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ミステリの祭典

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フランクフルトへの乗客

作家 アガサ・クリスティー
出版日1972年01月
平均点2.75点
書評数4人

No.4 6点 虫暮部
(2024/05/09 11:49登録)
 AC作品にはミステリ的なポカが結構あって、それが気になり素直に読めないことも少なくない。でも本作は冒頭の時点で “あ、これはそういうこだわりは不要な奴だな” と判ったので、本格ミステリ作より気楽に楽しめた。
 作者は “社会風刺+戯画的で大仰なスペクタクル” でチェスタトンみたいなことをやりたかったんだと思う。しかし読み易く書くことに長けていたので、却ってああいうもっともらしさが出せなかった。人物造形が巧みなので、直線的なプロットや背景から浮き上がってしまった。
 自分に対する無いものねだりが過ぎる。その結果、意図しないところで “風刺すること” に対する風刺になって自爆してしまった。

No.3 2点 mediocrity
(2022/03/31 18:24登録)
冒頭の2人がコンサートで再開するあたりまでは、無難に物語は進行します。肥満の見にくい女が出てくるあたりで、なんだか話がよくわからなくなってきて、3章はますます意味不明なことに。
月刊ムーでよく見るネタの数々を、ちょっとなぞっては通り過ぎて行ってしまう感じ。正直後半はほとんど何を言ってるのかわからない章も多かった。
「ヴァーグナーのライトモチーフに秘められた暗号とナチの秘密計画」とかだけで書き上げた方が、まだうまくいったんじゃないかと思ってしまう。

No.2 2点 レッドキング
(2021/07/05 22:04登録)
60年代末~70年代初頭の世界的な若者反乱。その極左情熱に、かつてナチズムへ熱狂した若者達の浪漫を重ね合わせ、英雄:ヒトラー=ジークフリートの元で極左と極右を包括した世界革命を夢想する国際陰謀集団。て、クリスティー、齢八十にして、まーだ若き頃の「ビッグ4」の血が滾っていたのかと思いきや、話は、SFチックな脳内革命ネタ(チョビっと「ガニメデの優しき巨人」を連想)へスライドして、いきなりのドタバタサスペンス劇へ畳まれる。クリスティーの中に「左右の全体主義」への何らかの拘りがあることは、前から気付いていたけれども。
※にしても彼女の作品に、ビートルズやゲバラともかく、マルクーゼやレヴィ・ストロースの名が出て来るとは・・・

No.1 1点 クリスティ再読
(2015/10/06 23:12登録)
ヴァーグナーの毒に中ったクリスティ。
厨二の帝王ヴァーグナーは、天才も否定できなければ同時に詐欺師であることも否定できない19世紀の生んだ最強最悪の魔物としか言いようのない存在なんだが、それをナチと絡めてスパイスリラーしようってのが、そもそもキッチュの判らないクリスティじゃあムリというものだ。

まあそれでも出だしは悪くないし、コンサートで再接触するあたりの抑制的な描写はいいのだが...第二部の若きジークフリートはロッキーホラーショーかいな、という悪趣味だし、第三部に至っては主人公コンビさえどっかに消えてしまい、オチらしいものもロクにない。というわけで、何を読めばいいのか..と困惑するしかないハメに陥る。第三部の雰囲気に一番近いのは、セラーズとかニーヴンとか出てた「カジノ・ロワイヤル」のキッチュな大混乱かしら。あれよりも何がしたいか不明なので、読者は本当に置いてきぼり。クリスティのコンプしたい人はともかく、一般には読む価値のある作品ではない。
まあ60年代末のフラワーチルドレンとか大学紛争とかを、思いっきり理解なく陰謀史観で描いたらこうなるかもしれないんだが、およそ洞察を欠いているからどうしようもない。で、一番オソロしいのはこういうことなんだよ。

セックス・ピストルズが「アナーキストになりたいんだ」と歌ったのが、この作品のわずか6年後で、「アナーキー・イン・ザ・U.K.」の発売とクリスティの死は同じ年だ...(残念ながら死は1月で発売は11月だから期間はカブってない)

いやはや。

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