを通して世界や人生が描かれるのだ。そのため「確定ポイント」が示される前に判断しなければならない。賭けざるを得ない場面を読むと、人生にも同様の局面はあると思い当たり、緊張に襲われるのだ。 |
No.7 | 6点 | まさむね | |
(2023/08/08 21:03登録) 生放送の対戦型早押しクイズ番組。その決勝戦で、一文字も問題文が読まれていないのに正答し、優勝を果たすという事象が起きた。何故そのようなことが可能だったのか? シンプルかつ魅力的な謎で、一気に読まされました。真相自体は、想定の範囲を超えてこないというか、やっぱりそういったことだよねぇ、という感じ。でも、何やら深いトコロを突いているような気もします。どうでもいいことだけれど、個人的には恋人の桐島さんとの件をもう少し深掘りしてほしかったかな、という願望も。 |
No.6 | 7点 | パメル | |
(2023/07/24 06:25登録) 生放送のテレビ番組「Q1グランプリ」の決勝戦に出場した本庄絆は、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答して正解し、優勝を果たす。対戦相手であった三島玲央は、この不可解な事態を訝しむ。三島は真相を解明するため、本庄について調べ決勝戦の一問一答を振り返り、0文字解答の真相を探る。イカサマなのか、それともテクニックなのか。 作中に描かれるトップレベルのプレイヤーにとっての早押しクイズは、問題が読み終えられてから動くようでは遅い。固有名詞や助詞の使われ方から、正解が確定する瞬間を見極めてボタンを押し回答する。極端に短い時間の中で思考を突き詰める頭脳競技なのだ。 ミステリとしての謎は、シンプルだが深い。クイズとは、覚えた知識の量を競うものではなく、クイズに正解する能力を競うもの。いかにそのポイントを早く発見できるかが重要である。三島は真摯に競技クイズと向き合っているし、彼の人生がクイズの答えに繋がっている。 わずかな手掛かりから真相にたどり着いた時、クイズの世界の奥深さ、三島の思考力に圧倒された。人間ドラマに息をのみ、知的興奮と刺激に満ちた痛快な作品。好きなことへの情熱を感じる作品で、クイズでなくても、何か夢中になっているものがある人は、共感できるのではないか。 |
No.5 | 7点 | take5 | |
(2023/06/10 15:50登録) 私も時々家族でテレビ視聴するのですが、 早押しクイズとは、 相手より早く正確に知識を動員して、 論理的に結論を導くもの、、、 と、主人公同様に考えておりました。 テレビの前では割りと答えられるので 父ちゃん知識凄いだろーと。 この価値観の転換と、 0文字押しミステリーの謎解きだけで 200ページ一気押し。 借りて二時間で読了、 息子に渡す。 息子もすぐ読み始めました。 リーダビリティーの極致。 人生の深淵等の深みはありません笑 |
No.4 | 7点 | 文生 | |
(2023/03/04 22:48登録) クイズ番組で問題文を読み上げる前に正解を答えた謎を、番組を振り返りながら検討していく展開がよく出来ています。短い枚数のなかで勝負の推移、競技クイズのテクニック解説、クイズにのめり込んでいく主人公の半生などがバランよく描かれており、飽きさせません。冒頭の謎に対しても作中に散りばめられたヒントを結びつけて納得いく答えを提示しているのが見事。競技クイズを巡る人間模様を描いたヒューマンドラマ&日常の謎ミステリーとしてそつなくまとめられた佳品です。 |
No.3 | 7点 | sophia | |
(2023/01/22 23:44登録) ネタバレあり 構成はどうしてもアカデミー賞映画「スラムドッグ$ミリオネア」がちらつきましたが、真相は真逆になっているのかなと思いました。クイズという競技の戦い方やプレイヤーたちの矜持なども描かれており、200ページ足らずの作品とは思えないほどの読み応えがあったのですが、「本庄絆は最終問題でなぜあのような答え方をしたのか」という最大の謎の答えが想像を超えてこなかった感じです。 |
No.2 | 7点 | メルカトル | |
(2022/11/11 22:47登録) 一作ごとに現代小説の到達点を更新し続ける著者の才気がほとばしる、唯一無二の<クイズ小説>が誕生しました。雑誌掲載時から共同通信や図書新聞の文芸時評等に取り上げられ、またSNSでも盛り上がりを見せる、話題沸騰の一冊です! ストーリー:生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに回答し正解し、優勝を果たすという不可解な事態をいぶかしむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて、自らの記憶も掘り起こしていくことになり――。 読めば、クイズプレーヤーの思考と世界がまるごと体験できる。人生のある瞬間が鮮やかによみがえる。そして読後、あなたの「知る」は更新される! 「不可能犯罪」を解く一気読み必至の卓抜したミステリーにして、エモーショナルなのに知的興奮に満ちた超エンターテインメント! Amazon内容紹介より。 意外にも深いクイズの世界。 これはテレビの、問題を読んでボタンの早押しを競うクイズ番組に特化した作品です。どうすれば相手に勝つことが出来るのか、早押しの極意などを追及した異色のエンターテインメント小説。根底に何故主人公である三島のライバルで決勝戦の相手本庄が、問題を読み上げる前に正答出来たのかと云う謎が横たわっており、その謎を解くために一問一問振り返っていくのが本筋のストーリーであり、それを補填するために様々な人物が登場します。勿論クイズに詳しい人達ですが、唯一恋人の桐島さんがだけが一般人です。 残念なのは短すぎて、もっと中身を充実させることも出来た筈なのに敢えてそれをしなかった事くらいでしょうか。初出が『小説トリッパ―』なので文字数に制限があったせいか?その為、桐島さんの扱いがクイズ在りきになってしまい、雑だったなと感じました。 クイズ自体はとても難解な、というかあらゆる事柄に通じていなければ正解できない問題が多く、素人の私などはとても答えられないものばかりでしたね。一問だけ私がオランウータンだと思ったら(本庄も同じ答え)違っていたのが惜しかった程度で、これまた残念な香りがしました。まあしかし、それはそれで勉強にもなりますし、関心もさせられましたし、何より読んでいて面白かったのが最大の収穫でした。 |
No.1 | 7点 | フェノーメノ | |
(2022/10/13 00:35登録) 全国生放送のクイズ番組決勝におけるゼロ文字解答を巡る物語。やらせか、魔法か。果たしてゼロ文字解答は可能なのか。 ナナマルサンバツを読んでいたので、クイズプレイヤーの思考であったりテクニックであったりは重複する部分もあった。こういうところはクイズを知らない人の方が興味深く読めると思う。 ゼロ文字解答の真相に関しては、ミステリ的解法を期待すると肩透かしに終わるかもしれない。ただこの小説はクイズを通して人生に踏み込んでいく物語なので、そういう意味で、クイズというのは魔法でもなんでもなく現実的なものである、という面を象徴していて良かったと思う。 ミステリ的な驚きや論理のアクロバット主体の作品ではないので、所謂狭義のミステリとしての側面は薄いが、クイズを軸にしたエンタメとしてはよく出来てると思う。 |