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ミステリの祭典

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パディントン発4時50分
ミス・マープル

作家 アガサ・クリスティー
出版日1960年01月
平均点4.87点
書評数15人

No.15 6点 E-BANKER
(2024/11/03 13:48登録)
ミス・マープル登場作品としては七番目に当たる長編。
タイトルだけを見てると、クリスティもトラベルミステリー書いてたのか?と思ってしまいますが、さて・・・
1957年の発表。

~ロンドンのターミナル、パディントン駅発の列車の座席でふと目を覚ましたミセス・マギリカディは、窓から見えた光景にあっと驚いた。並んで走る別の列車の中で、今まさに背中を見せた男が女を絞め殺すところだったのだ・・・鉄道当局も警察も本気にはしなかったのだが、好奇心旺盛なミス・マープルだけは別だった!~

確かにこの導入部は実にそそられる。実に映像的でもある。
並走する別の列車のなかで、今まさに殺人が行われている現場を目撃するのだから・・・
今回のマープルは、ほぼ完全に安楽椅子探偵である。で、マープルに代わって、事件の中心となるクラッケンソープ家へ単身乗り込むのが、“スーパー家政婦”アイルズバロウ女史。

このアイルズバロウがなかなか魅力的に描かれている。美貌も家政婦としての能力も絶品という設定。クラッケンソープ家のすべての男性に言い寄られる、というオマケ付。この当りも映像向きな作品という気がする。
そして、彼女のマープルにも負けないくらいの好奇心が、思わぬ場所での死体発見という結果につながる。

この死体は「いったい誰なのか?」というのが前半の謎の中心。事件の動機は、大富豪であるクラッケンソープ家の相続問題に違いないという筋でストーリーは進んでいく。そして発生する第2、第3の事件。
でも、多くのクリスティファンは知っている。「いかにもの本筋」は決して「真相」ではないことを。
当然、私自身も思いました。「こりゃ、絶対疑似餌(ぎじえ)に違いない」。

で、やっぱりそうでした。最終盤で明かされる意外な真相、意外な真犯人。
ただ最初から動機は読者に対してあからさまに示されてはいた。そういう意味では「なーんだ」というべき真相なんだけど・・・
うーん。他の方も触れていますが、どうも真犯人の動き方が理解できない。
死体の隠し方もそうだけど、ここまで事件を広げる意味は殆どなかったように思う。特に真犯人の「属性」を考えれば、もっともっと効率的なやり方はあったろうに・・・
この当りがどうにもモヤモヤした感じが残ってしまう作品。そこが今一つ高評価につながってない原因なのかも。

ただ、セントメアリミード村という狭い田園ミステリーではなく、広い舞台でも活躍するマープルの姿は割と新鮮に映った(これ本来ならポワロ向きの事件ではなかったかな?)

No.14 7点 虫暮部
(2023/08/10 12:24登録)
 これはそんなに巧妙な案なのだろうか。最初の事件をクラッケンソープ家と結び付ける犯人のメリットって何? 死体をあそこに永遠に隠せるとは流石に期待してないよね?
 記述が曖昧な為、二件目以降がどの段階で計画されたのか不明だが、わざわざ警察をこの家に注目させた上で決行するのはリスキー。
 それにしても、婚約はおろかカップルになってさえいない相手の将来の収入目当てに殺人。随分と自信家な犯人ですこと。

 サプライジングな目撃劇、ぶちぶち言いつつ適度な距離感(だと私は思う)の一家、モテモテのルーシー、探偵活動にはしゃぐキッズ、と読みどころ多数。あの子達が余計なものを見付けて襲われたら嫌だな~と本気で心配だった。
 つまり真相以外は面白い困惑作。

No.13 5点
(2022/07/01 23:14登録)
つかみの部分は視覚的なインパクトが強烈ですし、その後消えた死体の謎、死体が見つかってからは被害者は誰かの問題と、事件は手際よく進んでいきますし、体調不良なミス・マープルに替わって家族に探りを入れていくルーシーがなかなか魅力的です。真相の意外性がまたかなりのものです。
と、ほめる所も多いのですが、死体隠匿方法の中途半端さ等、論理性には問題があります。また、読んだハヤカワミステリ文庫版では翻訳者(大門一男)がパズラーを得意とする人でないせいかもしれませんが、砒素を使った殺人手順の説明が、犯人の計画を理解した翻訳になっていないと思えます。クリスティー文庫版をちょっと確認したところ、わかりやすく訳してくれていました。しかしそれでも、犯人の計画は砒素混入の後事態がどうなるか運任せでしかありません。
なお、作中で言及される「リトル・パドックス事件」は『予告殺人』のことです。

No.12 7点 mediocrity
(2022/04/18 17:56登録)
冒頭の殺人目撃から、最初の死体発見までは、非常にドラマティックです。
中盤、兄弟に尋問が繰り返されるあたりは若干退屈になりますが、このまま最後までグダグダ行ってしまうのではないかと危惧している所に突然第二の殺人。話に再び活気が戻ってきます。
犯人は意外な人物で動機もそんなのあり?と最初は思いましたが、確かにあれが一番整合性が取れているわけで、納得せざるをえませんでした。
絶対的な物証やロジックがないからあの芝居を打ったわけで、そのあたりは問題ないのではないかと考えました。

No.11 4点 レッドキング
(2020/07/26 18:29登録)
並行して走る列車越しの窓から、偶然に目撃した車内殺人。トラベル時刻表もの?と思わせておいて、安楽椅子老女探偵とスーパー家政婦探偵が活躍する一族連続殺人の屋敷ものへ転じて、意外な真犯人のフーダニットが見事に決着。
※あの魅力的なスーパー家政婦、どっちの男に決めたんだろな。

No.10 5点 ALFA
(2017/03/28 17:53登録)
タイトルからして列車モノかと思いきや、実は館モノ。
オープニングからいきなり事件発生でテンポよく展開する。
ルーシーの活躍も楽しく読めたのだが、最後の解決がミス・マープルが仕掛ける逆トリックだけというのが弱い。

No.9 6点 nukkam
(2016/09/21 09:44登録)
(ネタバレなしです) 1957年発表のミス・マープルシリーズ第7作の本書はトラベル・ミステリー風にスタートしますがそれはほんの最初だけ、実質的には田舎屋敷を舞台にした本格派推理小説です。ややゆったりした感じで展開しますが中盤からはサスペンスが盛り上がり、最後に列車の目撃談が解決に活きてくるという着地もはまっています。もっとも犯人指摘の場面で狙った効果が空振りしていたらどうするつもりだったんでしょうね?推理説明が論理的でなく、第一の殺人の動機が後づけ説明ではありますがなかなか楽しめました。

No.8 5点 青い車
(2016/02/15 22:52登録)
最後、伏線らしい伏線もなく急転直下犯人が判明するという構成上の問題が本格ファンからの支持を得られない原因でしょう。単純に読み物としてみれば、死体の出所から屋敷に疑いを向ける展開や、ミス・マープルの代わりに活躍するアイルズバロウ女史の冒険はちゃんと面白く、傑作の素質は十分あります。もっと推理のとっかかりがあったなら評価も違ったのでは。

No.7 5点 蟷螂の斧
(2016/01/29 18:59登録)
2015年、世界中が投票したアガサ・クリスティー作品・ベスト10の第7位です。世界的な評価~本作の良さが良くわかりませんでした。日本人はどうしても本格ものを求めるので、本サイトのように低評価となってしまうのでしょう。同じプロットならば、他にもっと良い作品はありますし・・・。主人公のルーシー(家政婦)の活躍は理解できますが、ベスト10に入るのかな?というのが率直な感想でした(苦笑)。

No.6 4点 クリスティ再読
(2015/12/07 23:04登録)
クリスティって変なコを描かせたら共感が筆を冴えさせるのか、すごくイキイキ描く作家なんだが、本作のルーシーみたいな有能でアタマも切れて行動力もさすが...なデキる女を描かせると、どうも書いてて恥ずかしくなってしまうのだろうか、あまり美味しい目にあうことがないんだよね。「ポケットにライ麦を」のミス・ダブとか「終りなき夜に生れつく」のグレタとか、「予告殺人」のレティシアとか、大概ロクな目にあってない印象がある。
本作だとルーシーはマープルの協力者として活躍するんだけど、その活躍&小説の盛り上りMAXなのが、序盤の終りの死体発見で、それからはタダの家政婦に成り下がり、話も低調なまま終わってしまう。序盤こそ「鉄道ミステリ?」って感じだが、すぐにクリスティ流の家モノ(しかもパロディっぽい)になるわけで、話の構成が途中で諸般の事情で...とかあるんじゃないかとカングりたくなるくらいに、おかしな方向に流れていってしまい、それからまったく立ち直れない。クリスティ、ルーシーがどうしても好きになれなかったのかなぁ。
あ、ミステリとしてはトリックも特になく、犯人特定はロジックもへったくれもない。それでもルーシー、評者は結構萌えなのでプラス1点。

No.5 4点 了然和尚
(2015/09/06 19:42登録)
このサイトでも評判が悪いですね。私もイマイチだと思います。
しかし、骨格だけを見直してみると7点ものの本格作品なのですが、どこで失敗したんでしょうかね。
8ページ目に早々と殺人が目撃されますが(最早記録ってあるんでしょうか?)、並行して走る列車の窓からの偶然の目撃は、テレビドラマで演出されていたように、ちょっとコミカルな感じで、最高の入り方でした。
次は、探偵助手役に非常に魅力的なキャラが出てきます。こっちは本作のみらしいですが、1作のみでおしいサブキャラ1位は確実なのでは。
そして、いよいよ身元不明の死体と大家族、遺産相続、天一坊と黄金パターンです。
結末は、死体の身元とそれまで語られた容疑者がすべて燻製ニシンー>消極的消去法でこいつが犯人 みたいに読めるのが意外な犯人であっても、本作の流れにはマッチしなかったようです。

No.4 4点 ボナンザ
(2015/03/31 10:50登録)
話はともかくミステリとしては微妙。
伏線とか何もなかったように思う。

No.3 3点 あびびび
(2013/09/26 15:59登録)
クリスティーは大好きで、どの作品も思い入れがある。しかし、これは駄作だった。

舞台設定は最高だし、財産をめぐる家庭環境も十分整っており、さてどんでん返しは…と期待したが、犯人が意外すぎた。意外というより、何人も殺す動機はなく、結果的にはただの狂人にしか見えない。

ミス・マーブルもいつもの切れ味はなかった。

No.2 4点 江守森江
(2010/01/01 04:54登録)
先の方も書いているがタイトルからは列車物のアリバイ崩し作品を連想する。
列車で事件を目撃し、時刻表から列車の通過場所を特定するのでタイトル通りな作品ではある。
しかし、後半の屋敷物に変化してからは、ミス・マープルと少年探偵団的な趣以外は読み所がない凡作だった。
小説はポアロ物に比べマープル物は今一つな印象だが、映像でのヒクソンはスーシェに勝るとも劣らないので(AXNミステリーで)ドラマを観る事を勧める。

No.1 4点 ElderMizuho
(2008/02/07 21:08登録)
タイトルだけ見ると列車モノの事件っぽいが実はぜんぜん違う。
読み物としてもイマイチ。犯人はえ?誰それ状態でミステリとしてもイマイチ。
残念ながら何が売りなのか良くわからない作品でした。

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