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ミステリの祭典

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硝子の塔の殺人

作家 知念実希人
出版日2021年07月
平均点7.94点
書評数31人

No.31 9点 たかだい
(2024/11/21 06:35登録)
個人的に好きな作家の一人である知念実希人作品という事で、発売当初から期待しつつ最近(と言っても2〜3ヶ月前だが)ようやく読む機会が持てたので、早速、一気読みした
そんな者の感想としては、率直に言って今まで読んだ知念実希人の作品の中で一番好きかも知れない
元々殺人を企てた者が余計な罪まで着せられる事を恐れ、いわゆるワトソン役を自ら買って出て探偵に真相を推理させようとする
この構図が結構珍しくて好きな一方、塔の性質を利用した大小様々な仕掛けが散りばめられていてトリックの観点からも不満は無かった
真の真相とでも言うべき最後のどんでん返しも鮮やかに決まっていたと思うし、やはり知念実希人の作品中、最も面白い(現時点での)最高傑作は本作だと個人的には思います
小ネタとして、著者の他シリーズの人物に軽く触れられている箇所があり、他にもネタを知っているとニヤニヤできるような遊び心があるのも魅力の一つかなと思いました

No.30 7点 虫暮部
(2024/09/05 12:02登録)
 硝子の塔の図版を見て私は思った。中心の階段室を軸にして部屋が上下するに違いないと。部屋を全て下側に集めると、10Fが4Fの高さに来るわけだ(11Fの展望室は動かず)。
 だってエレヴェーター無しの10Fに70代が住んでいるなんて無茶じゃないか。

 書かれていないロジックに気付いた。
 二日目初頭のディスカッションで、神津島殺しについて。
 毒殺なら必ずしも犯人が現場で立ち会う必要は無いが、名探偵は言う。“犯人は犯行当時、壱の部屋にいたのではないかと思っています”。
 その根拠として “毒を前もって仕込むという方法では、殺害するタイミングを決められない。犯人は午後十時以前に殺したかったから、毒を手渡しうまく言いくるめて飲ませた、と考えられる” のように説明されているが、こうも考えられる。
 ――被害者は、ダイイング・メッセージを残す程に “これは毒殺だ” と確信していた。でも普通なら “何か悪いものでも食べたか?” ではないか。また、被害者は心筋梗塞を経験しているので、純粋な体調不良(って変な言い方だが)で苦しくなるケースも認識していた筈。にもかかわらず毒殺を確信したのは、犯人がその場にいてその口から聞かされたから、と言う可能性が高い。

 あのシリーズの新刊が出たら、ネタが一つ潰れちゃうね。
 マーガレット・ミラーは鏡じゃないぞ。

No.29 7点 hsiyehmeipo
(2024/04/14 23:09登録)
硝子の塔という建物の特性をうまく使ったトリックで、話の構成も建物の特性をうまく利用していて面白かった。
いろんな要素がてんこもりなのもいい。

オマージュがすごいとの事だったが、私の様なミステリ初心者でもわかるようなものばかりで、あまりすごみは感じなかった。

No.28 9点
(2023/08/19 15:49登録)
私のようなライトなミステリーファンには満足できる作品です。
続編を期待します。

No.27 8点 人並由真
(2023/07/24 05:23登録)
(ネタバレなし)
 ようやっと読んだ。

 反則技そのものはほとんどないが、反則技スレスレのような大技中技小技は怒涛のごとくとびだしてくる、そんなピーキィな内容の一冊であった。
 雑と言えば雑、大味といえば大味な部分も少なくないが、一方で非常に攻勢のエンターテインメントになっており、なるほどこの作者らしい。
(一番ウケたのは、犯人のパッショナブルな動機で、誰も見ていないところで拍手喝采してやりたい・笑。)

 あと、ようやっと本サイトの皆様の感想を読んで、軽く驚いた。
 その流れで思うこともあるのだが、それについては次の動きがあってからモノを言うことにしよう。

※……まったくの余談
 21世紀のミステリマニア(一部プロ作家)が3~4人も集まっている場なのに、「『モルグ街』が史上最初のミステリ」という「常識」「定説」が一同にあまりにすんなり受け入れられ、「いや、近年の見識では『モルグ街』以前にも広義のミステリはいくつもあり……」という類の、文学史上の異説を言い出す者がただのひとりもいないのには、ぢつに違和感と摩擦感を抱いた(笑・怒)。
 ここだけは、海外クラシックミステリファンの有志が高らかに声をあげてツッコむ箇所ではないかと、強く思う。

No.26 8点 mozart
(2023/07/07 06:59登録)
率直な感想ですが大変面白かったです。トリックがー、とか新本格への蘊蓄がー、とか言われているみたいですが自分のレベル(ミステリー知識・本格「愛」etc)では全く問題はありませんでした(ということは素人向け?)。続編が出るかも知れないのでそれも是非読んでみたいです。

No.25 7点 nukkam
(2023/06/25 18:45登録)
(ネタバレなしです) 2012年のデビュー以来順調に作品を発表している作者ですが、その中でも2021年発表の本格派推理小説である本書はかなりの話題となった人気作です。天久鷹央シリーズではありませんが、ある人物に「不思議な事件を次々に解決している女医が東京の病院にいるらしい。たしか、天医会総合病院とかいうところだったかな」と言わせていて作中世界はつながっています。自分は名探偵であると何度も自己紹介する人物を登場させ、しかも古今の本格派推理小説に対する思い入れを熱く語らせています。微妙な内容の場合には作品名を伏せるなどネタバレ防止には配慮していますけど、わかる人にしかわからない面もあるところは賛否両論かもしれません。後半になると名探偵としてのあるべき姿について悩む場面があり、市川哲也の「名探偵の証明」(2013年)や阿津川辰海の「紅蓮館の殺人」(2019年)と読み比べてみてもいいかもしれません。あちらの作品では探偵議論の相手が別の探偵だったのに対して本書の議論の相手はワトソン役です。このワトソン役も単なるワトソン役でなく、ある犯罪行為に手を染める場面が描かれ倒叙本格派風な展開を見せているのは本書の個性です。連続殺人のサスペンスはそれほど強力ではありませんが、「読者への挑戦状」の後に続く謎解き議論の充実ぶりは半端ではありません。

No.24 10点 irumi
(2023/06/24 01:53登録)
作者のことは諸々の理由で苦手だ。
しかしやりやがったな知念実希人!悔しいけど面白いよこれは 知念氏、なぜ今まで本格書いてこなかったんだってくらいには本格好きに刺さる内容である。
「我が新本格時代のクライマックスであり、フィナーレを感じさせる」という島田御大の激賞を見た時には「いや、勝手に終わらすなー !!」と心の中で突っ込んだが、読んでみればこの豪華すぎる本格成分と華麗なラストに納得。『占星術殺人事件』が薪をくべ、『十角館の殺人』というガソリンで点火されて幕が上がった新本格も『硝子の塔の殺人』で華々しい大団円を迎えて絢爛に散ってしまった。ラストはホームズとワトソンで締めるとは憎いね〜知念氏
ところで『硝子館の殺人』、普通に7点くらいはつけられる佳作なので作者は保険かけすぎである。

良いもん読ませてもらったよ でもこんな月夜みたいな本格オタク以外はポカーンとなるバカミス作品を本屋大賞にノミネートするのはやめよう。

No.23 7点 E-BANKER
(2023/06/10 13:01登録)
すごい評判、すごい評価である。現代に蘇った「新本格ミステリー」とでも呼べばいいのだろうか。
異形の館で連続して発生する殺人事件。しかもすべて「密室」殺人。いやがうえでも期待は上がっていく(ついでにハードルも上がっていく・・・)
2021年の発表。

~雪深き森で、燦然と輝く硝子の塔! 地上11階、地下1階。唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。ミステリーを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、ミステリー作家、料理人など一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館でつぎつぎと惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き、血濡れの遺体が・・・。さらに地文字で記された13年前の事件。謎を追うのは名探偵・碧月夜と助手で医師の一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦。圧倒的リーダビリティ、そして衝撃のラスト!~

いやいや、これは、なかなか・・・。
読了後の感想はこんな感じである。
他の皆さん(一部?)がおっしゃるように、ここまで徹底的にエンターテイメントに徹したことに価値があるように思う。
密室トリックについては、作中の名探偵がいみじくも語っているとおり、二番目の密室が白眉。三番目はやっぱり島田荘司のアノ作品をインスパイアしたものなのだろうか。ただ、そんな結果になるのかは甚だ疑問。
まあこんな感じで、読者が引っ掛かりを覚える箇所があちこちに出てくるのだが、これこそが作者の仕掛けた一大トリックの布石となっている。

やがてやってくる二度の「読者への挑戦」。
そう、やっぱり21世紀の本格ミステリーは、「一度」ではだめなのだ。これが進化なのかどうかは分らんが、作家としてはツライところだろう。一度目のダミー推理でも納得性のある推理を組み立てさせ、それをバラバラに壊して、或いは違う角度から真の真相を構築しないといけないのだから・・・
そうした「今現在の本格ミステリーのお約束」をすべて具現化したのが本作なのかも。
まあちょっと褒めすぎの部分はあるけれど、これと同じようなベクトルの作品を書く人にとってはかなりハードルが上がったんじゃないかな?
最後に一言を発するなら、「面白かった」でよい。
(ラストは続編があるという伏線なのか? 賛否両論はありそうだが・・・)

No.22 10点 ひとこと
(2023/05/28 19:43登録)
最高のエンタメ作品!

No.21 9点 みりん
(2023/05/17 23:55登録)
本格への愛無くしては思いつけない悪魔的な発想です。

No.20 7点 雪の日
(2023/05/09 13:13登録)
まず言いたいのは、ミステリ小説をある程度読んでないと全く楽しめない、ということですね。

以下私の感想
ミステリ愛がすごく伝わってくるし、本格の良さがぎっしり詰め込まれたものだと思いました。しかし、その反面で本格の悪さもしっかり感じました。(キャラがいまいち、話が面白くない 等々)
純粋にミステリが好きな人にとっては最高の作品だと思います。

No.19 10点 密室とアリバイ
(2023/05/01 22:24登録)
本格ミステリが好きなら絶対に読んでおいて損はしない。最初の見取り図を見た途端にミステリ好きの血が騒ぐであろう。

No.18 3点 suzuka
(2022/11/04 23:56登録)
過去のミステリーのパロディ本としては楽しめたかと思います。ただ、個人的には「館」の扱いだけは、あまり気分の良いものではありませんでした。
ミステリーとしては特に目新しい点もなく、メインと思われるトリックは大掛かりではありますが、あまり面白く感じませんでした。
過去の名作ミステリーがいかに洗練された作品なのか改めて実感した次第です。

No.17 6点 いいちこ
(2022/10/20 08:09登録)
最初に与えられる解決が、フィージビリティを無視した平凡な内容であるのは、言わば当然である。
それにしても提示された謎の不可解性に対して強く見劣りがするのは残念であるが。
ただ、それ以上に、それを覆して与えられる真の解決を評価することはできない。
リアリティがないのはよいとして、納得感がまるでないのである。
これほどまでに特殊な登場人物を置けば、どのような不可解な謎にも説明が付くのは当然で、ある種のファンタジーでしかない。
このファンタジー、すなわち登場人物の存在そのものが、ミステリというジャンルのありようや歴史に対する、深い認識から生まれていることは十分に承知しているが、それは言わばよくできたミステリ評論でしかなく、ミステリとは言えない。

本作に込められた著者の野心、稚気、チャレンジング・スピリットは大いに買うのだが、読者の想像を大幅に凌駕するものではない。
あらゆる変化球が投げ尽くされているなかで、突拍子もない変化球を投げると宣言されれば、打者として十分に読めてしまう球種。
ミステリというフォーマットのなかで、このようなアプローチを試みる限り、これが限界なのであろう。

そのような意味で、本作に対して批判的なスタンスに立つつもりはないのだが、一方で激賞されるべき作品であるとは到底思えず、6点の最下層

No.16 10点 ぷちレコード
(2022/07/27 22:56登録)
孤立した奇妙な館、連続密室殺人事件、ダイイングメッセージ、エキセントリックな名探偵、暗号、読者への挑戦状。本書には、本格ミステリならではのネタが、これでもかと詰め込まれている。先達の作品の言及も多く、本格ミステリファンならば、楽しく読めるのではないか。なかでも一九八〇年代後半からの新本格ムーブメントの原点になった「十角館の殺人」の扱いには驚いた。
しかもストーリーが凝っている。物語は、第一の殺人の犯人の視点である遊馬の視点で進む。彼は月夜の助手になり、第二第三の殺人の犯人に、自身の殺人もなすりつけようと考えている。これにより異様なサスペンスが生まれている。
事件の真相はびっくり仰天。本格ミステリを愛する作者が、ジャンルに捧げた大いなるオマージュといっていい。だから、本格ミステリについて、名探偵という存在について、深く考えずにはいられない。

No.15 7点 レッドキング
(2022/07/25 00:53登録)
「モリアーティが永遠に求める者は、ライヘンバッハの滝に供に飛び込むホームズなんだよ、my dear Watson・・」
     第一の密室・・お手本の様に手堅い心理密室に3点満点。でも倒叙なんで-1で、2点。
     第二の密室・・鮮やかなるピタゴラスィッチ機械密室に3点満点。
     第三の密室・・とんでもトリック密室(成功の物理的懸念、またよし(^.^))に3点満点。
  で、計 8点・・と思わせといて・・見事なるドンデン返し・・しかも一回転に一捻り付きに+2点で、10点! 
  でーも、なんか気恥ずかしい「新本格」内輪受けネタが物語の中心に居座ってるんで、-2点。結局、8点。
※あのヒロイン、真賀田四季より良いが、御陵みかげの方が好きだ。にしても、ポー・ホームズに、島荘や「十角館」を同列に並べるのは・・ちょっとねえ。

2023/7/18追記。「密室キングダム」や門前典之諸作なんかと読み比べて、8点はチト褒め過ぎかと、で、7点に。

No.14 10点 zuso
(2022/06/19 22:53登録)
ミステリを愛する大富豪が地上11階、地下1階のガラスの塔を建てた。そこに招待されたミステリ作家、編集者、霊能力者、刑事たちが集まる。そして連続殺人が始まった。
海外の有名古典から日本の新本格の名作までが言及され、事件がそれをなぞる。つまり奇妙な館、クローズドサークル、そして読者への挑戦状である。特に読者への挑戦状の後は、一段と意外性に富み予想だにしない方向へとかじを取り、たっぷり読ませる。

No.13 9点 パメル
(2022/05/13 08:22登録)
ミステリを愛する大富豪・神津島太郎は、円錐形のガラスで出来た「硝子館」に六人を招いた。それは、ある重大なことを発表するためだという。パーティーは開かれ、後は神津島太郎を待つばかりとなった。しかし、そのパーティーはある殺人事件により幕を閉じる。反対に血みどろの惨劇の始まりだった。刑事、料理人、医師、名探偵、メイド、霊能力者、小説家、編集者、執事。典型的な登場人物たちが全く新しいミステリを紡ぐ。
プロローグから倒叙形式で語られ、犯人は分かっている。犯人や動機が分かっている中で、どうなるのだろうと思っていたが倒叙から本格っぽい展開に変わり、本格ミステリの要素を贅沢に詰め込んだ作品に仕上がっている。
ミステリ好きの登場人物たちが、ミステリ談義を楽しむ事により古典ミステリから現代ミステリまで多数のミステリが登場し、ミステリ好きにはたまらない描写も多い。作者の本格ミステリ愛を感じることができ、ミステリの歴史や本格ミステリの軌跡を学ぶことができると同時にニヤニヤが止まらない。
魅力的な登場人物、奇妙な形の館、クローズド・サークル、密室殺人、読者への挑戦状など、本格ミステリ好きには嬉しい要素が詰め込まれている。硝子館の立体図と断面図を見ながら推理するのも楽しい。
事件の真相が、ほぼ分かったのかという時点で残り数十ページあり、ラスト数十ページどうなるのかと思っていたが、ここからが熱い。これぞ驚愕のラスト。まさに、帯に書いてある綾辻行人氏の「ああびっくりした」である。謎解きに頭を使う人にも、振り回されることに快感を覚える人にもお薦め出来る。

No.12 7点 まさむね
(2022/04/17 14:56登録)
 昨年は「~の殺人」をタイトルとする好作品が目白押し。「硝子の塔」も読み逃がせまいと手にした次第です。
 塔の見取り図だけでも興味津々。ガチガチ本格設定の使い方が巧みです。なるほど、なるほど、そう来たか。面白かったし、唸らせられましたね。作家さんが寄せた帯コメントも楽しく、特に綾辻氏の「ああびっくりした」は味わい深い。
 一方で、同時期であれば「兇人邸」や「蒼海館」を推したくなる自分がいたりします。評価というものは、難しいものですねぇ。

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