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ミステリの祭典

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禁忌の子

作家 山口未桜
出版日2024年10月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 文生
(2024/11/14 09:42登録)
第34回鮎川哲也賞。
救急医の主人公が運び込まれた自分そっくりの溺死体を見て茫然するシーンは最高のオープニングでした。魅力的な冒頭の謎という点では申し分なしです。しかし、同時に、この謎がミステリのロジックで解明されるとは到底思えず、これは本当に本格なのかと疑問に思っていると、瓜二つの死体の真相は前半であっさりと明かされます。むしろ本番はここからで、第2の事件とそれに伴う探偵役の推理が読み応えありまくりです。真相も意表を突くもので本当に驚かされました。偶然が過ぎるという意見もありますが、偶然の連続で単純な事件が複雑になっていくといった類のものではなく、偶然は事件が起きる契機にすぎないのでその点は大きな疵ではないのではないでしょうか。運命のいたずらによって事件が起きるのは現実でもあることですし。個人的には、歴代鮎川哲也賞のなかでも屈指の傑作だと思います。特に気に入ったのは密室の扱い方です。トリックの解明には焦点を当てず、意外な真相を導くための手がかりとして密室を用いる発想に唸らされました。

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