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ミステリの祭典

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犬神家の一族
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1970年01月
平均点7.69点
書評数45人

No.45 8点 Rina
(2023/08/10 17:07登録)
先に映像化作品を視聴していたため、犯人やトリック、ストーリーの展開などはあらかじめ知った状態で読みましたが、かなり楽しめました。
奇妙な遺言状、怪しい一族、絶世の美女、そして見立て殺人と言う魅力的な設定と、遺言状に記された“ルール”に縛られたある種デスゲーム的な趣のあるストーリー展開は、この令和の時代にも十分通用する面白さであると思います。
ただし、犯人やトリックなどは今読むと少し古臭く、意外性に欠けるかと...。
とは言っても、この作品がその後多くの作家・作品に多大な影響を与え続けている点、国内での圧倒的知名度・映像化頻度などを考えると、日本ミステリの代表的作品と言えるのではないでしょうか。

No.44 4点 みりん
(2023/04/16 05:12登録)
金田一の吃りにも頭ガリガリするのにもそろそろ慣れてきた。が、意外性がなく少しガッカリ…

No.43 7点 ALFA
(2022/03/26 15:21登録)
タイトに引き締まった「獄門島」とは対照的。とはいっても骨格は意外にちゃんとしている。

すべての始まりは遺言状。翻訳物を含め、これほど精緻で悪意に満ちた遺言状はないだろう。それを引き金に息つくひまもなく事件が起こる。

ご都合主義?そんなことは横溝自身が作品中で述べている。「すべてが偶然であった。なにもかもが偶然の集積であった。」(角川文庫P.384)・・・
細かいことは気にせずサービス満点の横溝ワールドを楽しむ作品である。

ネタバレ注意




この作品、過去に数多く映画、ドラマ化されている。もっとも存在感のある犯人役は、妖怪感が半端ない超美女京マチ子と大仏顔の高峰三枝子だろう。やはり超然としたところがないとね。栗原小巻や富司純子ではあまりにも普通の悪女でものたりない。
当主の犬神佐兵衛は少年時代BLというからには平幹二朗一択だろうね。

No.42 9点 じきる
(2020/09/06 02:41登録)
横溝ワールド全開の世界観に壮大なプロットが落とし込まれていて大満足でした。偶然要素が強いのも、ここまでドラマチックにやってくれれば運命的と呼んでいいでしょう。

No.41 7点 クリスティ再読
(2019/12/15 21:25登録)
日本で一番「ミステリな女優」って誰か?と考えると、評者は断然京マチ子である。そりゃさ、大映「黒蜥蜴」だし、犬神松子である。そうじゃなくても人外の「雨月物語」にほぼ人外みたいな「羅生門」...と代表作に人外が来るような、レアな女優である。なので追悼で今年中に「犬神家」やりたかったんだ。御年50過ぎての犬神松子の凄艶な美貌と迫力は、高峰三枝子の及ぶとこじゃないよ...あとTV版でプロデューサーまで買って出た大映京都の美術の大立物西岡善信も今年の追悼である。というわけで、小説も76年の映画も77年のTVドラマもやっちゃおう。
まずは小説。今回読み直して、実のところこの作品、名作というよりも「ミステリ論的重要作」だ、と思いきることにした。というのはね、本作の筋立てを取り出すと、莫大な遺産付きヒロインが、候補者に襲われて乙女のピンチ!、あわやで助かるが死体がゴロゴロ、という話になるわけ。家モノはタダの外枠、実情は「三つ首塔」に近い話なんだ。だから本作は、猟奇スリラーの骨組みで書かれたものなんだけど、結果的に「本格」枠に取り込まれることになったときに、その「猟奇」の合理的解決の趣向を、たとえば角川の昔の解説(大坪直行)だと、本作のこの趣向を「作者が読者に仕掛けるトリック」として読んでいる。これに評者は何か凄い違和感を感じたんだよね。言うまでもなく、本作は都筑流の「今日の本格」モデル作品であるわけだけど、この都筑のモダンな読みも大坪のもう一つ?な読みも、両方とも本作を強引に「本格」に回収しようとする「本格至上主義」の心性というか予断に基づいたものだ、というのが今となると見えてきたように思うんだ。だから逆に、本作を「三つ首塔」に関連付けるのが実は可能だ、と気が付いちゃうと、本作で「トリック」と呼ばれるものが、「猟奇スリラーの合理的解釈」という軸に沿っているものであり、実のところ作者の執筆時の意図はそっちに近いのでは..とも思われるのだ。
まあだから、本作の映像での成功は、佐智殺しのアリバイを両者が無視していることから分かるように、「猟奇スリラー」としてのインパクトにあることは、言うまでもない。でしかも一世を風靡した角川映画第一作、巨匠市川崑監督作品...となると、評者に言わせると妙な尾鰭が付いてきたことになる。市川崑って監督は会社を転々としながらも、最終的に東宝のエースを勤めたから「大監督」には違いないのだが、「絶対認めない」扱いを評論家から受けることも多い、ある種「取扱注意巨匠」というイメージを評者なんかは持っている。スタイリッシュな構図感覚やデザインセンスに優れたものがあるのだが、「犬神家」でもイキって使ったオプチカル処理が何かカッコ悪いし、シリアス場面で妙なギャグで脱力するシーンがある。「ドラマが嫌い」みたいな居心地の悪さを感じたりする...本作を「日本映画の金字塔」とか呼ぶ人の気が知れない。完全に誇大宣伝の部類である。
それに比べると、工藤栄一のTVドラマの方は、こっちこそ、京都の、関西の底力を見せつけるような力作である。こっちだって「光と影の魔術師」工藤栄一である。両者とも、窓や扉を使ってスタイリッシュな構図をキメるのは大得意。しかもこっちは、女盛り京マチ子、である。特に第四話あたりを、オリジナルシーンで決めていて、合わせ鏡の部屋・佐兵衛の写真の前で写真を掲げて焼くシーンなど、ファンタジーと京マチ子の凄艶な美がほとばしるかのようだ。評者に言わせれば、映画なんぞ、このドラマの足元にも及ばない出来である。ポイントを押さえてアピールできる小山明子、嫌味なく金田一と小芝居できる西村晃の助演もナイス。古舘弁護士はきわめておいしい役で、映画の小沢栄太郎もいい。仮面の佐清が琴糸をいじるのは「必殺」だ(笑)。横溝正史本人もTVドラマの方がお気に入りだったようだよ
まあそれでも、映画は音楽はいいし、自然描写はきれい。セットのお金はかかってる。でもあおい輝彦が小太りで絶対に復員兵に見えん、島田陽子はきれいだが...ドラマの四季乃花恵はネットを見てると「宝塚退団後出演」みたいなことを書いてるとこがあるけど、これ在団中の外部出演だからね、ヅカもたまにはこういうとがあるけど、外部出演ポリシーが全然一貫してない。まあ、何かおとなしくし過ぎてて、受動的すぎるようだ。ミステリのヒロインはあまり頭が悪そうでもいけないんだよね...けど、この人、ベルばらで悪女のジャンヌ演じてるから、そういう柄でもなさそうなんだがなあ。あとTVドラマ、現行DVDがくたびれたようなポジフィルムからのテレシネで、クォリティが悪いにもほどがある。ぜひぜひネガからちゃんと起こしたきれいな映像で見たい。

No.40 6点 蟷螂の斧
(2019/11/21 14:38登録)
「東西ミステリーベスト100」第39位 雰囲気や遺言状の内容などは楽しめましたが、ミステリーとして特に際立っているものがなかったのが残念。また、○○が好みでないもので、高評価は付け難いです。
「東西ミステリーベスト100( )内は順位」に選出された5冊を読み終えて。マイ順位は、本陣殺人事件 9点(10位)>悪魔の手毬唄 9点(75位)>犬神家の一族 6点(39位)>獄門島 6点(1位)>八つ墓村 5点(57位)となりました。

No.39 9点 斎藤警部
(2019/06/29 21:04登録)
精妙なロジックと怨念の起爆が集約された遺言状!! 
絶望的暗黒と大胆なトリックが結託した連続殺人!!

【これちょっとネタバレか】
映画の演出で観ると、真犯人があまりにそのまんまで これってほんとに本格? って思っちまうが、ちっちっちっ、その際どいミスディレクションの肝の部分がごってり残っている原典(小説)で読むと、何気にクリスティ流儀のワケシリな犯人隠匿術に翻弄される愉しみが味わえる。結末知っていても大丈夫。読んでみんさい。

しっかしこの人間関係群の衝撃的キッツさは本当に酷い!! SKKY(こう略すと空みたい)の柘榴顔だの仮面だのSKTKの首が落ちて来るだの、ビジュアル上の怖さもこの心理的怖さを適度に緩和する役割を負っているんでないか?と思うほど。

しっかしKIKSは相変わらずダメだね。。 小説で読むと主役感の半端ない珠代さん、綾瀬はるかが演じてないとは意外です。

【最後に、これはネタバレになりましょう】
某超が付く人気タレント(令和元年初夏現在)の芸名は本作の真犯人から来てるのかと思ったら、そうじゃないんですってね!!

No.38 10点 mediocrity
(2019/06/27 05:05登録)
<少しネタバレあり>
出版が1970年になっているから比較的晩年の作品なのかと思ったら、連載自体は1950~51年なんですね。連載小説でここまで話の辻褄を合わせられたのは、ただただ驚きです。
入れ替わりトリックとか、主犯が誰かとかは、確かに今読むとわかりやすいけれど、時代を考えるとミステリとしての完成度も非常に高いのではないでしょうか。
前に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』という作品の書評で、最終章で無理やり親戚関係作って興覚めだみたいなことを書きましたが、犬神家はなんだか全員親戚みたいになっても全く違和感を感じませんでした。
そのあたりも含めて、とにかくプロット作りが恐ろしく上手いと思いました。

No.37 7点 パメル
(2019/03/04 01:19登録)
「獄門島」の時にも書きましたが、金田一耕助シリーズはTBS系のテレビドラマで子供の頃に全て見た。それを承知で小説を読んでいるのですが、「獄門島」の時は読んでいく中で思い出すことは無かったが、この作品は途中でストーリー展開、犯人を思い出したしまった。(それだけインパクトが強かったからでしょう)それでも面白かった。作者のストーリーテラーぶりが発揮されているからだと思う。
見立て殺人は「獄門島」では必然性を感じなくて不満があったが、こちらは必然性を合理的に処理されており好印象。第3の殺人の見立てに関しては、否定的な意見に「そうだよな」と思いながらも、これはこれで洒落てて良いと思った。またご都合主義的なところもあるが、それを差し引いてもこの点数。見立て殺人の代表作といってもいいと思う。

No.36 5点 レッドキング
(2018/11/14 21:35登録)
あの白マスクとあの見立てで有名な作品だが、ミステリとしては、連続殺人と見立て殺人の分離、第二殺人のアリバイトリックといったあたりがキモかな。でも仮面覆面ていったらあのネタだろって言うような、そのまんまのネタだもんなあ。加えて「忠孝の鑑のような美男」と「清純な26歳処女の絶世美女」のカップルなんて、殺人鬼でもなきゃ絵にならんだろが。
ところで、あの見立ての(「よき」けす)だが、(「ワ」イ)とも解読できるぞ・・・

No.35 4点 虫暮部
(2016/04/30 10:53登録)
 確かに、本作はこの手のパターンの雛型のひとつになったのかもしれないが、さまざまな後続作品に負けてしまったと思う。あれやこれやを読んだ後では、時を超えて生き続ける不朽の名作と呼ぶには物足りない。結末に全然意外性がない。“斧”の見立てなんてバカミスだよ。斧をどこからか持って来て置いておくほうが簡単でしょ。あんな判じものを即座に読み解く金田一耕助は凄いんだか何なんだか。

No.34 8点 青い車
(2016/02/28 20:40登録)
東西ミステリーベスト100で、旧版では100位圏外だったものの、新版ではプロットの良さを再評価され39位に浮上しています。
遺産をめぐる血縁者どうしの争い、不気味なゴムマスクの男、残虐な見立て殺人など横溝正史らしいお膳立てが勢ぞろいです。格調高い雰囲気もほとばしり、まさに映像化向けの作品だと思います。『獄門島』同様、事件の構図もユニークです。ただし、ご都合主義的な部分が強いため緊密さでは一枚劣ります。
とはいえ、シンプルなトリックを物語に溶け込ませる手腕は相変わらず冴えており、その点は名作の名に恥じません。

No.33 6点 風桜青紫
(2016/02/11 15:59登録)
スケキヨくんが有名すぎる一作。トリックは今となってはベタ(というか使うやついるのか?)なもので、犯人サイドも「女に残虐な犯罪は無理」とかなんだかよくわからない理由で行動しているし、なんともご都合主義な作品。でもなんだかんだで面白く読めた。遺産相続バトルだとかグロい見立て殺人だとか、先行きを気にさせる道具をどんどんぶっこんでくれるんだなあ……。日本的な空間での殺伐さを演出することにかけては横溝先生は国内最高クラスでしょう。

No.32 7点 nukkam
(2015/08/27 18:42登録)
(ネタバレなしです)  1951年発表の金田一耕助シリーズ第6作の本書は、何度もTVドラマや映画になっていることから知名度抜群で、そういえば小学生の男の子の間でプールで「スケキヨごっこ」するのが流行ったこともあったそうですからまさに国民的ミステリーと言っても言い過ぎではないでしょう。本格派推理小説の謎解きとしては必ずしも全てが論理的に説明されてはいないですし(でも「八つ墓村」(1949年)よりは改善されています)、余りにも偶然の要素が重なった真相は自力で謎解きしようとした読者の顰蹙を買いかねませんが、和風ゴシックとでも形容したくなるような雰囲気はたまらない魅力です。

No.31 9点 谷山
(2014/08/24 22:12登録)
次々と見立て殺人される三兄弟というプロットは確かに「獄門島」に通じるものがあります。あと戦争先での入れ替わりという点では「車井戸はなぜ軋る」にも通じるものがあります。つまり、二番煎じになってもおかしくないのですが、逆に以前のアイデアを練り直してある意味過去の作品の集大成となったのがこの作品なのではないかと思うのです。
ただ、田舎の因習がおどろおどろしい岡山ものや東京もののエログロなどに比べるとちょっと地味なのが玉に瑕かも。あと有名なスケキヨの湖から足だけ飛び出てる死体は実写オリジナル。どうやればあんなことができるのか子供の頃ずっと悩んでましたw

No.30 8点 sophia
(2014/07/15 03:01登録)
完成度は高いけど、どうしても「獄門島」の二番煎じのような感じがします。
「獄門島」がなかったらもっと高評価したかも。
余談ですが、子どものとき石坂浩二主演の映画を先に観ました。
稲垣吾郎主演のドラマ版では「よき」の見立ての解説がなかった気がします。

No.29 7点 ボナンザ
(2014/04/08 15:39登録)
今でこそ有名だが、これも出た当初はミステリマニアにしか知られていなかったんだよなぁ。角川の偉大さに驚かされる。
本格ミステリとして見てもかなりの出来。

No.28 8点 バード
(2013/08/27 11:24登録)
獄門島に続き自分にとって二作目の金田一シリーズ、顔を隠しての入れ替わりは現代のミステリを読みなれている人にはばればれだが指紋や手形でなんとかミスリードできるとは思うので、大昔の作品としては十分。入れ替わりが見破れても話の全貌が見えるわけでもないので最後まで面白く読めた。

特に途中で金田一が提示する謎に対する解決部分での説明がきれいで丁寧な伏線とロジックで獄門島よりも好みだった。

No.27 8点 E-BANKER
(2013/07/10 21:50登録)
900冊目の書評となりました。
今回は、国内ミステリーの大家・横溝正史の代表作の一つ「犬神家の一族」をチョイス。
これまで何度も映像化されている作品であり、もちろん私自身も有名な市川崑監督のヤツをはじめ様々なバージョンにて接してきた有名作なのですが、実際に書籍として読むのは今回が初。

~信州財界の一巨頭、犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛は、相続人を驚嘆させる条件を課した遺言状を残して永眠した。佐兵衛は正室を持たず、女ばかりの三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助に協力を要請していた顧問弁護士事務所の若林が何者かに殺害される。だが、これは次々と起こる連続殺人事件の発端に過ぎなかった! 血の系譜を巡る悲劇、日本推理小説史上不朽の名作~

今さら言うことはありません。
ということで、書評を終わってもいいのですが・・・一応、以下感想まで。

やっぱり、これはエポックメイキングな作品なんだなぁーと思わされた。
なによりも、冒頭にある佐兵衛の遺言状公開の場面。
これはもう、ミステリー史上に残る名場面だろう。
映像を見た方なら、松・竹・梅の三姉妹とゴム仮面の佐清、金田一、緊張感みなぎる中で遺言状を読み上げる古舘弁護士・・・らの姿が目に浮かぶかもしれない。
そして、遺言状に託した、死せる巨星の猛烈な「悪意」・・・etc
この作品が後世の作品に与えた影響は、やはり計り知れないと言っていい。

今回は、この序盤を読んだだけで、本作のスゴさを体感させていただいた。
で、ミステリーとしての本筋はどうなのかって・・・?
まぁいいではないですか。
真犯人はともかく、従犯の動機はどうだろう? とか、「見立て」の意味は? とか、ご都合主義とか、相変わらず金田一の気付きが遅すぎるとか・・・
いろいろと疑問は尽きぬところですが、そこは言わぬが華という奴でしょう。

他の代表作との比較でいうなら、「獄門島」よりはこちらの方に軍配をあげたい。
(一番好きなのは、「悪魔が来りて・・・」だったりする)
評点はこんなものかな。

No.26 9点 メルカトル
(2013/03/18 22:25登録)
なんだか原作より映画(市川崑監督の一作目)のほうが印象深い。
とは言え、あの名作と名高い『獄門島』より中身は面白いのだから、これはまさしく歴史に残る大傑作と言えるかもしれない。
適度に複雑な人間関係、一族の忌まわしい過去、佐兵衛翁のいわくつきの遺言状など、いかにもな雰囲気満載の本作は横溝作品の白眉と呼んでも差し支えないのではないだろうか。
ただ、犯人の意外性のなさや、かなりのご都合主義はまあいつものごとくだが。
それでも、ゴムマスクで顔を隠した、謎の人物(果たして本当にスケキヨなのか?)を最大限に生かしたプロットは見事である。

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