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ミステリの祭典

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mediocrityさんの登録情報
平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.286 7点 パディントン発4時50分
アガサ・クリスティー
(2022/04/18 17:56登録)
冒頭の殺人目撃から、最初の死体発見までは、非常にドラマティックです。
中盤、兄弟に尋問が繰り返されるあたりは若干退屈になりますが、このまま最後までグダグダ行ってしまうのではないかと危惧している所に突然第二の殺人。話に再び活気が戻ってきます。
犯人は意外な人物で動機もそんなのあり?と最初は思いましたが、確かにあれが一番整合性が取れているわけで、納得せざるをえませんでした。
絶対的な物証やロジックがないからあの芝居を打ったわけで、そのあたりは問題ないのではないかと考えました。


No.285 2点 フランクフルトへの乗客
アガサ・クリスティー
(2022/03/31 18:24登録)
冒頭の2人がコンサートで再開するあたりまでは、無難に物語は進行します。肥満の見にくい女が出てくるあたりで、なんだか話がよくわからなくなってきて、3章はますます意味不明なことに。
月刊ムーでよく見るネタの数々を、ちょっとなぞっては通り過ぎて行ってしまう感じ。正直後半はほとんど何を言ってるのかわからない章も多かった。
「ヴァーグナーのライトモチーフに秘められた暗号とナチの秘密計画」とかだけで書き上げた方が、まだうまくいったんじゃないかと思ってしまう。


No.284 6点 愛の死角 京都~東京殺人ライン
深谷忠記
(2022/03/27 05:16登録)
サブタイトルは「京都~東京殺人ライン」ですが、お気軽トラベルミステリーではありません。『愛の死角』だけでよかったんじゃなかろうか。
ちょっと文章がくどいですけど、丁寧に書かれた上質な2時間ドラマ原作という感じです。


No.283 6点 メルカトルかく語りき
麻耶雄嵩
(2021/12/21 05:26登録)
<少しネタバレあり>

①『死人を起こす』
1年前の殺人は、恐怖症+アルコールでありうる話かもしれないが、突飛すぎていまいち。当日の殺人の解決は私には完全にすべっているように思えた。3点。

②『九州旅行』
設定も結末も非常に面白かった。8点。

③『収束』
冒頭の3つの殺人事件はどこに行ってしまったのかと思ったら、最後にそのからくりが。傑作だと思う。9点。

④『答えのない絵本』
試み自体はつまらなかった。この結末で書けと言われれば、ほとんどの推理作家は楽に書けるのでは。普通は構想時点で却下するでしょう。ただし、推理自体は良かったので4点。

⑤『密室荘』
前作以上に評価するポイントがない。セメントの用途も中盤でバレバレ。まあ前作の続きのおまけ作品ということにして点数は付けない。

平均して6点で。


No.282 6点 黄水仙事件
エドガー・ウォーレス
(2021/12/16 03:05登録)
The Daffodil Mystery
1920年作品。全38章。戦前に翻訳出版されているとのこと。
ウォーレスは前に数冊読んだフレッチャーなどと同じく、スリラーを得意とした量産作家。多作ゆえ口述筆記だったとか。それを担当が校正して出版していたらしい。
本作品はアクロバティックなシーンが多く、分類はスリラーになるのだろうか。毎章のように何か事件が起こり、その度に新事実が明らかになり中盤までは飽きさせない。
ただし、主要な登場人物が8人しかおらず、主人公の探偵と相棒の刑事を除けば6人。序盤で1人殺され、もう1人はほとんど登場しないので、実質4人で持ち回りで色々な事件を起こしている状態。よって中盤以降は、例えば誰かが物陰から襲ってきても、ほぼ犯人がわかってしまう感じになってしまう。
しかし、終盤になっても肝心の事件の全貌がなかなか見えてこない。題名通り、殺された男の上に水仙が飾られているのだが、その理由と真犯人が最終章で明かされる。
ちょっと中盤が長すぎるが、量産していてこのレベルならすごいと思う。


No.281 9点 オリエント急行の殺人
アガサ・クリスティー
(2021/12/07 06:20登録)
大作だと思って読み始めたんですが、意外と短い作品でした。『ナイルに死す』が長かったから余計にそう感じたのかもしれませんが。
殺され方で真犯人を暗示→誰も単独犯になりえない→衝撃の結末、という流れはそれだけでお見事だと思います。
9点にしましたが、ストーリー自体は動きがほとんどないので、読んでいてそれほど楽しくはなかったですね。


No.280 4点 崇徳院を追いかけて
鯨統一郎
(2021/11/30 15:26登録)
これ、本当に本人が書いたのだろうか。
文章はぎこちないし(殊にラブシーンぽい所)、宮田と静香のキャラも短編と違いすぎるし、突っ込みやギャグにもいつものキレが全くない。ストーリーも普段の短編を薄めて伸ばして、2時間ドラマぽく仕立て上げただけの印象。教団名の秘密とバラバラ死体のトリックだけは面白かったです。


No.279 9点 ナイルに死す
アガサ・クリスティー
(2021/11/28 01:19登録)
クリスティの長編を読むのはこれで5作目だと思いますが、今作はボリューム満点で非常に読みがいのある作品でした。
今までの4作と決定的に違うのは、ストーリーがどう展開するのかが全く予想できなかったことでしょうか。ゆえに長くても退屈することが全くありませんでした。
計画通りの犯行と、即興的な犯行の合わせ技が絶妙で、それが話に広がりと複雑さを持たせている名作だと思います。


No.278 9点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2021/10/19 04:19登録)
<少しネタバレあり>

塔の見取り図を見て驚く。なんだ、この楽しそうな建物は。本文に入る前に色々想像して楽しむ。
まずは地下の空きスペースが気になる。ここは絶対何かあるな。上から入るのか、横から入るのか?地上部の空白部分が多い。床に穴があればどの部屋からもロープを階段室周りに巻き付けば下に降りられそう。建物動く系もありだな。空きスペースが多いから、建物を上から押さえつければ(下から引っ張れば)階段室以外の建物が4階くらいに収納できそうetc.

プロローグに進む。まさかの倒叙系?『硝子館の殺人』と微妙に本のタイトルと違うのは何か意味があるのだろうか?
さて本編。非常に読みやすい。習作ぽい文章なのはわざとなのか、こういう文章を書く人なのか。過去作品へのオマージュはちょっとくどいが、有栖川先生もよくやってるし、個人的にはそれほど気にはならない。
なんだか推理が甘いと思う所が散見されるが、その理由が後々わかる過程がいい。真犯人が○○は、筆者自身が文中によほどうまくやらない駄目だと書いていたが、今作はうまくいっていると思う。おそらくそう来るだろうとは思っていたが、そうである必然性があるので納得できた。

各所の低評価評を見ると、過去作の組み合わせじゃないかと言うものが多かったが、これだけ見事に組み合わせていたらそれは褒められるべきだと思う。色々な古典から気に入った所を拾ってきて、アレンジして組み合わせるというのは他の分野でも普通にあるでしょう。むしろそれで整合性を確保していることが高得点の最大の理由。
綾辻先生は帯で「ああびっくりした」と書いているが、作中に出てきた作品の半分が未読の自分のミステリ読書歴でも、それほどびっくりすることはなかった。「びっくり」というよりは「なるほどそう来たか」というのが多かった。


No.277 6点 貴族探偵対女探偵
麻耶雄嵩
(2021/10/14 04:03登録)
<ネタバレあり>

『白きを見れば』5点
どうも貴族探偵側の推理はしっくりこない物が多い。一本取れずポイントで上回ってなんとか勝ったという感じ。殊にシャッターの指の跡に関しては、左手の人差し指のけがで云々という女探偵側の推理の方が遥かにまともだと思う。傘なんて頭を傾けて首と肩の間に挟むとかどうにでもなるでしょう。

『色に出でにけり』3点
これも納得の行く推理には程遠い。貴族探偵が犯人でないという条件下で真犯人を強引に作った感じ。特に占いの件は無理やり感がすごい。名前の字が兄と母の名前の組み合わせだから2人の子供って・・・。話自体は面白かったので余計に失望感が強い。

『むべ山風を』8点
無駄がないし、何より妙な論理展開がない。名作だと思う。

『幣もとりあへず』6点
これ、ほとんど同じ仕掛けを他作品で使ってましたよね。でも、今回の方がきれいに決まってると思う。それにしても女探偵が気の毒すぎる。推理小説を読んでいて「なつき」とか「ゆうき」とか「〇美」とかいう名前が出てきたら身構えますけど、現実にこんなレアパターンに当たることなんてまずないでしょうから。

『なほあまりある』7点
女探偵よくがんばった!見事な推理でした。最後は、女探偵には不本意かもしれないけれど、きれいに収まりました。貴族探偵、やはり何もしてないのね。


No.276 5点 なめくじに聞いてみろ
都筑道夫
(2021/09/23 02:14登録)
12人の殺し屋を1人ずつ殺していくストーリー。1話完結ドラマを1クール12回分見ているような感じでした。
初めの方は楽しく読んでいたのですが、似たような話の繰り返しで正直途中で飽きて来ました。最後の一人もやっぱりという感じだし、おまけの1人もおまけ以上には感じられませんでした。


No.275 8点 赤い猫
仁木悦子
(2021/09/11 13:42登録)
『赤い猫』
安楽椅子探偵もの。推理は所々少し強引に感じましたが、全体としては良い出来だと思います。ストーリー自体も感動的です。
『白い部屋』
同じく安楽椅子探偵もの。最後の動機の部分だけ取って付けたような感じがしますが、それ以外はレベルの高い作品だと思います。
『青い香炉』
これは安楽椅子探偵+犯人当てゲームみたいな感じです。前の2作の強引さはまだ許容範囲でしたが、この作品はちょっと強引すぎるのでは。あと、なぜ停電時に電話を使えたのだろう?
『子をとろ 子とろ』
ちょっと怪奇じみたストーリー。それ以外は普通。
『うさぎさんは病気』
ピアノ教室中に子供が「おばあちゃん死んじゃう」とパニックに。するとちょうどその時間におばあちゃんが溝に落ちて死んでいたという話。謎を消化できるのか心配したが、きれいにまとまる。
『乳色の朝』
誘拐物。短編の割に複雑で面白い。

読んでいる方が推理不能な展開と、「○○さん、あなた発表されていない現場の詳細をどうして知っているのですか?」という状況が少し多い気がしましたが、全体的には密度の高い短編集だと感じました。7.5点くらい、四捨五入して8点で。


No.274 9点 サイコロジカル
西尾維新
(2021/09/04 06:19登録)
前作はシリーズ1,2作目と比べるとかなり小粒でしたが、本作は上下2冊の大作です。
いーちゃんの推理、滅茶苦茶すぎるだろうと思ってたらそういう事でしたか。納得です。
この本はいずれ細かい所まで注意しながら再読したいですね。


No.273 5点 准教授・高槻彰良の推察2 魁夷は狭間に宿る
澤村御影
(2021/08/12 05:26登録)
1作目とそれほど感想は変わりません。メイン2人の過去が明かされる話の方が楽しいです。
ところで、このシリーズどちらが主人公なんでしょう。読み始めた時は尚哉が主人公だと思ってたんですが、題名見るとやはり准教授が主人公になるんですかねえ。


No.272 6点 准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき
澤村御影
(2021/08/08 05:54登録)
人気シリーズらしく現在6巻+番外編1巻が出版されているとのこと。漫画化、ドラマ化もされているようです。
ミステリとしてはかなり弱いですが、もう1~2冊は読んでみたいと思うくらいにストーリーは面白く、人気なのは納得です。


No.271 6点 物狂い
土屋隆夫
(2021/07/30 05:09登録)
文庫本で約500ページの大作。ものすごく丁寧に書かれているが、あまりにも丁寧すぎてちょっとくどい。冒頭200ページは老人の長話を聞かされているような感じで、なかなか読み進む気になれなかった。
殺人事件が起こると一気に面白くなり、残りの300ページは1日で読破。
犯人もわかりやすいし、アリバイトリックも正直それほどでもないが、土田警部と津村刑事の絡みが楽しい。


No.270 7点 真珠郎
横溝正史
(2021/07/17 20:23登録)
<ネタバレあり>


昭和11~12年作。著者の戦後の傑作軍の原型のような作品であり、プロットも謎解きも戦前からレベルが高かったのが確認できる。読んでいる最中は大満足の1冊だった。
ただ読み終わってから考えると、真珠郎(仮)があまりにも完璧に動きすぎのような感じがした。途中、椎名が幻を見ているオチじゃないかと心配するくらい。
ところで、角川の表紙ネタバレしてるのね。
『孔雀屏風』も印象に残る感動的な短編。


No.269 8点 砂の城
鮎川哲也
(2021/07/09 05:16登録)
<ネタバレあり>


犯人の様々な工作の徹底ぶりには苦笑してしまいました。特に雑誌の指紋の件は印象に残りました。やりすぎて墓穴を掘ることになる(レコードとそれを入れるカバンの件)のも面白い。
鉄道アリバイ部分は、新幹線がないというだけで70年代以降の物と随分印象が違って新鮮でした。解説のついていない電子書籍で読んだので加筆・修正に関しての情報が得られなかったんですが、「関西本線経由の方が楽なのに」と指摘されて、加筆して霧で延着させることにしたということなんですかねえ。自分はそちらのルートの方がすぐにわかりましたがどうなんでしょう。
ところで、鉄道のアリバイ崩しものは電子書籍とは相性が良くないですね。5つくらい挿入されていた時刻表を行ったり来たりするのは大変だし、そもそもスマホだと良く見えないし。


作中に登場した謎の歌手ビクター・カーンについてちょっと気になったので調べてみました。
Victor Carneはイギリスのテノールで、1920年代には歌手として活躍しSPも数枚出ています。しかし、若くして引退し、レコード制作側(EMIなど)にまわったようです。戦後は歌手活動も時々やっていたようで、1951年にWestminsterから、作中で言及された『冬の旅』全曲を出しています。Youtubeにあります。


No.268 6点 少女の時間
樋口有介
(2021/07/08 03:54登録)
文章の流れが心地よいから全体の印象は悪くないんですが、事件とその解決自体は正直それほどでもありません。どちらかというと推理よりストーリーを楽しむシリーズなんでしょうね。
主人公が大の女好きで、登場人物の8割くらいは女性なので、このシリーズ初の私には誰が誰だかわからなくなることが多かったです。最後まで見開きで登場人物の確認をしながら読んでいました。


No.267 7点 変身
東野圭吾
(2021/07/02 05:15登録)
ネタもベタだし、プロットも見え見えなのにページターナー。数時間で一気に読んでしまいました。やはり話の展開の仕方がうまいんでしょうねえ。終結に関しても私はきれいな終わり方だと思いました。

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