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ミステリの祭典

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鍵のかかった部屋
防犯探偵・榎本径

作家 貴志祐介
出版日2011年07月
平均点6.08点
書評数12人

No.12 7点 バード
(2024/11/10 22:47登録)
密室のコンセプト短編集で、「密室劇場」以外はwhoダニットを完全に排除したいさぎ良さ。本短編集はHow and Whyに焦点が集められており、初心者も楽しみやすいgoodな構成である。

<個別書評(ネタバレあり)>
・佇む男(7点)
本短編集のマイベスト。密室の作り方も納得でき、犯人の決め手も美しい。うじからの真相到達も良いヒントだった。

・鍵のかかった部屋(7点)
全体的にギミックが凝っており、面白かった。実際はドアが壊れてしまいそうな気もするが、たまたま頑丈なドアだったということで。

・歪んだ箱(6点)
図もあったので情景はイメージしやすいが、前話に続き実現性という点は厳しいような。それともテニスボールをあの速度で連射すれば意外といけるのか?本人視点なので、同情的に書かれているが、犯人は普通に悪人ですね。

・密室劇場(6点)
密室か?という内容だが、4作の中で一番トリックの成功率が高そうな気もした。少しギャグが滑り気味なのはご愛嬌。

No.11 5点 ミステリ初心者
(2022/12/29 06:12登録)
ネタバレをしております。

 読みやすくい密室がテーマの短編集です。驚きが大きい物理トリックが多いです。また、最後の1編を除いて、犯人が狙った通りの(偶然の余地がない)密室なのでフェア度が高いです。ヒントも適度に出ています。
 ただ、総じて、密室の謎が明らかになった時の感想は、「それって本当にできるの?」という感じです。物理法則的な話ではなく、私がいまいち想像できないような感じでした。

・佇む男
 なかなか強固な密室です。男の子の目撃者のカーネルサンダース発言から、死後硬直が利用されたことはわかりましたが、私の死後硬直に対しての知識が浅くて本当にできるのか疑問でした。また、寝かせた状態し死んだ人が、死後硬直が解けて座ると、検死でわからないのか?とも思いました。

・鍵のかかった部屋
 これも、部屋内部の気圧を高めたことだけはわかりましたw なぜ気圧が高まったのか、またガムテープを静電気で張り付けたか…などは一切わからなかったのですが。

・歪んだ箱
 やや、トリックのために用意した家といった感じですが、欠陥住宅にしたことはなるほどと思いました。ちょっとバカミスっぽいですね。

・密室劇場
 全体的にユーモアミステリのノリがあります。すこし毛色がちがう作品ですが、榎本と純子のあらたな一面が見られたようで良かったです。純子はその前の歪んだ箱で、大分アホっぽくなりましたがw

No.10 6点 パメル
(2021/07/05 08:44登録)
防犯コンサルタントの榎本怪と弁護士の青砥純子のコンビが、コミカルなやり取りをしながら4つの密室トリックに挑む。
「佇む男」山奥の別荘で完全な密室状態で、遺言書を傍らに死んでいた葬儀会社社長。予想をはるかに超えた、あるものを利用した前代未聞のトリック。
「鍵のかかった部屋」サムターンの魔術師の異名を持つ会田をしても、解き明かせない密室に榎本が挑む。盲点を突くようなアイデアで密室が仕上げられている。
「歪んだ箱」欠陥住宅の責任をとろうとしない工務店社長に殺意を抱いた杉崎。まさに欠陥を利用した殺人トリック。
「密室劇場」舞台の本番中に劇団員が謎の死を遂げた。読者を煙に巻くような、これまでの3編とは全くムードの異なるコメディ調。真相もバカミス。
それぞれ意外性のある機械トリックが用いられている。トリック重視でありながら、そのトリックに必然性が存在するため、密室が効果的なテーマとして働いている。

No.9 4点 あびびび
(2015/02/13 14:07登録)
犯人は最初から分かっていて、それをじわじわ追いつめる。ある意味、刑事コロンボのスタイルだが、堅牢な部屋を徐々にオープン化する手際は鮮やか。

ただ、それにかかわる科学的、偶然的要素(ほとんどなかったが…)が自分には面倒くさい。青砥弁護士と榎本氏の駆け引きが、細かなトリックを分かりやすく説明してくれているが、それでもひとつひとつの仕掛けが現実的ではなくなってくる(貴志さんの作品は全部好きだが、自分には読む資格なしと苦笑した)。

No.8 9点 mohicant
(2013/08/05 22:47登録)
 物理トリックを利用した密室物の短編集。特に二話目のトリックには感心してしまった。ここ何年かで読んだ物理トリックものでは随一。

No.7 7点 E-BANKER
(2012/10/21 21:22登録)
「硝子のハンマー」「狐火の家」に続く防犯探偵シリーズの第三弾作品集。
嵐・大野君主演の月9ドラマは結局一度も見なかったが、原作の方はどうなのか?

①「佇む男」=二次元~三次元、そして「時間軸」を密室トリックを構成する要素に取り込む発想が見事。少年の証言等重要な鍵が後から出てくるのが若干引っ掛かるが、まずは水準以上の作品だろう。
②「鍵のかかった部屋」=これが本作の白眉か。今まで触れてきた「密室」の中でも五指に入りそうなほどの「堅牢さ」。真犯人は最初から一人に絞られていて、コイツ対榎本の知恵比べ的要素が楽しめる。細かな伏線(物証)が丁寧に撒かれていてはいるが、「仕掛け」に徹底的に拘ったトリックは普通の読者にはちょっと解明は難しいレベル。
③「歪んだ箱」=欠陥住宅が今回の「密室」の舞台。つまり、普通に施錠された密室ではなく、建付けの悪さのため「鍵」なしで開けられない部屋で殺人事件が起こるのだ。しかも、今回のトリックは超絶的! よくこんな発想できるなぁ・・・。探偵役としての榎本の冷静沈着さと青砥弁護士の大ボケ振りが際立つ。
④「密室劇場」=前作「狐火の家」に収録された「犬のみぞ知る」の続編だが・・・作者の「おフザケ」としか思えない。

以上4編。
今さら言うまでもないが、徹底的に「密室」に拘りぬいた本シリーズ。
特に今回は肩透かしのような「密室」ではない正統派のやつが目立つ。
密室を構成する(しようと考えた)真犯人の「心理」を推理の過程にする榎本の捜査方法がロジカルで、他の密室作品と一線を画しているように思える。

話題先行の作品ではあるが、中身も十分評価に値するレベルだろう。
(やはり表題作の②がベスト。③もその発想に拍手)

No.6 6点 測量ボ-イ
(2012/09/01 09:00登録)
先にドラマを見ていたのですが、幸い内容をあまりよく覚えて
いないこともあり、新鮮な気持ちで楽しめました。
今時密室なんて・・・という方も居るのかも知れませんが、こ
れはこれで良かったですよ。
個々の作品の評価を簡単に。

<佇む男>
個人的にはこれが一番良かったです。古典作品でも通用しそう
な、シンプルで斬新なトリックですね。

<鍵のかかった部屋>
こちらは物理トリックと機械トリックの組み合わせ。でもこう
いうのが苦手な方にとっては面白くないかも。

<歪んだ箱>
まあまあ。推理作家の永遠のテ-マである(?)
密室を、うまく現代風に消化しています。

<密室劇場>
出来栄えは一番悪そう。いわゆる脱力系トリック(?)

No.5 7点 虫暮部
(2012/06/01 08:18登録)
 今時、“密室縛り”という蛮勇に拍手。どれも面白いのだけれど、(「密室劇場」はともかく)妙に“小品”というイメージが残るのは何故だろうか。
 「鍵のかかった部屋」という直截的なタイトルは或る種の挑発なのかと思ったが、トリックを踏まえて考えると(→どの段階で鍵がかかったか)趣深いアイデアである。

No.4 5点 ayulifeman
(2012/03/24 23:39登録)
密室物短編集。
犯罪者側の視点に立ってジワジワと犯人を追いつめていく防犯コンサル榎本とトンチンカンな推理で周りを引かせる天然キャラ女弁護士青砥のやり取りが面白い。

No.3 6点 HORNET
(2012/02/11 08:59登録)
 密室ものを集めた作品集。「佇む男」は分かった。表題作「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」は奇抜で込み入ったトリックという感もあるが、面白いアイデアともいえる。「密室劇場」は完全なお笑い。自分はこれが一番面白かった。

No.2 6点 kanamori
(2011/09/07 22:46登録)
「硝子のハンマー」の防犯探偵&天然女性弁護士コンビ・シリーズの第3弾。例によって密室トリックのハウにのみ拘った4編が収録されています。
真正面から密室トリックに挑んだ前半2作では、多重トリックで複雑強固な密室を構築した表題作がなかなかの力作。犯人像はどこか”ハスミン”を思わせる。
後半2作は、ともにおバカなトリック。「歪んだ箱」は”巨人の星”のあの名シーンがトリック発想のヒントなんだろうか。なお、最後の「密室劇場」は自分のなかでは読まなかったものとしたい(笑)。

No.1 5点 まさむね
(2011/08/22 23:00登録)
 密室ハウダニットに特化した中短編4本!作者も好きですよね~密室が。
 個人的には,表題にもなっている「鍵のかかった部屋」がベストかな。微妙な作品もありましたが,そこはご愛嬌ってところでしょうか。密室好きの方はどうぞ。そうでない方は,途中でつらくなるかも。
 ちなみに,防犯探偵シリーズ…らしいです。というのも,恥ずかしながら防犯探偵・榎本も弁護士・純子さんも,ワタクシにとっては初対面。特に問題なく読めましたけど。

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