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ミステリの祭典

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貴族探偵対女探偵
貴族探偵シリーズ

作家 麻耶雄嵩
出版日2013年10月
平均点6.05点
書評数20人

No.20 6点 虫暮部
(2022/06/04 13:47登録)
 ネタバレするけれども、「白きを見れば」 の殺人のきっかけになった行動は何故その状況で行われたのか? 容疑者は限定されるし、動機は周囲に知られている。
 それに “伝承に倣って死体を井戸に投げ込もうとした” のは何故? ロジカルに位置付け出来ていない。単にノリでやろうとしたとしか思えず、ちょっと説明不足だ。

揚げ足取り:「幣もとりあへず」の女将。“足音には敏感で、誰かが枕許まで来れば直ぐに気づく”。しかしコレは、気付かなかった場合、気付かなかったことを自覚出来ないから、証言を真に受けてはいけない。

 玉村依子。真面目にポリアモリーに邁進する御嬢様。いいなぁこのキャラクター。

No.19 6点 mediocrity
(2021/10/14 04:03登録)
<ネタバレあり>

『白きを見れば』5点
どうも貴族探偵側の推理はしっくりこない物が多い。一本取れずポイントで上回ってなんとか勝ったという感じ。殊にシャッターの指の跡に関しては、左手の人差し指のけがで云々という女探偵側の推理の方が遥かにまともだと思う。傘なんて頭を傾けて首と肩の間に挟むとかどうにでもなるでしょう。

『色に出でにけり』3点
これも納得の行く推理には程遠い。貴族探偵が犯人でないという条件下で真犯人を強引に作った感じ。特に占いの件は無理やり感がすごい。名前の字が兄と母の名前の組み合わせだから2人の子供って・・・。話自体は面白かったので余計に失望感が強い。

『むべ山風を』8点
無駄がないし、何より妙な論理展開がない。名作だと思う。

『幣もとりあへず』6点
これ、ほとんど同じ仕掛けを他作品で使ってましたよね。でも、今回の方がきれいに決まってると思う。それにしても女探偵が気の毒すぎる。推理小説を読んでいて「なつき」とか「ゆうき」とか「〇美」とかいう名前が出てきたら身構えますけど、現実にこんなレアパターンに当たることなんてまずないでしょうから。

『なほあまりある』7点
女探偵よくがんばった!見事な推理でした。最後は、女探偵には不本意かもしれないけれど、きれいに収まりました。貴族探偵、やはり何もしてないのね。

No.18 6点 じきる
(2021/04/02 06:00登録)
ロジックは中々に楽しめたが、ややインパクトに欠ける節はある。

No.17 5点 パメル
(2020/09/27 09:09登録)
自分では推理をせず、他人に任せながら「私の使用人だから自分の推理だ」と主張する貴族探偵と高名な探偵を師に持つ駆け出しの女探偵、高徳愛香が対決する5編からなる短編集。
女探偵が行く先々に貴族探偵が現れ、事件が起き、毎回お決まりのパターンで展開し着地するという点は好みが分かれるでしょう。最終話のオチは良かったですが。
事件の構図やトリックはオーソドックスで、トリックよりロジックといった人向けという印象。ロジックは良く出来ている。「むべ山風を」は一部の推理に強引さを感じるが...。
余談ですが、女探偵の高徳愛香の名前が四国四県の「高知・徳島・愛媛・香川」からとっているように思うのだが、何か意味があるのだろうか?

No.16 6点 zuso
(2020/06/18 20:05登録)
多重解決パターンを踏襲しながら、二人の立場と役割のギャップを際立たせる趣向が心憎い。

No.15 7点 レッドキング
(2019/12/31 14:51登録)
健気で努力家の女探偵ヒロインと彼女をダミーに乗り越える貴族探偵(実際には彼の使用人達)のロジック対決。
・「白きを見れば」 諸事象から犯人を指摘するロジックとその瑕疵を訂正するロジックの応酬。(亀井=仮名!)
・「色に出にけり」 アリバイから犯人を指摘するロジックと「より確からしい」訂正ロジックの応酬。
・「むべ山風を」  手掛かりとニセ手掛かりの眩暈のするような錯綜。クイーン「シャム双生児」思い出す。
・「幣もとりあえず」 作中人物を騙しながら読者には真相を告げる「こうもり」同様の捻った叙述トリック。
・「なほあまりある」 証人口封じのための殺人が、他の証人を欺くための偽装を呼び、その偽装が更にもう一つの口封じ殺人を呼び寄せてしまう。
「貴族探偵」では非人間的なまでに超人的だった貴族探偵及び使用人探偵達に、やや人間的な顔が窺えて、最終話では「ん?女探偵やったね!」と思わせといて絶妙なオチ。全体で7点。

No.14 5点 ボナンザ
(2019/11/06 21:50登録)
多重解決という点にこだわったせいかややインパクトに欠けるものもあるが、某作での叙述は結構強烈。
愛香の師匠ってksrzかと思ってたけどドラマだと違うらしいですね。

No.13 8点 りゅうぐうのつかい
(2017/06/25 18:20登録)
前作『貴族探偵』から、新たにライバル役として、女探偵が登場。と言っても、貴族探偵こと御前様は女探偵のことを何とも思っていないご様子だが。
調査も推理も使用人任せでひたすら愛に生きる貴族探偵が、女探偵を小馬鹿にしてからかうさま、気障で嫌味な物言い、神出鬼没な登場の仕方が見所になっている。
ミステリ―としては、前作の方が真相に意外性のあるものが多く、本短編集は論理的推理を前面に打ち出して、真相自体は地味なものが多い。探偵が示すロジックの過程を追って考えるのが面倒、という人には面白くないだろう。
女探偵のダミー推理の方も楽しめる。

「白きを見れば」
"鬼隠しの井戸"のあるガスコン荘で起こった殺人事件。
梁に残った凶器の跡(犯人の身長)、スリッパで踏みつけられた血の跡、停電の時刻のアリバイ、紗知のボタンを入手できた人物、シャッターを片手で持ち上げた理由などからの消去法による犯人特定の推理。執事山本の推理は逆転の発想によるものだが、○○が自分のスリッパを履いていた理由が説得力に乏しい。

「色に出でにけり」
三人の恋人を家族に会わせるために別荘に招待した"女王様"依子。その内のひとりが自殺を装って、殺害される。
タオルが違う色に入れ替わった謎、臭いと氷の解け具合から推定された犯行時刻、手帳が盗まれた謎。
手帳が盗まれた謎は面白い真相ではあるが、ある方面の専門知識がないと推理できない。
使用人として、料理人の高橋が初登場。

「むべ山風を」
大学の研究室で起こった殺人事件。
シンクに残されていたティーカップの色、ゴミの分別を知らなかったことから熊本組と推定されること、死体発見時の被害者の位置と上座・下座の関係などから紡ぎだされるロジック。矛盾を解決する逆転の発想はなかなかのもの。

「幣もとりあへず」
"いづなさま"に願い事を頼むために、旅館に集まった6人と、その付き添いの貴族探偵と女探偵。6人の内のひとりはネットで話題になった人物。ひとりが浴場で殺される。
女探偵の説明を読んでいると、ある箇所で「あれ?」と混乱。よく考えてみると、「作者は地の文の中で嘘を書いてはいけない」というルールが守られたためであることがわかった。実際に、前に戻って確認してみると、ちゃんとルールが守られていた。書物で読むよりも、ドラマで見た方がわかりやすい作品の一例。

「なほあまりある」
ウミガメの産卵を見学するために、無人島の別荘に集まった人たち。女探偵は謎の人物に招待される。そこには貴族探偵の姿も。連続殺人が発生するが、使用人不在の中で、いよいよ貴族探偵自らが推理を披露するのだろうか?
テラスから部屋まで続く濡れた痕跡、バラの花を動かした理由、別荘の管理人が殺された理由などから、女探偵が推理を展開するが……。
ラストのオチが何とも痛烈。

現在、この作品と「貴族探偵」を原作として、ドラマが放映されている。ドラマでは原作にはない、女探偵の師匠である喜多見切子が登場して謎の死を遂げるとともに、「政宗是正=公安絡み、シンガポールを拠点に黒い活動をしている人物」と秘書鈴木が登場し、その正体がドラマ全編を通しての大きな謎になっている。
ドラマ「貴族探偵」が明日最終回なので、ドラマ独自の謎について、予想してみよう。

このドラマは、番組のエンディングで断っているように、一種のファンタジー。
仲間由紀恵さん扮する秘書鈴木の正体は、ドラマ「貴族探偵」の脚本家。
その脚本家のペンネームが「政宗是正」。
ドラマの脚本家自身がドラマの中に登場しているという、現実とドラマの世界とが混然となったファンタジー。
ドラマの脚本家である政宗是正は、ドラマの中では御前様の秘書鈴木であり、御前様の指示に従う忠実なしもべ。

ドラマの中の登場人物で、この世界がドラマという架空の世界であることを知っているのは、御前様と秘書鈴木のみであり、ドラマをスムーズに進行させるうえで他の登場人物にはそのことを知らせてはいけないと肝に銘じている。
ところが、喜多見切子はこの世界がドラマという架空の世界であることに気づき、御前様に「政宗是正という名前をご存知でしょう?」と探りを入れる。
御前様は喜多見切子が気づいたことを知って、脚本家でもある秘書鈴木に「殺せ」と命令、つまり、ドラマの脚本の中で「死亡したことにしろ」と命令した。
御前様が高徳愛香に「私のことを調べるのは命がけになる」と言ったのは、この世界がドラマという架空の世界であることに気づいたら、脚本家に脚本の中で殺されるということをほのめかしたもの。

御前様は、秘書鈴木からドラマの進行や真相をすべて聞いている。
だから、ドラマの中で、さも最初から真相を知っているような思わせぶりな行動ができるのである。

ある意味、登場人物全員が御前様の使用人、御前様は監督と言えるかもしれない。

鈴木という名前は、原作者の「神様ゲーム」で自らを神と称している子供。ドラマで神に当たる存在は、登場人物や筋書きをすべて決める脚本家。つまり、鈴木=神=ドラマの脚本家という図式になっている。

・「公安絡み、シンガポールを拠点に黒い活動をしている人物」の意味
「公安」ではなく、「考案」、つまり、ドラマの考案のこと。
「シンガポール」は「芯がポール」=「芯が棒状のもの」、つまり、鉛筆のこと。
「黒い活動」は、鉛筆を使った黒い文字による執筆活動。
以上をまとめると、「公安絡み、シンガポールを拠点に黒い活動をしている人物」は、「ドラマの考案絡み、鉛筆をよりどころに執筆活動をしている人物」、つまり、ドラマの脚本家(かなり苦しい解釈だが)。

結果は違っているだろうけど、この予想でもそれほど違和感がないのでは?

No.12 5点 haruka
(2017/02/19 23:14登録)
やっぱりこの作者とは相性悪いです。

No.11 6点 名探偵ジャパン
(2016/10/05 12:20登録)
あの「貴族探偵」にライバル登場? と思いきや、さにあらず。
もっとも、ラノベの主人公よろしく完全無欠、女性にモテモテで向かうところ敵なしの貴族探偵相手に、対等なライバルなど存在が許されるはずもなく、新登場の「女探偵」は徹頭徹尾貴族探偵の後塵を拝する目に遭わされます。設定では、他にはまともに難事件を解決している実績があるようですが、「本当か?」と疑ってかかりたくなるみじめさ。

いいちこさんの書評に書かれているとおり、「まず、女探偵が必ず貴族探偵を犯人に名指しする」というお約束があるため、(それを成立させるために作者は大変な苦労をしているとは分かるのですが)トリックや推理が極めて人工的な、推理パズルのような様相を呈しているのは仕方がないのですが、ちょっと残念です。

一編上げるなら、やはり「幣もとりあへず」ですね。変化球(麻耶にとってはこれが直球?)で攻めるこの作品。うん、確かにどこにも嘘は書いてない……

それにしてもこの「貴族探偵」シリーズ化されているということは、人気があるのでしょう。単に麻耶ミステリとしての需要なのか、それとも、「貴族探偵」自体にファンが付いているのか。貴族探偵というキャラクターを好きになるのって、どういうファン層なんでしょう? やっぱり女性に人気があるのかなぁ?

No.10 6点 メルカトル
(2016/09/28 22:42登録)
亡き師匠の教えを忠実に守り、真面目に事件の謎に取り組む女探偵と、相変わらずふざけた貴族探偵の対決。こうなるとやはり、女探偵に味方したくなるのが人情というもの。むしろ心の中では貴族探偵が失脚すればいいのにと思っていたりして。
しかし、貴族探偵は簡単には馬脚を現さない。その辺りが憎いところではあるのだが。
各短編はストーリーやトリックは意外と単純なのだが、それぞれ捻りが効いており、また趣の違うタイプの作品なので飽きが来ない。
最終話は使用人が登場できないので、どうなるのかと思ったが、なるほどそういう手があったかという、いかにも作者らしい作品である。思ったより気軽に楽しめる連作短編集といった印象。

No.9 6点 E-BANKER
(2016/09/27 21:53登録)
「あなたが推理するのではないのですか?」「まさか。どうして私がそんな面倒なことを?」
・・・でお馴染み(!?)の貴族探偵シリーズの作品集第二弾。
今回も使用人たちが大活躍・・・するのか?

①「白きを見れば」=探偵役は執事の山本が務める。完全なCC内で発生する殺人事件。後の作品に比べれば実にオーソドックスな一編と言える。ロジックをこね回しているとも言えるが・・・
②「色に出てにけり」=探偵役は料理人の高橋が務める。金持ちの別荘で起こる殺人事件。真顔で三股をかけるお嬢様など、相変わらずブッ飛んだキャラクターが登場。真相は割と分かりやすいと思うが・・・
③「むべ山風を」=探偵役はメイドの田中が務める。大学の研究室が舞台。アリバイと上座が犯人特定の鍵となるのだが、ティーカップのロジックは分かりにくい。
④「幣もとりあへず」=新潟県の山奥。座敷わらしを模した“いづな様”が出ると噂の旅館が事件の舞台。そして探偵役は運転手の佐藤が務める。これもアリバイとある仕掛けが犯人特定の鍵となるのだが、確かに真相には一瞬アッと思わされる。「そう来たか!」って。
⑤「なほあまりある」=愛媛県と高知県の県境の海上に浮かぶ小島・亀来島が舞台。登場人物が揃う一夜にして発生した連続殺人事件。これも怪しげな手掛かりが満載なのだが・・・。そして今回の探偵役はなんと・・・! そう来たか!

以上5編。
いやいやこれは実に企みに満ちた連作短篇集だ。
前作は「貴族探偵」という突飛な存在こそあるものの、ミステリーの骨組みそのものは正統派っていう気がしたが、本作は骨組みも何だか捻じ曲がっているように思えた。

でもこれは確信犯!
「遊び」と「本気」の境界線で読者を煙に巻く作者の腕前はさすがの一言だ。
あくまで前座でしかない高徳愛香ってなに? という気はするけど、そこはご愛嬌ってヤツだろう。
ロジックそのものは“ロジックのためのロジック”なのがちょっとキツイけど、まぁそこは作者の遊び心に付き合ってやろう・・・って感じ。
ということで、「負けるな高徳愛香」。以上!

No.8 8点 青い車
(2016/06/12 15:02登録)
 以下、各話の感想です。
①『白きを見れば』 愛香のダミー推理から、それを崩した上で貴族探偵の使用人たちが正しい推理をする、この連作の基本的な流れを示したストレートなフーダニット。コートのボタン、停電、シャッターに付いた埃などの手がかりからなるシンプルな推理はなかなかの出来です。
②『色に出でにけり』 キーアイテムである手帳によって犯人を暗示しているのがよくできています。アリバイトリックを解く手際の鮮やかさも良く、①と同様に佳作だと思います。
③『むべ山風を』 シンクのティーカップ、断水、ゴミの分別、上座と下座といったミステリーではあまり見慣れないものを消去法推理の材料にしているのが実にユニークです。極限まで物語が削ぎ落とされ、容疑者の大半が直接出てこないので好みは分かれそうです。
④『幣もとりあへず』 登場人物と作者からの二重のトリックが絡むことで、ほぼ100パーセントの読者が騙されるであろう、もっとも作者のクセの強さが表れた作品になっています。難点は、愛香の推理が面白みに欠け、多重解決の醍醐味が薄いところです。
⑤『なほあまりある』 ①から④すべてが伏線として機能しているという収束性はまさに圧巻。オチも決まっています。

 前作では徹頭徹尾イヤミな奴だった貴族探偵にも、読んでいくうちに愛着が出てきました。愛香がどこにいっても必ず登場するところは完全に漫画的な展開ですが、そこも作者らしい所。このシリーズがこれからどのように終結するのか注目していきたいです。

No.7 6点 風桜青紫
(2015/12/29 12:05登録)
麻耶雄嵩のこれまでの水準からいえばやや弱いのは確かなんだが、犯人当てパズラーものとしてはどれも悪くない出来です。愛香のダミー推理も毎度そこそこいい感じなので、それがどう崩されるか、というところも楽しませてもらいました。といっても一番面白く感じたのは『弊もとりあえず』だから、麻耶雄嵩の本領はやはりこっち系かなという感じ。しかし今回は御前もイキイキ動いていてそこまで鼻につかないし、愛香も健気で可愛らしいし、依子さんみたい脇役もなんかいい味出してるので、まあ、読む分には前作より面白かったです。しかし『なほあまりある』はしっかり締めてくれて、妙にホッとしました。「貴族なんていなければよかったのに。私はすべてを忘れたかった」みたいな展開にならなくて。

No.6 5点 いいちこ
(2015/06/25 16:22登録)
本作は着想の時点で失敗だろう。
探偵同士の推理合戦が見所であるため、パズラーであるにもかかわらず、ダミー(女探偵)の推理には穴を空けておかざるを得ない。
そのうえ、女探偵に「必ず貴族探偵を犯人に指名する」という厳しいハードルを課しているため、その推理に不自然や無理が強く発生。
結果、各作品とも著者の実力を大きく下回る水準となっている。
その中で、「幣もとりあへず」は著者らしさを発揮した問題作で、インパクトは大きいのだが、ロジカルに真相に辿り着けない致命的な弱点が存在するように思われる。
短編集の締めくくりも美しい着地ではあるものの、予定調和的でインパクトには乏しい。
以上、作品のクオリティは4点相当だが、著者の個性とチャレンジ・スピリットを評価して1点加点

No.5 6点 HORNET
(2014/12/20 15:07登録)
新米女探偵・高徳愛香が、行く先々で事件に出くわし、さらにまた貴族探偵にもそのたびに出くわし、推理合戦にことごとく敗れるというユーモア?本格?ミステリの連作。
 使用人にすべてを推理させ、肝心の探偵本人は何もしないという歯がゆさや、しかし主人公の女探偵がそれに毎度敗れるというもどかしさが味となり、ユーモアも交えたテンポの良い展開に乗せられて楽々読み進められる。そうした軽めの雰囲気でありながらミステリ度は大切にされていて、その点でもきちんと楽しめる内容。
 同じような展開で各編が進められていったうえで、ラストの話だけ一味自我う見事な着地。考えられた編構成にも楽しませてもらった。

No.4 6点 kanamori
(2013/11/23 18:38登録)
推理と真相の開陳を使用人に任せ、自分は女性と楽しむという貴族探偵シリーズの2作目。今回から登場の女探偵が事件を推理し、貴族探偵(の使用人たち)がそれをひっくり返すという二段構えのプロットが連作の基本的パターンです。

第1話から第3話までは、消去法によって犯人を特定するロジックで読ませるオーソドックスな内容で特筆するような出来ではないように思うが、第4話が作者らしい仕掛けに満ちた”二度読み”必至の怪作。
二つのトリックを併せることで、虚偽の(アンフェアな)描写を回避するという狙いもあるのだろうか。
これまでのパターンを外さざるを得ないと思えた、貴族探偵の使用人が一人もいない孤島での殺人を扱った最終話の皮肉なオチも面白い。女探偵がちょっとかわいそうな感がありますが。

No.3 5点 まさむね
(2013/11/19 21:32登録)
 タイトルから貴族探偵にライバル登場かと思いきや,女探偵は貴族探偵(の使用人たち)の完全な当て馬。ちょっと可哀相だけど,今後も使えそうなキャラではありますね。
 女探偵の推理の穴を突く辺りも楽しめるし,ロジックもしっかりしているのですが,全体として小粒な印象は否めないかな。

No.2 4点 mozart
(2013/11/06 11:11登録)
タイトルだけ見ると、貴族探偵と女探偵がタイマンを張るように思えますが、最後の一作を除いて、女探偵の「惜しい(あるいはイタイ)」推理を貴族探偵の使用人が「補正」して解決する、という、ある意味予想通りの展開です。ミステリーのロジックとしてはやや小粒で、ちょっと期待外れかな。ただ、最終話の展開はちょっとアレでしたw

No.1 9点 黒い夢
(2013/10/31 07:46登録)
常識破りな「貴族探偵」が事件を解決していく短編集の第2弾です。今回は題名の通り、女性の探偵が出てきて各話で推理合戦を繰り広げます。それによって発見した手がかりについての取捨選択や読み取り方などに深みがでて、とてもおもしろかったです。また最後のオチもうまくきまっていてよかったです。

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