ナイルに死す ポアロ、レイス大佐 |
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作家 | アガサ・クリスティー |
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出版日 | 1957年01月 |
平均点 | 7.90点 |
書評数 | 41人 |
No.41 | 9点 | mediocrity | |
(2021/11/28 01:19登録) クリスティの長編を読むのはこれで5作目だと思いますが、今作はボリューム満点で非常に読みがいのある作品でした。 今までの4作と決定的に違うのは、ストーリーがどう展開するのかが全く予想できなかったことでしょうか。ゆえに長くても退屈することが全くありませんでした。 計画通りの犯行と、即興的な犯行の合わせ技が絶妙で、それが話に広がりと複雑さを持たせている名作だと思います。 |
No.40 | 8点 | 虫暮部 | |
(2020/10/30 17:13登録) 犯人がこういうポジションで、自分の疑われ易さを踏まえた上で、非常に能動的に騙しに来る、と言った感じの似た印象の作品は過去作に幾つかあって、“また?”との思いが否めなかった。中近東が舞台だからどう、ってことは特に無かった。とは言え良く出来ていて、代表作という評価に異議は無い。 作家のオッターボーン夫人がイチ推しキャラ。“血文字のJ”は、犯行に於いて全く必然性が無いし、犯人の稚気を表すにも中途半端だし、不要だったのでは。 |
No.39 | 10点 | ◇・・ | |
(2020/03/22 20:29登録) ナイル河というスケールの大きな背景のもと、ドラマチックな人間関係が描かれる。予告殺人に、容疑者の完璧なアリバイ。殺人事件が起きるまでにかなりの頁が割かれ、そこにすべての伏線が張られている。 クリスティー初期作品はトリック重視のものが多かったが、この作品の頃から、人間ドラマに重点を置く作風になる。とはいえ、本作のアリバイトリックは見事だ。 読者自身が、容疑者のアリバイを最も知っている仕組みなので、よほど丁寧に読んでいないと、見破ることは難しいでしょう。 |
No.38 | 8点 | tider-tiger | |
(2019/12/08 21:21登録) 1937年英国。ミステリとしてもドラマとしても面白い作品です。 好き嫌いならば、バードさんと同じく有名作である『アクロイド』『そして誰も』『オリエント急行』よりも本作の方が好きです。 ただ、ミステリとしては名作とまでは思えません。インパクトや斬新さでは上記三作に劣ると思います。ドラマ部分との合わせ技で名作足り得る作品になったと考えております。 けっこう早いうちに全体の構図は見えてしまいましたが、それでも充分に楽しめました。本作はミステリをそれほど読み込んでいない人の方が真相に気付きやすいかもしれません。 ドラマとミステリのバランスがよいという御意見が散見されますが、同感です。序盤に大胆な省略がなされておりますが、バランスという意味でもミステリ的にも賢明な切り方だったと思われます。 登場人物がけっこう多くて煩雑になりそうですが、適当な匙加減で書き分けているのはさすがです。さらにそれぞれの人物にそれぞれの結末をきちんと用意してあるところなども目配り効いているなあと感心します。 なんというか、ラストの一文には薄ら寒さを感じます。意地が悪いなあと思うのは穿ちすぎ? クリスティの(ミステリとしての)傑作ではありませんが、クリスティの代表作だと思います。代表作を選ぶには未読があまりにも多いのではありますが、現時点でのということでご容赦ください。 miniさんが以前にいくつかの御書評の中で名作と代表作をきちんと区別すべきだと提言されていらっしゃいました。代表作を『その作家の特徴をよく示す作品』だとする考え方には私も賛成です。『代表』という言葉をいかように定義するかによって答えが変わってくるとは思いますが、個人的には『傑作、名作(優秀な作品)』『代表作(その作家の特徴をよく表している作品)』『有名作(一般認知度が高い)』という分け方をしております。 ちなみに『好きな作品』が『名作』どころか、ちっとも優秀ではないことが私の場合は往々にしてあります。 |
No.37 | 10点 | バード | |
(2019/07/31 21:00登録) 傑作でした。久しぶりに満点です。(パチパチパチ) クリスティの有名作を3つ挙げろ、と言われたら「アクロイド」、「そして誰もいなくなった」、「オリエント急行」かと思うが、私個人の好みでは本作品はこれらを上回った。 本作の良さは、"バランス"と思う。本筋を覆い隠すために、無関係な小噺も多くなりがちなミステリでは、謎を深くしようとし、読み物としてチグハグになることが多々ある。しかし、本書はミステリの命である謎の出来と小説としての話の展開、この両方がハイレベル。つまり謎を魅力的にしつつ、ストーリーを読ませる最適なバランスなのである。 メインの仕掛けは、見破れなかった。(おしい所まではいったが、サイモンがジャッキーを庇ってるパターンかと思ったぜ。)枝葉の謎(レイスが追う男やティムの役割など)は完璧に分かったんだがね。共犯ものは基本的に嫌いだが、本作品はその苦手を跳ね返す良さでした。 最後にストーリーについて。無駄なキャラにさくページはほぼなく、読みやすい上に、各キャラの立ち具合、エジプトの雰囲気などを非常に楽しめた。 |
No.36 | 5点 | レッドキング | |
(2019/07/14 10:16登録) この原作小説よりも、映画「ナイル殺人事件」の方が面白い。 「人間関係トリック」によるアリバイトリックは見事。だがこれのヴァリエーションであること明らかな「不連続殺人事件」の方がもっと面白い。 |
No.35 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2018/09/26 05:32登録) 欺き尽くすにあたっての、疑心を唆る前以て感、じわじわデスティニー感、半端ナッスィンヌ。 さてこっから書くことはおそらくネタバレですが、、、、 見え透いたミスディレクションとカラフルな賑やかしを兼ねるように、本筋事件の犯人以外にも悪い奴や困った人がいっぱい掻き回してくれるのが面白い。 そして事件真相外の意外な人間関係やその展開も。それでもドラマに浸り過ぎずあくまで本格流儀の人物設定なり性格描写に抑えているのが良い。いかにもアガサクらしい、良い意味で彼女の典型過ぎる長篇だべっちょ。(ほんとは真犯設定に大きくもう一ひねりあっても良かったよ。。。。。本筋とそれ以外の事件の背景を大胆に繋げたりとかして。実際少しだけ繋げてるとこもあるけど) 代表作ですよね。 |
No.34 | 9点 | ミステリーオタク | |
(2017/07/30 09:53登録) エジプトの旅情ロマンに溢れたゴージャスミステリー。 犯罪の構成や人間性に基づいた推理の妙が素晴らしい。 |
No.33 | 6点 | いいちこ | |
(2017/04/28 17:21登録) 第一の犯行までに、やたら紙幅が割かれ、一見冗長に見えるものの、至るところに伏線とミスディレクションが仕掛けられており、ボリュームは多いものの無駄のない構成。 ただし、作者の作品の常として真相解明プロセスはロジカルではなく、または説明が尽くされておらず、飛躍を感じさせる印象が強い。 トリックも一定の堅牢さを備えているものの、結果として明かされる真相には意外性が乏しい |
No.32 | 10点 | E-BANKER | |
(2017/03/21 21:32登録) クリスティのいわゆる「中近東もの」としては、「メソポタミアの殺人」に続く長編作品となる本作。 映画化でも著名となった作品。 1937年発表。 ~美貌の資産家リネットと若き夫サイモン・ドイルのハネムーンは、ナイル川をさかのぼる豪華客船の船上で暗転した。突然とどろく一発の銃声。サイモンのかつての婚約者が銃を片手にふたりを付けまわしていたのだ。嫉妬に狂っての凶行なのか? だが、事件は意外な展開を見せる! 船に乗り合わせたポワロが暴き出す意外極まる事件の真相とは?~ 意識的に読むのを後回しにしていた本作。 それだけ楽しみにしていたわけなのだが・・・これはもう期待をはるかに上回る出来だ。 これほど完成したミステリーにはなかなかお目にかかれないのではないか? 名作と言われる作者の作品にも数多く接してきたけど、個人的には本作がNO.1。 本格ミステリーと濃密な人間ドラマがこれほど見事に融合した作品も珍しい。 ということで書評終了! でもよいのだが、簡単に雑感を書くなら・・・ まぁ2017年の現在から見れば、フーダニットとしては「割と分かりやすい」。 手練のファンからみれば、いかにも「クリスティらしい」真犯人とはいえる。 ただし、動機といい、犯行方法といい、尋常ではないくらいの伏線とミスディレクションが仕掛けられている前半部分が見事。 まるでナイルの流れのように、ゆっくりとした展開で読者をやきもきさせるのだが、これこそが作者の深謀遠慮なのだからニクイ! 本筋の殺人事件のほかにも、窃盗事件や政治犯、正体を隠した人物など、複数の脇道が用意されている。 並みの作家なら、プロットを混乱させるだけに終わりそうなものだが、クリスティは違う。 最終盤。脇道を含め、絡んだすべての糸がポワロの灰色の脳細胞によって、見事なまでに解きほぐされる刹那! これはもう・・・“極上の料理を味わった”という表現がまさにピッタリ。 これ以上のミステリーを書くというのは至難の業なのではないか? それほどインパクトのある作品だった。最高点以外の評価はありえないだろうな。 (1937年いえば、日本では「盧溝橋事件」が発生し、日中戦争へ突き進んだ時代。そんな時代に英仏はこんな優雅な旅行を楽しんでいたんだねぇ・・・) |
No.31 | 10点 | nukkam | |
(2016/09/25 01:35登録) (ネタバレなしです) 「華麗なるミステリー」と言われたら迷わず1937年発表のポアロシリーズ第15作の本書が頭に浮かびます。クリスティーとしては重量級の作品ですが退屈も混乱もせずに読むことができました。登場人物も多いですが描き分けがきちんと出来ていて多彩な人間ドラマが楽しめます。ロマンチック・サスペンス的な雰囲気もありますが本格派推理小説としてもしっかりと作られた作品でっす。真相についてはちょっとがっかりした部分もあるものの緻密に構成されたプロットとトリックであることは確かです。まさにミステリーの女王の名にふさわしい作品と言っても誇張ではないでしょう。 |
No.30 | 8点 | makomako | |
(2016/04/15 22:36登録) とても面白かった。本作品は大変有名で映画化などもされているのですが、本を読む前に絶対に見ないようにしていたものです。以前「Yの悲劇」や「オリエント急行殺人事件」を映像で見て20年以上たってから本を読んだのですが、忘れっぽい私でも犯人やそのシチュエーションを明らかに覚えていたため(それだけ映画が良かったとも言えますが)、小説を読む興味が半減したことがあったためです。 エジプトは今まで訪れた国の中でも指折りに好きな国で、そこでこのような豪華なお話が組み立てられているというだけでも、たまらない魅力です。 お話も実に綿密に作られていて、殺人事件がなかなか起きないのに、全く飽きさせることなく読ませてしまうのはすごいですね。 以下多少ネタバレです。 ただ今まで読んだクリスティ-の作品で犯人がわかったことがない私ですが、この作品に限っては犯人はこれだとかなり初めからわかりました。ただしトリックが全然わからない。あらゆる本能?がこの人物と示しているのですが、犯行は絶対無理だからなのです。最後まで読んでみれば簡単で納得がいくトリックでした。 なるほどね。参りました。さすがクリスティー。 |
No.29 | 9点 | あびびび | |
(2016/03/21 18:39登録) クリスティー命としては、この作品を8点以下にするわけにはいかない。クリスティーの作風をほとんど詰め込んだ名作だからだ。この作品でしたか?坂口安吾の「不連続殺人事件」の元となったのは…。 少し冗長気味ではあるけど、「検察側の証人」と同じ匂いのする作品だと思う(あくまでも自分自身の思い込みとして)。 |
No.28 | 9点 | クリスティ再読 | |
(2016/03/21 18:10登録) 本作は要するに、「ご好評につき内容5割増し(当社比)」なスペシャル版みたいな作品だ。ただし、ミステリとしての仕掛けは通常なので、5割増しをすべてドラマに振ってるというバランス。ミステリにしか関心のないタイプの読者だったら、長いだけの通常作品だろうな... しかし、クリスティの一番エラい点というのは、ドラマにミステリをうまく埋め込んで生かす技に長けている、ということなので、ドラマに5割増しを全部振っても、それ自体がミスディレクションを兼ねた重厚さとトリックの説得力につながっていて、無駄にはならない。評者なんぞは余裕がある分覗けるクリスティの「ホンネ」みたいなものがすごく面白い。被害者は金持ち・美人・魅力充分・しかも頭も良く実務面でもキレ者...で、ヘンな子大好きなクリスティ自身、書いていて反感を持っているのが伝わる。前半のイヤガラセ描写にサディスティックな快感があったりするんだよね(評者の読み方歪みすぎか?)まあクリスティではキレ者の女性は大体ロクな目にあわないのだが、本作は被害者で、しかも真相に近づいてくるとイヤな女度がかなり高まる。また、親に抑圧される女子×2で、ここらも中期クリスティで繰り返されるパターンだ(しかも一人は最終的にその親から解放され、もう一人は親の鼻をアカすww) でもう少し本作の核心に入ると、犯人の自殺を描いている、という面でも本作はクリスティの中でも実はかなりスペシャルな作品である。それだけ犯人サイドの「愛の悲劇」をミステリの枠を超えて描こうとしているわけだ。そういう犯人とポアロのかかわりから、運命劇として本作を読むことができるかもしれない。そうすると、意外なことに本作と共通点の多い(ほぼ真相が同じだよ...)晩年の評者大好きなアノ名作に繋げるような「読み」というものはあると思うのだ。 というわけで本作は中期の「全部入り」な総決算作品である。何やかんや言ってそういうクリスティの熱みたいなものが伝わるのが一番の良い点。なので、タイプとして似た「白昼の悪魔」(8点)よりもイイ点にしたくなるので9点とする。 |
No.27 | 10点 | 青い車 | |
(2016/01/20 23:04登録) ストーリー運び、読者をミスリードするテクニック、どちらも非常に上質で、かつ「クリスティー的」であると思います。頭から200頁を超えても事件が起きませんが、読み返すとむしろこの小説の真の見どころはこの事件が起きるまでにあるとも分かりました。鮮やかな情景描写や船の上を舞台にした謎解きのムードも素晴らしく、個人的に作者のベストは何かと訊かれたら迷わず本作を挙げます。 |
No.26 | 8点 | ロマン | |
(2015/10/24 23:18登録) 徹頭徹尾読み手を飽きさせないリーダビリティの良さ、シンプルでありながらも細やかな登場人物たちの人物描写、無数の伏線と手掛かりが散りばめられたストーリー展開、納得の動機、アッと驚かされる真犯人と結末、愛あるポアロの名推理、どれを取っても素晴らしいとしか形容できない。ポアロの灰色の脳細胞と洞察力が登場人物たちそれぞれの胸に秘められた欲や愛情を見抜き、真相へと収束していく様は緻密で美しく圧巻。手の込んだトリックの作品も確かに面白いのだが、自分が本当に好きなのはこういったミステリなのだと改めて実感できた傑作。 |
No.25 | 7点 | ボナンザ | |
(2014/04/08 17:42登録) もしやと思ったが本当にそうだったとは・・・。 代表作の中では地味だが、決して他の作品に見劣りはしない。 |
No.24 | 6点 | isurrender | |
(2014/01/21 19:29登録) クリスティらしい心理トリックだが比較的わかりやすい。 古典ミステリらしさではあるが、1件目以外の殺人は蛇足。 旅行物だけあってのんびりとした空間を味わうには満足の一冊。 |
No.23 | 7点 | TON2 | |
(2013/02/12 18:10登録) ハヤカワミステリ文庫 意外な犯人とよく考えられたトリックでなかなか面白かったです。 映画も、ナイル川を船で遡上しながら観光名所を巡り、よくできていました。 |
No.22 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2012/09/11 15:23登録) この物語の展開であれば、○○が犯人であろうと予想しながら読みましたが、最後までトリックは見破ることはできませんでした。長編ではありますが、登場人物はそれぞれ個性があり、飽きずに楽しく読むことができました。海外ものは、姓で呼んだり名で呼んだりするので、名前が覚えきれないのが難点です。 |