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ミステリの祭典

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GOTH リストカット事件

作家 乙一
出版日2002年07月
平均点6.85点
書評数54人

No.54 8点 よん
(2024/10/03 13:28登録)
同級生の森野が拾った一冊の手帳。それは世間を震撼させている連続殺人鬼の日記だった。警察に届けることなど考えもせず、「僕」と森野は手帳に記されている、まだ発見されていない死体を探しに山へ出掛けた。
人間の暗黒部分に惹かれ、残虐な異常犯罪に興味を抱かずにはいられない「僕」と森野の目に映った6つの事件を描いた連作短編集。明るく健康的なクラスメイトたちに馴染めない森野と、完璧に馴染んだふりの出来る「僕」というキャラクターの魅力もさることながら、ミステリとしての驚きも十分。切なく胸に小さな傷を残すような物語。

No.53 7点 バード
(2024/05/14 07:26登録)
<軽くネタバレあり>
夜の章、僕の章で全6話。
ホラー味もある本作だが、僕視点で犯人達を俯瞰する立場で読めるため、猟奇犯人達へ恐怖することはない。むしろ、僕や、僕とも差別化されている森野にぞくっとする人が多いだろう。ただ、彼らも単純な恐怖の対象とは書かれておらず、むしろ等身大の学生描写も多い。ホラー雰囲気と読後感の爽やかさを両立している点が本作の魅力の一つだ。
個人的には僕に関する伏線の撒き方とそれを利用した「声」のギミックは非常に上手いと感じた。一見アンフェアな仕掛けがあるが、前までの話をベースにするとフェアな仕掛けへと化けるのが素晴らしい。

キャラクター造形:8点
ストーリー:6.5点(単話のマイベストは「リストカット事件」。「声」も、一冊の締めには不可欠なお話。)
ミステリ的ギミック:6.5点(各話の小ネタ(4点)正直レベルは高くない+僕の使い方(2.5点))
総合:7点

*以前に夜の章だけ読んだ際は、ミステリ要素のチープさが気になり今一つの評価だったが、本作の魅力は別にあると気づき評価が大幅に上方修正された。やはり最後まで読まないとまともに評価出来ない&乙一さんは構成が上手い作家だと改めて思い知らされました。

No.52 8点 蟷螂の斧
(2023/06/03 12:33登録)
壊れた世界のファンタジーといえばいいのか?
①暗黒系 7点 拾った手帳には猟奇的な連続殺人犯のものと思われる記述があった。その現場を訪ねる僕と森野夜・・・壊れた犯人、壊れた探偵役(こんなグロな描写があるとは・・・)
②リストカット事件 8点 手首だけが切り取られる事件が連続していた。「僕」は化学準備室で手のない人形が捨てられていたのを発見・・・森野夜の美しい傷痕(裏に隠れていた動機が怖い)
③犬 8点 「ユカ」は母が連れてきた男に小突枯れている。飼い犬は「ユカ」が誘拐してきた犬と戦い首に噛みつき殺すようになった・・・最終目的(探偵役の行動はやはり?)
④記憶 8点 同級生の森野夜は双子であった。妹の「夕」は6歳の時、首吊りの真似をして事故死したという・・・「夕」の靴(ロジックからのどんでん返し)
⑤土 8点 森野夜が生きたまま棺に入れられ庭に埋められた。空気穴があり犯人と会話。恋人が必ず助けに来ると言うが・・・土の中からの声(思考が追いつかない)
⑥声 8点 女性の惨殺死体。僕は被害者の妹に最期の姉の声を録音したテープを聞かせるとおびき寄せた。とうとう「僕」の正体が・・・歯フェチ(○○が分かりにくいのが難点)

No.51 7点 レッドキング
(2020/12/11 18:12登録)
猟奇趣味で繋がれた二人の男女高校生が主役の短編集。
 *「暗黒系」 シュールな猟奇描写に目を眩まされるが、証拠と犯行のロジック展開はなかなかに本格。7点。
 *「リストカット事件」 ダダイズムなまでの残虐譚がサスペンス展開する。ミステリ要素はちと薄く、3点。
 *「犬」 陰惨な虐待話が、倒叙と叙述相互に展開し、最後は叙述トリックで収束する。6点。
 *「記憶」 少年によるヒロインのホワットダニット解明ロジックが、フーダニットへと転調し、8点。
 *「土」 犯人側描写の残酷な犯罪譚。解明ロジックもちょっと出てきて少しミステリして、4点。
 *「声」 犯人と殺された女の妹のサスペンスが、主役少年を大きく巻き込んでの叙述トリックにて展開する。8点。
「記憶」で少女の正体が解明され、「声」では、分身を透して少年の本性が暴き出される。少女が最後に少年に突きつけた言葉・・私は心の歪んだ人間だが、あなたには心が無い(=人非人)・・が印象的。短編集としての平均は6点だが、このラストのラスボスキャラ転換劇に追加点して7点。

No.50 7点 ぷちレコード
(2020/12/04 19:27登録)
「暗黒系」、「リストカット事件」は、探偵役による事件解決の論理が、残虐極まりない犯人の異常性と完全にすれ違っている。それはまさに、恐るべき現実を映し出しているといえるでしょう。
「土」は、少年少女の情死を冴え冴えとした筆致で描き切り、哀切さが強く心に残る。

No.49 6点 パメル
(2020/08/16 10:25登録)
語り手の「僕」と森野夜は、お互い殺人や自殺、虐待などを魅力的に感じているという、普通の神経では考えられない感性で繋がっている。
ラノベ風な雰囲気があり、2人ともどんな状況でも感情を表に出すことなく、淡々とストーリーは進んでいく。この得体の知れない不気味さが堪らない。(ホラーを読むときの怖いもの見たさが湧いてくる)また、歪んだ美意識、一筋縄ではいかないストーリーを描き上げた筆力、トリッキーでアクロバティックは仕掛けは好印象。
ただ、人物造形が一種独特な世界観なので、小説として整合性に一部欠陥があるという印象を受けた。

No.48 10点 初老人
(2019/07/05 23:39登録)
満点。

No.47 7点 名探偵ジャパン
(2018/07/27 10:02登録)
「本格ミステリ大賞受賞作」という看板がついているにもかかわらず、今までどういうわけかスルーしてきた作品でした。乙一はホラー系の作家、という先入観があったためかと思われます。
で、読んでみたわけですが、文庫版のあとがきで、本作は元々ライトノベルとして執筆されたという経緯が分かりました。なるほど、言われてみれば確かに、「痛い系」オタクの理想を具現化したような主人公とヒロインなど、随所にそういった記号が散りばめられています。

ミステリ的な視点で見れば、使われているのがほとんど「○○トリック」で、「またこれかよ!」と思い、さらには「どうせあれだろ」と穿った読み方をするようになってしまいます。恐らく当時は「○○トリックにあらずばミステリにあらず」という風潮の時代で、そこが本作とベストマッチして大賞受賞とあいなったのではないでしょうか。

もしかしたら否定的な意見に読めてしまうかもしれませんが、好きか嫌いかで言えば、私は好きです。○○トリックの使い方も効果的で印象に残ります。もし高校生の頃に本作に出会っていたら、10点くれて大絶賛していたと思うのです。マイナスの3点分は、私が大人になって失ってしまった何かなのでしょう。

No.46 4点 いいちこ
(2016/11/08 11:48登録)
各処で高評価の本作。
ダークな内容にもかかわらず、胸焼け感が残らない乾いた筆致に、筆力の高さをうかがわせるのは確か。
一方、ミステリとしては、仕掛けのテクニックの巧緻さは光るものの、誤導の手法が極端にワンパターンなのは大きな減点材料。
また、その効果として世界を反転させるような鮮やかな衝撃がなく、「安易」な印象を強く残したため、やや批判的な評価となった

No.45 8点 ニックネーム
(2015/12/20 17:08登録)
乙一さんの最高傑作だと思います。

No.44 7点 haruka
(2014/04/17 00:29登録)
独特の世界観があって巧い作家だと思った。著者本人のあとがきにあるように、後半に行くにつれて本格色は薄まる。「暗黒系」「リストカット事件」がよかった。

No.43 8点 mohicant
(2013/08/05 22:06登録)
 読みやすい割に、それぞれの話が印象に残る強烈なものだった。キャラクターもいい。

No.42 8点 メルカトル
(2012/12/15 21:32登録)
再読です。
寄せ集めと言われようが既視感があろうが、私はこの作品集を支持する。
なぜなら、本書は日常から遥か彼方の異次元の世界へ私を誘ってくれるから。
最終話の『声』こそ意味が分からない部分があったり、冗長さを感じたりするものの、その他は乙一氏にしてはミステリ的趣向をかなり取り入れているし、絶望や虚無を漂わせるグロい異世界は読む者に少なからず嫌悪感を味わわせる。
そこが本作を持って、評価を割れさせるところではないだろうか。
だが、私のような人生の階段を踏み外した者にとっては、それぞれが共感できる面を持っていて、相当な好感触である。
特に第一話の『暗黒系』、第二話の『リストカット事件』は一も二もなく好き。
主人公の「僕」にも、相手役の少女、森野にもなぜか好感が持てるのである。
まあとにかく、本作と『ZOO』は氏の作品の中でも別格な気がする。
あ、そうそう、『ZOO』も読み返さなくては。

No.41 3点 ムラ
(2012/03/03 08:14登録)
主人公の性格付けと夜のストーリーがピッタリと嵌っていてよかった。
知り合いが殺されてるところを想像しながらそのまま寝ちゃう冷静っぷりなところとかが特に。
どれも、どう騙そうかという道筋が見え見えだった所為で騙されなかったけど、ストーリーを彩るためのトリックと自分的には捉えられたのであり。
バレバレといっても、伏線ちゃんと張った上でのバレバレなら好印象だし。
そういう感じでは犬が一番面白かったかなぁ。

(こっから重大なネタバレ)
しかし○が○に化けた理由がまったくわからなかった。ここら辺もうちょっと書いてもよかったんじゃないかなと思う。

No.40 8点 スパイラルライフ
(2012/02/07 22:01登録)
短編集ですが、主人公二人の人物像がラストに向けて肉付けされ、あるギミックが控えています。一話ヒトネタに絞ったミステリとして手軽く楽しめます。
乙一の描く人物や文章は好みなので1点加点。

No.39 5点 isurrender
(2011/11/03 12:49登録)
小説自体は面白かったのですが、ミステリとしては作者本人もあとがきで書かれているようにそこまで重視されていなくてわかりやすいものが多いです
ミステリ要素を含んだラノベ程度の感覚で読むのが丁度良いんだろうなと思いました

No.38 7点 kenvsraou7
(2011/03/07 12:39登録)
なんともエグイ作品。
文章表現における残虐さはほのぼのとした日常を切り裂くように痛々しい。若い人向けの作品といわれるのはこうゆう荒々しさにあるのだろうか?
しかし、この著者はライトノベルという分野の革命児だと聞く。短い文章でこれだけの迫力、展開の鋭さを書けるのはやはり凄いと思わされる。
この作品はミステリを新しい段階に導いた革命的作品であろう。長編にも挑戦してほしいと素直に思う。

No.37 3点 seiryuu
(2010/07/16 17:02登録)
少年漫画を読んでいるような気分になった。
この作者とは相性が悪い。

No.36 4点 まさむね
(2010/07/04 23:08登録)
採点に迷ったが,やっぱり5点(まぁ楽しめた)は付け難い。
“イタイ系”の話が続くのは,そもそも辛いなぁ。ちょっと最後に「イイ話」を織り込ませようとするのも…むしろ…。
トリックも「入れ替え」に偏重しており,新味がない。(無論,騙されたのも多かったですが…)
久々に苦しみながらの読了とあいなりました。
私の嗜好が違うだけかもしれませんので,あまり参考になさらずに。

No.35 8点 (^^)
(2010/04/07 02:06登録)
異常快楽殺人者の心情がうまく描かれている。
どの作品も面白く騙されたが、主人公と森野の関係&性格の説明が何度も出てきて少々くどかった。

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